メタモンだって、くるしい。

Hiroshi Shimotsumagari
Lucky Brothers & co.
3 min readNov 24, 2016

ポケモンに出てくるキャラクターのなかでは、メタモンがいちばん好きです。

幼い頃から、あの愛らしい風貌と「メタモン」というなんとも掴みどころのない名前、ヘンテコな色、そのすべてが好きでした。さらに、メタモンと聞いて思い浮かぶ最大の特徴が、「どんなポケモンにも変身できる」というもの。小学生の頃のゲームボーイでポケモンを遊んでいた頃は、「何にでもなれたら、もう最強やん!」なんてことを思っていた気がします。

いまは、また別の意味で、大人になるにつれてどんどん好きになってきました。

メタモンって、「就活生」と似ているなぁと思ったんです。ポケモンのなかのメタモンは、その気になれば火タイプ、水タイプ、草タイプ…など、どんな種類のポケモンにも変身することができます。それは、一見するとすごく羨ましい。なんだか憧れます。

でも、戦いを終えるとメタモンはまたメタモンに戻ってしまいますし、何より「完全に」変身できるわけじゃないんですよね。擬似的な、まがい物の姿でしかないわけです。

このときのメタモンの心境を想像してみると、「俺は何にでもなれるが、結局それは”何者にもなれない”ということなんじゃないだろうか。”自分”とはなんなのか。こんなことを考えるくらいなら、もういっそコラッタとして、あるいはポッポとして生まれてきた方が幸せだったんじゃないか」みたいなことを考えてるんじゃないか、そう思いました。

一方、就活生も似ています。

これから企業に就職するなり、独立するなりするわけで、可能性としては「何にでもなれる」存在であると言えます。

でも、経験したことがある人なら分かると思いますが、「自分は何がしたいんだろう」「自分の価値はどこにあるんだろう」といった悩みにぶち当たることになります。「何にでもなれる」ということは、変な捉え方をしてしまうと「何にもなれない」のと同じくらい、つらく、苦しい。

僕もまさに似たようなことを考えた時期があって、そんなにきついなら、もういっそ「お前の職業はこれ」と神様的な存在のなにかに決められてしまった方がいいんじゃないかとすら思っていました。

こうして、就活生の姿にメタモンを投影して見てしまい、「なんか、お前も大変だよな…」みたいなことを考えていくうちに、昔以上にメタモンのことが好きになってしまいました。あんなに愛らしい姿からは想像もできませんが、人知れず抱えている思いがあると思うんですね。

この話に結論はありません。ただ、いくつになってもポケモンは面白いなあ、と思うばかりです。

text by shimotsu

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