Opendoor、Lyric、WeWork……国内外の不動産テクノロジー最前線
# GlobalTrend 6/6
『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「アメリカVCから学ぶ、世界の不動産テックトレンド」と題して行われたセッション(全6回)の6回目をお届けします。
登壇者情報
- Brendan Wallace:Fifth Wall Co-Founder & Managing Partner
- 斉藤 晴久:リノベる 執行役員
- 杉谷 武広:リノベる 執行役員 /モデレータ
国内不動産テック企業の全体像
杉谷 次の話ですが、暮らし関連で行くと、オンデマンドのホームサービス領域も含まれます。
一つ前のセッションにあったAmazonの話との連続性で行くと、自動化というレイヤーもあります。そういった形で家の中の受発注の自動化、クリーニングや掃除なども含めて、そういったもろもろを自動化する流れ、倉庫の自動化などの流れが来ています。
今までの議論が既存のアメリカを中心としたカオスマップのまとめです。
ここからは、オープニングに申し上げた、LivingTechを再定義したい、という観点から、テック企業の全体感を紹介します。
ここでは、Live(住む)、Stay(滞在)、Work(働く)、Play(体験・学び)、Consume(ショッピング)、Finance(お金)や不動産まわりの面倒な手続き、Connect(スマートホーム)、Move(移動)、Power(インフラ)、Design/Build(設計・施工)という形でまとめています。
かなりカオスな図ですが、真ん中の点線の中が日本に入ってきている事業・サービスです。外資系で日本に入っているものだけを青枠にしています。先端分野は、一番外枠の部分です。その中で赤枠がFifth Wall社の投資先です。それ以外は、主にUS$1billion以上、1,000億円以上の企業を中心に書いています。ですので、アメリカ中心に、一部イギリス、中国、東南アジアが入っています。
これから、日本と欧米・グローバルとの比較で、この絵に沿った形で文脈を見つつ、Fifth Wall社の投資先などの話をしていきます。
まず簡単に日本の事例について斉藤さんお願いします。
斉藤 先ほどBrendanさんのBuilt World technologyの話の中で、Fifth Wallのコア事業の話がありましたが、今回のテーマであるLivingTechにはどのような領域があるのだろうということで図に表しました。
先ほど杉谷さんのご紹介にもありましたが、今まで住む、REtech、というような不動産中心を超えて、いろいろな分野がテクノロジーを使って変わってくるのではないか、という可能性も含めて作った図です。
住む領域で言うと、我々リノベるも掲載していますが、いろいろなプレイヤーがいます。
SUUMOやLIFULL HOME’Sのような巨大なメディアや、マンションに特化したマンションマーケット社、ソーシャルアパートメント(住人間の交流を楽しむタイプのシェアハウスサービス)を運営しているグローバルエージェント社、オープンハウス社(ビルダー)が挙げられます。他には、VR内見、など、テクノロジーによりどこでも物件が内見できるサービスがあります。
Opendoor成功の理由と業界にもたらした影響
杉谷 住まいのカテゴリーについてBrendanさんに聞いてみます。
Fifthe Wallが出資されているOpendoor社は、テクノロジーを使って最適化しながら買取再販を行っています。
物件を持つのはかなり難しいビジネスです。
これまでのインターネット企業にはアセットを使わないモデルが多かったのですが、アセットを持つ、つまりお金がいるヘビーなビジネスモデルです。
そのモデルがアメリカで盛り上がってきてる中でOpendoorに投資されています。どのような背景がこのビジネスモデルを成り立たせているのでしょうか。
Brendan Opendoorが多くの成功を収めている理由は、他のプロダクトでは提供できない、住宅購入者を保証するプロダクトを提供できるからです。おっしゃる通り、Opendoorは実際に住宅を取得し、最終的に家を転売するので、非常に資本がかかる事業です。
しかし、(住宅取得にかかる資金の調達)方法の1つは、第三者からの資金調達を活用することです。 Opendoorは、Lennarと大手投資銀行のファイナンシングラインを確保しており、運用会社レベルでの資本を少なくして、住宅を購入することができます。
だから彼らは家を買うたびにすべての資本を据え置くわけではありません。それがLennarとOpendoor間のパートナーシップを結びつけたかった理由の1つでした。
杉谷 ありがとうございます。Lennarとのビジネスディベロップメントについても説明いただけますか。
Brendan はい。Lennarで住宅を購入すると、Opendoorによる買取保証がついてきます。
杉谷 つまり、新築と中古をシームレスにつないでいるパートナーシップということですね。
