フォークとは自由である
ーコミュニティの選択権ー
本記事は、Forking is Freedom(Matthew Campbell) の翻訳です。万一誤訳などありましたらPrivate Note機能でお知らせ下さい。
ブロックチェーン、ビデオゲーム、オペレーティングシステムに共通するものとは何だろう?
ビデオゲームの制作者がゲームのルールを変更すると、普通ユーザーはそれをどうすることもできない。しかしUltima Onlineでは、ユーザーはゲームを自らの手中に納めて独自のゲームサーバーを作ることに決めた。Androidが新たなオペレーティングシステム作成に乗り出したときには、彼らはゼロから始めずLinuxをフォークした。 ビットコインのコミュニティーは多数の信奉者を抱えている。だがトランザクションのスケール方法について合意できなかったため、ビットコインキャッシュなどのグループが生まれ、コア・コミュニティが同意しなかった新しい機能を追加するようになった。
フォークするのは、ユーザーが独裁政治から解放され、自らのコミュニティを立ち上げることを可能にする基本的なメカニズムだ。フォークとはグループが中央のコントロール体制に同意せず、関係を断つことを決めた場合に自らの道を切り開いていくことだ。
ひとつのエンティティによって何かがコントロールされる時は必ず、権力の集中化が最終的にユーザーを傷つけてしまう。
イーサリアムの創始者ヴィタリック・ブテリン は、“World of Warcraft”のメーカーBlizzard Entertainmentが、彼の『お気に入りのウォーロックの呪文』を変更したことを泣き寝入った。それから彼は中央集権的なサービスはなんという恐怖をもたらしうるか悟って、すぐにゲームをやめることに決めた。
よく知られたフォーク
Asheron’s Callは長期間運営されていたオンラインRPGであったが、2017年初頭にその扉を閉ざした。 Asheron’s callは12年以上にわたり続き、最後の時でもコミュニティは強いものであった。
スタジオが強制的にゲームをシャットダウンすると、グループで集まってすべてのゲームパケットを記録し始めた。彼らは2億2400万以上の全ゲームメッセージを含む1億3100万パケット以上をキャプチャーし、そのデータからゲームサーバーを慎重に作り直さなければならなかった。それはまるで古代エジプトの壁面の筆跡から、言語を再構築しようとするようなことだ。
もしこれがブロックチェーン上で動いていたとしたら、コミュニティはデータをフォークし、コミュニティが存在する限りゲームは存続していただろう。
コミュニティはゲームを作り直すために、2億2400万以上の全ゲームメッセージを含む1億3100万パケット以上をキャプチャーしなければならなかった。
Ultima Onlineは、1998年からこれまで稼働し続けているオンライン・マルチプレイヤーRPG(MMORPG)である。あなたが街を離れたころの初期、一般のプレーヤーから恐れられていたDread Lordsという悪役キャラクターがいた。
時が経つとこういったゲームプレイの様子は変わってしまい、プレイヤーたちは反発して自らのレガシーとして『シャード』を作った。つまりゲーム世界のフォークをしたのだ。
しかし彼らはAsheron’s Callのようにはゲーム・サーバーにアクセスできなかったため、ゼロからゲーム・サーバー全体を再構築する必要があったが、幸いにも彼らはクライアントとゲームの資産を再利用することが可能であった。
Linuxは、想像しうる以上に何度もフォークしてきている。 AndroidでさえLinuxのフォークとして始まったのだ。 リーナス・トーバルズは主要なLinuxチェーンの最終的な調整役であるが、Redhatが独自のLinuxやUbuntuを持つことを止めるものは何もない。このことがユーザーに自由を与え、彼らはかなり古いコンピューターのコードを実行し続けたり、Androidの場合にはメインラインに入らなかった実験的な機能を追加するといったことができるのだ。
ビットコインキャッシュやビットコインSegwit 2 xのようなビットコインのフォークは、Bitcoinの世界におけるコア・プレイヤーの間の強い合意がないことをはっきりと示している。私はこれらのフォークが存在することは非常に健康的であると考えている。なぜなら小規模な環境で新しい機能を実験することができ、そして一つの小さなグループがブロックチェーンの未来を制御できないようにできるからだ。
ゲーム経済
ゲームの最大の問題の1つに、金や鎧、レアアイテムといったゲーム資産が固定的に供給されていないことだ。たとえそれらがレアであったとしても、コードの変更やバグがその稀少性をいつでも変えることが可能だ。
ディアブロ2では、「ヨルダンの石」と呼ばれる貴重なアイテムがあり、その希少性ゆえに通貨として使われていた。しかし、誰かがアイテム複製のバグを発見し、これを大量に作成してしまった。開発者がアイテム作成のアルゴリズムを変更するだけで、市場は瞬時に破壊されうるのだ。
これを解決するには、フォーク可能なブロックチェーン上でゲームを動かすことだ。 ビットコインの供給を変更するバグがもしあったとしたら、フォークしたものはコミュニティが同意する限りそれを修正する。 ビットコインの開発者が明日さらに色んなビットコインを追加したいと思ったら、全ノード1つずつに新しいソフトウェアを実行させなくてはならない。
さらにゲーム資産をブロックチェーン上に置くことで、ゲーム内のすべてのアイテムを追跡し、さらにゲームの原作者から独立した「取引所」でそれらアイテムを取引可能にすることができるのだ。
今、ゲームで得られるコインは、永遠に希釈されうる。私たちがたくさんの時間を費やし手に入れた鎧は、瞬時に奪われるかもしれない。1つの会社によって運営されると検閲は頻繁に行われる。さらにその会社にとって新しいアイテムを作り出すことがより有益になれば、彼らはそれをやるだろう。
我々は権力をユーザーの手に戻す必要があるのだ。
フォークの分析
さて、ゲームで分析を始めてみよう。フォークにはどんな要素が含まれるのか?
