300人の推薦から考えた「ウケる記事の3大要素」と2016年からのウェブメディア運営

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消費ばかりされるウェブコンテンツにアワードをつくろう。その年ごとの記録を残すことで資料的価値を持たせよう。そんなふうに考えた編集者・ライターの4名が発起人になった自主企画「ハイパーリンクチャレンジ2015」。

2014年12月〜2015年11月までに公開されたウェブコンテンツから印象に残った2本をピックアップ。そして、次にチャレンジを受けてもらいたい人物を指名する。

シンプルなルールで始まったこの企画は、発起人4名(藤村能光、長谷川賢人、鳥井弘文、佐藤慶一)の予想を遥かに上回り、参加者は300名を突破

(ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!)

熱い推薦文と共に紹介されていくウェブコンテンツたち、そして「ハイパーリンクチャレンジ2015」の広まりは、当初の目的以外にもさまざまな気づきを与えてくれました。

2015年のゴールテープが目前に迫った、12月27日の夜。発起人4名があらためて集い、「ハイパーリンクチャレンジ2015とは何だったのか」を語り合ってみました。およそ2時間に及んだ座談会を記事にするにあたり、僕が付けてみた見出しは以下の通り。

・ハイパーリンクチャレンジ2015をやってみた結果
・2015年は「書き手の個性」が引っ張っていった
・佐藤慶一、「わかりやすいバズり」に大喜利の心で対抗
・“インターネッツ的”な世界でウェブ編集者の仕事とは?
・鳥井研究員、「ウケる記事」の3大要素を発見?
・『歯』から考える、ウェブメディアにゾクゾク感は必要なのか問答
・2017年、ニュースアプリは消滅するのか?
・イケダコピー病は自覚症状が出にくい
・ウェブコンテンツとハンバーガーは似ている
・オウンドメディアはなぜもっと振り切らないの?
・怖い!怖いよ!ベンチャーキャピタリスト!
・BuzzFeed Japanは救世主?破壊神?
・突如、あるアプリに男たちの「すげぇ!」がこだました恵比寿の夜
・「1万PVの価値」を説明できるメディア、できないメディア
・次なる時代は「感謝されるスポンサー」とつくり上げていきたい

視点と立場のちがう発起人4名の話は枝葉が広がり、“今年と未来のウェブメディア談義” にまで及びました。チャレンジの結果をはじめ、気になる見出しがあれば、併せてどうぞ。

ハイパーリンクチャレンジ2015をやってみた結果

長谷川:佐藤くん、最近はご飯食べてますか。もう、おじさんは心配で。

佐藤:1日1食くらいは食べれてますね。これ、かければいいんですか?

鳥井:貴重な絵ですね、佐藤さんがサラダにごまをかけているっていう。

佐藤:人生最後ですよ。

藤村:人生最後のごま(笑)。

鳥井:ま、各自とりわけましょう。

藤村:佐藤さんが唐揚げも食べてる!

佐藤:編集部の方々といっしょに肉を食べにいくと写真撮られるんですよ、本当に、なんか。

藤村:大丈夫かなぁ……。さて、11月25日の水曜日に新宿の「はじめ屋」で飲んで、そこから企画が始まったわけです。寝て起きた朝、11月26日に長谷川さんが企画の叩き台を作っていた。翌日の27日に鳥井さんがブログにポストをしてスタートしましたね。

長谷川:〆切の12月20日までにカウントした参加者が310人。集計後にポストした人もいるみたいなので、320くらいはあるのかもしれない。集計は「灯台もと暮らし」のスタッフさんにもご協力いただいて。ありがとうございました。助かりました。

藤村:すごいなあ。300も新しいエントリーが生まれたっていうことですよね。

長谷川:広まっていくのを見ていて、誰かが「バトンだ」って言い始めたのが面白かったですね。テキストサイト文化、mixi文化を引きずっている人々がこれほどいるとは! 古参というかミドル層というか、インターネット大好き派閥の団結みたいなのを感じました。バトン文化って楽しくて、僕はすごい好きだったんですよ。

藤村:バトンやってましたね。

佐藤:僕はmixiやってなかったので、わからないです。

鳥井:あー、やっぱり。これをまとめてくれた、うちの若いスタッフもmixiをやったことがなくて、バトンがわからないって言ってました。

佐藤:僕も記事を読む中で、みんなが書き出しの数行でそこにすごい嬉しそうにしてるなっていうのはわかるけれども。

藤村:マジですか。へえー。それはちょっとびっくりしました。

長谷川:バトンの説明ってなんて言えばいいんですかね。大喜利の話題を振り合うみたいなことなんですよ。「○○が好きな人に10の質問」みたいなフォーマットがあって、自分が答えたら、次に答えてほしい人に回すんです。だから「ハイパーリンクチャレンジ」と流れは一緒なんですよね。そういう下地がある企画だったんだと、やってから気づいた(笑)

鳥井:そんな感じですよね。じゃあ、ハイパーリンクチャレンジを振り返ってみましょうか。単発の記事で票が多かったものは、やっぱり「オモコロ」ですか?

長谷川:集計表を見ますと、まず他薦が一番多かったのは、美容師ネットワークの支持を集めた木村直人さんのエントリー

長谷川:それからオモコロHRナビ

長谷川:メディア順に見ると、投票数が多いのはオモコロPOOL MAGAZINEデイリーポータルZが多かった。オモコロがやっぱり一番多いね。

鳥井:ブロガー界隈にまわるよりも先に美容師界隈へ広まったっていうのは面白かったですよね。一般的に想像する流れとしたら、どう考えても逆じゃないですか。

長谷川:初期の段階でパワーのあるブロガーさんにも参加してもらえた。でも、それよりも美容師ネットワークでの巨大なインフルエンサーに、企画の初期でまわってエントリー数が大きく増えたんですよね。美容師さんがすごいなと思ったのは、みんなレスが超速いってこと。

藤村:「ハイパー」「えっ」「リンクチャレンジしちゃう?」っていう、あのやりとり、良かったなあ。

長谷川:先輩へのリスペクトもあるし、仕事ができる人が多いんでしょうね、ちゃんと返事をして、すぐ形にするって、良いライターの見本みたいな感じじゃないですか(笑)

鳥井:ノリが完全に体育会系ですもんね。

2015年は「書き手の個性」が引っ張っていった

藤村:美容師ネットワークだけじゃなくて、灯台もと暮らしさんとかどうだったんですかね。結構、入っていた気がしましたけど。

鳥井:うちは全然ですよ。ポリタスはどうでしたか?