Opendoorのインパクトはすごいと聞いています。Opendoorのライバルとして、OfferPadなど、いろいろな会社が出てきています。
また示唆深いのは、Webの住宅情報を集める会社などもOpendoorの躍進に押され、それまではお金を使わないモデルだったのが、自分たちでお金を使って物件を持つモデルに行こうとしています。
ポストAirbnbは?「Stay」を提供するテックカンパニー
杉谷 Stayの部分につき、斉藤さん、再びお願いします。
斉藤 Stayには、宿泊する、滞在するのほかに、一時的に滞在するものもあります。
ここに挙げている会社ですと、スペースマーケット社は、空間を使って会議やパーティーなどいろいろな目的で使っていただくサービスを提供しており、同じようなプレイヤーとしては、Instabase社があります。
STAY JAPAN社は逆に、民泊をやっており、一般の住宅を宿泊用に活用するサービスを提供しています。この分野に関しては、AirbnbやBooking.com、HomeAwayなど、外資がかなり参入してきています。
中華系の途家(Tujia)も入ってきている領域で、玉石混交の状態です。
杉谷 アメリカでは、ポストAirbnb、ポストWeWork、ポストhouzz、ポストUber等が出てきています。Airbnbが当たり前になっているアメリカで、Fifth Wall社はポストAirbnbのLyricに出資されています。そこの部分への見立てについて教えていただけませんか。
Brendan (短期賃貸特化のラグジュアリーブランドある)Lyricは次世代のホスピタリティブランドを代表し、Airbnbエコシステム内のMarriottのような役割を果たすでしょう。
杉谷 ありがとうございます。
マスマーケット向けのサービスの中で、ポストAirbnbで言うと、比較的クオリティ重視の層も狙っている気もするので非常に興味深く聞かせていただきました。では次をお願いします。
WeWorkとIndustriousに学ぶ、「Work」のあり方
斉藤 次はWorkについてです。空間として働くことを変えようという企業や、働き方自体を考えようという企業があります。例えば、New Workは、東急電鉄社がやられているコワーキングプラットフォームで、いろいろな既存の空間スペースを法人向けに使えるようにしているサービスです。
co-baも同様のサービスを提供しています。働き方だと、クラウドソーシングという意味で、クラウドワークス社やランサーズ社も出てきています。こちらは、WeWork社が入ってきて、いくつか大きな空間を作ってコミュニティを創っています。リージャス社は、昔からオフィスワークの空間を提供しています。
杉谷 ありがとうございます。WeWorkは時価総額4兆円で、ソフトバンク(本体とソフトバンクビジョンファンド)も1兆円投資する超巨大企業です。
世界で最も資金調達を受けた不動産企業やコワーキングスペースが出てきている中において、Fifth Wallでは、さらにその先として、WeWorkではなく、Industriousに投資されています。そこの見立てを教えていただけませんか。
Brendan 現在のWeWorkは2種類の方法で成長しています。マスターリース契約をするか、建物を所有するかの2種類です。
Industriousがすることは違います。彼らは(一度所有者や賃貸人になって)スペースを転貸するのではなく管理契約を結び、家主に代わって、コワーキングスペースの運用形態でシンプルにスペースを管理します。
そうすることで、彼らは大家とより多くの整合性を持ち、賃貸収入のアップサイドもダウンサイドもシェアできます。
さらにWeWorkのリスク特性を考えると、WeWorkと契約を結ぶことに躊躇している大家が多いです。
そのため、Industriousは、WeWorkができなかった多数の大家とのパートナーシップを構築することができました。管理契約のリスク特性はリース契約とは異なるからです。
杉谷 ありがとうございます。
Brendan氏が予想する不動産テクノロジーのこれから
杉谷 Brendanさんが退出される前に、我々の考えるLivingTechにおいて、Build World Tech、LivingTechの領域の中で、今後このような形で進化していくという見立てを教えてください。
Brendan 大手不動産会社と新興企業との間には多くのコラボレーションが存在すると思います。そして、Fifth Wallはそのコラボレーションを奨励することを望んでいます。
私はまた、多くのコラボレーションが世界中で起こり始めると考えています。 日本、中国、ヨーロッパの大規模なオーナーは新興企業とより多くのコラボレーションを始めるでしょう。そしてそれを協力したいのです。
杉谷 ありがとうございます。日本、中国とのコラボレーションで言うと、LivingTechカンファレンス含め、ビジネス開発、コラボレーションの機会をこれから作っていければと思います。アメリカ休暇の週にも関わらず、ご参加くださりどうもありがとうございます。
Brendan どうもありがとうございました!
