会社員から医学部への編入

人生を変えたアメリカでの治療

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記事ページ:https://bit.ly/2FseDtP

内容

文系出身の会社員として過ごしながらも、30歳を過ぎてから医学部受験を志した理由と、医学部受験の際に感じたマインドブロック(学歴・年齢・性別)をどのようにして突破したのかを中心にお話し頂きました。

医学部受験に至るまで

現在医学科3年生、36歳の学生です。

32歳になるまで、医療系の仕事したいと思ったことはなく、まして医師になりたいと思ったことはありません。1度目の学生時代は、海外と関りのある仕事をしたいなぁと漠然と思っていました。日本と海外のお金のやりとりかモノのやりとりに関わる仕事をしようと考えた結果、医学部入学前は商社で会社員として働いていました。

医師を目指すきっかけとなったのは、30歳のときにアメリカでアトピー性皮膚炎の治療を受けたことです。もうすぐ33歳になるという頃に編入試験の予備校に通い始めましたが、医師を目指すことへのマインドブロック(学歴・経歴・年齢)は相当のものでした。

受験勉強は働きながらやっていました。上司には、医学部受験の勉強していることを打ち明け、仕事は最低限でやるつもりであること、でも受かりそうもなかったら受験をやめてきちんと働くから、しばらく多めにみて下さい!と伝えていました。

理解のある上司で感謝しております。

アトピー性皮膚炎

幼少期から重度のアトピー性皮膚炎で振り回されてきました。

民間療法から最近発売となった抗体医薬まで大体のアトピー治療は試しています。ご多分にもれず脱ステロイドも経験しており、全身大やけどしたような肌になり、正常な肌がほぼないような頃もありました。その後ステロイドを使うようになりましたが、増悪と寛解を繰り返し、状態が悪いときは見るに堪えないような肌の状態、ひどい痒みに襲われていました。

肌の炎症だけでなく、花粉症、化学物質過敏症などによる呼吸器症状もどんどんひどくなり、30歳の頃にこのままではもう無理、限界…と疲れ果ててしまいました。

たまたまネットで見つけた、アメリカでのアトピー治療プログラムを藁にもすがる思い受けに行ったところ、私の人生は大きく変わりました。炎症、痒みが出なくなり、ベタベタ全身に塗っていたステロイドや免疫抑制剤を全く使わなくなりました。痒くない、炎症がないってこんなにも楽なんだとなんとも言えない気持ちとなりました。

アメリカでの治療は、1か月間のプログラムとなっており、皮膚科&アレルギー科の先生の診察・治療を受けるものでした。アメリカ側には通訳や送迎などをして下さる医療コーディネーター(日本人)が、日本側にも事前のカウンセリングなどサポートして下さる方がいました。

この治療プログラムは、もともとはアメリカで学生のホームステイの受け入れをされていたコーディネーターが、受け入れた留学生のアトピー性皮膚炎が悪化したため、近く皮膚科に連れて行ったことがきっかけとなってはじまったようです。

日本人の重症アトピー患者をみたアメリカの皮膚科医が、なぜ日本人のアトピーはこんなにも重症化するのだろうか?と研究を始め、口コミで渡米した日本人のアトピー患者の治療受け入れをするようになったと聞いています。

アメリカで受けた治療は実は特別なものではありません。寛解に導くことになったメインの治療法は、減感作療法です。小学生(25年くらい前?)の頃にダニの減感作療法は日本の病院で受けたことありますが、当時はある濃度まで治療を進めた際に体に反応が出てしまい、アナフィラキシーショックを医師が心配し、治療は中止されました。

現在、日本の病院でも減感作療法を受けられる病院はありますが、私がアメリカで受けた減感作療法は30種類以上の抗原を一度に注射するという方法で、このやり方は日本では行われていないようです。

アメリカには1か月間滞在し、帰国後も2週間に1回注射×5年間続けました。アレルゲンのワクチンはアメリカのアレルギー科医が処方したものを空輸で個人輸入する方法で入手し、日本の皮膚科医に注射をしてもらっていました。

空輸されたワクチンが国内輸送される際は常温輸送になってしまうため、東京国際郵便局まで荷物を取りに行ったり、医薬品の輸入手続きをしたりとワクチン入手に心配事が付きまとっていました。

アメリカの医師が私に行った治療や指導で、日本では行われていないこともいくつかありました。特に複数抗原(30~40種類)を使った減感作療法を日本の医療制度の中で受けられたらいいのにと、通院先の医師に尋ねましたが、舌下免疫療法が出てきていることもあり、注射による減感作療法が主流になることはないよとの答えでした。

減感作療法はだめでも、お薬(治療)だけではない、スキンケアやアレルゲンの除去などのトータルコントロールの手法を日本にも取り入れられることがありそうです。

肌に触れるもの何もかもに過敏に反応してしまい、もうお手上げ状態のところに、「この洗剤で洗濯しなさい」「これがダメならこの洗剤」「シャンプーはまずこれを使ってみた。ダメなら次の候補あるから」「洗濯物を干すのは外干しダメ、部屋干しダメ、乾燥機で!」と1つ1つ具体的な指示をもらえると安堵の気持ちでした。

また、日本にいる頃から肌の保湿保湿!と言われ続けそんなの当たり前と思っていましたが、アメリカの皮膚科医に保湿の仕方を指導された後は、いままでの保湿の仕方は全然足りなかったと気付かされました。このような細かな生活のノウハウは医療コーディネーターからも二重の指導があり、教育効果が高かったです。

