空間ビジネスにおける協業の可能性―Airbnbと寺田倉庫の事例を手がかりに。
#HomeTech/IoT 6/8
2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「暮らしの中で顧客接点・価値体験を持ち続けるには?」と題して行われたセッション(全8回)の6回目をお届けします。今回は、Airbnb Japanの長田氏、寺田倉庫の月森氏が語る、空間ビジネスにおける協業の可能性について。
登壇者情報
- 長田 英知 氏 /Airbnb Japan株式会社 執行役員 ホームシェアリング事業統括本部 統括本部長
- 月森 正憲 氏 /寺田倉庫株式会社 上席執行役員
- 東 克紀 氏 /YKK AP株式会社 経営企画室 事業開発部 部長
- 木村 大介 氏 /リノべる株式会社 Connectly事業責任者
- 福岡 裕高 氏 /アーキタイプ株式会社 取締役/パートナー(当時)/ モデレータ
Airbnbのプラットフォームが新たな事業の呼び水に
福岡: その上で、今日、もう一つの共通項というのが、皆さん協業をされています。
例えば、「ecbo cloak」(編集部注:エクボクローク https://cloak.ecbo.io/ja)という、喫茶店や神社仏閣などに荷物を置けるというサービス。minikuraではないですが、旅の途中でスーツケースを預けられると。
このベンチャーが良いプレゼンをしていますが、「Airbnbさんのおかげで伸びています」という言葉がありました。
日本発の事業ですが、お客さんの大半がインバウンドの外国人になっていて。たぶん「ecbo cloak」にスーツケースを預け続けて、もっと身軽にAirbnbで泊まっている人たちも増えている。
荷物を、泊まる場所に固定させるのではなく、自分が居心地の良い渋谷の喫茶店や、京都のとある場所に荷物を固定させて、泊まる場所を毎日変えていくとか。
そういった意味では、別にこれはAirbnbが説明しているわけでもなく、当然長田さんが「このサービスいいよ」とオススメしているわけではないんですけれども、Airbnbのプラットフォームができたことによって、結果的に一つの事業が立ち上がりやすくなっている。
こういった事例も数多く存在すると思います。
minikuraも先ほどのプレゼンの通り、協業が二本柱の一つです。東さんの事業もそもそもコンセプトを担当したのは……
東: PARTYさんですね(編集部注:東京・ニューヨークに拠点を構えるクリエイティブ・ラボ http://prty.jp/)。
福岡: そうですよね。
東さんがプロデューサーで全てを統括しているんですけども、数社の協業で立ち上げられています。木村さんのConnectlyも然りです。
なので、今日会場の方とどんぴしゃになるか分かりませんが、こんな会社とこんな協業をしてみたいなというのがあったら、お一人お一人にコメントをいただいて、それが会場の人たちにとって協業のチャンスとなればいいなと思っています。
お願いします。
Airbnbを起点に自然発生的に生まれるビジネスたち
長田: まずは協業&共創ですが、弊社では実はホストジャーニーとゲストジャーニー、ホストジャーニーが家を貸し出す方で、ゲストジャーニーが家を借りる方なんですけれども、それぞれのカスタマーエクスペリエンスをポンチ絵のような形でピクサーの方に絵を描いていただいて。それが十何枚かあったと思います。
それぞれ画面が描かれています。それを社内では“スノーホワイト”、白雪姫と呼んでいるんですけど、一つの物語になっていて。
実際にホストさんがAirbnbのことを知って家を貸し出そうと決意をされ、それから家の準備をして、写真を撮って、物件を載せて、それから予約が入って、実際にチェックインをされて、チェックアウトをされて、その後に実際にチェックアウト後の掃除をして、また次に貸し出す。
そうした一連のホストの流れと、ゲスト側が実際にAirbnbで物件を検索して、それから予約をして、宿泊をして、チェックアウトするという流れを提示しています。
そうしたことをしていく中で分かったことが、プラットフォーム側として、サービスとして提供するものは何なのか。さらにそこから派生してくるところで「我々は提供しないけれども、実際にサービスのチャンスがあるのはどこだろう」ということが明らかになってきていまして。
そうした観点で、実際に我々では提供し得ないものを、いろいろなパートナー様と組みながらサービスを提供しています。
先ほどのお話もそうなのですが、我々のサービスはいわゆるホテル的なサービスなのですが、ホテルと違うところがいくつかあります。
例えば16時や17時のチェックインで、10時・11時ぐらいにチェックアウトといった時、ホテルの場合は一旦フロントに行ってとりあえず荷物を預けさせてもらって、そこから後ほどまたホテルに戻ってチェックインができます。
しかし実際の民泊だと部屋を貸し出しているわけなので、掃除が終わる16時から17時までの間は貸出ができない。そうすると、荷物をガラガラ引きながら観光して、チェックインの時間になって初めて物件に行くしかない。というところで、「観光などの利便性をいかに高めるか」といったときに先ほどのようなサービスが出てくることもあります。
あとは実際に個人の方々が複数の物件の貸出をしているところで、決まった時間内で掃除をしなければならないといった時に、なかなかそこまで手が回らない。そこで、例えば代行のサービスがでてきたりすることもあるのかなと。
そうしたところで、本当に様々な業種・業態の方々から、こんな連携ができないかとお話をいただいております。
我々としては、ぜひ今まで声がかかっていなかった業種の方々に何か声をかけていただきたいなと思っております。今日いらっしゃる寺田倉庫さんやYKK APさんとも何かできるのかなと思っておりますので、後ほどお話しできればと思います。
福岡: 「ecbo cloak」さんからオフィシャルな提携は無いんですよね?