- ゲーム・クライアント
- アートワークのような、クライアントの視覚的な資産
- クライアント/サーバーのプロトコル
- サーバーのコード
- ユーザー及びキャラクターのデータベース
- 剣、盾、魔法といった収集可能なアイテム
これらのいずれかがクローズドなソースである場合、アプリケーションのユーザーはゼロからすべてを再構築する必要があり、これが不可能なこともある。
任天堂サテラビューのゲームは、このかなり極端な一例だ。これは文字通り衛星放送でビデオゲームをストリーミングし、カートリッジのメモリにゲームをダウンロードする。放送のある30分間だけゲームをプレイでき、30分でタイムオーバーになるが、幸い誰かがスループレイのビデオを作ったので他の者もゲームを記録するのが可能になった。時間の経過とともになくなってしまったが、ゼルダの伝説のユニークなゲームもあった。
やる気にもよるが、人々は上に挙げた作品の1つまたはもっと多くを再び作ることもあるかもしれない。
しかし将来私たちは、ゲームクリエイターにこれらの資産のすべてを長年ブロックチェーンで保存するよう強いることが可能なのだ。
ブロックチェーンがこの問題を解決する理由
最近、CryptoKittiesは、ERC721トークンと呼ばれる独特なものをイーサリアム・ブロックチェーンに導入した。これらのトークンは複製できず、それぞれ特性を持つ。ユーザーはブロックチェーンをフォークして独自のコピーを作成できる。ゲームの完全な状態とは、ユーザーがゲームのアドオンを構築するよう精査できることだ。
別の例としてSteemItブロックチェーンを見てみよう。これは基本的にはブロックチェーンの上で動くRedditのクローンだ。誰でも全コメントと投稿を含めたブロックチェーン全体をクローンして、その上に面白いアプリケーションを構築することができる。それほどポピュラーでないにもかかわらず、他のブロックチェーンよりも多くのSteemアドオンがあるのは不思議ではない。
World of Warcraftのようなゲームでゲームデータベース全体のコピーを作成できたらどうだろうか?新しいクエストとか、ギルド管理ツールを作ることができるだろう。原作者が想像できていた以上に、10年間でゲームをカスタマイズして成長させることに夢中になれただろう。
しかし、これはまだ問題がないわけではない。ブロックチェーン上で数十ギガバイト単位のゲーム資産をどうやって保つことができるのか?それをIPFS、Bittorentで行うのか、それとも単に集中化された解決策を受け入れてブロックチェーンにハッシュを格納するだけになるのか?今後の記事でこれをさらに探求していこう。
結論
我々は、企業が利益を得られなくなるとプロダクトを放棄する多くの例を見てきたし、時には企業はある人々の欲求を満たすためにゲームの仕組みを変化させてしまう。将来ゲームはブロックチェーンの上で動くようになるので、ユーザーはLinuxを使用する人と同じような自由を体験できるようになる。
それはどんな様子になるのだろう?コレクターアイテムはすべてイーサリアム上に保存されるのか、またはサイドチェーン上なのか?MMORPGをブロックチェーン上で動かすことはできるのか?この記事の今後のエントリーではそれがどのように稼働するか、詳細を追求していこう。
原文著者について:
マシュー・キャンベルは現在とブロックチェーン・スタートアップLoom networkを運営しており、DAppsのためのスケーラブルなサイドチェーンを構築する手段を人々に提供している。 著書に“Microservices in Go”、さらにGothamGO、Hashicorp Conf、JS Conf、GO India,、UK GOlang、MicroXchng、Prometheus Confを含む20以上の国際カンファレンスにて登壇している。 以前のスピーチはYoutubeで視聴可能。過去にはDigital Ocean、Thomson Reuters、Bloomberg、GucciさらにCartoon Networkなどにて勤務。
Loom Network は、イーサリアムのハイスケーラブルなDPoSサイドチェーン構築のためのプラットフォームで、大規模ゲームやソーシャルアプリにフォーカスしています。
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