ターゲットは2020年、エンタメ分野を皮切りに仮想と現実の距離が飛躍的に縮まる。

#VirtualReality 7/9

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「空間の作り手とユーザーのギャップを埋めるVRの可能性」と題して行われたセッション(全9回)の7回目をお届けします。2020年をターニングポイントに、VRの世界に大変革が起きる!? ツクルバの中村氏がモデレーター、InstaVRの芳賀氏とDVERSEの沼倉氏をパネラーに迎えて語られた、VRの現在地と未来。

登壇者情報

  • 芳賀洋行 氏 /InstaVR株式会社 代表取締役社長
  • 沼倉正吾 氏 /DVERSE Inc. CEO Founder
  • 中村真広 氏 /株式会社ツクルバ 代表取締役 CCO(モデレータ)

デバイスの大きさ・重さは、VR発展の妨げか

芳賀: たしかに空間音響に関しても、弊社のお客様のJRや地下鉄さんだと、確かに先ほどのスペシャルオーディオ、アンビソニックスを使って、ドアが閉じるときにどれぐらいうるさいかとか、外がどのぐらい聞こえるかとやられていたので、面白いなと思いました。

中村: 結構、設計でもあるあるなのが、光環境とか。照度設計してはいるけれども、感覚的なものがなかなか共有できなくて、竣工すると「意外とここ暗いですね」とかなりがちなので、それは早めにクライアントと共有しておくのは意味あることだと思いました。

ほかに、先ほど手を挙げてもらっていただいたのですが、ぜひマイクでお願いいたします。

質問者2: ありがとうございます。クラスコの嶋田と申します。金沢にある、不動産とリノベーションの会社です。弊社で、VRで物件計画などをしているのですけれども、少し機器が大きいなというふうに感じていまして。今後、そのハード自体がどんなふうに進化していくのか、お二人の未来予想を聞かせていただければと思います。

例えば携帯電話とかも、箱型の肩掛けショルダーから、たった20年でスマホまで進化していて、ぜひ未来予想をお願いいたします。

VRはまだ、「ファミコン前夜」

沼倉: 僕からでもいいですか。まさに、先ほどの肩掛けショルダーから手持ちの携帯のところまでいくのに、大体15年から20年ぐらいかかりました。

ゲームづくりも、私が子供のころにはまだファミコンもなかったのですが、そういったファミコン以前のものから、ファミコンが出て今のものになるのに大体20年。

テクノロジーは登場してきてから一般化して、それがある程度の領域にいくのに大体20年ぐらいかかるのですが、VRはまだ昨年に登場したばかりです。そういった意味では、まだファミコン以前です。

ファミコンの前にもいろいろゲーム機があったのですが、ファミコンが出て初めて、みんながゲームを「ファミコン」と呼ぶような感じになってきたんですね。

VRも今まさにその状況で、いろいろな会社さんがいろいろなものを出しているのですが、まだこれが標準というのは出ていません。ですので、まず「これが標準」というデファクトスタンダードになるものが登場してから進化が始まると思いますし、そこにいくにはおそらくあと1〜2年かかると思います。

通信規格の進展で、VRはキャズムを超える

沼倉: 今年10月からマイクロソフトさんが「Windows Mixed Reality」という規格をつくられていて、その規格に準拠したハードウェアが登場しています。いろんなメーカーがその規格上でハードウェアを出しているんですね。いま皆さんが使っているキーボードやマウスと同じような感じです。

ですので、こういったものが始まると、いろいろなメーカーが入ってくるので、おそらくここから1〜2年かけて、皆さんが使いやすいような、軽くて、こういう紐などがなくて、値段も安いというものが出てきます。

で、さらにその先は、おそらく眼鏡タイプになってくるであろうと、我々の業界では言われています。これはVRだけではなく、今いろいろお話が出てきましたが、AR(編集部注:拡張現実)・MR(編集部注:複合現実)というものを使う際にやはり面倒くさいんですよ。

やっぱりこう「掛けて、見たい」という要望が皆さんにあるので、おそらく眼鏡型になっていくのではないかなと考えられています。

ですので、ハードに関しては大きいものに関してはここ数年、モバイルに関してはおそらく2020年以降。次の第5世代通信規格「5G」というのが出てくると、データが今より100倍速く送れるようになるので、例えば営業の方がスマートフォンでクライアントさんに本社にあるデータをさっとお送りできます。

そしてその場で「はい、どうぞ」と、お客さんに見ていただけるような環境が2020年以降から出てきます。このあたりから、本番になるかなと思っています。

オリンピックを契機に訪れる、驚きのVR体験を待て

芳賀: 質問者の方、「大きい」とおっしゃられていましたけど、なにを想定されて。ヘッドマウントディスプレイが大きいですよねということでしょうか?

質問者2: 例えばなのですけれども、お客様との会食のときに、デバイスをお持ちするときにかさばるなって思っているくらいです。かけているときに、少しグラグラすることがあったので。

沼倉: 特に現在のハードは女性が髪型とか乱れる、あれが結構いやがられますね。

芳賀: 沼倉さんに大体言ってもらったので大丈夫だと思うんですけど(笑)。今だと軽いものでもおそらく300グラムぐらいで、まだ少し重いかなと思います。

5Gにあわせて世界的イベントとして想定されているのは東京オリンピック。オリンピックを360度カメラで撮っても、今の通信規格だと配信できないので。それを、5Gになったときにワールドワイドで配信するというところで、まず一旦「エンタメ」という切り口でコンシューマのところに届く、カーブのモチベーションが1発目にくる。

そうすると、例えば PlayStationVR が最初にあったから、PlayStationにのっけていろんなコンテンツを出すという形で、さらにそういうのを見て他のプレイヤーも参入してくるとどんどん軽くなっていくので、この2020年くらいからグンと変わるかなと思いますね。

中村: 今でもヘッドセットによってすごくライトなものもあるじゃないですか。それこそ、スマホでVRできる簡易なキットもありますし。一方で、HTC Vive みたいなものだったら、むしろオフィスに備え付けなので、クライアントを呼ぶきっかけにもなるかもしれません。

いつもはクライアント先に行ってミーティングしていたとしても、「うちでVR体験しませんか」と誘う口実になったりもします。そういう意味では、まだまだ重くてハンディじゃないからこそできるやり方、というのもあるんじゃないかなと思っています。

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