社風にフィットする人材の見極め方―サイバーエージェント、LIFULLの採用手法。
#TeamBuilding 7/9
2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「事業開発のための組織・人材開発 〜いかに社内の壁を乗り越えるか〜 」と題して行われたセッション(全9回)の7回目をお届けします。第7回は、各社が実践する採用時の取り組みを大公開。どうすればミスフィッティングを防げるのか。内定者アルバイトの効果とは。
登壇者情報
- 羽田 幸広 氏 /株式会社LIFULL 執行役員 人事本部長
- 光村 圭一郎 氏 /三井不動産株式会社 ベンチャー共創事業部 事業グループ 主事
- 曽山 晢人 氏 /株式会社サイバーエージェント 取締役 人事管轄
- 山下 智弘 氏 /リノベる株式会社 代表取締役(モデレータ)
LIFULLが設ける4つの採用基準
山下: ちょうど採用というキーワードが出たので、ぜひその話を聞きたいです。外から中に新たに人が入ってくるところで、いわゆるオンボーディングの話になるのかもしれませんが、実際に入ってきた人がその企業に慣れ親しんでいくためのプログラムはお持ちですか?
羽田: まず新卒に関しては、採用時と入社時でそれぞれ”握る”ポイントを設けています。
うちは採用基準を4つ設けていて、具体的には、ビジョンフィット、カルチャーフィット、ポテンシャル、スキルフィットです。まずはビジョンの方向性と基本的なカルチャーが合っているかを確認していくんですね。
さらに、面接の過程で人事が一人ひとりの学生のアドバイザーとしてつくんです。そこで「会社を選ぶ軸はなに?」という話を聞き、軸を整理して「うちでやりたいことがあるのなら最終面接に行きましょう」という話をしているため、内定承諾をとるようなことはあまりなく、最終面接で合格すればそのまま入社という形にしています。
内定から入社までの間には、ビジョンの浸透を目的に1泊2日で合宿を行ないます。最近ではうちの採用広告をつくるという課題で、ビジョンについて徹底的に考えてもらって。それからLIFULL HOME’Sという主力事業について考えプレゼンをしてもらう。さらに今度は内定者バイトとして個人の人とつながる。だんだん視点を下げていって、4月1日に現場で着地するという形です。
山下: それは新卒ですか?中途はどのような感じですか?
羽田: 中途はそこまでできないですね。
やっているのは、紹介会社の担当者の方に理解してもらうということですね。何度も説明をしたり、飲みに行ったりして、「こういう会社だ」と理解していただく。すると、転職希望者に「こういう文化の会社です」と紹介してくださいます。中途の場合は選考期間中に長々と時間を取れないので、紹介の段階である程度スクリーニングしてもらっています。
山下: さきほど控室で見せていただいたのですが、各社が定めているような行動指針とは別にもう一つ、社員皆さんがお持ちのカードのようなものがあるんですよね。
羽田: 「LIFULL Act」というものです。
うちの場合は「利他主義」という社是があって、経営理念、ガイドライン、行動指針とあるのですが、それは社内向きというか、こういう世界をつくっていこうというものです。
一方、LIFULL Actというのは、自分たちがアウトプットする事業やサービスの品質について約束しているもので、LIFEをセンターにしているか、アメイジングか、他社のマネをするのではなくて、すごいと思えるような事業かという5つを定めています。
LIFULLのLを変形させて囲いをつくっているんですが、あの真ん中に社会の課題(不安・不便・不満)を入れて、それを変えていく事業をつくっていこう、という象徴的なカードですね。
「内定者アルバイト」がもたらす効果
山下: 曽山さんのほうは、大体新卒・中途はどれくらい入社されるんですか?
曽山: 毎年新卒は、グループで300人ぐらいです。サイバーエージェントで150人ぐらい、グループ会社でそれぞれ20〜30人を採っています。中途だともう少し多くて、年間400人ぐらい、多いときだと500人ぐらいを採用しています。
山下: その採用のエントリーマネジメントやオンボーディングで慣れ親しむために実践していることはありますか?
