シェアビジネスを阻む既得権益との戦い方―グレーな分野で、マーケットを作れば勝ち?

#SharingEconomy 6/6

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2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「シェアリングエコノミーでどうLiving techを変えていくか」と題して行われたセッション(全6回)の6回目をお届けします。

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登壇者情報

  • 久保 裕丈氏:CLAS 代表取締役社長 バチェラー・ジャパン 初代バチェラー
  • 韓 英志氏:ユニオンテック 代表取締役社長
  • 東 克紀氏:YKK AP事業開発部 部長
  • 重松 大輔氏:スペースマーケット 代表取締役 /モデレータ

シェアビジネスは限界利益が高いものの、初期投資がネック

重松 すいません、残り15分になってしまったんで、質問タイム行きます。じゃあ会場から(sli.do経由で)質問が来てるんでしたっけ? ちなみに、シェアリングビジネスを立ち上げたい方いらっしゃいますか?

いたら3番目も話そうかと思ったんですけど……1社、2社、こんな少ないんでしたら個別ですかね(笑)。

この待ちの間に久保さんから注意点について。

久保 注意点でいくと、あくまで僕のやってる家具領域に関してなんですけれども、やっぱり初期資本はかなり必要です。

うちなんかはB to Cモデルというか、自分たちで作ってレンタルをするモデルなので、初期投資は結構必要なのであんまり気楽に始めづらいです。

重松 ハードル上げてますね(笑)。

久保 言っとかないと入ってきちゃうから(笑)。

だからシェアリングエコノミー文脈のプレーヤーの粗利率とか限界利益率を調べていくと、実は売り切りのメーカーさんに比べて数倍の限界利益が上がって、だから初期のJカーブはかなり深くて大変なんだけれども、長期的に見たときの利益率は非常に高いというのはひとつ特徴。

だから初期重たいというのは注意点ですね。

重松 韓さんありますか?

一番はやっぱり与信というか安心というか「この人に頼んで大丈夫かな?」とか。

重松 そうですね、特に最初の時はね。

100%防ぐことはできないんですけど、どう見極めていくかで、久保さんに近いですけど、一気にユーザー拡大はしづらいですよね。

(やろうと思えば一気にユーザー拡大)できるんですけど、あんまり(ユーザー拡大)しないほうが良いとも思っています。例えば約束しドタキャンとか、物を盗むとかそういうことあったりするともう終わるじゃないですか。ここをどう担保していくかというのはずっと考えてますね。

シェアエコが二つ目のクラックを超えるために必要なもの

重松 なんか会場からご質問は、「これ聞きたい」とか、……あ、どうぞ。

質問者1 僕はシステム開発の会社で働いてます。今お話聞いたあたりだと、シェアエコはやっぱりマッチングにどうやって与信とか、そういうところでSNSだったり、人との繋がりを作っていくのが大事だと思うんです。

LivingTechで見たときに、顔認証で扉が開くだったり、鍵とかは結構重要になってくると思うんです。

そういったところのテクノロジーに対する「こういうのがあったらいい」とか、「今ここで困っててテクノロジーで解決してくれないかな」とかがあったら教えていただきたいです。

重松 そうですね、実際に無人で管理してるスペースが増えてて、監視カメラとスマートロックとかデジタル機、あと物理的にキーボックスを使って運営されてる方が結構います。

欲しいのはやっぱり、トラブルとしてある騒音問題関連のソリューションですね。なので、あるデシベル以上になったら強制的にシャットダウンするとか、警告を発するとか、なんなら通報しますなのか。

もっとポジティブな感じで、「静かにしてよ」とささやくのか分からないですけど、それだと効かないかな(笑)。そういうのが欲しいです。騒音問題を解決するところ、酔っ払っている人を何とかするものが欲しいです!

監視カメラがかなり発達してるので、あれがあることですごく抑止力になってると感じます。個人スコアのスコアリング連携、プラットフォーム連携はやることでかなりトラブルは減ります。

何か他にありますか?

顔認証の話があったんですけど、今実際に顔認証の登録をしてやってるんですけど、社員とかショールームにいる子だけでやってるんで問題ないんですけど、顔を撮ったものを誰がどうやって保証して貯めるのかって、それがすごく課題なんですよね。

あの辺をたぶん少し国も入ってもらってやらないと、何か起きたらうちのメーカーじゃ保証できないです。

と言いながらその仕組みとか作ろうとしてるんで、まだ最新では変わるかもしれないですけど、今はまだ持ってるものでやるしかないですね。

重松 決済プラットフォーマーに乗るんでしょうね、PayPayとか、LINEとか。

難しいのは、リビングっぽい話を初めてしますけど、例えば家のリモコンがテレビといろんなものと繋がって、「これをどうしますか?」と話すじゃないですか。結局、それぞれのメーカーの仕様が違うので効率化できませんという。

機器に関するものの規格が違いすぎるので、中間データーベースを作ってほしいですよね。東芝と日立とソニーとかで全部同じ規格になってますとか、これよく建築の世界でありますけど。

久保 それはすごく感じていて、ちょっとシェアリングとは違うかもしれないですけど、SaaSやサブスクリプション文脈で言うと、大事なのはアップデートな気がするんですよね。

IoTがひとつ難しいのは、どうしてもハードをかませなきゃいけないので、純粋にSaaSであればサービス提供者側がきちんとアップデートを繰り広げていけば、常に最新になっていくのが、IoTとなると今度ハードウェアをどうアップデートしていくのか、これが2年、3年で陳腐化しないものをどう作るか。

各メーカーが差別化とか言っちゃうから、違う物を作っちゃうんですよね。

プラットフォームを作ったものが全部変わっちゃう。プラットフォームに繋げるものをメーカーが作っていかないと乗り遅れちゃう、そんな状態ですよね。

CLASさんのようなサービスが思い切り世の中に普及すると、たぶんその必要がないので、メーカーも商売の仕方が変わってくるのでいいなと思うんですよ。

そうなんですよ、これからの仕組みに乗らないと、メーカーはあっという間にひっくり返されちゃうんで。

何か作るときに差別化って、違う物作ろうってなるんですか?

