事業立ち上げ、働き方の多様化…組織がぶつかる課題を企業はいかにクリアすべきか?

#TeamBuilding 9/9

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「事業開発のための組織・人材開発 〜いかに社内の壁を乗り越えるか〜 」と題して行われたセッション(全9回)の最終回をお届けします。最終回は、質疑応答。「新規事業は分社化すべきか、社内に新部門を立ち上げるべきか」「多様な働き方をどうとらえているのか」という会場の質問に、3名のスピーカーはどう答えたのか。

登壇者情報

  • 羽田 幸広 氏 /株式会社LIFULL 執行役員 人事本部長
  • 光村 圭一郎 氏 /三井不動産株式会社 ベンチャー共創事業部 事業グループ 主事
  • 曽山 晢人 氏 /株式会社サイバーエージェント 取締役 人事管轄
  • 山下 智弘 氏 /リノベる株式会社 代表取締役(モデレータ)

新規事業は分社化すべき?事業部として立ち上げるべき?

山下: 残り時間も少なくなってきたので、会場の皆さまから質疑を受けたいと思っています。

質問者1: 貴重なお話、ありがとうございます。NTT都市開発の石橋と申します。

皆さんに質問なんですけども、新規事業の提案が既存事業部門の範囲内だというときに、提案者を既存部門担当としてアサインするのか、会社本体に新しい事業部をつくるのか、新しい会社にするのか。目的だったりその人の資質だったり、意思決定の速さだったり、さまざまな要素が関わってくると思いますが、皆さんの会社のなかでの考え方を教えていただければと思います。

山下: では曽山さんから。

曽山: 基本的に僕らの場合は独立させるというのが大きな考え方で、新会社をつくるか、事業部をつくるか……いずれにしても切り出します。そうじゃないと調整が多すぎて、協力体制がつくれなくなってしまうこともよく起こります。

あとは上司が多いと意思決定のスピードが落ちてしまうので、基本的には子会社にして社長にして「お前が決裁者だ」と。ちょっと極端ですけど、一番多いパターンです。

事業部の場合も、自分で決めてもらうので、PLや予算を全部決めてお任せします。その場合も「必ずお前が決めろ」というのを徹底しています。今までは、“事業部内で1グループ”とかでやっていたのですが、本当に立ち上がらないので、反省を踏まえて切り出すようになりました。

その代わり、サイバーエージェントの役員が1人アドバイザーに入って、必要であればつなぎ込みをやります。「切り出さないと、本人が本気にならない」というのが私たちの経験なんですね。

羽田: うちは新規事業に関しては切り出して、完全に隔離してしまいますね。逆に「これってHOME’S関連事業じゃん」みたいなものは、「事業部の中で考えてよ」って戻しちゃいます。

うちはグーグルの20%ルールみたいな制度や全社の横断プロジェクトみたいなものがかなりたくさんあります。そういう意味で、比較的残業時間も月平均15時間ぐらいに抑えていて、そういう”余白”をつくることは大事にしています。本業以外のことも頑張ればちょっとできるようにしているので「事業部内で検討する」という言葉の意味は、自分の事業をやりながら並行して考えるという感じですね。

光村: 三井不動産の場合は、基本的に「分社化」や「独立」まで至れていないです。方法論としては、そうしたほうがいいとは思っています。先ほど曽山さんがおっしゃった通りで、既存の事業内で起こすと、意思決定のところで「お前どっちに時間をかけるのか」みたいな話が絶対起きるので、それは避けるべきだなと。

ただ、実態としてはそこまで踏み込めてないというのが感覚値です。

新規事業においても、既存の意思決定フローに沿ったアクションをしてしまって失敗していることもあり、その失敗の経験値を積み重ねるなかで学ぶしかない、という面もありますし、そうした意見を会社にあげたりもしていて、現状はそんなところです。

“多様な働き方問題”に対する各社の見解とは?

山下: では次の質問、お願いします。

質問者2: スペースマーケットの重松です。

私からの質問なんですけども、今、働き方が多様化してきて、「Living Anywhere」……いろんなところで住んだり働いたりといった動きが出てきていると思うのですが、うちでも「副業をやりたい」「週2勤務にしてくれ」と言われるケースがあります。そういう人に限って超優秀だったりするのですが、皆さんの会社としての今の考え方と今後のあるべき姿について伺えたらと思っています。

曽山: 非常に難しい話ですよね。まず副業で言うと僕らはオッケーにしてて、50人ぐらいがやっています。申請をしていればオッケーという感じです。ポイントとしては、副業は誰でもいいんですけど、週2勤務や業務委託などのパターンは「超優秀だったらわがままを聞く」というスタンスです。

たとえば「朝来ない」けど、すごいスペシャリストがいるわけです。真面目な社員や若手からしたら「なんであの人来ないんですか?よくないじゃないですか」と言うんですけど、「結果を出しているからいいんだ、あそこまで結果を出したらお前の言うことも聞いてやる」と。組織には一定の遊びが必要だという感覚と、統制はとらなきゃ駄目だという感覚の中での行き来なので、「スーパーエースだけはなるべく聞くけど全部個別対応」というスタンスです。

山下: わかりやすいKPIや基準はあるんですか?

