“会社らしさ”はいかに醸成されるか?サイバーエージェント、LIFULL、三井不動産の実例。

#TeamBuilding 8/9

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「事業開発のための組織・人材開発 〜いかに社内の壁を乗り越えるか〜 」と題して行われたセッション(全9回)の8回目をお届けします。第8回は、”会社らしさ””会社っぽさ”の生み出し方について。それぞれの企業の”らしさ”を生み出す要素とは。

登壇者情報

  • 羽田 幸広 氏 /株式会社LIFULL 執行役員 人事本部長
  • 光村 圭一郎 氏 /三井不動産株式会社 ベンチャー共創事業部 事業グループ 主事
  • 曽山 晢人 氏 /株式会社サイバーエージェント 取締役 人事管轄
  • 山下 智弘 氏 /リノベる株式会社 代表取締役(モデレータ)

“会社らしさ”ってなんだろう?ーサイバーエージェントの事例

山下: 会場からの質問に入る前の最後に「ぽい」、いわゆる”らしさ”のお話をしましょう。すごくぼんやりとしたテーマなので話しにくいかもしれませんが、結局ここだと思うんです。会社らしさがあるから辞めないし、何か努力をしていると思うんですが。

曽山: “らしさ”みたいなところでいくと、サイバーエージェント社員っぽさは、採用基準のキーワードのひとつである「素直でイイやつ」かどうかにはめて人を見させてもらっているのが一番大きいです。それにはまるような人材か、入るときにそういう人か、という感じです。入ってからも結構大事で、実際に業績が伸びてきたりすると調子に乗ってしまう可能性は当然あるので、「謙虚にいこう」とは何回も言っていますね。

半年に1回社長の藤田が社員総会で半期のスローガンを発信するんですけれど、1年前は「低姿勢」というワードが出ました。たとえば、当然ながらビジネスマナーがわからないのは社外に対してよくないので、つい先日「低姿センター試験」をやりまして。低姿勢とセンター試験をかけて(笑)。

(会場笑)

低姿センター試験10問を若手3年目以内は必ず全員受けなさいと。1問は単純にマナーなんです。「タクシーの席が前と後ろ3つあってどれが下座ですか?」という。Webでやるので、調べてもいいんです。「調べていいから満点をとらせよう」「1回やらせることが大事だから」ということで、新規事業バトルから案が出てきて、役員会で提案されて、決議してやりました(笑)。

「低姿センター試験」って聞いた瞬間、すごくいいネーミングだなと思って。僕の案ではありませんが、9割ぐらいの社員がちゃんと受けています。それでも間違えるという人が現れます。

山下: ネーミングは本当にこだわるんですね。

曽山: ネーミングはすごくこだわっています。他社の人事制度をヒントにすることは当然あるのですが、必ず運用の仕方とネーミングはオリジナルです。

オリジナルだと、採用に効果があるんです。いいネーミングだと「うちには〇〇という制度があってね…」と、内定者が同級生に言ってくれて、伝播しやすい。採用活動とか、企業内の人事制度は、ある意味で全部マーケティングだと僕は思っていますので、強制ではなくて自然とポジティブに興味が出るような場づくりを頑張ることを意識しています。

山下: まさにそれがサイバーエージェントらしさなんですね。

曽山: 低姿センター試験、ウケてくれてうれしかったです。

LIFULLらしさとは、「利他」の精神

山下: ありがとうございます。羽田さんはどうですか?

羽田: うちは、社是である「利他主義」、「仲間に対して貢献する」といった姿勢が強いと思います。新規事業を提案する社員も多いので、基幹事業のLIFULL HOME’Sで活躍しているようなメンバーが抜けることもありますが、挑戦する人を応援するスタンスは現場レベルでも強いです。

あとは、「一点の曇りもなく行動する」というガイドラインを好きな社員が多いです。グレーだと他の社員から指摘されることもあります。

山下: どんなふうに指摘がありますか?

