大手×ベンチャーのアライアンス、担当者同士の関係性をいかに築くべきか?

#TeamBuilding 5/9

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「事業開発のための組織・人材開発 〜いかに社内の壁を乗り越えるか〜 」と題して行われたセッション(全9回)の5回目をお届けします。今回のテーマは、大手企業とベンチャー企業のアライアンスをいかにして成功へと導くか。お互いWin-Winになるために、各社が行う取り組みとは。

登壇者情報

  • 羽田 幸広 氏 /株式会社LIFULL 執行役員 人事本部長
  • 光村 圭一郎 氏 /三井不動産株式会社 ベンチャー共創事業部 事業グループ 主事
  • 曽山 晢人 氏 /株式会社サイバーエージェント 取締役 人事管轄
  • 山下 智弘 氏 /リノベる株式会社 代表取締役(モデレータ)

大企業とベンチャーがWin-Winの関係になるために

山下: もう少し伴走の話を聞きたいと思います。伴走のポイントは、大企業側の担当者同士が部署を越えて、コミュニケーションすることだと思います。そのあたりをもう少し掘り下げていただいてもよろしいでしょうか?

光村: これも“あるある”みたいな話になるのですが、大企業の新規事業担当者とスタートアップの人との”あるある”もあれば、ブリッジされたあとの既存事業・リソースを持っている部門の人たちとスタートアップの会社の“あるある”もあります。

一番多いのは、大企業は基本的に発注者体質で上から目線というところはある種“病的”です。必ずスタートアップをどこか業者扱いし始めるんです。「僕らのつくりたいものを、君たちはそのままつくってくれるんだよね?」と。「大手企業ならばこれくらいの納期で完璧なものをつくるんだけど、君たちどうなるんだっけ?」みたいな話にいつの間にかなっているんです。

これってやっぱり違うよね、と。「そもそも何をやろうとしていたのか」「君たちがスタートアップから学ぶべきものは何だっけ?」ということは、伴走しながら伝えてあげないと気づけない。伴走するときに、そもそもなんのためにこれをやっているのかというレベルで補正をしてあげる、ベクトルを修正してあげるという、できる人からすれば当たり前のことですが、やらないと本当に間違えます。

山下: それは、ベンチャー側から大企業に言うのは勇気が必要ですね。

光村: そうなんですよ。言ってもらって構わないんですけど、なかなか日本人は奥ゆかしいんですよね(笑)。

曽山: そういうところをうまく使えるベンチャーってあるんですよね。

光村: ありますよ。国内で見たときに大企業アライアンス慣れしているスタートアップには、よくわかっているCEOやCFOの方がいらっしゃいます。そういう会社と組むときは、私も渡しやすいですね。

曽山: 何が上手なんですか?

光村: いろいろありますが、本当にくだらないですけれど、大企業のプライドをちゃんとくすぐってくれるとか。心理的な壁が好き嫌いの話になって、いつの間にかやるやらないみたいな話になる、といったことが本当に往々にして起きています。バカバカしいですが、それが現実だったりするじゃないですか。

あと、お互いのメリット設計がちゃんと設計できることですね。これは大企業でもそうですけど、社外とアライアンスを組むときに、突っ走っているスタートアップだと自己実現のために大企業と組むということが強すぎてWin-Winにならなかったりする。そのあたりの塩梅のコントロールですね。

他には、大企業の組織の時間感覚の無さや意思決定のフローですね。あるキーマンの一言でひっくり返るみたいなことに対して、一定の基準から先になったら「これありません」とちゃんと言えるかどうか。そういうところの1個1個で上手い・下手が出てくると思います。

曽山: なるほど、これは大事ですね。プライドを大事にして、利害をちゃんとつないで、意思決定のフローも、我慢するけど期限を決める、と。

光村: そういうところが現実的には大事ですね。申し訳ない話なんですが、大企業がもうちょっと成長しなきゃいけないんですね。だけど現状2017年においてはこれが現実で、大企業も経験値を積んで、もっとできる人を増やしていかないとダメだという問題意識は持っています。

数字を共通言語に

山下: 逆に、ベンチャーはどうしたらいいと思いますか?

曽山: 僕らも、ベンチャー同士で商品をつくるんですけど、お互いざっくりしています。ただ、ざっくりにも「進めてから一緒に連携してつくっていこう」というパターンと、「そのざっくりというのがずれている」というパターンがあります。

抽象度が高いがゆえにズレが起きやすいというのは、さっきの光村さんの大企業型と逆だと思います。どこが大事なポイントかということを最初に言えているとプロジェクトがうまくいったり、ピボットも速かったりしますので。

僕らが一番気にしているのって、これは社内も含めて撤退ラインだと思うんですね。撤退ラインとかピボットラインとか。僕らの場合だと子会社をつくるための資本金は1億円と決めて、「1億円を超える場合はちゃんとKPIを超えているところを見せてね」ということを言うんです。数字を共通言語にするのは大事だなと思いますね。

山下: 100パーセントで子会社をつくるのは、1パーセントでも当事者に出させると逆に撤退しにくくなるという理由も?

曽山: そうですね。スタートアップなので、社長自身が「僕も出資したい」と話すケースがあります。しかし、実際に事業がうまくいかなくなると、撤退することとピボットすることにその若い社長がこだわってしまう。全体のグループ資産からいったら、他の新規事業をやったほうが絶対伸びるのに、そのたった数パーセントのおかげで固定化が進んでしまうリスクがあるわけです。社長が出資することは一瞬きれいに聞こえるんですけど、けっこう難しいですね。駄目ということではないんです。僕らも入れているケースはあります。

羽田: うちは初めに資本金を入れて、基本的には親会社からはそのあとに出資はしないです。その代わり、まずくなってきたときに、親会社の経営会議などで、例えば「ほかのVCは回ったのか」といった話をしています。

曽山: むしろファイナンスのところですね。

山下: 2社で違いがあって面白いですね。

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