いや、もう会社はそうかもしれないですけど、僕の中では差別化は一切考えないです。いっぱい繋がるようにしとかなきゃダメ。

ユーザーとクライアント、鶏/卵はどちらが先か

重松 他にラスト1問くらい、どうぞ。

質問者2 LIFULLの奥村と言います。

聞きたいことが非常にいっぱいあって、その中のどれかでもいいのでお答えいただけたらと思うんですけど、(ひとつ目が)シェアリングエコノミーで法令がグレーな所に参入する場合にやっておいた方がいいこと。

(2つ目は)既得権益を得てる人たちが邪魔をしてくることを想定してやっておいた方がいいこと。

(3つ目は)クライアントとユーザーの両方を集めなきゃいけない中で一番大変だったことがあって、それをどう乗り越えたか。

(4つ目は)一番、脅威だと感じてること。

この質問の中のどれかお願いします。

重松 じゃあ好きなものを答えるということで、じゃあ東さんお願いします。

さっきのとりあえず頭の中そんなのばっかりなんで、タイヤ付けてどうなるのとか、今結構グレーなところでいってるんですけど。

要はそこに税金の絡みで省庁の人たちが出てくると、グレーじゃなくなっちゃうんだろうなというのは、これ以上流行るといろんなことが起きるんじゃないかなって。

車両にしてもナンバーとったら税金払わなきゃいけなくなるとかありますけど、その辺を少しメーカーとしても明確にしていかなきゃいけないかなと思います。

重松さんいっぱいありそうじゃないですか? 法令とか。

重松 大企業とかは結構ありますね。鶏/卵で、最初どう乗り越えたかとか全部あるんですけど。

鶏/卵でいくと、やっぱりプラットフォームなので、提供者サイド、つまり物件なんですね。物件をどう集めるかを一番最初に苦労しまして。それはもう、最初に営業で集めるしかないです。

なので、当時は営業を強化して電話もしましたし、まずは登録してもらうことに注力しました。あとは戦略的にPRは力を入れてましたね。

僕が個人的に思うのは、職人とかは「すぐ仕事したい」ってなっても「案件がなければ今はいいや」と待ってくれるけど、発注側はすぐ飽き(てサービスから離れ)るので、そっちから攻めるというのはある。

重松 そうですね。

久保 鶏/卵のところで僕も言うと、クライアントサイドとユーザーサイド両方獲得しなきゃいけないという、僕(がやっていた)前の商売はMUSE & Co.というアパレルの通販、いわゆるフラッシュセールと呼ばれる在庫品を売る商売をやっていて、その時はクライアントサイドを獲得するのがすごく大変だったんですね。

今回の商売で心掛けてるのが、クライアントもユーザーも相当数獲得するのが大変なのであれば、ピボットか何かしなければいけないと。

どっちかを獲得するために説明コストがものすごくかかるという時には、どこかサービスの上でメリットが弱いとか、区別化がちゃんとできてない点があるはずです。

C(編注:customer)でまだ伸びきってないのは当然文化形成期というのはひとつありつつも、Cに対してのメリットの提供が十分じゃないんだろうというのがあるんですね。

うちなんかプライシング小さくやっていくとか、それをスッと一番入りやすくなるところまでひたすらピボットを繰り返している所ですね。

重松 韓さん。

質問を忘れました(笑)。

久保 既存プレイヤーからの軋轢はありますか?

重松 嫌がらせしてくるとか。

早くそうなれるようになったらいいね、と社内で言ってるんですけど、まだあんまりなくて。

重松 「安売りしやがって」とか。

安売りはしないようにしてるんで、大丈夫です。むしろ感謝される方が多くて。

業界特性なんですけど、単純なマージン構造じゃないんですね。マージンと呼んでるんですけど、仕事を受けた会社が自社でできる部分はやって、あとの自社でできない工事ちょっとだけマージンを乗っけて違う会社に流そうというくらいの感じなので。

この商売、積算という構造があるんですけど、原価積み上げ方式でそこから頑張った分の売り上げが立って、差分が利益という構造になってるので、マージンをぶっ壊す感じじゃないんです。よくある単純な「20%とってるマージンを8%にします」というアップルトゥアップル(編注:同一条件の比較)の分かりやすい破壊じゃないので。

破壊ではなく最適化に近くて、それはむしろ喜んでいる人もいるし、かつ業界の特性上、発注者でもあり受注者であったりするんですね。

なので、この部分はいいけどここはダメというバイスバーサの構造(編注:「逆もまた真なり」という意味。両面あるということ)になってるんで、意外とあんまり起きない感じはします。

上手くやろうとはしてますけどね。

重松 ありがとうございます、もう時間ですかね。はい、というところで何か一言ずつサクッと。

せっかくなので興味を持った方は話したいのでよろしくお願いします。

皆さん、本日はバチェラーファン感謝祭ありがとうございました (笑)。引き立て役として頑張ってきました。内装工事とかありましたらいつでも承りますんで、言ってください。ありがとうございました。

久保 家具ニーズのある方は、今日バラ持ってませんけど(笑)、バラの代わりに名刺をお渡しします。よろしくお願いします。

重松 スペースマーケット、ぜひ一度使ってみてください。まずはシェアを体験してみてください。よろしくお願いいたします。

本日はどうもありがとうございました。

(終わり)

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