羽田: 「それってちょっと曇りあるよね」という感じです。そういうのを嫌う社員が多いですね。

「前職でお願い営業をしていたので、お客さんに対して価値を提供できていなかったけど、うちに来たらそういうことを求められないのでよかった」と、全社員の前で発表する社員もいます。要するに、本当にお客さんにとって価値があるとか、本当に仲間のためになるとか、そういう正しさに対する意識はすごく強いと思います。

採用においても、選考段階で「ビジョンに共感しました」という人よりも、「こういうふうに業界を変えたいです」という人を選んでいます。もともとビジョンがある人と方向が合っていたら採用する、みたいな。

山下: 「利他」は難しそうですね。

羽田: 難しいですね。ただ、社員は「いい人が多い」「人がいい」ということをよく言っていますね。どの部署の人に相談しても助けてくれる、と。

三井不動産に“言論の自由”がある理由

山下: ありがとうございます。では最後に光村さんから。

光村: いろいろ出てくるんですけれど、1つは言論の自由かと思っています。

これは悪い意味ではなくて褒めているんですけど、たとえばある大手デベロッパーさんは社外との打ち合わせ前に社内で揉んできて、そのチーム内の意見を集約したうえで、その場における最上位の方がお話されるというカルチャーがありそうだなと、僕は結構その打ち合わせのタイミングで感じるんです。

では翻ってうちの会社はどうなのかというと、事前打ち合わせはしません。

打ち合わせにぱっと出ました、その場で下の人間からしゃべり始めて、その人が言ったことを「違うんじゃないか」といきなり上や横から突っ込まれるみたいな。打ち合わせで、三井不動産社員同士で言い争いが始まるようなところがあります。

山下: けっこうガチなんですね。

光村: そういうのは結構ガチだったりはするんですよ。そういうのはすごくいいなと思っています。

課題があるとすると、ユニークではあるけれど、オリジナリティが低いところですね。相対的なユニークポイントをつくるのはうまいんですが、そもそものオリジナルや全体的に何か違うといったことをつくるのは苦手だなと思うんですね。つくっている商品が、どこかがやっているものを翻訳したものだったときに、どのようにこれから自分のカルチャーにしていけるかが大きな課題だとは思っています。

内向きで、ずっと成功体験を積み重ねていって今こういう会社になってきたところの裏返しだと思っているんですけれど、今意識を変えなきゃいけないというときに、人材面や組織の働き方にも広めていけるかどうかで、10年後の三井不動産の社会的なポジションは全然違うものになってしまうんじゃないかと思います。

曽山: ところで、言論の自由ってなんであるんですか?すごくいいなと思って。何か社是や習慣があるんですか?

光村: 社是とかはないんですよ。なんとなく生意気なやつを採っているんですね(笑)。

誤解を恐れずに言うと、頭がいい社員が多いんですよ。仮に言論の自由があったとしても、どうしようもないことばかり発言していてもしょうがないじゃないですか。それなりに聞くべき意見があるわけで、言われた側もわかっているし、言っている側もそれを意識してしゃべったりするので、いわゆる意識の高さみたいなところは担保されている感じはしますね。

羽田: 自分がそうだったから、管理職になってからもそういうものを聞くのかもしれない、と。

光村: ただ、三井不動産という会社の1つの悲劇かもしれないのですが、今非常にもうかる会社になりましたが、バブル以前はもっと乱暴な会社だったと昔を知っている人はみんな言うんですよ。

そのあとバブル崩壊があって、三井不動産は一番痛めつけられた会社の1つじゃないですか。

その中で、もう1回今みたいなポジションになったとき、かなりちゃんとした会社化をしてきたんです。会社組織になったし、ガバナンスも復活してきたし。それがあったからこそ、今これだけもうかるようになったという体験を、バブル崩壊後20年ぐらいでやってきたんですね。そしてそれを担ってきたのが、今のミドルマネジメント層だと思うんです。

そういう意味では、そこに成功体験があるんですね。むしろ過去の遺産というか、決して戻っちゃいけない過去のイメージの上に成り立っている。すると、時代の流れとともにその価値が失われる傾向があったり、そうした部分が見え隠れするようになっているところが課題かなと思っています。

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