長谷川:ポリタスもあったし、灯台もと暮らしも入ってるんですけどね。実は、複数の記事を推薦する人があまりに多いので(笑)、途中から仕事の傍らで手伝ってくれていたスタッフ各位も集計しきれなくなり、今回はカウント上は最初に挙げたものをなんとか集計しています。正直、予想外の広まりに僕らのオペレーションが追いつかなくなったという、“サーバー落ち” みたいな事態になってしまった!

藤村:それを踏まえて見ても、いわゆる「大手メディア」「良く名の知れたメディア」が以外とないんだなって。

鳥井:例えば、LIGさんとかですか。

長谷川:LIG思ったよりないね。僕がいたライフハッカーもそれほどないな……ウェブメディアで頑張ってる側すると「そんなに印象に残ってないんだな」って切なさもあったな……。

佐藤:そうっすね。それはちょっとありました。

藤村:どうなんでしょう。意外とコンテンツ産業はみんなそんな感じがしません? 「テレビ番組をどれくらい覚えている?」って聞かれて、案外覚えていないのと一緒なんじゃないか、みたいな。僕も本当に覚えていた記事は1本、2本でしたね。選んだ記事くらいしか覚えてない感じでした。

長谷川:そう言われるとそうかも。オモコロ、デイリーポータルZ、POOL MAGAZINE、この3メディアの投票が多かったことを考えると、表面的にはある種の「人気ライター」を確立できているところが刺さりやすく、良く覚えられているのかな。

鳥井:やっぱり書き手の個性が前面に出ているのが強かったんですね。

長谷川:メディアとしての企画力や度量もあるんだろうけれど、裏を返せば「その人が好き」っていうモチベーションで読まれているかもしれない。たとえば、オモコロなら「ヨッピーさんが好き」みたいに。そうすると掲載媒体がオモコロじゃなくても良かったんじゃないかっていう可能性はある。ライターにとっては仕事がしやすいけれど、メディアとしては悩みどころですね。企画力がなければ記事広告の制作がつらくなるし、成長方針が他人頼みになってしまう。「どうやって企画が生まれているか」のアピールが今後は必要なのかも。

鳥井:僕はメディア運営会社は場所と人とを用意して、そのパイプ役をやるのが一番なんだろうなと思います。信頼性のある中で引っ張ってきて、ちゃんと書ける人に渡していくっていう環境を作ることがこれから大切になってくるんでしょうね。

佐藤:キャスティング力ですよね。

長谷川:キャスティング力だったらWIRED.jpなんてすごいですよね。ウェブ界で清く正しい仕事をひたすら続けてるなぁ、みたいな。

佐藤慶一、「わかりやすいバズり」に大喜利の心で対抗

鳥井:みなさんが推薦したコンテンツも面白かったです。でも、途中から「誰も挙げてないやつを選びたい欲」が如実にあらわれていましたよね。

長谷川:大喜利的な。

鳥井:「そこに目をつけるんだー!」みたいな(笑)

長谷川:それが見えるのは面白かったですよね。そんなことを言ったら、筆頭は佐藤くんの選んだnoteのやつじゃないか。

佐藤:えっ。そうっすか?

藤村:あれ、走りですよね(笑)

長谷川:あれすごかったよ。「お前そこかよ!」みたいな。

佐藤:僕、あれ結構、大喜利の心ありましたね

長谷川:あれはやばかったね。

佐藤:完全に大喜利というか、誰も選ばないだろうなと。

長谷川:ある種、メディアの記事って、編集者が「このメディアをこうしたい」みたいなコンセプトに基づいて、需要に応じて記事を作っていくじゃないですか。でも、多くのブログやnoteの『歯』って、需要ベースで動いてはいないじゃん、基本的には。

佐藤:たぶんウェブの時代だとそれが結構欠けてるんじゃないかなと。紙だと「文芸誌」とかがあるように、『歯』のような文章が属すジャンルが結構ちゃんとお金になっていますけど、ウェブだとビジネスとして回ってないので、ブログとかnoteとかで趣味的にやるというか。『歯』みたいなのがなかなか評価されづらいんじゃないかなっていうのは、個人的にすごい感じていますね。わかりやすいバズりが評価されるので。

藤村:もともとブログはね、日記ですもんね。ウェブログ。

佐藤:鳥井さんもこの間、ちょうどバズりに関して書いてましたよね。

鳥井:ははははは、いやいやいや。

佐藤:なんでしたっけあれ。煽らない……?

鳥井:そうですね。煽らないという煽り。

佐藤:あれは良かったです。

“インターネッツ的”な世界でウェブ編集者の仕事とは?

長谷川:需要がないまま書かれたものって、熱量だけは半端なかったりする。その「どうしようもない熱量」を、ちゃんと「届けるために編集する」っていう機能が欲しいなと、ハイパーリンクチャレンジをやってみて思ったなぁ。だから、いわゆるキュレーションメディアも情報としてだけキュレーションするんじゃなくて、それこそアウトサイダーアートを展示するような感覚で引っ張ってくるメディアが2016年に出てきたら面白い。それをやるのがキュレーションやプラットフォームの仕事だとは思うんだけど、やりきれていないのであれば。

藤村:「新しい才能の発掘」っていうのは編集者の仕事ですからね。これまでも、これからも、ずっと仕事としてあり続けますし。それを「ビジネス化する」っていうと難しくなっちゃうので、なかなか誰も行かなくなっちゃうんですけど……。

長谷川:書かれているものをどう引っ張って発展させるか、みたいな。今回の取り組みで、地方にライターやブロガーってこんなにいるんだなと思って、正直。僕の知ってるインターネット村って狭かったんだ、良い書き手ってたくさんいるんだなって本当に思いました。

藤村:バトンを渡した人が編集者だし、渡された人が次の編集者になってまた新しいコンテンツを見つけてくるっていうのは、すごい良い、まさに “インターネッツ的” な流れだったと思います。

長谷川:そういうときに「プロのウェブ編集者」と名乗ると……

藤村:「プロのウェブ編集者の仕事ってなんだっけ?」

長谷川:と、なる。

藤村:難しくなってきますよね。

長谷川:俄然キュレーターっぽくなる? でも、全くゼロから企画を立てて、全くゼロから作るのは別のスキルだと思うので、両方もってる方が食いっぱぐれなくてよさそうだ。

藤村:キャリア論として今後も考えたいところです。ただ、そういう役割がいてもいいっていうのは、まさにおっしゃる通りですよね。ハイパーリンクチャレンジをやって、僕らが全く見たことないコンテンツに出会えるっていうのが面白かったわけで。

鳥井:さっきの『歯』に近いのは、お笑い芸人作家さんの記事がありましたよね。

長谷川:ツチヤタカユキさんだ。

鳥井:あの記事もすごいなって思って。ああいうのが本当に出てきてほしいですよね。

長谷川:実際、ツチヤタカユキさんのポストは素晴らしかったし、cakesですぐに連載になったね。

鳥井:cakesさんはやっぱり才能を掘り出して、しっかりと活かすところがすごいですよね。

鳥井研究員、「ウケる記事」の3大要素を発見?