モヤモヤから決意へ

特殊な最先端治療法ではなく、昔からある治療法の提供の仕方が違うというだけで症状が劇的に良くなったことに対して、モヤモヤした気持ちが続きました。

20年以上振り回された症状がたった1か月でここまでよくなって、しかもその後もキープできている、今までの私の人生は一体なんだったのだろうというネガティブな気持ちに支配されていました。

このような気持ちは、1~2年ほどずるずると続きましたが、次第にまだ苦しんでいる他の患者さんも自分が経験したことを伝えて、少しでも楽になってもらえたらいいなと思うようになりました。

しかし、アメリカ式の減感作療法は、皮膚科医のオーダーのもと、アレルギー科医がアトピー患者向けにアレンジしたもので、アメリカでも標準治療ではないようでした。

アメリカで習ったスキンケアの方法にしても、ただの会社員が、情報シェアするのは怪しさ満載です。様々なアトピービジネスを自分でも見てきたので、絶対そのようにはなりたくない。うさん臭くならないためには、医師になるしかない!という結論に至りました。

アトピーで死ぬことはありません。もっと苦しい疾患に苦しんでいる方がいると思うと、アトピーで大変だったという話をするのはとても抵抗があります。

しかし、全身の皮膚の炎症、痒くて寝られないこと、真っ赤な顔、がさがさの肌を抱える生活は、QOLが著しく低いです。日常生活で疲弊するのはもちろん、思春期、受験、就職、恋愛、様々なシーンで足かせになります。同じような思いをして苦しむ人を少しでも減らしたいです。

そんな気持ちから医学部への編入を決意して、今に至ります。

大学受験

最初の大学受験は、猛烈な受験勉強などもせず、ただただ東京に行きたい、実家を出たいという気持ちで大学受験をして、東京の大学を受験しました。結果、日本大学に入学し、よくある文系学生の気楽な生活を過ごしました。

周期的に全身の炎症や痒みを繰り返すので、長期的に何かに取り組むというのも結構苦手でした。状態が悪くなってしまうと、何も手に付かずひきこもるような生活をしていました。

医学部受験では、一般受験と編入試験かについては、自分の学歴を考えると、いつ医学部に受かるかもわからない受験のために仕事を辞めるのは怖いし、そもそも収入が途絶えるのはまずいということで編入試験を選択しました。

医学部受験もすんなり決断できたわけではなく、受験時点で30歳を超えていて高齢であること、また自分のような学歴・経歴の人間が受けていいのだろうかと散々悩みました。

以前の職場の上司に「生まれ変わったら医師になりたいです」とぽろっと言ったところ、「なればいいじゃん!」と軽い感じで言われました。これで完全にふっきれたわけではありませんが、特に受験資格に制限はないし、仕事しながらやってもデメリットないよな~!挑戦してダメな理由はない!ということで、すぐに予備校に申し込みました。

転職して1年経ったあたりから受験勉強をスタートしました。余計な残業しないで帰ろうという雰囲気、休みを取りやすい仕事内容、バックアップ体制、フレックス制度スタート、など幸いにも働きながら勉強しやすい環境が揃っていました。

高校時代は地学選択だったので、高校生物から勉強を始め、受験2年目で受かりました。我ながら快挙!?と運も良かったです。

学生生活

Choosing Wiselyという医療キャンペーンに関わる活動をしています。

Choosing Wiselyキャンペーンは、「根拠に乏しいにもかかわらず実施されている過剰な医療行為をEBMの観点から見直す」という活動で、最終目標は、患者が価値ある医療を受けられるよう、医療従事者と患者の対話を促し、意思決定を共有しましょうというものです。

自身のアトピーの治療において、エビデンスがないことをやって症状がとんでもなく大悪化して猛烈に苦しみました。一方、標準治療では症状をコントロールできませんでした。

また、アメリカで受けた治療は、エビデンスがあるわけではなさそうですが、症状は劇的によくなりました。良くなる治療ならエビデンスがなくてもいいのか?

これらの経験からも、Choosing Wiselyをもっと考えてみたいという気持ちが強くあり、積極的に学び、活動しています。

ビジョン

慢性疾患に振り回され、病気に耐えること、打ち勝つことが人生の目的となってしまっている患者さんが、その人自身の人生を生きられるように治療を提供したいです。

やられっぱなしの人生から、楽になったからこそ、現在進行形で苦しんでいる人の苦しみを取り除きたいという気持ちがとても強いです。

慢性疾患の治療は、診察室で行われる治療も大事ですが、患者自身が日々の生活で行うコントロールが適切に行われて初めて治療がうまくいくのだろうと思っています。

「診察室の外」がキーワードでしょうか。

でも、このセルフコントロールが簡単ではありません。この辺りの仕組み作りにも取り組んでみたいと思っています。

出演

大池 麻衣(Mai Oike)

旭川医科大学医学部医学科3年生

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出演

中村 恒星(Kosei Nakamura)

北海道大学医学部医学科2年。富山大学薬学部卒。医学生チャンネルプロジェクトリーダー。難病患者のQOLを上げるために事業化を検討中。Makers University 4期生。

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収録・編集

山崎 奨(Sho Yamazaki)

情報戦略家・動画メディアクリエーター。東京大学法学部卒業・横浜国立大学法曹実務専攻修了・法務博士。

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医学生チャンネル公式Twitterアカウント

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