曽山: 新卒は、まず1つは内定者のうちからアルバイトしてもらっています。内定者の80%ぐらいが、内定者アルバイトとして1日でもいいから1回仕事をするという形になっています。北海道や九州のメンバーも。
ただ、そうするとやれない2割がすごく焦るので「大丈夫だ」という話はしていますね。僕らは執行役員が10人いるのですが、そのうちの2人ぐらいは内定者バイトを一切やっていなかったメンバーなので、そういった事例も伝えながら。
実際の採用においても、インターンシップを重視しています。いま半分以上がインターンシップ経由で、何かしら見てから通常選考を受けているケースがほとんどです。現場を見てもらうことが一番ミスマッチが減りますね。
山下: グーグルでもそうですね。
曽山: そうです。
僕らは採用基準を「素直でイイやつ」いう1点だけにしていて。面接にしてもインターンにしても一緒に働きたいかどうかだけで選んでいいよと、それだけで見てくれと言っています。
僕らは業態が変わってしまうことが前提なので、業態よりも一緒に働きたいかどうかが大事。当然、そのなかでも優良な人、優秀な人は見させていただいていますが、そうすることでキャラクターがばらけるんですよ。
中途のほうは、リファラル採用を重視しています。そうすると、飲み会にも誘いやすかったり、社内人脈も作りやすかったりするので。月1回の5,000円の飲み会も入社初月の月末からありますので、それがぐるぐる回っています。
山下: 社員紹介で積極的にどんどん採っていくと。
曽山: そうですね。社員がおすすめしたい会社にしないとそもそもダメなので、そういう意味では社員の声をいろいろ聞いて、不満を改善していくこともやるようにしています。
大手企業が抱える人材面のジレンマ
山下: なるほど。では、大企業側では?
光村: うちはいたって普通です。新卒は年間30〜40人ぐらいですかね。総合職といわゆる一般職みたいに分けて採っています。中途が大体年間10人前後です。
全体の従業員数が1,300人ぐらいで離職率も低いので、そんなに大きく増やす予定もありません。ずっとこれくらいの採用規模になります。基本的には就職サイトを使っての新卒一括採用なので、特別なことはしてませんし、研修もOJTが中心です。
今、お二人のお話を伺っていて違いを感じたのは、ビジョン共有のところですね。「三井不動産のビジョンは何ですか?」という話になると、僕もあまり言えなかったりするわけです。会社としては「都市に豊かさと潤いを」というステートメントみたいなものはあるのですが、社員のいろいろな議論に言葉として上ってくることはないですし、なんとなく「三井不動産っぽいよね」「三井不動産っぽい仕事の仕方だよね」というふわっとした了解のなかで全てが動いています。厳密に何かというのはあまりわかってないし、決まっていないという感じです。
そうすると、社員がいくつかに分かれてしまう。ビジョンを意識しながら忠実に働ける人も出てくるだろうし、ビジョンというものが理解できなくて、ただただ目の前のミッションに夢中になってしまう人も出てくるでしょう。また、ある意味ビジョンを追い越してしまって、自分のビジョンとある程度フィットするなら三井不動産で働こうと思う人もいるでしょう。とはいえ、それを統一しようということもなく、粛々とやっている感じですね。たぶん僕は一番最後のタイプですけど、そういうのがバラバラにいるんだろうなと思っています。
山下: 離職率が低いというのは、まず一番の安心材料ですね。
光村: それはそうですね。要因のひとつとして、人材育成の遅さはあると思います。「5〜6年経ってようやく半人前、一人前」みたいな。そういう時間軸で人を育てていくのは、よくないと思いますけど、実態としてはあります。
そうすると、5年ぐらい経ってようやく仕事が面白くなり始めてきたときには、なかなか辞めないわけです。
あと、これは非常に現実的な話ですが、結婚したり、子どもが生まれたり、家を買ったりすると、そうそう簡単に環境を変えられません。保守的にならざるを得ない個人的事情もあるわけです。
そういうところを諸々考えると「離職率の低さは本当にいいことなのか」「反省しなければいけないことはたくさんあるんじゃないか」とは感じます。