長谷川:……しかし、こうやって集計表を見ると、票数が分かれちゃったなあ。みんな大喜利感を出してきたってことですかね。

佐藤:まあ、でも、すごい多様性はあったので。それもインターネッツ的でよかった。

藤村:ほぼみんな1票みたいな感じなんですか。1、1、1、1……へえー! 1票が多い。

鳥井:でもなんだか、傾向みたいなものは見えましたよね。

長谷川:おっ、聞きたい。

鳥井:票数が集まったのを見ると、いわゆる「ウケる」記事って、家族・親子もの、面白系、ストイック・意識高い系の3つだなって。この3つは万人がコンテクストを共通しやすいというか、誰が見ても刺さるものなのでしょうね。。

長谷川:ストイック系なら、logmiの紀里谷和明監督が講演したやつも票数が多かった。

佐藤:迷える若者が好きそうな記事ですよ。

長谷川:一番の票数だった木村直人さんの記事も同じテンションだ。「お前らぬるいんだよ!」くらいの感じの。

佐藤:啓発寄りというか。

長谷川:やっぱり啓発系の語調強めなやつには一定層の需要があるなと。需要と供給がなんとなく見える。「ウケる」記事の3つの軸はたぶん間違ってないと思う。この辺のサンプルをとりつつ、自分のメディアに当てはめるのがオイシイ作り方のような気はするね。

藤村:みなさん記事を選ぶ時に、Twilogとかはてブとかをさかのぼったっていうのをよく見たり聞いたりしてたんですけど、僕は全然やってなくて。本当に心に残っていたやつを一本パーン!って出したんですよね。

面白いとか驚きとかっていう、人間の感情を突くような要素があるものはやっぱり残るんじゃないかなと。僕はコンテンツの世界って、すごい思っていて。基本的に人を感動させるとか行動させるとか、そういうところにつながってくると思ってるので。

今回の結果も「まっとうだな」っていうか。変に奇をてらった、テクニカルなものがあまり選ばれなくて、もっとエモっぽいものが選ばれたっていうのはすごい面白かったなって、見てて感じましたね。

『歯』から考える、ウェブメディアにゾクゾク感は必要なのか問答

佐藤:僕も一応、大喜利感を出す前に、直感で思ったのはポリタスの高橋源一郎さんのだったんですけど。

藤村:誰か出してましたよね、先に。

鳥井:紫原明子さん。

佐藤:僕、ちょうど1ヶ月前の飲み会でも「ポリタスの高橋源一郎さんのがいい」って、ちょろっとだけ言っていたので、それかなと思ってたんですけど、Twilogを見返したらやっぱり『歯』だったなっていう。

鳥井:『歯』も親子ものですからね。

佐藤:たしかにそうっすね。

鳥井:親子ものってすごいですよね。みんな共感できるというか。

長谷川:共感値って、大事だと思ってて。最近、「北欧、暮らしの道具店」のFacebookページでたくさんの「いいね!」やコメントが付いた投稿があったんですが、『わかったさんのシュークリーム』という絵本を紹介したコラムなんですよ。コメントを見ると「懐かしい」っていう人と、「娘と読んでますよ」っていうところまでいって、リーチする年代の幅がハンパなかった。ノスタルジーと親子は、本当に単純に共感できる。

佐藤:親子ものを書ける人が2016年に来るかもしれないです。

藤村:うーん、ただ、やっぱり『歯』に関しては、「親子ものだからウケた」んですかね? 僕は、結構こうなんだろう、輪廻転生というか、人間の業、カルマの再来みたいなところにすごいゾクっと来て。

佐藤:ゾクっと。

藤村:親子っていうのもあるんですけど、ゾクゾクしました。解釈を読者に委ねる、強いてくる記事だったので。

佐藤:なかなかウェブってああいうのが少ない。制作側で答えを決めちゃって、読んだら面白いよねっていうのがフォーマットとしてある中で、読者の想像力みたいなのとか、感情を動員できる『歯』みたいなの読み物って、ウェブだとなかなか少なくなってるんだなって。紙だと小説とか読者の想像力がかなり求められるじゃないですか。

長谷川:なんでないんだろうね。

佐藤:読まれないのと、評価されづらいのと、そういう書き手がウェブに来てないっていう。

長谷川:そしたらメディアにとって、「読まれない」っていうことを恐れず出すのは大事なのかもしれないね。出すことに価値があって、そのうちの50人くらいが死ぬほど刺さる、そういうノイズみたいなコンテンツを出せる方が、メディアとしては意外と豊かなんじゃないか。

藤村:うーん、現状、個人的には、ウェブにゾクゾク感はあまり求めていない自分もいて。インスタントに読める、自分にとって価値のある情報だったらそれでいいやくらいで終わっちゃってるところがあります。ゾクゾクは、本にまだ求めちゃってる自分がいますね。その意味でも、ここまでゾクゾクさせられるウェブ記事は、あんまり今までなかったのでびっくりしたな、あれは。佐藤さんの紹介じゃなかったらたぶん読んでなかったです、自分は。

鳥井:ですね、それはあると思います。

藤村:Taejunさんのファンだったら読んでるのかな。あの記事が、いきなり出てきてすぐに読まれるかというとそうでもない気がしていて。あれが「読まれるものになる」にはどうすればいいのかっていうのは、すごい感じますけどね。

鳥井:「誰が紹介したか」って、すごく大事ですよね。その文脈が大事なんだなと。やっぱり普段面白い記事を書いたりする人は、紹介するものも面白いですよね。一方で、はせおやさいさんがつぶやいてたように、「付き合いとかを無視したときに、本当にその記事を選びましたか」みたいな話はとても的を射てる。

佐藤:たとえ多くの人や身近な人に読まれていなくても、本当に選んでいたか、みたいな。

鳥井:ですね。そのふたつはやっぱり人間らしさが出るところもあるし。

長谷川:だからこそ、みんなが読んだことないけれど、むちゃくちゃ面白いものを紹介してくれてる人っていうのに、価値が高まっていいような気がするな。自分が必ずしも書けなくても、「それがいかにヤバいか」を教えてくれる人に対しての信頼度は上がる。そうやって専門性をもって企画して、作品の価値を紹介するのが本物のキュレーションだったんじゃなかったっけ?みたいなことを、やっぱりあらためて思う。どこかのコンテンツを引っ張ってきて、自分を良く見せるばかりではなく(笑)

佐藤:良い表現ですね。

2017年、ニュースアプリは消滅するのか?

