現実とVRがシームレスに?DVERSEは、あらゆるビジネスツールの統合を目指す。

#VirtualReality 4/9

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「空間の作り手とユーザーのギャップを埋めるVRの可能性」と題して行われたセッション(全9回)の4回目をお届けします。前々回に紹介されたツクルバの事例にも登場したDVERSEについて、具体的な内容が明らかに。ツクルバの中村氏がモデレーター、InstaVRの芳賀氏とDVERSEの沼倉氏をパネラーに迎えて語られた、VRの現在地と未来。

登壇者情報

  • 芳賀洋行 氏 /InstaVR株式会社 代表取締役社長
  • 沼倉正吾 氏 /DVERSE Inc. CEO Founder
  • 中村真広 氏 /株式会社ツクルバ 代表取締役 CCO(モデレータ)

デザインの現場の課題から生まれたプロダクト

中村: 前のスライドトーク、芳賀さんは短すぎたかと心配していましたが、全然大丈夫です。後半のセッションをもっと厚くいきましょう。では後半の2つ目のプレゼンということで、沼倉さんお願いします。

沼倉正吾氏(以下、沼倉): おはようございます。DVERSEの沼倉と申します。簡単に自己紹介をさせてもらいます。私、沼倉正吾と言いまして、1973年生まれの43歳です。子供は2人いて、チョコレートが好きなおじさんです(笑)。

うちはDVERSEという会社で、2014年に海外で立ち上げています。当初はVR機器関連のコンテンツ開発や、システムの開発をメインに行っていて、中にはエンタメ系等の様々なコンテンツがありました。

その中でいくつかの会社さんから3DCADに関する相談をいただいたり、あとはデザイン事務所、建築事務所さんからもいろいろとご相談を受けました。内容をお聞きしたところ、どういった課題があるのかを我々で把握することができました。

オフィスのデザインですとか、インテリアのデザインですとか、あとは店舗のデザインというような空間デザインの現場で働いている人、具体的にはデザイナーさんや建築家さん、あとはクリエイターさんと呼ばれる方たちですね。

沼倉正吾 Shogo Numakura /DVERSE Inc. CEO Founder。 2004年、株式会社ナスカークラフト設立。代表取締役として、ゲームソフト開発、携帯・スマートフォンアプリ開発、クラウド映像配信サービス開発など事業立ち上げに従事。2014年にVRソフトウェア開発専業のDVERSE Inc.を米国に設立。2016年よりビジネス向けVRソフト「SYMMETRY(シンメトリー)」の開発を行っている。

彼らがスケッチやパース、先ほどもお話に出ていた図面やCADというものを使って、頭の中で考えたデザインやイメージをクライアントさんに共有する作業が発生します。

そして最終的に「では、こういう形でいきましょうか」と意思決定、合意形成をして、実際の施工にかかります。インテリアであれば開発にかかります。この工程で問題が発生するということが、お話を伺う中で分かりました。

どういった問題かと言うと、「もう少し天井が高いと思っていた」「意外と低かった」とか。「入り口はもう少し広いと思っていたのに、意外と狭かった」とか。あとは「雰囲気がもう少し明るいと思っていたのに、あまり明るくなかった」と言ったような、要は「考えていたイメージと違っていた」というものです。

原因は、打合せの現場で使っているスケッチやPCのモニターをベースにした、打合せではなかなか分からない情緒的な感覚。例えば図面上で記載されている2,300というスケールが2,400になってどう変わるかというのは、意外とイメージがつかめません。

これが現場で手戻りを発生させて、問題が起こっているということが分かりました。では、これを我々で解決しようと思い、開発したのが今回のプロダクトです。

遠隔にいながら、同じ空間に潜入する体験

ビジネスの現場でアイデアやイメージを、クライアントやチームと、従来よりももっと正確に共有して、相手に伝え、意思決定や合意形成を促進するツールというものを開発しました。こちらが、「SYMMETRY(シンメトリー)」というソフトウェアです。どんな感じか、ちょっとぱっと見ていただきます。

なかなか画面上ではVRって分かりづらいんですけど、使い方はすごいシンプルです。ヘッドマウントをかけていただき、まずは作業部屋の中から始まります……そして、いまVRの中でパソコンのフォルダを見ています。そのフォルダからお持ちの3DCADのデータを選んでいただいて、「インポート」というボタンを押すと、リアルタイムでVRに変換されてパッと現れます。

まずはプラモデルのようにミニチュアサイズでも確認できます。そして、1分の1のスケールでそのモデルの中に入って、従来では分からなかったような高さとか奥行ですとか、広さとか。そういったような情緒的な部分を、同じ空間で一緒にクライアントさんと確認していただけます。

