これからのコンテンツとマネタイズをめぐるヒント@「TWDW2014」11月25日第1部「新しいメディア、新しい働きかた」聞き書きメモまとめ

Kento Hasegawa
MEDIA BREAD
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7 min readJun 2, 2015

“働き方の祭典”こと、「TOKYO WORK DESIGN WEEK 2014」(TWDW2014)が開催中です。11月19日から25日までの8日間にかけて、新しい働き方などのテーマをめぐって、カンファレンスやワークショップなどが開かれました。

TOKYO WORK DESIGN WEEK 2014

11月25日のカンファレンス第一部は「新しいメディア、新しい働きかた」をテーマに、以下の方たちが登壇。

・加藤 貞顕(株式会社ピースオブケイク)
・佐渡島 庸平(株式会社コルク)
・亀井智英(Tokyo Otaku Mode)
・河尻 亨一(銀河ライター)

新しいメディア、そこに載るコンテンツをいままさに作っている人々によるカンファレンスとあって楽しみにしていました。きっとどこかでフォロー記事がでることを期待して、カンファレンス中に取った会話メモをザックリと載せておきます。個人的に、ここを結びつけるとわかりやすいかな、とカットアップしている感じでまとめているので、あしからず。

クリエイターがプラットフォームづくりに参加していない

佐渡島:いまって、いろんなルールが決まっていく時代なんですね。明治維新の時に伊藤博文がドイツ型かフランス型にするのかで悩みながら憲法を作ったように、プラットフォームの人たちがクリエイターにどうやって報酬を配分するかを考え、主義主張して、取り分を話し合っている時代。でも、そこにクリエイターはその議論に全く参加していないんですよ。アメリカのSpotifyとかの時もそうで、議論に参加していないから、ライブで受けるしかないという「第三の道」を見つけていった。

クリエイターは、自分は作品作りだけに集中していればいいんだという考えがある一方で、自分たちは評価されるべきだという考えもある。だから僕は彼らからお金をもらって、その代理、代表をしよういうのがコルクという会社です。

なぜコンテンツを柱に考えるのか

佐渡島:何をもってメディアビジネスと呼ぶかですけど、「雑誌」というものがある世の中で、その代替物をネットに置こうというのが(cakesの)加藤さんの話ですよね。でも、先進国で雑誌を見たことがある人ならその感覚ってわかるけれど、アフリカで一回も雑誌を見たことがない人には伝わらない。雑誌を知らないから。それで、もっとインターネットの中で本質的に起きていくことってなんなんだろうって考えたんですね。

僕がやりたいのはアフリカでも宇宙人でも、日本でインターネットに触れたらすぐわかるような、本質的なものをつくりたいと思った。それがコンテンツで、コンテンツを中心にしたコミュニティを作りたいと思った。今後は、キュレーションや検索エンジンの機能に頼らずにアクセスできる仕組みになっていけば、コンテンツ中心の世界があるんじゃないか。

僕が今、一番得意だから編集をやっている。でも、これは人から聞いた話だけど、「社長がやる仕事が黒字じゃダメだ、赤字のことをやらないといけない」。本来的にはそこをやらないといけないと思っているので、今後はやっていきたい。

いまは名も無き人々が食べられるようになるためのサービスが主流なんですよ、弱い人のちからを強くするのがインターネットの機能になっているけれど、特異な才能を持っている人を伸ばすための方向性が考えられていない。難病の人ほど薬がないのと一緒で、サービスとして出てくるのは一般大衆の個人向けで、まだ考えられていない。

これからのマネタイズやコンテンツは「スマホ的」かどうか

加藤:コンテンツをネットで課金して売るのは相当難しいですし、値段は下がるばかり。全員が食べていけるかはさておき、たくさんの人が商売していくにはどうしたらいいのか。いまある考えは、コミュニティをそれぞれの人が作って、プラットフォームに入ってきてもらい、そこで消費をしてもらう仕組みかなと。「note」がまさにそう。AKB48は濃いファンがお金をたくさん落としてくれて、薄いファンはYouTubeで見ている。あれは既存のシステムを使っているだけだけれど、今後は人数が少なくても、そこから欲しい情報を得られれば、ユーザーは課金していくっていうのをやろうとしているんですね。

川尻:コンテンツでお金を発生させていくことが難しくなっていますね。佐度島さんの「人の編集、マネジメントによるマネタイズ」でいくと、もっとも効率的な考え方をなさる佐度島さんからいうと、ライセンスが鉄板だと?

佐度島:たとえば、ガン・ホーでもmixiでも、1コンテンツで世界をひっくり返した。スマホの中ではすごい破壊力を持ちました。でも、『ONE PIECE』も『進撃の巨人』も、実際に動いたお金の量、経済規模でみれば、そこまでのひっくり返し方ができてはいない。これからのビジネスで1つあるのは「スマホ的」かどうか。スマホに対応したビジネスのつくり方を考える。いまのゲーム業界はクリエイターの集合体によってゲームをつくっていて、「1人の圧倒的な世界」においては作られていない。だからこそ、コンテンツの作り手も、スマホならではの形でストーリーを作っていくと、収益が生まれるかもしれない。スマホを使った新しい習慣付けができれば、まだひっくり返せるチャンスがある。

川尻:その習慣付けの部分でいくと、ヘルスケアの分野がそうですね。

佐度島:コンテンツに関することで、人間にとって「どの瞬間」であれば無理がなく、「どんな習慣」だったら、大きな力を加わえてもよいのか、というか。どうすればスマホの習慣付けのように変革できるかを考えています。

みんな、やりたい仕事だけをしている

加藤:僕らはウェブサービスを作っている会社で、エンジニアとのものづくりをする上では、編集者の立場で話すことはある。働き方は5年前と変わりましたね。一番大きいのは、仕事が終わっても終わらないところ(笑)。より終わらなくなったのが一番ちがう。僕らはずっと仕事しているモードなので、今はしたいことだけしているようにする。それでも時々疲れたりもするけど、そうですね。

川尻:すごいよくわかる、したいことだけしていると、終わらなくてもいいんですよね。諦めがつく(笑)。

亀井:そうですね、じゃないと、自分がやっている意味が無い。

佐渡島:1つ1つを切りだすと「したくないこと」だったりはする。社内のマネージメントとかお説教とか。教育したくてやっているわけじゃないけど、結局、ひとりではできないこと、チームの全体力が上がればできることだとしたら、長い目でみれば「したいこと」。一生懸命筋トレだけしていてもつまらないけど、この筋トレで試合に勝てるかもと思えば、筋トレが楽しくなる。

亀井:僕はいま会社で経営だけでなく、採用、PR、みんなのモチベーションを上げるのも僕の仕事。Tokyo Otaku Modeは社員が50人くらいいるので、まだ家族みたいに見られる。一番はこの人と一緒に働きたいかどうかだから、最近は第一次面接は僕にやらせてくれって言っている。それまで面接重ねても、最後に僕が「No」と言ったら、それまでのプロセスも無駄になるし。コアなメンバーと、自分の感覚が同じくらいに保っていてほしいと思うんです。文化はいる人からしか生まれないですから。

(長谷川賢人のブログ「wlifer」より再編集の上、転載)

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Kento Hasegawa
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長谷川賢人/86世代の編集者・ライター/日本大学芸術学部文芸学科卒/フリーランス