鳥井:TwitterやFacebookが出てくる前は、「今日の1本」みたいにおすすめすブログも結構ありましたよね。はてブだってそうだったわけじゃないですか。互いにキュレーションしあうというか。

藤村:キュレーションやキュレーターが流行ったのっていつでしたっけ……。

長谷川:佐々木俊尚さんが本を出してからくらい?

鳥井:『キュレーションの時代』だとすれば、2011年の本だから4年前ですね。

藤村:あの時には、まだ一般化はしてないですもんね。

長谷川:「同じ時間に同じ数をやり続ける」ということに意義があった時代ですよね。『スマートニュース』ができる前はあれでよかったんだと思う。

藤村:確かに。

長谷川:やってくれちゃったんですよね。そういやハイパーリンクチャレンジの企画が出来た飲み会で、「2017年にはニュースアプリがなくなる」っていう話をしたじゃないですか。

佐藤:現実にありえますよ。ニュースを読むためだけにアプリを開く、という行動はだいぶ少数派だと思います。だから、各社はサービス化、プラットフォーム化に向かっている。

長谷川:2017年にはきっとなくなっている。『Gunosy』は100%なさそうな気がする、みたいな(笑)

佐藤:「Gunosy砲」とか、もうないですからね。

鳥井:ないんすか? へえー。うちは全然Gunosyに載るような記事がないので。

佐藤:噂を色々聞くので、いずれ取材したいなって思ってはいるんですけど、ちょっとエグくなりそうみたいな。スマニューと全然桁が違う。

長谷川:差がついちゃった。結局、『スマートニュース』のひとり勝ち状態なのかな。

佐藤:スマニューだってYahoo!と比べるとやっぱり全然負けてはいるので、将来的にどうなるかはわからないです。媒体からすると、Yahoo!から来た人の方が全然回遊するんですよね。

鳥井:読んでるのがスマホかPCかの違いですよね。

佐藤:そうですね、それもあります。

鳥井:Yahoo!から来る人はほぼほぼPCでしょうし。

佐藤:アプリ時代のニュース消費とかは、未来暗いなあって思いながら。

藤村:キュレーションアプリはどうなるのだろう。

長谷川:サイボウズ式は?

藤村:コンテンツのプラットフォームというか、「流通元」っていうのは時代に応じて変わると思っているので。メディアをやっていて本当に思うのは、良いメディアと良いコンテンツを作り続けるしかないなっていうのはすごい感じますね。その流通させ方っていうのは、たぶん時代とかに応じて変わっていくから、そこはそのときに応じてやればいい。いかにその「流行り」とかに目をくれずに、良いものを作り続けるかっていうところが大事だと感じます、自分は。あんまりバズらせたりしちゃいけないんだなって。鳥井さんの「人を遠ざける編集」の話にもなりますけれど、淡々とコツコツと続けて、読者の信頼を獲得していくっていうところが、メディアの答えになってる気がしていて。

鳥井:そうですね。

藤村:一過性を求めると死んじゃうというか。それはずっとやりながら感じてますね。僕は「年々でしっかりとスケールしていくメディア」を目指しています。なんとなく10年後に「あっ、まだ続いてたけど、すごいスケールになってるね」って言われるのが目的ですね。

鳥井:ウェブメディアほど「急がば回れ」ですよね。

藤村:ほんとそうですね、それは思います。

鳥井:急拡大して残っているところがひとつでもあるのかと。

長谷川:僕も個人的に「メディアをやりたいんです」とかなんとか相談をもらったりするんですよ。でも、話を聞くと、だいたいは「やめたほうがいいと思う」って言いますね。そういう状況でメディアを手段としてやろうとしている。しんどくて成果もなかなか出ないし、お金はかかるのに儲からないし、薦められないよって。理由はたぶん、どこまでいってもコツコツやるしかないっていうことがありそう。

藤村:それは結構大きいと思いますけどね。

長谷川:「急拡大したメディアがどれだけ残っているのか問題」はたしかにそう。仮にPVが急拡大したっていうことは、結局は「記事数を増やす」か「流入経路を増やす」しかないはずなんですよ。見た目上の数字を積み上げるってことですよね。それが儲かるか儲からないかは別の話になったりするのかもしれないけど……どうなんですかねぇ。

イケダコピー病は自覚症状が出にくい

長谷川:メディアって、2016年も数が増えるのかなぁ。もうあんまりいらないんだけど(笑)

佐藤:これまでのキュレーションみたいな感じのは増えない気がします。もっとまっとうなメディアは増える気がします。なんとなく。やり方も見えてきたというか。

藤村:まっとうでいくと、今は「くらしのきほん」がとても好きで。

長谷川:いいですよねー。僕も見てます。そういえば最近、イケダハヤトさんがすごい……なんていうか、こう、すごいじゃないですか。キレがよくて、イキイキとしていて。「ローカル系のメディアなんて記事だけ見たら差別化できてないんじゃないの」ってツッコミもありましたよね。

鳥井:はいはいはいはい。でも、ごもっともだなと思ったので。やっぱりちゃんと見てくださってるなぁって思いましたよ、逆に。

長谷川:ハイパーリンクチャレンジの結果を見てるときに、イケダハヤトさんのポストをあげる人が一定数いたんですよ。影響力あるんだなぁって。

藤村:ブログ塾とかすごいですしね。

長谷川:で、そういう人はだいたい文章がイケダハヤトさんっぽいっていう現象もあって。

佐藤:そうなんすよ。それ、すごくわかります。コピーが多い。イケダコピー問題。

長谷川:イケダコピー病みたいな。

佐藤:イケダコピー、すごいっすよ。

長谷川:チェックしていたブロガーさんの病状が進行していくのを見ると、切ない気持ちになる。

鳥井:あれは、ブログ塾の生徒なんですかね?オンラインサロンの。

佐藤:えっ。

鳥井:オンラインサロンをやっていますよね、イケダさんって。あの生徒さんがやっぱりイケダ節になっちゃうんですかね?

