窓ガラスが家電になる時代へ。YKK APの「未来窓」誕生秘話。
#HomeTech/IoT 4/8
2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「暮らしの中で顧客接点・価値体験を持ち続けるには?」と題して行われたセッション(是8回)の4回目をお届けします。今回は、YKK APの東氏が「未来窓」の誕生ストーリーを語りました。
登壇者情報
- 長田 英知 氏 /Airbnb Japan株式会社 執行役員 ホームシェアリング事業統括本部 統括本部長
- 月森 正憲 氏 /寺田倉庫株式会社 上席執行役員
- 東 克紀 氏 /YKK AP株式会社 経営企画室 事業開発部 部長
- 木村 大介 氏 /リノべる株式会社 Connectly事業責任者
- 福岡 裕高 氏 /アーキタイプ株式会社 取締役/パートナー(当時)/ モデレータ
「未来窓」は、いかにして生まれたか
福岡: では、東さんからお話していただきます。
東: 僕は一応、事業開発の担当なので、他にもいろいろとテーマをやっているんですが、その中で今回の未来窓というのは、正直初めは啓蒙活動みたいな形で始めたんです。
出してみると今まで接触したことのない、いろいろな業界の人がいろんな知恵を与えてくれまして、第2弾が1年後にできて。
第3弾は来春(編集部注:2018年春)出す予定で頑張っているんですけど、それに関しては、こういう物を開発してくれたら導入したいという話がだんだん現実化してきて、それに向けて今作っています。
それが窓になるか他のものになるかはまだ分からないんですけど。その辺のことができてくると……今回は本当に売るつもりでやっていますので、お楽しみに、ということで。
業界にイノベーションを起こす起爆剤を
東: CSの部分ですが、うちのような業界の場合、ビルダーさんや建築屋さんに対して窓がその先どういう使われ方をしているかであったり、直接エンドユーザーの方と会う機会というのはクレーム以外なかなかないものなんですけど、今回の未来窓のようなものを作ることで接触する機会ができるということは、非常に強みであると思っています。
それを、いろいろな知恵をお借りしながら活用していく。
窓は絶対に家についているものですから、今までうちができなかった部分に参入していくというところでは、今後の挑戦という部分も含みますが、先はまだいろいろと考えられるかなと思っています。
脅威に関しては、うちみたいな業界、窓の建材のようなことをやっていると、実は流通と施工というものが伴っているので、他の業界としてもなかなか入りにくい分野なんですよね。だから、商品に非常にアナログな部分が残っている。「他が参入してこないので、アナログな部分が残っているのかな」と最近すごく感じていて。
そのへんが仕組的に一直線に繋がってくると、うかうかしていられないなというところが脅威であると思っているので、単に窓だけやるというよりは、さっきお見せした新しい素材とかを使って、最終的にはそれを家の壁にしていくといったところも、独自性を出して突っ込んでいきたいと思っています。
今の大工さん不足や性能アップというのも含めてですね、世の中の流れも含めて。
今後の挑戦に関しては、電機業界ではないですが、例えば一番南の大きなガラスにテレビの機能を付加するとか。好きなところに移動できるような大画面のガラスパネルがあって、その中でいろいろなことが表現できてくると、もしかしたら家電の部分などにも参入していけるのではないかと。
今テレビが大きくなって、あの黒い物体がリビングで結構目立つ存在になってきていますよね。今やっている新しい素材などを使って壁をつくり、その中にITのような技術もしくはデジタル技術が入ってくると、家の中のごちゃごちゃしたものが、その画面の中に隠されてくるのかな……という部分で挑戦をしているのが今の流れですね。
最後はそういうところまで行きたいなと思っております。
民泊×スマートハウスの可能性とは?
福岡: ここで長田さんに急に振るのも唐突ですが、日本だと民泊180日という規制があるものの(編集部注:住宅宿泊事業法(民泊新法)によると、民泊事業者は貸し出し日数の上限が年間180日であることが営業条件となる)、本来「もう民泊やるぜ!」という家にとってみると、こういう窓があったりするというのはアリなのではないですか?
長田: そうですね。アリかもしれないです(笑)。
来年(編集部注:2018年)、住宅宿泊事業法が施行される中で、何らかの形で本人認証しなければいけないという話もあります。そうしたところがどういう形で可能になるのかというのは、まだ法律の詳細が決まってはいないのですが、仮にデジタル認証のようなものができるとした時に、そうした埋め込み型の窓での認証のようなものができるとアリなのかなと思います。
福岡: 民泊というかAirbnbが提供したい空間に、スマートハウスといわれるような家を支えるデバイス、例えば、スマートスピーカーなどいろいろありますが、窓の可能性もあるよねと理解して良いでしょうか?
長田: そうですね。
あとは必ずしも我々がサービスとして提供しているものの中で、もちろん一軒丸ごと貸し出しているところもあると思うんですが、自分の部屋の一部を貸し出しているホームステイ型の場合、どういったところでプライベートな空間とパブリックな空間に境界を引くか。そうした点で、何かスマートな技術というものが使われるのはあり得るのかなと思っています。
それが窓なのか、はたまた何なのかというのはあると思うのですが、実際に我々のサービスを使っていただく方って、普通とは違う体験を旅に求められる方が多いと思いますので、その中でどういった文脈でその方が旅をしに来られるのか、その文脈にあうような体験というものを得られるのが大事なのかなと思っています。
そこを満たすための補助的なツールとして、こういったスマートなものをいかに使えるか、いろいろな可能性はあるのかなと思います。