フルタイムジョブ、正社員の終焉

Hiroshi Takeuchi
8 min readSep 1, 2015

--

一被雇用者として週40時間も働きたい人なんてどこにいる?将来は、多分誰もいないのでは ?

フルタイムジョブ…私たちのこの働き方は、実は人間にとっては自然な労働形態とはいえない。1800年代以前は限られた少数の人々しか体系化された”週◯時間労働”の枠組の中で働いていなかった。つまりこの働き方は一つの工場の中で労働者たちを同時に働かせて効率的に製品を作るために、早期の実業家たちが思いついたものなのだ。そしてこの数百年の間に、40時間労働はワークライフの中心的存在になった…人々が同じ場所、同じ時間に集まり、共同作業でものを作る良い方法がそれ以外になかったからだ。

でも今テクノロジーが労働の常識を変えつつある。この労働のトレンンドは、私たちの殆どが同時に複数の”マイクロキャリア”を持ちながら働き、伝統的なフルタイムジョブから脱却するという、新しい時代の幕開けを指し示している。「働く場所」は伝統的な企業のデスクから、クラウド上のマーケットプレイスへと変わりつつある。フリーエージェントはたくさんのプロフェッショナル同士の関係を基盤とし、企業家精神と利益追求の二つを頂点とする層を形成してさらに収入が増えるようになるだろう。

この種の初期バージョンの労働市場を私たちは既に見たことがあるはず、そのほとんどは実にシンプルで、直接参加型のものだ。LyftとSidecarは人々が自身の車と時間を投資することが利益を得ることができるプラットフォームだ。TaskRabbitは臨時の仕事のためのマーケットで、Airbnbは家の空き部屋を他人に貸すことができるサービスだ。EstyはあなたがGame of Thronesを鑑賞中に作ったスカートを売ることができるマーケットだ。

中でも大きな変化は、これが今後プロフェッショナルの仕事に変わるかもしれない、ということだ。副業としてではなく、人々は自分の持つ専門知識(エンジニアリング、法律、化学、執筆、その他のあらゆること)をたくさんのクライアントに即座に売り込むことができるようになる、収入の良いキャリアを持った多方面で活躍できるフリーエージェントとしてだ。

General Electricが良い例だ。2013年にGEはBracket Challengeという名の公募を開いた。当時GEのジェットエンジン部門は飛行機のエンジンの格納を補助するための新しい軽量ブラケットのデザインを必要としていたのだ。世界中から約700人のデザイナーが応募し、GEはその中からインドネシアのエンジニアM Arie Kurniawanのデザインを採用した。Kurniawanは賞金として$7,000を手に入れ、そしてGEは従来よりも84%も軽量なパーツを手にいれた。

この取り組みの成功がきっかけとなり、GEは今後も数年間にわたり多くのデザイン公募を計画している。他にも医薬品メーカーから石油採掘会社まで様々な企業が同じような動きを見せている。Don Tapscottは著書『Wikinomics: How Mass Collaboration Changes Everything』の中で、風通しの良い企業がどのように自身の仕事を人々に解放してしていくかを説明している。それが起これば新たなマーケットが姿を現し、世界中の人々が自身の専門性を企業に売り込むようになるという。

Recruitifiと呼ばれるスタートアップは、プロフェッショナル達が収入のために自身のネットワークや技能を活用できるようになる別の方法を示してくれている。Recruitifiの核を成す目的はリクルート業界のためのプラットフォームを創造することだ。彼らのテクノロジーはあらゆる分野のヘッドハンターを一方に集め、もう一方に企業クライアントを集める、といったものだ。Lyftがドライバーと搭乗者それぞれを別の場所に集めて、賢いアプリにその仲介役をさせるのと同様の手法だ。

