「住んだあと」を軽視する住宅業界に、リノベるはどう切り込むか?
#HomeTech/IoT 5/8
2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「暮らしの中で顧客接点・価値体験を持ち続けるには?」と題して行われたセッション(全8回)の5回目をお届けします。今回は、リノべるの木村氏が、住宅業界が抱える課題と解決のために同社が取り組んでいることについて語った模様をレポート。
登壇者情報
- 長田 英知 氏 /Airbnb Japan株式会社 執行役員 ホームシェアリング事業統括本部 統括本部長
- 月森 正憲 氏 /寺田倉庫株式会社 上席執行役員
- 東 克紀 氏 /YKK AP株式会社 経営企画室 事業開発部 部長
- 木村 大介 氏 /リノべる株式会社 Connectly事業責任者
- 福岡 裕高 氏 /アーキタイプ株式会社 取締役/パートナー(当時)/ モデレータ
住宅業界に蔓延する課題とは?
福岡: 最近の文脈を踏まえると、スマートリモコンといったソリューションは絶対に顕在化しますが、考えてみると、誰もがスマホを持っているよねという状況下で、木村さんが考える切り口はどのようなものですか?
木村: ああ、なるほど、はい。
それでは、「リノべる。」のサービスというよりは、私が担当している次世代住宅のお話をしようと思います。まさに私が住宅業界にきて感じた課題が、住み始めてからのことを住宅会社はケアしないということだったので、本当にこのテーマだと思っていて。
暮らしの中で顧客接点・価値体験を持ち続けなければいけないと思っているんです。それを私が今やっている事業で解決したいと思っているのですが、事業化に成功するとはまだ感じていないです。
まだ試行錯誤しているところで、いっぱい苦労するだろうと思っているのですが、ただ、事業化に成功しないといけないなと感じたことがあって。私が担当している「Connectly」というサービスに対応した住宅を引き渡したお客さんなんですけれど、住み始めて半年後に会いに行ったんです。
提供している機能の中に、壁のスイッチで照明を操作せずに、リモコンとかスマホアプリとか音声とか、あとはタイマーとか、自動制御にするという機能が入っているのですが、それが当たり前に使われていて。「そういえばもう壁のスイッチを使わなくなりました」と言われたんです。だからもうその人の中で当たり前になっている。
というのを見て、これはもっと広めなければいけないし、このお客さんにはずっと提供を続けなくてはいけないなというのは感じました。
先回りするカスタマーサポートの存在価値
木村: CSってカスタマーサポートですか?それともサティスファクション?
福岡: サポートです。
木村: サポートですか。
カスタマーサポートの特徴という点では、私は自分が担当している事業がカスタマーサポートだと思っていて。お客さんの困りごとを、先回りして、こちらから「今これ困ってるんでしょ?」と出してあげることだと思っています。
照明のスイッチの場所が使いづらいんだよなと思っていたら、こういうふうに変えたらいいんじゃないの? と提案してくれて変えられるとか。
最近本当にあった話としては、うちは「リノべる。」というサービスを8年ぐらいやっているので、住んでから「そろそろ引っ越そうかしら」という人ももう出てきているんです。そういう人たちから「売りたいんですけどどこで相談したらいいですかね」とか「貸したいんですけどどこに相談したらいんですかね」というのが出てきていて。
それも本当はこちらから先回りしてできるのではないかと思っています。
家族の人数や生活リズムがIoTでとれていれば、まあちょっと怖いかもしれないですけど、「そろそろ売りません?」と提案したり、「お宅の物件であれば、今の市場だとこれぐらいで売れますよ」と出してあげたら、売る人が結構いると思うんです。
そういう人も含めてサービスをしようとしているので、僕がやっている「Connectly」という事業に関しては、サービスそのものがカスタマーサポートです。
今後の脅威に関しては、まだどういうルートで成功するかというのが見えていないので、あまり脅威は見えていないんですけど……しかも生活が始まってから困りごとが無くなるという世の中も想像できないので。うーん……
福岡: 成功させたいですよね。
木村: そうですね。
脅威はちょっと思いつかないです。さっき仰っていた通り、競合が出てきたとしたらそれはありがたいことだと思うので。挑戦に関しては全部が挑戦で。
ただ、価値が提供できることは分かったので、あとはそれをどのようにマネタイズして持続可能にしていくかというところに今はフォーカスしたいなと思っています。
福岡: すでにサービスをすごく回していますよね。多いときは、もっと提携サービスがありましたよね。
木村: そうですね。
福岡: ものすごくたくさんの提携をやって今3つぐらいに絞っている。
木村: そうです。提携というか実験を繰り返して、本当に価値のあるものだけを選抜していった結果、いま3つになっている感じです。
さっき振っていただいた話に戻っちゃうんですけど、もともとは提供しているアプリの中で、リモコンのように家じゅうの家電を操作できるとか、家の中の様子をカメラでモニタリングできるなどというのもあったのですが、誰も使い続けてくれなくて。
それで削ってしまったんです。だからアプリの裏側のコードの中には、ビデオとの連携機能とか、リモコンとの連携機能などあるのですが、ユーザーには今は表示していないという状況です。