いま一度、LivingTechを再定義してみよう
杉谷 Brendanさんは途中退出されますが、残りの時間の中で、LivingTechの定義も含めて続けられればと思います。
斉藤さん、スライドの各項目について教えてください。
斉藤 Playという体験・学び部分ですが、スタディサプリ、スクー(オンラインでコンテンツを提供)、エドモード、ユーデミーなど、複数のプレイヤーが出てきています。
体験と考えると、教育の他、いろいろな分野のアクティビティがあり、拡張性があります。買い物に関して言うと、いろいろなジャンルにおいてプレイヤーがいます。
AmazonやeBayなどがありますが、シェアするで言うとエアクローゼットがあったり、スパークルボックスというアクセサリーのシェアサービスを提供する企業、オネストビーという買い物代行の外資系企業(会員しか入れないコストコなどの商品を代行で手に入れられるサービスを提供)などがあります。
ファイナンスで言うと、いろいろなプレイヤーがいる中で、Amazonペイ、グーグルペイ、アリペイ(支付宝)など、決済をテクノロジーでどう変えていくかという分野があります。
杉谷 ローンの話で言うと、アメリカでは、ノンリコースローンがありますが、日本の場合、物件自体の価値ではなく、人に貸すという状況です。
テック以前に、ピュアにローンやモーゲージの分野には機会があるので、LivingTechのカンファレンスメンバー含めてやっていきたい分野です。
斉藤 次はスマートホームですが、ここはハードウェアというレベルでもいろいろなプレイヤーが出てきている領域です。
外資だとBOSCH(BOSCH Smart Home)が日本に参入する・しないという議論をされている噂も聞いています。Amazon Alexaもそうですが、いろいろな形のものが出てきます。
Move、移動に関しては、いろいろな移動があります。人自体の移動もあり、その移動の手段もあり、物が動くという移動もあります。
ハコベルというサービスや、物流をネットワークして最適化するオープンロジがあったり、外資でUberやMobike、メルチャリもがんばっていますし、DUFLなどのプレイヤーもいます。
杉谷 デザインで見ると、Built Trafficsの1つ、自動運転のブルドーザーがおもしろいです。
一つのボタンクリックで耕してくれるブルドーザーで、ビデオでも紹介していますので、後で見てください。駆け足ではありましたが、LivingTechランドスケープマップをカバーしました。
このカンファレンスメンバー含めてまたこのような機会を作れればと思います。最後にこのマップを作られてどのような世界観を見立てていらっしゃるか、斉藤さん、ひとことお願いします。
斉藤 今日はありがとうございます。このマップを作っていく過程で、住むだけではないなと思いました。
いろいろな企業が出てくる中で、ここが連携できる、ここともあんなことができるかもしれない、といろいろなアイディアが出てきました。
国内外を含め連携する際、コアとなるのがテクノロジーです。住む体験をテクノロジーでどのようにつなげていくかということを視点に、リノベるとしてもやっていきます。ありがとうございます。
杉谷 ありがとうございます。
(終わり)