でもRecruitifiはある副産物も生み出した…誰でもリクルーターになれるのだ。「エントリーする際に障壁なんて一切ないんです。」と語るのはCEOのBrin McCaggだ。例えばあなたがマーケティング部門のマネージャーだとしよう。あなたは恐らく他の優秀なマーケティング部門のマネージャーも知っているはずだ。Recruitifiでアカウントを作成したら、マーケットに参加している人がどんな人材を必要としているかをくまなくチェックし、クライアントである就職希望者に就職口を幾つか提案する。クライアントが採用された時に、あなたは仲介料をもらう。といった具合にあなたは自分のネットワークを利用して新しい仕事を得ることができるかもしれない。

Upwork(以前まではElance/oDesk)はフリーエージェントのためのマーケットで、利用者は殆どどのようなタイプの知識ベースの仕事でも、それが可能なフリーエージェントを探して雇うことができる。一方で新しいツールたちが起業を今までよりも更に安く簡単にしてくれるので、人々は容易にパートタイムの起業家になることができる。DigitalOceanはスマートフォンアプリの構築や、そのアプリを使った一人ビジネスをシンプルにしてくれる。Shapewaysは誰かがデザインしたプロダクトを、3Dプリントして世界中に売る手助けをしてくれる。Amazon Web Servicesやその他のクラウドサービスは、デジタルビジネスのホスティング及びそのビジネスを世界中に広めるためのコストをどんどん下げている。

これらすべての技術的発展のおかげで、今や典型的なプロフェッショナルは複数のキャリアを持つことが可能となり、また複数の分野から収入を得ることが可能となってきている。彼らはリクルーティングもできるようになるかもしれないし、ビジネスを構築して大企業からプロジェクトを引き受けるようになるかもしれないし、そのすべてが実現するかもしれない。あなたの理想のスケジュールがどんなものでも、週労働時間はあなたが働きたいだけ働けるようになるかもしれない。

この新しい労働市場が私たちの仕事により柔軟性をもたらすのは確かだけれど、果たしてそれによって今より働かなくてもよくなるかどうかは未だに誰も知らない。歴史を通して新しいテクノロジーが登場する度に、私たちは将来は労働時間が今よりも短くなるだろうと予測してきた。1965年の米国上院議員分科会の予測によると2000年までにアメリカ人の週の労働時間は14時間になるはずだったらしい。現代のアメリカは代わりに最先端のテクノロジーを手に入れたけど、週労働時間が最も長い国の一つだ。

それにこういった活動的な起業家としての人生というものは年配世代にとってはぞっとするものである一方で、若い労働者のほうが早い段階でのリタイアを望む傾向にあることは周知の事実だ。長期のフルタイム雇用という考え方は明らかにそれまでの勢いを失ってきている: 最近のFuture Workplaceの調査によると、91%の労働者が一つの職を続ける期間は3年未満であることを期待していて、フレキシブルな時間に働けることや場所に依存しない職場環境の方が給料よりも優先順位が高いことがわかった。

実際、Live in the Greyと呼ばれる組織が「何故みんな週40時間費やすような一つの仕事が良いのか?」という問いを発している。この組織は自らを「破壊者であり、イノベーターであり、また人生と労働は白と黒で決めつけることができないと信じる思想家指導者」と称している。Pepsi、Warby Parker、そしてLululemonなど彼らを支持する企業も多い。労働と情熱を合わせたほうが、ある意味十分なお金を手に入れることができて、もっと価値ある人生を送れる、というのが彼らの考えだ。

私たちはこの新しい未来へと確実に進んでいる、だから卒業目前の学生たちは自分自身に問いかけて欲しい。どんなキャリアを望むのか。一つの企業で働く伝統的なフルタイムジョブか、またはマイクロキャリアか。そして最も重要なのは、どのようにこの新しい経済の中で自分の立ち位置を見つけるか、ということだ。

Illustrations by Anna Vignet

Work: Reimagined は仕事環境の進化を探求するシリーズです。

--

--

Hiroshi Takeuchi

Medium Japanでボランティア翻訳をしていました (現在は違います) 。ここに書いてある記事はすべて当時に翻訳された記事です。私個人の見解または創作物ではありません。引き続き公開はしますが、質問または訂正リクエスト等は受け付けません。ご了承ください。