もちろん、従来では分からなかったようなこういう机の下のスペースですとか。または廊下がどれぐらいの広さで、それが感覚として良いのか悪いのか、そういったところも実際に見ていただくためのツールになっております。

どこでも、何人とでも、仮想現実での打ち合わせが可能

VRの中で打合せをするというのが前提なので、ネットワークにも対応しています。

例えば東京のデザイナーとニューヨークのクライアントが同じ空間の中に一緒に入って、距離を越えて同じ空間の中を見ながら打合せをする。音声で話をしながら、打合せをするようなことを可能にしています。特に同時接続数に制限がないので、5名でも10名でも同時に入ることができます。

「SYMMETRY alpha」は今年の2月14日に世界同時にリリースしました。VRというのは、先ほどの動画を見ていただいた通り、特にパソコンのソフトように操作方法の説明というのがあまりいらないのですね。

ですので、皆さんが普段テレビのスイッチを押すように、感覚的な操作で機能を使っていただけるので、日本語版というのは特に開発していません。全て英語版でリリースをしています。

最初の30日で84ヶ国で利用いただきまして、今96ヶ国でご利用いただいております。主に利用いただいている国としては、大陸別ですと西ヨーロッパからアジア、北米、で東ヨーロッパですね。国別だと、アメリカから日本、中国、ドイツというような順位になっています。

ヨーロッパの建築家も認めたツールが、無料提供

ヨーロッパで利用いただいている方からのフィードバックは、建築家の方からの割合が非常に高く、実際に多くの建築家にご利用いただいていることがわかりました。ヨーロッパは建築家の人口も多く、弊社ソフトウェアとの相性も良いこともあり、それも起因しているのかもしれません。

現在、こちらの「SYMMETRY alpha」というソフトウェアは3DCADに対応しています。あとは、よく建築や土木の現場でレーザースキャナーを使い点群データというのを取られることがあるのですが、そういった点群データにも対応する予定です。

「SYMMETRY alpha」はVRですとかARのビューワーと呼ばれるソフトウェアになります。我々はVRやARのデファクトスタンダードをつくっていくことを目的に、現在は同ソフトウェアを無料で提供させていただいています。

VR自体は昔からあったものなんですけど、コストが非常に高かったんですね。1つ作るのに何十万、何百万、高いものですと何千万とかかかってしまったり、CGを新たに起こす手間もかかったりして、非常にリソースがかかるものでした。

しかし我々のソフトウェアに、実際に皆さんが普段使われている3DCADをそのまま読み込んでいただければ、この中でヴィジュアル化されます。新しくデータの加工であったり、新たに発注するような手間をなくしています。

クラウド化で常に最新、エディタでカスタマイズ可能

今年はクラウドの対応を予定しております。VRの中で例えば「壁を直したい」とか、または「天井をこういうふうにしたい」というところをマーキングしたり、指示を入力したりできるんですが、それらの記録がそのままクラウドに上がっていきます。

クラウドの中を、業務フローの中で共有していただくことで、最新のデータというのを常に社内で共有できるようなシステムへと開発を進めております。さらに、ビューワーだけでなく「SYMMETRY alpha」の編集ソフト・エディターも開発する予定です。

先ほど見ていただいたCADのデータというのは、基本的には静止しているデータなんですね。ゲームのように窓が開いたりとか、ものを触ったら落ちてしまうとか、そういった「効果」というのはないんですけども、それをプログラムの必要なしに、追加することができるのが、こちらのエディターになっております。

我々はこういった「効果」をインタラクションと呼んでいますけど、インタラクションの付与や、別のそのあとは3Dモデルでの呼び出しですとか、天気を変えたり環境を変えたりするようなことを、プログラマー以外の方でも簡単にできるツールです。

意思決定を促すVRツール、SkypeやMailerの代替手段に

将来的に目指しているのは、クライントやデザイナーさん、建築家さんが、頭の中で思い描いたデザインを、そのままクライアントに伝えることができる。これが「SYMMETRY」という名前の由来になっています。

頭の中のイメージをそのまま「SYMMETRY」に相手に伝えて、共有した上で意思決定をしていくという、そういったビジネスツールの開発を行っていくというのが我々の目標になっています。

ですので、今後もこの中にさまざまな、現在皆さんがビジネスで使っているようなツールの機能が、どんどん入っていくような形になっていきます。

競合会社となる会社はVRの分野でもいろいろとありますが、我々が特に競合と考えているのは、皆さんが普段ビジネスで使っているSkypeや、メッセンジャー、メール等、意思決定をする際に皆さんが使っているツールを置き換えていくというのが、現在我々が目指している姿です。

簡単ですが、以上になります。ありがとうございます。

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