佐藤:……が、多いみたいですね。でもサロンに入っていなくても、なってる人は結構いる。

藤村:へえー。すごい。

長谷川:ライトノベルの新人賞で同じような話を聞いたことがありますね。ある小説家がブレイクすると、応募者がその文体に寄っていたり、内容も似通ったりするらしくて。ヴァンパイアものが流行ると応募作もヴァンパイアものばっかりになる。「小説家になろう」が異世界転生もので溢れかえっているみたいな。

藤村:そういうもんですかね。

佐藤:ケータイ小説とかもそうでしたよね。「恋人が難病で死ぬ」みたいな。

長谷川:僕も高校生の時に書いた小説を読むと、明らかに当時好きだった作家の文体っぽさを感じるからわかるんだけど、好きでそればかり読んでいると似てきちゃうことはあるんですよね。でも、あれをやればやるほど儲かるのはイケダハヤトさんはじめの一握りしかいないっていうのに、いかに早く気づいて戦略を取るかですよね。

佐藤:年収150万で生きていく本を出していたのが、すごい壮絶な釣り針になってすごく面白いなと。

長谷川:今、ブーメラン状態でしょ。

佐藤:今は年収2000万とか言っている。まぁ、本人は気にしていないと思うし、やりたいことが変わったんでしょう。環境を変えたり環境に適応したり、自分自身を更新し続けるすごさはありますけれど。

藤村:灯台もと暮らしさんに、ブログ塾とかやってほしいです。

鳥井:うちで、ですか。何ゆえですか。

藤村:なんか、灯台もと暮らしさんだと行きたくなる感じがある。

鳥井:あー。藤村さんみたいな人に刺さるのか。

佐藤:ほぼ日超えしましょう。

鳥井:いやいや……(笑)

佐藤:各メディアが教科書を作ってほしいな。

鳥井:「箱庭」さんのやつって読んだことありますか。かなりよくできてるんですよ。

佐藤:あります!greenz.jpのもちゃんとできているので、それぞれのやつも見たいなって。

藤村:書籍になってるやつですよね。

鳥井:そうです、そうです。発売から少し時間が経っちゃっているので古い話も多いんですけど、ウェブメディアの運用方法だけじゃなく、SNSの活用方法もまとめていて、すごいなと。ああいうのを一冊見て、マナー面を押さえて、あとは自己流というか、みんな好きにやればいいと思うんですよね。

ウェブコンテンツとハンバーガーは似ている

長谷川:ウェブメディアの教育問題はあるよね……。問題でいえば、イケダコピー問題もそうだけど、「ウェブライターとはなんぞや問題」も、どうなんですかねぇ。紙のライターとウェブライターの違いみたいな記事がたまにあるじゃないですか。文字数をおさめるのがうまいとか下手とか、ウェブのやつは基本ができてないとか、色んなことが飛び交ってる。でもそれって、「小説家とエッセイストはどっちが文章うまいんだっけ」くらいの、妙なズレを感じるんですよ。同じ球技だから、サッカーも野球もうまいでしょくらいの、乱暴なものを感じる。

佐藤:そうですね。将来的に考えたら、今はウェブにいる人も紙とかで絶対に書くときがくるわけなので。そしたら、徐々に入り混じってくるというか。今はまだ黎明期っちゃ黎明期かもしれないので、ああいうちょっとした「ポジション分け」みたいなのが盛んなのかもしれないですね。

長谷川:良い例かはわかんないけど、ハイパーリンクチャレンジの中で、モーニング娘。の道重さゆみ卒業公演のレポートを挙げている人がいたのね。そのレポートを書いたのは雑誌の『B.L.T』のハロプロ担当だったそうなんです。

藤村:あの『B.L.T』ですか。

長谷川:それが普通のライブレポートじゃなくて、割と自分の気持ちも込もっていて。

佐藤:「私」が入っている記事。

長谷川:そう。でも読んでみたら、ちょっと文章を固く感じるわけ。これはこれである種のクオリティではあるんだけれど、どこか紙で読んでいる感じがぬぐえなくて、ほしい体験が違うっていうか。むしろレポートなら「おかんと一緒にフジロック行った」みたいな、テンションが高くてビックリマークを重ねちゃうくらいの方が、スマホで読んでいてすごい引きこまれたりもする。

長谷川:その2つが共存している世界において、紙とウェブの良い悪いを区別する必要が果たしてあるのかどうかっていうのが、もうわからんなーって僕は思っていて。結局、媒体として何を載せたいか、何がしたいかだけの違いだから、そこでお互いをディスりあったって、どっちも良い世界じゃないよなっていう気はした。

藤村:良い悪いの二元論とかでは論じられないですよね、ウェブコンテンツって。

鳥井:「今はゆるいものを読みたい」ってタイミングもありますしね。ハンバーガーみたいなもんですよね。

藤村:おっ。

鳥井:マクドナルドも良いし、3000円するやつだっておいしいし。どっちのハンバーガーも良くて「今、欲しいものを食べたいよ」みたいな。

藤村:「自分が今それを欲しい状態か」の違いだけかもしれない

長谷川:なるほどな。それなのに、多くのウェブメディアがマクドナルド化していっているみたいな面もあるのかな。ただ僕は「結局それでどう稼ぐのか」を考えないと、あんまり意味がないなとも思っていて。どれだけおいしいハンバーガーでも売れないと食っていけない。稼がなくてもいいなら、食べた人だけが足繁く通ってくれるような店に振り切った方が面白いと思うけれど、どうせなら「やりたいこと」を貫いて、かつ商業的に成功している方が僕はかっこいいと感じちゃうから。

オウンドメディアはなぜもっと振り切らないの?

藤村:今でいうオウンドメディア、事業会社のメディアは振り切っていくのが面白いと思うんですけどね。

長谷川:そうなっていいのに、そうならないのが変ですよね。

鳥井:たしかに。

藤村:メディアで稼ぐ必要がない事業会社も多いと思いますから。

鳥井:サイボウズ式って、社内でこう、変な話、他部署からの目が痛いってことはないんですか。

藤村:特にないですね。割ともう成果が出てきているというか。成果を認めてくれるところになったので。

鳥井:他社さんの場合「社内政治で負けちゃう」っていうのは結構ありそうですよね、ひとつの理由として。

藤村:kakeruの編集長さんのブログには、まさにそんなことが結構書かれてて。

藤村:オウンドメディアを運営してる会社とはいえ、わかっていないところもあるでしょうからね。「メディアを運営する」ってことが。

長谷川:結局、記事広告に置き換えたら「一社クライアント状態」ですもんね。そうなると、やれることなんてクライアントの度量次第で。

藤村:まさに仰るとおり。

長谷川:それでいくと、僕は日清食品あたりがキャンペーンではなくてメディアをやってくれないかなって思うんですよ。あの「10分どん兵衛」の企画が通せる度量があるならできるんじゃないかと。

藤村:「カレーメシ」とかもクリエイティブすごいですもん。

長谷川:オウンドメディアも、もうちょっと、こう……

藤村:大手企業の参入が少ない?

