有料アプリ頼みのビジネスはもうオワコン

Haruo Nakayama
3 min readNov 5, 2015

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by DHH

Apple の App Store と Google の Play Store が、大半の開発者にとってソフトウェアビジネスを営むのにほぼ最悪と言ってもいい環境であることがはっきりしてきた。Facebook、Lyft、Basecamp のようなサービスを運営する側からすれば、アプリを出す先としては最高であることに変わりはないのだが、生計を立てる手段、(あるいは控えめに言っても)ソフトウェアそのものを販売する手段としてはひどい状況になってしまっている。

とはいえ、1アプリ1ドル(高くてもほんの数ドル)の価格設定では、なるべくしてなった状況とも言える。Angry Birds のようなごく一部のゲームでしか成立しない価格設定だからだ。それ以外のどんな種類のソフトウェアであれ、こう安くてはビジネスは成り立たない。この価格設定を成立させるために求められる規模や新規ユーザーを継続的に獲得していく必要性を踏まえると、参入していいのは有名どころの大作アプリの開発元か、高い高い壁を乗り越えて自社アプリを「次の大作アプリ」に育て上げられると思っている開発者たちだけだろう。

そういったわけで、ソフトウェアビジネスで長期にわたって成功するための手段として有料アプリで勝負するのはやめたほうがいいと、会う人会う人に伝えるようにしている。アプリを入り口として使うようなサービスを運営するほうが、うまくいく確率はずっと高いからだ。

一例をあげよう。先日、Tweetbot の開発元が8ヶ月ぶりの大規模アップデートをあえて5ドルの別アプリとしてリリースした。その結果としてユーザーからの非難が開発元に集中するのを見ていて、「有料アプリは割にあわない」という思いを新たにしたところだ。残念なことではあるが、この状況は「いずれ起こるであろう事態」が実際に起きただけ、ともいえる。

というのも、Apple しかり Google しかり、アプリをできるだけ安くしておくほうがメリットがあるのだ。具体的には、アプリをダウンロードするためにお金を払う必要がなければ、みんながもっと気軽に iPhone を買ってくれるだろうというメリットが Apple にはある。Google の場合は、アプリ開発者は売上をあげるために自分たちのアプリに広告を入れざるをえない、というメリットがある。Win-win-lose、アプリ開発者だけが負け組になるパターンだ。

このように、プラットフォーム事業者にとってのメリットが、そのプラットフォームのうえでビジネスを展開しようとする人たちにとってデメリットとなることは多い。いつ動き出すかわからないローラー車の前に散らばっている小銭を、あくせく拾っているようなものだ。期待される利益をあげるのに十分な小銭を先駆者たちはかき集めることができるだろうが、そうでない大半の開発者にとっては、リスクに見合うだけの利益はとうてい望めない。

有料アプリはもうオワコン。忘れてしまったほうがいい。

Basecampの最新情報については、Basecamp.comをご覧ください。

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Haruo Nakayama

ex-Medium Japan translator. Trying hard not to get “lost in translation”. 元Medium Japan翻訳担当。