曽山: 大体、不可能人材というところですね。要は「もうこの人しかいないよね」という場合は聞かざるを得ないので「わかったわかった、じゃあぜひ力を貸して。その代わりここはよろしくね」という感じですね。

羽田: うちも副業は届出制で許可しているので、出てきたら基本的には認めています。「業務委託で働きたい」という話はあまり出てきていないのですが、うちは原則認めないと思います。社風的に公平感みたいなところを大事にする社員も多いので、基本的にはそんな感じです。

曽山: バランスが難しいですよね。組織フェーズとのバランスなのかな。

羽田: 原則会社に来て働いてほしいということもありますし、ちょっと難しいですね。

光村: まずお二人と違うのは、大手企業とスタートアップに近い立ち位置であるのと、現場の人間と人事的な目線をお持ちだという……非常に対比があると思ったのですが、まず違うのが、三井不動産はまず副業は禁止です。社員規則に書いてあります。

ただ会社の思いとして、制度は追いついてないけれど、副業や兼業、もしくはプロボノ的な活動が決定的にうちの社員に欠けており、そして必要とされているというコンセンサスはゆるりとある。経営会議でも「副業もそろそろね」という話題になります。「”そろそろ”から実際制度化されるまで相当時間かかるんだけど…」という空気感がかもし出されているというのは漏れ伝わってきています。社外での活動も、容認というか“黙認”というか、確実にやりやすくなっているとは感じます。

山下: はい、ありがとうございます。ちょうどまとめのお時間になりました。

僕自身が一番勉強になって、書いたメモが多くて読めないくらいなんですけれども、最後にお一人ずつごあいさつと、何かPRがあればしていただければと思います。

曽山: 今日は本当にありがとうございました。今日すごく感じたのは、大規模のコラボレーションであっても、人事、ベンチャーであっても、プライドとか、感情のマネジメントってすごく大事だなと。そういったものを強化していくことはすごく大事だなと思いました。

こうしたスキルも含めた強い人事をつくっていきたいということで、人事のコミュニティの「HLC」(編集部注:ヒューマンリソースラーニングクラブ。サイバーエージェントが主催する人事コミュニティ)というものを始めています。FacebookやTwitterでつぶやいていますので、もしよろしければチェックしていただければと思います。

山下: 会員制ですよね?

曽山: はい、会員制になります。ありがとうございます。

羽田: 今日はありがとうございました。私も大手企業の目線やベンチャー企業の目線で考える、そういう気持ちをちゃんと考えるというのは、これはM&Aなどの場合も一緒だと思いますけれどもすごく大事だなと感じました。そこはぜひ活かしていきたいなと思っています。

宣伝としましては、本ですね(笑)。

曽山: 何というタイトルでしたっけ?

羽田: 『日本一働きたい会社のつくりかた』です(笑)。ぜひ読んでいただければと思います。ありがとうございました。

光村: ありがとうございます。「Real Estate Tech」という言葉があって、日本語で「不動産テック」と言われるのですが、僕はこの言葉が個人的にはあまり好きじゃなくて。まさにこのカンファレンスが掲げている「LivingTech」という言葉がしっくりくるなと思っています。

僕らが扱うものって、不動産という商品やリアルエステートということではなく、まさに暮らしだなというふうに常に思っています。

その暮らしというものに対して、ハードウェアとしての建物であるとか、ソフトウェアとしての体験や経験であるとか、あとはネットワーク、街・タウンといったところを考えていくのが、不動産デベロッパーのこれからの仕事だなと思っていて、LivingTechという名前のついたカンファレンスに登壇できたことはうれしく思っています。

やはりこれから先、どんどん仕事も変わっていかなければいけない。働き方も変わる、人も変わるという中で街づくりをしていくというのは、そういう変化に対して街をどうフィットさせていくか、という視点が大事になってくると思いますので、僕らも一生懸命、頑張っていきたいなと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。

山下: 私たちもリノベるという会社で、「アライアンス」という部分を大事にしています。ジグソーパズル型の名刺を作っているのですが、それも、いろんな会社さんとつながっていこうということからきているデザインなんです。とはいえ問題もたくさんあって、今日のお話で自信と勇気をいただいたと感じています。

これを機にどんどん加速して、LivingTech、Livingの領域をもっともっと良くしていくようなことができればなと思っています。今日はどうもありがとうございました。

(終わり)

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