長谷川:そう、日清食品とか、トヨタとか、本格的に出てきたら何かが変わりそうな気はちょっとするんですよね。日清食品があれだけ遊びの幅があるのを見せつけてくれると、それを期待せざるを得ない気もする。それで「そこにはできないもの」を作っていくのがインディペンデント系メディアの仕事になって、バイアウトの可能性にもつながる。

藤村:そうなってほしいですね……海外もコカ・コーラとかやれてますからね。

怖い!怖いよ!ベンチャーキャピタリスト!

藤村:バイアウトで思い出しましたけど、Facebookでそれっぽいやつが回ってきたんですよ、1年やってイグジットしちゃったっていう、車のキュレーションメディアの話。

鳥井:でもそれは賢いですよね。そうやって最初から割りきって1年後に売却するって決めて作るメディアもなきにしもあらずだなとは思いますね。

藤村:モビーですかね。

藤村:1年じゃなかった、半年だった。

佐藤:へえー、知らなかったです。

長谷川:メディアのバイアウトってどうなんですかね。多い?

佐藤:最近は……あっ、でも多い。海外も「Pitchfork」とかそれこそ。

長谷川:ああ、Pitchforkはそうだ。コンデナストが買収でしたね。

佐藤:巨大なものは多いです。日経がフィナンシャル・タイムズを買ったのも一応。でも、ちっちゃいのはいくらでもありますね。

長谷川:もっとあってもいいんじゃないかな。それだけ日本ではウェブメディアが良いビジネスにまだまだなってないってことだろうし。やっぱりアメリカの方がなってるんでしょ。

佐藤:なってますね。

藤村:日本ではなかなかビジネスにつなげるのは難しいと思います。

長谷川:日経がフィナンシャル・タイムズを買ったのは、あれって落とし所どこなんですか? 日経電子版に購読すればいいやとか、そういうことなんですか。

藤村:有料会員数を合算で増やすとか。

長谷川:合算ねぇ。

藤村:メディアはこだわりが強い事業ですからね。買収されたからといっていきなりそこにがっちゃんこってなるようなものでもないっていう。難しいところですね。

鳥井:メディアが買われるときの評価額って何に基づいているんですか? 先見性というか、これからの伸び、もしくは持っているPVやUUですか。

佐藤:伸びですね。MERYとかiemoとかはSEO型なので「記事を増やせばこれだけ将来増えるよね」っていうので。DeNAとしては何年後かまでに5000万人DAUを獲得したいという計算が成り立つから……

鳥井:じゃあ「投資として買おうか」ってことなんですね。

佐藤:MERYとかiemoって、紙媒体と比べてこだわりや思想の性質が違うので、DeNAに買われても色々やりやすいというか。こだわりが強いところが買われるよりも、むしろキュレーションメディアみたいな計算が成り立つところを買収した方がやっぱりうまくいってるのかな。

長谷川:その分野に詳しくないので深く話せないけれど、ベンチャーキャピタリストが「メディアの可能性」みたいな、計算が難しそうな部分にまで目を向けていくと変わる?

佐藤:鳥井さん、前になんか、Twitterで。

鳥井:あはははは(笑)、すいません。

佐藤:なんだっけな、「そういうところにお金をぶっこむVCが諸悪の根源だ」みたいな。キター!鳥井さんキター!と思って。

藤村:PVが3年後にこれだけ伸びますとか、誰もわかんないですよね。

鳥井:僕が聞いた話によると、VCが聞いてくるのって、結局2つしかないらしいんですよね。「今のPVはどれぐらいあるのか」と「1記事の製作単価はいくらなのか」ってところ、それを聞いてこれから伸びそうなだなと思う分野にお金が出るみたいで。取材許可もちゃんと取らないような新興ウェブメディアに、VCがお金を出している話も聞きました。ディズニーランドに行って取材許可を撮らずにバンバン記事にしてあげるとか。

長谷川:そこをさ、「これだとまずいからさ、違うやり方でPVとってくれたらお金出せるよ」みたいな、そういう風にすればいいのに。

鳥井:そうなんですよね。そうそう、そうだと思います。

長谷川:良い大人であってほしいよね、それは。

鳥井:うん。「目の付け所は良いからさ、ちゃんとコンプライアンス守ろうよ」みたいなことを言ってくれればいいのに。

佐藤:まあ、でも、その事業自体がうまく行けばVCとしてはお金入ってくるので。

藤村:わかってても、炊きつけるというか。

佐藤:それもあるかもしれないですよね。

鳥井:事故ったらその会社のせいですからね。ハシゴ外されるんでしょうね、きっと。「そんなことやってたんだー、知らなかった。けしからん。」みたいな。

佐藤:そうですね、VCは事業者ではないですもんね。

鳥井:下手したら、結んでる契約書の内容次第では「著作権侵害をしていたら、むしろ損害賠償」みたいな話だってありえますしね。

藤村:そうすると、やっぱり出資を受ける側のリテラシーやコンプライアンスっていうところに落ち着いていくわけですね。

鳥井:でも、それを学生ベンチャーみたいな子たちに、Wordpressでウェブメディアを作ったらすげぇバズったみたいな子にそういうことを求めるっていうのも……。

BuzzFeed Japanは救世主?破壊神?

佐藤:そこでBuzzFeed Japanみたいのがお手本になってくれればいいですね。集まっている人材はもともと新聞やウェブメディア業界で知られた記者ばっかりで、良い人がめちゃくちゃ多い。まぁ、でも、BuzzFeed Japanって「ちゃんとしたメディアをやりたいのか」、もしくはたとえば「Yahoo!にいっぱいくるネイティブアドをどうにかするためなのか」、ふたつの考え方があると思うんです。もちろん、メディア事業なので、ネイティブ広告で儲けたいからBuzzFeedをつくるみたいな考え方もたぶんありえるので、後者の色が強くなることがあれば結構やばい。Yahoo!は儲かるけれど、メディアとしては結構微妙っていうのはありえますね。

鳥井:でも後者の可能性も高そうですね。

長谷川:僕もそんな気がする。

佐藤:そうじゃなきゃYahoo!と組まないですからね、たぶん。

鳥井:そうですよね。へえー。

佐藤:でも人材は本当にすごいですよ。こんなすごい人材たちがひとつのメディアに集まるのかっていう感じはしますけど。

藤村:BuzzFeedかぁ。「タイトルをABテスト」など。

佐藤:CMSが一緒なので、やってますね。

鳥井:そこまで行くと、やる側もプレッシャーしかないでしょうね。

長谷川:それを楽しめるかどうか。

藤村:それが好きな人がいいのか。

長谷川:数字ジャンキーだったら超楽しいんじゃないですか。

藤村:最適化の世界って、ゼロイチを生むのとは全然別のロジックじゃないですか。90を100に近づけるような作業なので。それも大切なのは間違いないのですが。

鳥井:僕が期待したいのは「分散型をどうやってやっていくのか」っていうところ。メディアの記事というよりは、FacebookとかTwitterとか。日本は日本で特殊なSNS文化があるわけじゃないですか。そこにどう合わせてくるのかなっていうのは楽しみだな。

佐藤:BuzzFeedって本体で2億訪問数なんですけど、外のプラットフォームだと、閲覧数になっちゃうんですけど50億なんですよ。それはまさに分散型の妙というか。でも日本だとFacebook、Twitterとプラットフォーム数が少ないので、そんなにちゃんと分散型にできるのかって言われると、普通のメディアとそんな変わんないんじゃないかっていう。

藤村:単純に日本はプラットフォームが少ない?

