データアカデミー@富山県南砺市

Fumina Nakazaki(中﨑史菜)
Matosen blog
Published in
7 min readFeb 11, 2019
データアカデミーの様子

富山県南砺市が発行する「なんとポイント」の活用を促進しようと、2019年1月29日に南砺市役所福野庁舎で「データアカデミー」が開催されました。

会場には南砺市商工会の方々や、図書館や福祉課の南砺市職員が集まり、データに基づいた施策の立て方を学びました。

市が積極的に広めようとしている「なんとポイント」制度ですが、普及していないのはなぜでしょうか。
今回は「ポイント付与」「ポイント交換」という二つのテーマで「根拠に基づく政策立案」を体験することで、ポイントの利活用を推進することを目的にデータアカデミーが開催されました。

南砺市地方創生推進課の職員証を受けとった市川氏

講師は一般社団法人コード・フォー・ジャパンの市川博之氏。
南砺市ITフェローでもある市川氏は、自治体でのオープンデータ活用・地域におけるコミュニティ形成等を得意分野とされています。

なんとポイントって何?

現在400人が活用している「なんとポイント」。
しかし聞いたことない!知らない!という方も多いのではないでしょうか。

「なんとポイント」は南砺市内の地域課題解決を目的とする活動に参加すると付与され、1年間で10ポイント貯まると市内のお店で商品や特産品と交換できます。

ポイントはメッセージアプリ「LINE」がダウンロードされたスマートフォンがあれば貯めることが可能。
具体的には「防災訓練への参加」「子供への読み聞かせボランティア」「利賀サマーフェスティバルのスタッフ参加」などが対象となります。

今回のデータアカデミーもポイント対象。私も1ポイント貯まりました。

データアカデミーの冒頭では、参加者から「ポイントの活用実態がよく見えていません。行政として付与対象をどこまで広げていく予定なのかを先に知りたいです」と質問が出ました。

南砺市役所・地方創生推進課の三角さんからは、
「実は今日のデータアカデミーもポイント付与対象です。市が主催する地域課題解決のための事業や会議への参加で、ポイントが付与されていますが、今後は地域のボランティアや地域行事でも広く付与できるようにしていきたいと考えています」
と展望が語られました。

1、目標・問題・課題を分けて考えよう

早速、参加者全員で「根拠に基づく政策立案」を体験してみます。

まずは仮説を立てる前に「なんとポイント」の現状課題を明確にし、あるべき姿(目標)とのギャップを図式化。

2、仮説を立てよう

次に仮説を立てていきます。
課題に対して「なぜそれが起こっているのか」を予想し、こうすれば解決されるのではないか、を考えていきます。アタリをつける感覚でOKです。その際に役立つのが下記のような「表」です。

仮説を単に羅列していくのではなく、項目を分けることで違った視点で物事を見ることができるようになります。

例えば下記のような課題と目標があるとします。

課題:「ポイントを商品交換券と引き換える窓口が少ない」

目標:「窓口を1つから3つに拡大する」

この場合、「新設する2つの窓口をどこにするか」をデータに基づき考える必要があります。
その際、時間帯(平日の通勤や通学時間、休日の夜間など)およびターゲット層(子供や独身、子育て世代やシルバー世代)に分けて分析してみると、自分と違う立場の行動が明確になり、仮説が立てやすくなります。

3、仮説と課題を連結させよう

グループで出た仮説について発表する参加者

「全ての仮説に対応するデータを集めようと思うと、何年もかかってしまいます」と市川さん。まずはアタリをつけた仮説を立証するために必要なデータだけを抽出していきます。

「“データ”っていうのは“数値化されたもの”だから、私たちの団体にはデータなんかありません」と思い込んでいる方も多いのではないでしょうか。
しかし、施設の投書箱に投稿された手書きのメモも「データ」。
きっとみなさんの手元にも、活用されずに眠ったままのデータがあるはずです。

データを見ながら話し合う参加者

今回のワークショップでは、なんとポイント利用者に回答していただいたアンケートや、無料で提供されている統計資料のデータを活用しました。これだけでも「年代別なんとポイント登録者数」「交換商品として“温泉入浴券”はどの世代でも人気」「南砺市役所へ30分以内にアクセスできる人の数」「◯◯地区に住む未成年の数」といったデータをとることができます。

今回活用したのはjSTATマップ(政府統計)
どなたでも無料で活用いただけます。

データアカデミー開催の意図

参加者にアドバイスする講師の市川さん

そもそも、今回南砺市でデータアカデミーが実施されたのは、「根拠に基づく政策立案」を行政がしっかりと行うため。
講師としてあえて県外から市川さんを迎えたのも、南砺市内の施策を南砺市民だけで作り上げると「思い込み」が入った主観的な内容になる恐れがあるため。外部からの視点を取り入れることで、客観的な意見を得られます。

市川さんからは、とある県で起こった事例紹介がありました。

健康診断の受診率を上げるためのデータ分析
保健所職員は「保健所から遠いところに住む方の受診率が低い」と思っていたが、実際に受診している方のデータを調べたところ受診率と家の近さには何の相関性もなかった。
仮に、データを確かめずに「家が遠い人の受診率を向上させる施策」を実施すると全く効果のない無駄な施策にお金をかけることになります。

「データ」と聞くと拒否反応を示す方もいるかもしれません。
しかし、簡単なアンケートや地図情報、会員情報などからも仮説を立証するだけのデータが得られることがわかります。

市川さんは「これから南砺市地方創生推進課の研修員として施策立案に関わっていくので『うちの施設にこんなデータがあります』というのがあれば、どんどんお寄せいただきたいです」と述べられました。

株式会社まとめる専門家・谷内さんによるグラフィックレコーディング

「データアレルギー」のあなたに

データアカデミーの取材というお仕事をいただいたとき、正直、「数字ばかりの難解なセミナーに違いない・・・」とどこか拒否反応を示している自分がいました。
考えるより体が先に動く私にとって、データ分析は未知の世界。

しかし今回、市川さんがそのイメージを打ち破ってくださいました。
数字が苦手な方でも、地図で色分けしたりグラフにしたりと可視化するだけで「とっつきやすく」なるので、身の回りにあるデータも工夫次第で活用できるかも。

周りにあふれている「データ」に気づかないのはもったいない!そんな風に思わせてくれるセミナーでした。

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