サイバーエージェントが社長に抜擢する人材の共通項とは? #TeamBuilding 4/9

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2017年9月に開催された第1回「LivingTechカンファレンス」。全9セッションの中から、「事業開発のための組織・人材開発 〜いかに社内の壁を乗り越えるか〜 」と題して行われたセッション(全9回)の4回目をお届けします。三井不動産 光村氏、LIFULL 羽田氏を経て、サイバーエージェント 曽山氏が登場。2016年に15社を設立した同社における新規事業推進のポイントとは。

登壇者情報

  • 羽田 幸広 氏 /株式会社LIFULL 執行役員 人事本部長
  • 光村 圭一郎 氏 /三井不動産株式会社 ベンチャー共創事業部 事業グループ 主事
  • 曽山 晢人 氏 /株式会社サイバーエージェント 取締役 人事管轄
  • 山下 智弘 氏 /リノベる株式会社 代表取締役(モデレータ)

失敗続きの事業立ち上げ、何が風向きを変えたのか?

曽山: ちなみに新規事業で、一番歴が長いのは何年ぐらい経っていますか?

羽田: ほぼ10年ですかね。

曽山: もう10年経っているやつがあるんですか?その成功要因は何になるんですか?

サイバーエージェントは新規事業コンペを2003年ぐらいからずっとやっていて、事業をつくっているんです。多い年だと年間1,000件ぐらい事業案が出ていて、発案者に社長を任せているんですけど、10年間で全部失敗したんです。

僕らはリアリティがそれだったんですよ。だから、今は役員と社員が一緒になって新規事業をつくって、人選も必ずしも起案者じゃない形でやったら、10年間で20社ぐらい生まれて、売上が数百億の会社もできているんですね。サイバーエージェントにはゲーム事業があるんですけど、それも『あした会議』(編集部注:役員がチームリーダーとなり社員とチームを組んで、新規事業案や課題解決案などを提案する1泊2日の合宿)から生まれて、子会社は10社ぐらいできています。

それがいいか悪いかという話ではなくて、単純にうまくいっているのはどういう要因なのかなと。

「言うこと壮大、やること愚直」社長人材の共通項

羽田: うちの場合はまだそこまでの規模ではないですが、今の段階で思うのは、社長がビジョンを描くこと、それから足元の勝利への執念でしょうか。要素分解が難しいのですが、ビジョンを掲げることと、足元でしっかり結果を出すという、その両方を持っている人が比較的うまくいっている印象です。

曽山: 社長に藤田晋という者がいるのですが、彼を含め社長になって活躍する人材のポイントが全く一緒です。言うことは壮大、やることは愚直、このキーワードを僕はよく使っていて。ここをクリアできていたら性格やキャラクターはなんでもいい。ハイテンションキャラでも超寡黙キャラでもどちらでも大丈夫と言っていて、それで人選がしやすくなっているんですよ。

まずはデカイことを恥も外聞もなく言えることと、勝利の執念という言葉ですよね。愚直にやれるか。このセットを維持できると勝率は上がっていくという議論は結構されています。

羽田: 戦略性みたいなところはあまり見ないですか?

曽山: もちろんある程度の地頭は必要ですが、でも今の2つがあると、勉強するので戦略がついてくるんですよね。「知識はなくて大丈夫」という感じだと思います。

サイバーエージェントに子会社がいくつも生まれる理由

山下: サイバーエージェントさんは『あした会議』などで子会社をつくる会社として有名だと思います。基本的に100パーセント子会社としてやるというお話で、手をあげた人に任せきらないで役員がサポートをする、と。

曽山: 僕らの場合は、2016年だと新会社を15社つくっているんですね。5年生存率がだいたい50パーセントぐらいなので、ベンチャーキャピタルと比べてすごく高い数字だと思います。

体制として、LIFULLさんと違って面白いと思ったのですが、成功させるために3つサポートがあるんです。

まず1つは、上場企業であるサイバーエージェントの取締役8人のうち、1人が取締役として子会社に入ります。新卒1年目が社長だとしても、取締役にサイバーエージェントの役員が1人入っている。社外取締役みたいな立ち位置ですね。ポイントとしては、決断は絶対に社長にさせています。「お前が決めろ」とずっと言い続けて、ガバナンスのところだけを担うというのがポイントです。

2つ目は、本社機能のサポートです。ここがLIFULLさんと全く違うところですね。僕らは新会社ができると本社機能のサポートチームをつくります。「人事、経理、法務で新会社のサポートをするよ、困ったら聞いてね」と。法人登記も彼らがやってしまいます。ただし、決裁は自分でしてもらいます。例えば人事に関しても、こういうふうにやろうと思っているんだけどどうしようかとか、採用について、または労務についてトラブりましたというときには、こういう選択肢があるけど自分で決める、決裁は必ず自分で、というのが2つ目です。

3つ目は、子会社社長同士の交流ミーティングです。月に1回スタートアップ事業だけで集まる場に常務の経営本部担当役員と人事担当の私が参加して、1人1〜2分ぐらいでトピックスを共有します。毎月やるとグイグイ伸びる会社が目立って、伸びてない会社だけが恥をかくんです。また、社長は孤独になりやすいので、情報共有や交流をすることで、横のつながりをつくってあげるという目的もあります。

3つは、結果的に積み上がったパッケージなんですが、そういうことはやっています。

羽田: ちなみに社外取締役や本社機能サポートチームが“はける”タイミングはあるんですか?

曽山: 特にはないです。ずっとサポートしています。

あるとすると、売上や利益が一気に伸びてくると「自分たちで入れよう」と彼らが言い始める。そのほうがスピードも明らかに速くなりそうなので、人事や経理を採用したいということを彼らが社長としてリクエストしてくる感じです。その時は「どうぞどうぞ」と。

役員はずっと入っているケースが多いです。業績が伸びてくるにつれ、最初は週1回の役員ミーティングが、月1回になったり……ということはありますね。

羽田: 役員は数字的にコミットしているんですか?目標があったりしますか?

曽山: 担当役員にとってその会社は責任分野ですので、業績を伸ばすことに対しては利害が一致する形です。

山下: なかなかリアリティのあるお話ですね。大企業とのアライアンスやベンチャー同士のアライアンスもそうなのですが、何回も繰り返し失敗をして正解を見つけていくしかないんだと感じました。

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