長田: そうですね、いただいてないですね。
もちろん我々がその話をさせていただくこともあるのですが、ほぼ自己発生的にできてくるサービスも非常に多くありますので。そういったモデルを作っていくことはお手伝いさせていただくケースもありますが、基本的には皆さんで創意工夫されているという感じです。
福岡: 長田さんに相談すると、もしかしたらいいヒントがもらえるかもしれない?
長田: かもしれない。
福岡: かもしれない。ありがとうございます。どうでしょう、月森さんも。
倉庫をハブに、日々の暮らしを豊かに
月森: そうですね、「僕たちと組みたい方」というのはちょっとまだ偉そうに言えないんですけれども。
先ほどのお話ではないですけれども、やはり我々は倉庫というものを使って、預けて取り出すという意味でいくと、やはり顧客接点とかUX、まだまだどちらも弱いのかな感じています。
そこでアイデアを持ち込んでいただいて、我々の物流プラットフォームを使っていただく。例えば「airCloset」というサービス(編集部注:日本発のファッションレンタルサービス https://www.air-closet.com/)があるのですが、3年目になりますかね。スタートアップベンチャーなんですけれども、「日本でファッションレンタルをやりたい」と、本当にまだ登記したてのタイミングで話を持ち込まれました。
レンタルというと、UI・UX的には、パソコンからこれとこれとこれを何月何日から1週間借りるみたいな、そんなところなのかなと思っていたのですが、「我々が選んで送ります」と。これまで出会うきっかけもなかった洋服・スタイルに出会っていただき、生活がより楽しくなる。そんな世界を創りたい、と語ってくれました。
エアークローゼットをはじめ、生活に密着したサービスを我々と一緒に立ち上げた会社は、これまで約30社ほどなのですが、こうした方々と上手く組めたので、倉庫オペレーションに関してもUI・UXが高まっていくのかなという気がしています。
我々は人がやってやれないことはないと思っていて、アイデアさえいただけたらオペレーションを実現します。
そのオペレーションをシステム化するというのが非常に得意なチームなので、ぜひこの中でもしアイデアがあったら、ぜひ一度聞かせていただいて、それをいろいろな形で、生活に密着したサービスを本当にゼロから一を作るということをぜひ一緒にやっていきたいなと思います。
アイデアが欲しければ、物流業界以外に目を向けよ
月森: もう一つ、我々としてはminikuraをどんどん広げていかなければなりません。先ほどの話と重複してしまうのですが、“届ける”というところがどうしても物流業界のテーマとなってくるので。
ヤマトさん・JPさん(編集部注:日本郵便)・佐川さんにこれからも全て頼るのではなくて、配車のマッチングベンチャーや新たな配送モデルに挑戦しているスタートアップ、ベンチャーもたくさん出てきましたので、そうした方々と上手く組んでラストワンマイルというところの課題にチャレンジすることと、貪欲に、個人の生活に「倉庫」を取り入れていろいろな生活の体験を変えていきたいと思っております。
福岡: 寺田倉庫さんの体力という点では、投資もしているんですよね。協業して、さらに投資する、と。
月森: そうですね。
今まで6社に出資をさせていただいて。ちょっと背中を押してあげる程度の出資なのですが、この資料の中で言うとairClosetと先ほどのSumallyと、あと越境ECをやっているBENLY(編集部注:http://benly.co.jp/)というベンチャーの3社に出資をさせていただいています。
彼らがやるべきことというのは物流ではなくて、マーケティングをローンチのタイミングからやってほしいと思っています。
なので我々と組むと、偉そうなこと言えないんですけれど、最初のスタートのタイミングから物流はアウトソーシングできて、ちょっとの出資でマーケティングできる。というところで、成長スピードが早くなるのではないかという思いで出資をしております。
福岡: サービス側は顧客体験に集中できると。
月森: そうですね。ほんとに彼らが顧客体験を一生懸命考えてくれるので、我々としては支えてあげる、ということです。