VRはPowerPointを代替しうる―今、VRというテクノロジーをどう捉えるべきか?

#VirtualReality 5/9

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「空間の作り手とユーザーのギャップを埋めるVRの可能性」と題して行われたセッション(全9回)の5回目をお届けします。参加者からの質問に答えながら、VRの可能性を紐解くインタラクティブなセッションのスタートです。ツクルバの中村氏がモデレーター、InstaVRの芳賀氏とDVERSEの沼倉氏をパネラーに迎えて語られた、VRの現在地と未来。

登壇者情報

  • 芳賀洋行 氏 /InstaVR株式会社 代表取締役社長
  • 沼倉正吾 氏 /DVERSE Inc. CEO Founder
  • 中村真広 氏 /株式会社ツクルバ 代表取締役 CCO(モデレータ)

VRツールは、何の代替を目指しているのか

中村: はい、お二方ありがとうございます。こういうセッションで10分ずつでお願いしますとやると、10分以内に終わるセッションなかなかないんですけど(笑)。結構、オーバーするかなと思いながらプログラムをつくっていたので、だいぶ後半のトークセッションに時間を使えるかなと思います。

改めてお二人のお話を伺っていて、やはり世界規模でサービスって展開されているという話で。多分、海外の方も相当数使われているんじゃないかな。むしろ、日本よりも使っていると思うんですけども。

そのあたりの海外事情なんかも、ぜひ後半で伺いたいなと思っていますが、まず今お二人のお話を伺った上で、皆さんが感じていること、考えていること、実際に活用しようかなという可能性が見出せたとか、そのあたりのお話でも構いませんので、先ほどチェックインで2〜3人で話していただきましたが、もう1回ここでお互い感想のシェアの時間を取りたいなと思います。

ぜひまた、3人ぐらいずつでまとまって話していただければなと思います。5分ほど、よろしくお願いします。

はい、皆さんありがとうございます。では、そろそろセッションのほうにまた戻りたいなと思うので、皆さんもう一度前のほうに目を向けていただければなと思っております。

「こういうふうに活用できるのではないかな」とか、皆さん話し合われてたのが印象的でした。後半はそのあたり、疑問や質問、もう少し先のお話を、皆さんも含めまして会場全体でセッションできればと思っています。いきなり「誰か質問ありませんか」と言うと手が挙がらないのが普通なので、誘い水的に持ってきました、キーワード。

この中から選んでいただいてもいいですし、もちろん、真ん中にフリーと書いてあります。「いやいや、こんなキーワードの中からでは自分の質問はできない」という方は、フリーでの質問ももちろんOKです。皆さん、まず手を挙げていただきたいと思いますが、どなたか質問ある方いますでしょうか。

どうでしょう。もしなければ僕から聞いちゃいますが、いいでしょうか(笑)。

VRはコミュニケーション円滑化のツールに過ぎない

実は、僕自身も使わせていただいていて、ぜひこの2人のお話をちゃんとお伺いしたいというところで今回のセッションを組ませていただいていますので、ここに書いてあるのはまさに僕が聞きたいことなんですね。

芳賀: そうなんですね(笑)。

中村: ですので、ここから選ばせてもらって、まずはセッションの入り口にしたいなと思います。先ほど、沼倉さんが「ライバルは実はEメールやSkypeだ」というお話ありました。まさに、コミュニケーションツールかなと思いますが、2人のサービスにとっての世界的なライバルを、海外展開をしているお二方ならではの視点でお話伺えたらなと思います。

まず沼倉さん、どうですか。

沼倉: うちはどちらかと言うと、オートデスクやダッソー(ダッソー・システムズ)とかシーメンス等と比べられることが多いです。ただ、うちが目指しているのは、どちらかと言うとPowerPointのようなプレゼンテーションツールなのですね。

CADのデータだったり、研究のデータだったり、Excelだったり、写真だったりというのがVR空間の中に読み込めれば、それでクライアント側に説明できる……。簡単に言うと資料の場をつくってしまうと。その中で説明をして、意思決定していただけるというところが、我々の目指している部分です。

そういった意味でVRというのは、あくまでテクノロジーのひとつであって、最終的にはユーザーさんやお客さんとのコミュニケーションをどう円滑にするのかに尽きると思います。おそらく、この課題って50年経っても100年経っても変わらないんですね。

VRありきではなく、必要性に応じた選択を

中村: 先ほど(複数ユーザーが)同時にはいれるという話がありましたけど、そうなってくるともう会議室ですよね。会議をしながら実は空間体験しているみたいな。

沼倉: そうですね。よくVRって、アバターを使ったチャットやゲームなどいろいろ紹介されていたりするんですけど、実際にあの中でアバターを使って友達と話すかというと、なかなかやらないんですね。

どうしてかいうと、面倒くさいからです。普通にスマホを使ってチャットしたほうが早いですから。その対極にあるのが、今、我々がやっているところです。空間性を把握したいだとか、そういったものはVRでないと今はできないんです。

そういったものが前提にあってこそ、コミュニケーション、例えばチャットするという機能はやっぱりVRにも必要にはなってくるんですね。

ですので、VRってなんでもVRにすればいいかということではなくて、あくまでこういった課題を解決するというのがまず前提にあって、その上でどういうふうにコミュニケーション取ったらいいのか、どういう機能があったらいいのかといったところを、我々は研究開発しているところです。

中村: ありがとうございます。先ほど空中にヘッドマウントディスプレイとヘッドセットみたいな、あのスティックが2つ浮いてましたけど、これだけでも充分、意思を伝えられますよね。

沼倉: そうですね。ですので、うちはあまり(編集部注:インターフェースに)人を出したりとかやっていません。ゲームではないというのもあるのですが、デザインのイメージを損なってしまうので、人は今のところ出していないです。

どちらかと言うと、意思を伝えるための機能を入れています。例えば、この壁をこういうふうにしたいというときに、“この壁”をみんなが見れる。指したところに案内が出たり、そういったようなところで、あくまで業務で使うためのコミュニケーションというのをベースに開発研究を行っています。

VRの出現は、パソコンやスマホに匹敵する転換期

中村: 本当、設計者に優しいツールだなと思いましたね。ありがとうございます。芳賀さんどう思われますか、ライバル的なもので言うと。

芳賀: あまり考えたことがなく、今一生懸命考えていました(笑)。すみません。うちの現場で言うと、Adobe Photoshopとかかな……。

僕たちが考えてるのって、軸が変わるというか。今までサービスとか体験って、時間と空間が絶対紐づいていないといけなかったはずなんですよ。これはもう、この現実世界は当然なんですけど、その大前提が2つとも消えちゃうということなので。

その2つが消えたときの転換というのは、今の延長上で考えると、ちょっと読み間違うのかなと。いわゆる「WEBが出てきて(世の中)変わりました」「モバイルが出てきて、みんなが手元にパソコンを持つ時代になってます」というものに近い、大きな転換になるかなと思うので……。

うまく言い表せないのですが、世の中の常識がライバルかなと思います。なんでもできてしまうので。時間・空間を越えられるんですよとなると、「じゃあ、これもできちゃうのね」という、既存の概念そのものがライバルになってくるような、モワッとしていますがそんな感じです。

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