佐藤:少ないですね。LINEも最近は始めましたけど、現代ビジネスでもやってますが、トラフィックバックをどう増やすのかは大きな課題になる思います。

藤村:LINEの中で完結しちゃうんですよね。

佐藤:一応、関連リンクは貼れちゃうんですけど。

長谷川:基本的に「そのメディア内で完結する」と思っていた方が良いんだな。

突如、あるアプリに男たちの「すげぇ!」がこだました恵比寿の夜

藤村:海外だと分散型プラットフォームのさきがけ、有名なのってあるんですか。

佐藤:一番有名なのはたぶんSnapchat。ニュースのチャネルがあったりして、かなりすごい。デイリーで1億人以上が使っていたり。

鳥井:ええー。

長谷川:あれって間に広告入るんだっけ。

佐藤:入ってます。しかも媒体側が入稿するんですよ。今、海外のウェブメディアって「Snapchatスペシャリスト」っていう求人がめっちゃ多いんですよ。ビデオエディターみたいな人が引く手あまたで。でも、これって発明な気がしたんですよ。スマホ時代のひとつのフォーマットになりえる気がして。

藤村:あ……すごいわ。

佐藤:そうなんです。海外はこういうのがスタンダードになりつつある。

鳥井:これ普通にLTE環境でも見れるんですもんね。

長谷川:CNNとかもいる。すげぇ、CNNだともっとちゃんと表現が固い。うわーーー!

佐藤:かっこいいっすよね。

鳥井:ヤバいですね!

藤村:ここまで来てますか。

鳥井:すっげぇ遅れてる感ありますね、日本。

佐藤:そうなんですよ。これ初めてみたときちょっと衝撃すぎて。「Snapchatがメディアをどう変えるのか」っていうので、4000字くらい書いたんですけど。

藤村:佐藤さんが「革命」って言ったの、なんかわかった気がした。

鳥井:LINEニュースはこれがやりたいんですかね。

佐藤:意外と日本の人は、これの存在を知らなかったりする。

長谷川:Snapchatという存在は知っていたけど、実際見てなかった。見よう。

佐藤:この機能も途中から始まったんですよ。滞在時間を伸ばしたいっていう狙いもあったのかな。2016年に大統領選があるので、それに合わせて既存メディアから新興メディアにシフトが起きているところです。ニューヨーク・タイムズが文字だけで伝えるよりも、Snapchatのほうが動画っぽくて伝わりやすいので、大統領選とかの結果次第ではこっちの方がメジャーになるかもしれない。若者が1億人使ってますからね。BuzzFeedとかSnapchatがもしかしたら2016年はもっと影響力をもつのかなって。

鳥井:次の大統領候補はSnapchatを制した人が勝てるかもしれない、みたいな。オバマのときみたいに。

藤村:オバマがやったときは、FacebookとTwitterでしたからね。

佐藤:SnapchatはCNNにいた選挙報道のエース記者を獲得して備えてるんですよ。

藤村:ちょっとたまげました。アプリを今、ダウンロードしちゃいましたもん。

鳥井:あー……これはもう、何個遅れてるんですかね、日本は。

佐藤:Snapchatに可能性はある。でも、Snapchatは日本にまだ進出していないので、そこが先かもしれないです。Facebookみたいに日本法人がないので、Facebookのインスタントアーティクルの方が先かもしれないですね。

鳥井:もしかしたら、日本のメディアが提携する可能性もあるかもしれないってことですよね。

長谷川:これを見ていて思うのは「どっちに行くか」ですよね。Snapchatみたいな方面に行くのと、もう完全に翻訳不可能みたいな方に行くのと。今回のハイパーリンクチャレンジで良いなと思ったのは、日本には古き好きテキスト文化が意外と残ってるんだということ。それがお家芸みたいに残っているのがわかってすごい嬉しかったけれど、今後はその間にいるところがキツいんじゃないかっていう危機感がありました。

「1万PVの価値」を説明できるメディア、できないメディア

長谷川:いやぁ、この手元の未来もすごいけど、リアルに2016年はどうなるんですかね。

鳥井:来年はもっとタイアップが色々出てくるのでしょうね。

長谷川:たしかに、今年はオウンドメディアが増えたのと、タイアップが増えたのと、ふたつの流れがあった。オモコロあたりは「タイアップをなんとかしようとしてる感」の代表で、「シムシティ」の記事がハイパーリンクチャレンジでも注目を集めたっていうのは、その新しいステージを開きつつあるみたいなことは思ったりはした。

藤村:クライアントが「お金を投資してコンテンツを作る」っていう視点になって。今までにない、お金をかけるからこそできる面白いものを作っていこうぜ!みたいな雰囲気になるといいんですかね。

長谷川:実はここへ来る前に僕と藤村さんは軽く飲んでいて(笑)、そこでも僕が言ったんですけど、片や僕はオモコロのタイアップのやり方はどうなのか?と思うことも正直あります。「大喜利的にどう面白く記事にするか、ネタはこれでした」みたいな形だけが評価されていくと、かえって全体として首がしまるようなイメージがある。

鳥井:難しいですよね。あれでじゃあ何人がシムシティのゲームをダウンロードしたのかって言ったら、たぶんそれほど多くはないんじゃないかと思うんです。まぁ、普段よりはドーン!と伸びてるんでしょうけれど、それが本当に「それだけの広告効果があったのか」って言われれば、まだまだ未知数ですよね。

(※編集注:オモコロの山口むつおさんのブログによると「一般的なPR記事に比べてかなり良いコンバージョン率を出すことができました」とのこと)

長谷川:これだけ情報が分散化して、読む人がすごい薄い興味で読み始めるときに、広告はどういう仕事ができるんだろうとも思ったりする。でも、この前にテレビで、SMAPの中居くんが『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』ってスマホゲームのCMに出た事件があってさ。キャラクターの歌を唄って、ダンスも完璧な振り付けで踊るっていうCMだったのね。そしたらこれが大ウケで、ダウンロード数が右肩でパーン!と上がったらしくて。そう思うと、15秒のCMでも人はダウンロードするし、超面白いコンテンツがあってもダウンロードしない人がいるっていうのは、そもそも「視聴層が違うから」って話かなぁと。

鳥井:どこにリーチできるか、ということか。記事でのタイアップって、広告主に何か保証とかはしてるんですか?

