建築・不動産業界にとって、VRは時空を超える魔法の杖と成り得るか。
#VirtualReality 1/9
2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「空間の作り手とユーザーのギャップを埋めるVRの可能性」と題して行われたセッションの模様を、全9回に渡ってお届けしていきます。ツクルバの中村氏がモデレーター、InstaVRの芳賀氏とDVERSEの沼倉氏をパネラーに迎え語られた、VRの現在地と未来。
登壇者情報
- 芳賀洋行 氏 /InstaVR株式会社 代表取締役社長
- 沼倉正吾 氏 /DVERSE Inc. CEO Founder
- 中村真広 氏 /株式会社ツクルバ 代表取締役 CCO(モデレータ)
ユーザーとのコミュニケーションロスに、VRで活路を
中村真広氏(以下、中村): 皆さん、おはようございます。朝一からお集まりいただきありがとうございます。
ご紹介にあった2人(編集部注:InstaVR芳賀さん、DVERSE沼倉さん)をゲストにお迎えしまして、タイトルは『空間の作り方とユーザーのギャップを埋めるVRの可能性』という形でやっていきたいなと思っております。
私はツクルバという会社の共同代表をしております中村といいます。ツクルバ自体は、特にVRのサービスをつくっているわけではないんですね。使い手側、まさにこのお二方のサービスを使わせていただいてますので、「ツクルバではこんな感じに実践していますよ」というのを話せればと思っております。
お集まりいただいた皆さんは、おそらく何かしらのVRをもう使っている、もしくはこれから使おうかなと思っているとか、VRに何かしらの活路を見出せるのではないかなど、その気配を感じる方々ではないかと思います。
セッションが終わった際には、「うちのサービスでも使ってみよう」「こういった活路もあるのかもしれない」ということに気付いて帰っていただければなと思っています。短い時間ではあるのですけれども、このような流れで今日は進めていきたいと思っています。
始めにイントロダクションとして、私が10分ほど話をさせていただいて、そこから2人にバトンパスし、それぞれ10分程度になりますがスライドトークをしていただきます。その後にキーワードを使いながら、会場の皆さんから質問をいただき、セッションをしたいなと思っています。
いわゆるこういうカンファレンス形式のものだと、どうしても聞いて、聞いて、聞いて帰る、というケースが多いかと思います。でも、それでは少しつまらないな、と。
せっかく経営者の皆さんが集まっている会ですので、皆さん同士で話をしていただいたり、横の繋がりもつくっていただきたいと思っています。話を聞くだけではなくて、ご自身で考えたり対話をすることで気付きがあるような、そんなセッションにしたいと考えています。
ですので、朝一で眠いかもしれませんが、まずは参加に当たっての今の気持ちなどを周りの方々とお話していただきたいなと思います。急ではありますが、前後でも横の方とでもかまいませんので、3人ぐらいがいいですよね、2人だと話題が尽きてしまうかもしれないので。5分ほど話し合っていただきたいと思います。では、よろしくお願いします。
中村: 突然の無茶ぶりでしたが、チェックインの時間ということで、皆さんに「今日どんな気持ちで来たの?」ということをお話をいただいていますが、そろそろ5分ほど経ちますので、もう1回前のほうに。
ありがとうございます。朝一にも関わらずとても盛り上がってくださって、すごいうれしいです(笑)。盛り上がっているところですが、そろそろ先に進みたいと思います。
ツクルバ―建築×不動産×テクノロジーで未来をつくる
改めて、タイトルはこちら『空間の作り方とユーザーのギャップを埋めるVRの可能性』です。空間をつくる、仕掛ける側の人たちとエンドユーザーの間には、結構ギャップがあると思っていて、そこを埋めるときにこのVRに可能性があるのではないかと、僕自身が最近気付き始めたという感じです。
始めにイントロとして、ツクルバという我々の会社で、どのようにVRを活用しているのかをお話できればと思います。
そもそもツクルバは、その名の通りなのですけれども、場をつくる=ツクルバという会社でやっています。具体的にどんなことをやっているかというと、まず、コワーキングスペースのネットワークを全国各地に17ヶ所ほど展開しております。これは渋谷にあるco-ba shibuyaです。
あとは、中古リノベーション住宅に特化した流通プラットフォームで、cowcamoというサービスをやっています。
最近、リノベーションマンションがすごく増えてきましたよね。それをもう少し流通させて、ストック活用を促進するために、リノベーション物件に特化した売り手と買い手のマッチングプラットフォームをやっています。あとはtsukuruba designという、空間プロデュース・デザインの事業部もあります。
実は今日、皆さんがここにいらっしゃるこの場所も、うちで設計を担当させていただきました。ここLIFULLさん本社の2階は、オフィスのエントランスなんですけれども、同時にコワーキングスペースでもあるんですね。
左手側は社内のミーティングルームという、ハイブリッドな構成です。先ほどお伝えしたようにツクルバは、co-baの事業をやっていることもありまして、この空間づくりについてもお声がけをいただきました。
他にもベンチャー企業のオフィスも手がけていて、写真は日本交通さんのオフィスですけど、こういうオフィスデザインなどもtsukuruba designで受けています。
また弊社には、tsukuruba technologyというテクノロジーチームもあり、それぞれの事業を支えるシステムを自社でつくっています。このように、建築・不動産・テクノロジーを掛け算した領域で活動しているんですけれども、ある悩みがありました。
建築・不動産業界が、共通で有する悩み
先ほどのcowcamoでは、中古リノベーション物件のプロデュースなどもしているんですね。そのときエンドユーザーに、完成前の物件でどうやって魅力を伝えていけば良いのかという悩みがありました。
施工前の状態で写真を撮っても、「これが格好良くなります」と言ったところで、お客さんとしては不安じゃないですか。完成後の魅力を伝えるために、VR活用で何かできないかなと。
cowcamoのWEBにアクセスした人に対して、物件の臨場感を上手に伝えないと内見や契約に結び付いていきません。他にも、施設のプロデュース・デザインの話でいうと、クライアントの方にどうやってデザインのイメージを共有していくのかという課題もあります。
これはなかなか難易度が高くて。図面でお伝えしても、相手は建築のプロではないので読み解けないんですね。完成予想パースも作りますが、意外に共有できていない箇所があったりして、手戻りが発生する場合もあります。
同じ業界の皆さんも多いのでご理解いただけると思いますが、建築・不動産の特性上、完成するまで共有できなかったり、現地ではないと体感してもらえないという、時間的・空間制約を受ける産業だなと思っていまして。
これを突破できるようなツールや手法がないのかなと、ずっと悶々と考えていたんです。
VRの進化によって、時間と空間の壁から解放される
そんなときに……、これはRICOHの『THETA』とVRのヘッドマウントディスプレイですけれども、こういうデバイスが徐々に出始めており、制約に対する突破口になるんじゃないかなと思い始めました。ポケモンGOを始めとして、ARの領域が世の中的に市民権を獲得し始めたこともあり、可能性を見いだせたということなんです。
この数年間でAR・VRの対応機器もかなり普及していくでしょうという予測があって、市場規模から判断すると黎明期も黎明期ですね。特に今日はVRの話ですけれども、VRというものが進化していくことによって、建築・不動産産業というものが、時間・空間の制約から解放される可能性を感じております。