写真で見るクールな都市、東京

Ray Yamazaki
6 min readDec 3, 2015

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東京。正体不明の小さなクリーチャーがひり出した聖なるクソみたいな街!私たちはまさにそこにやって来た。行ってみたい場所のリストで真っ先に挙がったのは「中銀カプセルタワービル」だった。

ところが、そこで丸2日過ごしてみるとカプセルホテルで住むことが恐怖に満ちて居心地の悪いことが少しずつ分かってきた。 午前5時に隣人が4階上のフロアにカプセルごと引っ越すことを決め、突然部屋が揺れて地震のパニックに襲われたことを除けば素敵な体験だったのだが。彼は礼儀正しくも他の隣人が住むカプセルにお詫びとしてチョコレートの箱を残して行ったようだ。

「中銀カプセルタワービル」は外観と内装が完璧にマッチした珍しいビルのひとつだ。外から感得できるコンパクトなミニマリズムは各部屋、通路に一貫して浸透していて、濃くインパクトがある体験を生み出している。窓を調節しようとした時に響いた音は、この世のいかなる音よりも遥かに恐ろしい。頻繁にオイルをさすべきなのだが、借り主はそうしないことに決めたようだ。

ニーナは生まれながらに東京が似合う女で、それは彼女の着古した毛羽立ったセーターも同じだった。それは13年前に私の祖母の友達だった日本人が祖母にあげた思い入れのある贈り物だった。ニーナもセーターもあるべきところにいる。私は彼女の顔を窓から引き離せなかった。でもそこからの眺めを考えるとそれは仕方のないことだった。

私はiPhoneの「中銀タワーアプリ」で遊ぶのを止められなかった。カプセルが自動的に移動するよう設定しておいて、土壇場でキャンセルする。すると課金はされないがカプセル全体が揺れる。1度これでニーナをからかったことがあるが、もう2度とやらない。東京では地震を遊びのネタにしてはいけない。悪気があり過ぎる。(訳者注: 実際はこういうアプリはないし、各カプセルが自動で動くこともない。以下も作者のユーモアが続く)。

東京や日本を世界の中でも特異な存在たらしめているのはディテールや、さらにその奥のディテールへの気遣いだ。東京で1番グリースにまみれ、最も暗くうらびれた街角すら申し分なく清潔だ。いつも整然としているわけではないが、日本人は仕事を怠らず全てが目的を持って動いている。隣の道に踏み込むと、攻殻機動隊の草薙素子がサイバー化した犯人を追っているのを見かけることができそうだ。

「世界貿易センター東京」もしくは「モノリス」が戦闘機の機影を映している。戦闘機は限りなく静かに飛んでいるので、あなたは顔を撫でる温かい風でしかその存在を感じることができない。偉大なテクノロジーの神々への私の祈りも邪魔されることはない。

ここからでは、そこらじゅうに袋一杯のビルのミニチュアをばら撒いたかのように雑然と見えるかもしれない。しかし、ひとつひとつをよく見ると、新しい電子機器類には見られない完璧に整備された構造や、ある種の際立った雰囲気に気付く。超高層ビルの隙間から現れ、他のビルを通ってどこかへと消えていくモノレール。たくさんの利用者がいるという事実を知らなければ、私を楽しませるためだけに存在していると思ったかもしれない。

真夜中でさえ、東京は眠らない。およそ4,000万人もの人々がこんなに狭い地域で自制心と創意工夫を持って暮らしているのは、世界でも東京だけだ。ドローンは主に夜の間に街を飛び回って家々の玄関やバルコニーに商品を配達する。なかには配達をバルコニーで待つ人もいる。私たちは、店まで歩いていくという昔ながらの古き良き方法を選んだ。

私たちはレセプションの係の人から、左のビルはフロアとフロアの間の床が先進的な素材で作られていて信じられないほど薄くなっていると聞かされた。東京での厳しい日常に耐えられるほどの強度を保ってだ。右のビルは必要に応じて外面をシフトできる。確認したわけではないが、きっと内部の構造を移行させるのと関係があるのだろう。

シンプルな外観に騙されてはいけない。これら1つ1つの部屋は快適な生活を送るのに必要なすべての設備を備えている。まるでカプセルに見紛う形だし、それっぽく動くが。

残念なことに「中銀カプセルタワービル」と違って、眺望を良くしようとしてもこのカプセルは前方にしか動かせない。完璧に、そして驚くほどこのビルが美しかったので、この程度ではあまりガッカリしなかったが。

これほど申し分なく整備されたビルは、完全な「ホワイトスフィア」の製造センター以外に考えられるだろうか?私はここが「ホワイトスフィア」市場を窮地に追いやるための施設だと確信していたが、誰も、入口の守衛すら私を翻意させられなかった。

世界最大の都市でありながら、東京の人々は排気ガスの臭いをアルプスの頂上の空気よりも良くしようと奮闘している。郊外から見ると、あたかもビルといつまでもたなびく靄(もや)が織りなす絵画のようだ。起伏に富んだ地形は小さなビルをより大きなビルよりも高く見せるし、緩やかな正弦波が無限に続いてゆくようにも見える。

ここに立ち、眺めにうっとりしながら、全ての素晴らしさに涎を垂らしそうになりつつ、私は東京が永久に終わりを迎えることのない永遠の都市だとの思いを新たにしている。お別れを言うこの瞬間まで。

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