事業加速のターニングポイントは? Airbnb、minikuraの事例を紐解く。

#HomeTech/IoT 3/8

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「暮らしの中で顧客接点・価値体験を持ち続けるには?」と題して行われたセッション(全8回)の3回目をお届けします。今回は、Airbnb Japanの長田氏、寺田倉庫の月森氏から、事業が加速するきっかけとなったターニングポイントについて語られた様子をレポートします。

登壇者情報

  • 長田 英知 氏 /Airbnb Japan株式会社 執行役員 ホームシェアリング事業統括本部 統括本部長
  • 月森 正憲 氏 /寺田倉庫株式会社 上席執行役員
  • 東 克紀 氏 /YKK AP株式会社 経営企画室 事業開発部 部長
  • 木村 大介 氏 /リノべる株式会社 Connectly事業責任者
  • 福岡 裕高 氏 /アーキタイプ株式会社 取締役/パートナー(当時)/ モデレータ

暮らしの中の顧客接点・価値体験をいかに事業として仕組化するか

福岡: ということで、4社の方々に話していただいたんですが、今回「暮らしの中で顧客接点・価値体験を持ち続けるには?」というテーマなんですよね。

今日登壇していただいた4社の共通点は「住む」「家」です。

Airbnbはもちろん、自分の家を仮想で持てるという感じなんでしょうけれども。Airbnbのように事業ができあがっている登壇者の方と、まさにここからどんな顧客接点・価値体験を持ち続けるか考える事業が、両方並んでいます。

事業に対して考えるヒントという意味では、暮らしの中の顧客接点・価値体験をいかに事業として仕組化するか。まず事業として仕組化するのがポイントであると思っていて。

4名の登壇者一人ひとりが全く別の視点の話をしてくれると信じて……「事業化に成功すると感じた転換点」というところだと、きっと長田さんの場合は「なぜあのタイミングでAirbnbに合流したのか」なのかもしれないですし、「CSの特徴や強み」を話していただける会社もあれば、木村さんや東さんは「今後どのような特徴や強みを持っていくのか」という話になると思います。

せっかくリアルに会っている場なので、「いま何か脅威を感じていますか?」とか、その上で「今後どのような挑戦をしていきますか?」というようなことを、お一人お一人話していただきたいです。

では、お願いします。

Airbnbが“信頼”を勝ち得ていくために

長田: では、事業化のところなんですけども、Airbnbはすでに事業化されているのではないかと言われたんですけど、実は私が入社したのはちょうど1年前なんですが、まだその頃はAirbnbという名前もあまり認知されていなくて。

民泊が一部のところでは浸透してきた、というところでした。

実はこの1年間は、日本国内でどのように事業化をしていこうかと。もちろん海外で既に広くなっていましたが、日本ではどうしていこうかというのを考えていました。

その中でやはりCSの特徴や強みのところにもなるのですが、民泊というと何か恐いものであるとか、なかなかちょっとハードルが高い。

よく小さい頃に「知らないおじさんについて行っちゃだめよ」と親から言われたことがあるかと思いますが、知らないおじさんについて行ってさらに泊まっていく、あるいは知らない人が来るのを受け入れるというのを、いかに信頼という形でサービスとして成り立たせていくかというのは、実はかなりハードルが高くて。

我々のサービスに関して、オンラインで持っている信頼の仕組みとあわせて、オフラインとしての安心・安全を、日本国内でどういった形で訴求していくかというのは大事にしてきました。

その中でいろいろな企業様とパートナーシップを結ばせていただいてもおりますし、例えば1年半ほど前にCCCさんとパートナーシップを締結させていただいた中で、Tポイント会員様向けに、Airbnbというのはこういうサービスで、さらにこういうところで利用価値があるということを紹介させていただいたり。

あるいは東京大学の先生方と共同研究をしていく中で、「日本にあった住宅宿泊事業、ホームシェアリングのあり方とはどういったものか」というようなことも一緒に研究をさせていただいて、いくつか成果を出しております。

住宅宿泊事業法施行がもたらすもの

今後の脅威、今後の挑戦ですが、みなさんご存知かもしれませんが、住宅宿泊事業法というものが今年(編集部注:2017年)の国会で成立しまして、来年(編集部注:2018年6月)施行となっております。

そうした中で、様々なプレイヤーさんがこれから事業に進出してくるのかなと思っております。我々のブランドを大事にしていきながら、我々はいかに住宅宿泊事業というマーケットを一緒に作っていけるか。その中でマーケットリーダーとして、我々は引き続きどういった形で展開ができるのかと考えていければなと。

やはり信頼が非常に大事になってくると思いますので、我々のプラットフォームがみなさまから信頼されるようになっていく、そうしたデザインをきっちりと作っていければなと思います。

福岡: 挑戦って何かありますか。

長田: やはり、先ほどの話とも近いのですが、日本国内のみなさんの認識を変えていくところかなと考えております。

旅館やホテルと違う一般の方のところに泊まる体験というものが、今まで経験として無い方が多くいらっしゃると思いますし、やはり不安を感じるところがあるのかなと。

でも、実際に我々のサービスは、使っていただいた方と使う前の方のパーセプション(編集部注:認識)が非常に違うサービスになりますので、どういった形でまず私たちのサービスを体験していただくか。

その中で新しい旅行体験を感じ取っていただけるかが大事になってきますので、いかに最初の一歩を踏み出させるかが挑戦なのかなと思っております。

福岡: ちなみに会場に来ていただいている方で、Airbnbを使ったことのある方はどれぐらいいます?