長谷川:PVはどこもしてるんじゃないかな。想定PVを、たぶん1PV100円くらいで換算した価格に設定している。1万PV以上なら100万みたいに。メディアの媒体資料を取り寄せて、想定PVで金額を割ってみたら、だいたいそれくらいになってると思う。売りだしたいメディアだと1万PVで80万とか、もしくは強気に1万8000PVで200万とか。

藤村:今、1万PV行くって結構難しいものなんですか。媒体にもよるというのはわかってます。

長谷川:どうなんですかねぇ、難しいんじゃないですか。「1記事1万PV絶対行きます!」って言い切れるのって、結構大変だと思うんです。

藤村:たしかにねぇ、なるほどねぇ。

長谷川:でも、色んな手があるわけですよ。誘導枠をつけるとか、Facebook広告を打って入れるとか。「PVを集める」っていう意味では、なんとかなるんです。

鳥井:現代ビジネスさんだと、記事の平均PVはどれくらいですか?

佐藤:記事によってPVはまちまちで一概には言いにくいですね。ただ、時事系のものは読まれやすくてPVが高まりやすいっていうのはあります。昨日はフィギュアスケートの羽生結弦くんが出る試合があったので、企画編集してジャーナリストの人に羽生くんに関する記事を書いてもらったら、平均的なものの何倍も見られていました。

長谷川:時事系は強いなぁ。でも、仮に1記事で10万PVを取れたとしても、たとえば「現代ビジネス」と「灯台もと暮らし」ではその10万PVに対する意味や価値が違ってくるはず。

鳥井:そうなんですよね。またそれでも変わってくるんですよね。

長谷川:それをどう対外的に説明するか。たとえば、同じタイミングでのタイアップ企画を展開した時に、仮にAのメディアで10万PV、Bのメディアで1万PVしかなかったとして、「広告主にとっての価値が本当に10分の1なのか」っていう話だと思うので。それは「北欧、暮らしの道具店」も一緒ですよ。うちの1万PVと、どこかの1万PVの価値はどれくらい違うのかっていうのを、たぶんしっかり理解してもらうとか、うまく見せるとかが大事ですよね。

鳥井:どれくらい読者の属性をちゃんと説明できるのかってところですよね。

長谷川:だからイベントなんて顔や属性が見えて、すごい良いと思うんです。灯台もと暮らしさんもやってますよね。

鳥井:そこのヒアリングというかリサーチにもなってるいるので、リアルイベントは良いかなと思っています。

次なる時代は「感謝されるスポンサー」とつくり上げていきたい

長谷川:そういえば、灯台もと暮らしさんって、「暮らし」といいつつ、全然ご飯ネタをやらないじゃないですか。

鳥井:インタビューで人に寄せちゃうことが多いので。

長谷川:この前、あるライターさんとしゃべっているときに、ちょろっとその話になって。

鳥井:おお、ありがたいです。

長谷川:そのときに話していたのが、お雑煮の話だったんですよ。お雑煮って、関東と関西で味が違うとかあるじゃないですか。それを、きれいにしっかりアーカイブしてるところってどれだけあるんだろうねって。「暮らしにまつわるもの」という目で見れば、「食べ物の違い」って意外と面白くて。東京の子が「関西のお雑煮って知らなかったな」と、ある一定の特集を通じてわかると、相手の暮らしとメディアに一歩近づくんじゃないのかな……みたいな話になったんです。そういうことをやっているところってないな、灯台もと暮らしさんあたりがやってくれたら良さそうだよねって。

鳥井:いや、もう本当に。お雑煮特集はネタにあがってるんですよ、実は。やっぱり地域ごとの違うお雑煮を並べてって見せるっていうのは、いつかやりたいねと言いつつ。ただ、やっぱりそれは結構予算がかかってしまうので…。

長谷川:たとえば出張で遠くへ行ったときに、そこにしかない写真を撮っておくのはすごくいいなぁと。何をアーカイブするべきかっていう話だと思う。

鳥井:食文化とかにはあらわれるんですよね、地域の色みたいなものって。

長谷川:そう、どうしたって出るよね。それが意外と面白かったり。雑誌なんかその話ばっかしてるわけじゃないですか。それで最終的にどこからお金をもらうか。B級グルメだのなんだの、食に投資するお金は自治体にもあるわけで、それを基点に広まっていったらなー、みたいな。

鳥井:味噌汁も地域ごとに色があるので、それを例えばインスタント味噌汁メーカーさんとかと一緒にスポンサード企画として「日本の味噌汁をまとめる」みたいのは、いつか提案したいなぁと思っています。

長谷川:それでいくと、2016年から2017年ぐらいにあったらいいなっていうのは、スポンサー広告だね。

鳥井:ですね!

長谷川:さっき、藤村さんと「オモコロはテレビっぽい」って話になって。記事の作りとか見せ方がテレビっぽい感じがするし、あれは完全にテレビと同じになった方が面白いんじゃないかとは思う。「提供〇〇」みたいな感じでバンって出て、記事は全然、ちょっと関連してるくらいでよくて、大手を振ってすごいことをやるみたいな。そういうスポンサー記事も増えたら良いなぁ、みたいな。

鳥井:今は本当に、どんどん「提供」という文字を小さく見せようっていう感じがあるじゃないですか。わかんないようにわかんないように。そうじゃなくて、ドーンって出て、そっから読んでいくみたいなの方がいいですよね。

長谷川:「こんな記事ができるのは、〇〇さんのおかげです!ありがとうございます!」みたいな。

鳥井:出てきてほしいですよね、出てきてっていうかやればいいんだろうけど、自分たちで。

長谷川:うん、ぜひ見たいです。さて、ここらで時間もいいところなので。2016年のハイパーリンクチャレンジはどうなりますかね。

藤村:ちょっと匂わせましょうよ。

長谷川:これぞ「スポンサーをお待ちしてます!」って。

佐藤:はてな、note、Medium、各社。

長谷川:スポンサーをお待ちしております。

鳥井:たしかにスポンサーが欲しいっすね。

藤村:まずは灯台もと暮らしの企画でイベントなんてどうすか。

鳥井:ああ、できるものなら。

藤村:「2015年はバトンを取ってくれてありがとう」っていう、謝恩祭みたいな。

(2015年12月27日、恵比寿のとある居酒屋にて)

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