(会場挙手)

すごいですよね。我が家、妻は使ったことがあるんですけど、僕はまだ使ったことがないので(笑)。いま手を挙げてらっしゃったのは、半分ぐらいの方ですよね。最後に質疑の時間も作りたいので、何かあったらぜひ聞いてください。

倉庫会社のタブーを攻めたら、アイデアにつながった

福岡: では、月森さん、お願いします。

月森: はい。私も5年やっていますが、成功しているという感じはしないんですけども。

1つ挙げると、「倉庫会社でやっちゃいけないよ」というのをやったのが良かったかな

ちょっと先ほどお話しさせていただいたんですけども、個人の持ち物を箱を開けて一点一点触るということはタブーだったんですけれども、そこをあえてやった。

そうするとドミノ倒しみたいな感じで、それを売ればいいじゃんとか、それを貸せばいいじゃんとか、そういうアイデアに繋がっていった。それが自分たちのアイデアではなくて、他から持ち込まれるみたいな。そういうことが繋がってきたので。

後ほど協業という話もあると思うんですけれども、そういったチャレンジでいろいろな人から意見をいただいたり、アイデアを持ち込んでいただくというところまでこれたので「これはいけるんじゃないかな」というのが現時点の率直な感想です。

CSについては、今まで首都圏を中心にトランクルームというリアルなサービスをやってきて、「人が見える」「顔が見える」という対面のCSをやってはいたんですけど、WEBを使ってとなると、見えないお客様を相手にすることになります。

これはWEBで完結するものではなく、お客様のご家庭にあるものを、倉庫に入れていただく。物理的にお客様から引き離す、その不安感はどうしてもあるので、そこをきちんとCSでカバーする。

例えば品物が心配になっているのであれば、写真を撮ってこんな状態になっていますとか、倉庫内の管理はこのようになっていますとか、一件一件、丁寧なCSの取り組みは今もやっております。

今後の脅威なのですが、次の挑戦というところにも繋がると思いますけど、やはり物流を取り巻く労働環境の問題があります。物流の労働人口が、今どんどん少なくなっている。もう聞き飽きたと思いますが、ラストワンマイルや再配達問題というのは当然脅威になってくるのかなと。

当然ながら、そこを逆手に取る事業が、今後、当然ながら伸びてくるとは思っています。それがロボだったりするのかもしれません。あとは、なんでもかんでも近くに置いておく必要はない。不要な物を預けていただいて。なんなら買った物を一旦倉庫にハブとして集約する。それを一個ずつ配達するのではなくて、まとめて配達するような。倉庫をハブとした生活の改革というものをやっていきたいと思っています。

『minikura』が、250円というプライシングにこだわった理由

福岡: 『minikura』というトランクルームサービスを使ったことのある方はいますか。

(会場挙手)

ありがとうございます。

サマリーさん(編集部注:『所有』や『物欲』をクラウド化し、モノとの出会いを創出するプラットフォーム『Sumally』を提供)がやっている『サマリーポケット』というサービスの裏側も寺田倉庫さんの『minikura』さんなんですけど、サマリーポケットを使っておられる方っていますか。

(会場挙手)

minikuraが250円であると先ほども仰っていたんですけど、よく言われるのは、体力のある寺田倉庫がこの安値で突っ込み続けたから競合がいないのか。逆にもっと単価を上げればいいのにという話もあったりするんですが、事業化に成功する入口に立っているという意味では、価格戦略をとにかく安値でやり続けたのは、どのような理由からでしょうか?

月森: そうですね、最初は代表と二人三脚で立ち上げたのですが、100円でやれと言われてですね。このモデルでいくと、お申し込みいただいてから段ボールをご自宅にお届けして、段ボールに荷物を詰めていただいて、倉庫のほうに送っていただく。倉庫のほうで写真を撮って、保管し、必要だったらまた送り返す。

これを全部引っくるめて1箱100円でやろうというところからスタートしていって、それは流石にちょっと難しかったんですが、250円で事業を組み立てることができました。どうしても倉庫会社やトランクルームのサービスは分かりにくいというか、とっつきにくいサービスなので、そこで「ハードルになっているものを解消するのであれば、まず価格であろう」というところでチャレンジしました。

福岡さんからもありましたが、我々長年にわたり倉庫事業をやってきていましたので、お客様の利用意向は大体分かっていて。250円でも利益を生むという自信があったので、そこはチャレンジしようかなと。

福岡: 今日のセッションの内容からすると、価格以外の価値体験もいかに持ってもらうかというのがテーマですよね。

月森: そうですね。

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