”Feel Good”の法則:ホルモンや習慣、行動がどのように影響を及ぼすのか


僕らは気分を良くしてくれることが好きだ。
傷つけられたり、気分を害されることは避ける。
人間の基本的原理だ — 喜びは進んで受け入れるし、痛みは避ける。
これって新年の抱負が毎年失敗してしまう理由をうまく説明していると思う。つまり、30ポンド痩せるとか借金をゼロにするとかベストセラーの本を出版するとか — そういうのって大抵自分が恥ずかしいとか、いつまでたっても達成できずに嫌だと思っていることから派生しているからなんじゃないだろうか。
さらにその抱負はしばしば巨大な不安の塊と一緒にいる。数週間でスポーツジムに行くのを止めて、最高の小説の執筆を途中で止めて、そして不安や恥ずかしさが押し寄せてきて、一切しなくなる。
喜びは受け入れ、痛みは避ける。
嫌な気持ちになるほど、集中できなくなり向き合うのが億劫になる。悲しいけれどそれが真実だ。Planet Fitness (アメリカの大手フィットネスジムのフランチャイズ)は1年間のメンバーシップ契約で儲けているのも納得がいく。彼らは最初に君が持っていたやる気を持続させようとはしない。そしていつか君はジムに行かなくなり、手元には契約解除できないメンバーズカードだけが残り、Planet Fitnessにはお金だけがやってくるというわけだ。狂ってると思わない?
この原理はマーケティングや何か変革をもたらす際に使われる”ストーリーテリング”にも大きく関わっている — かれこれ12年間僕がずっと抱えていた疑問だ。そして最近になって僕はこの原理に関する幾つもの点を結び、ストーリーテリングの新しいやり方を考え始めた。今回は僕が見つけた手法についてみんなに共有したい。
“Feel Good”の法則
喜びへの強い想いは人をゴールへと導く。ゴールというのは君に「あれは僕をポジティヴにしてくれる。だからあれが欲しい。」と言わせるものでないとダメだ。じゃないと、どんな合理的な説明を受けても君は芽キャベツを食べようとはしないし、1日5マイルも走らないし、毎朝ラテを飲むだろう。ゴールそれ自体が君を良い気分にしてくれるものでなくてはならない。報酬とか。
ニューヨークタイムズ紙のベストセラー”The Power of Habit”の中で、Charles Duhiggは習慣を変えるための3つのステップについて話している。早起きの習慣が欲しい?定着させればいいんだ。ステップ1は早起きするためのきっかけを作ること。ステップ2は日課にすること。
ステップ3?自分にご褒美をあげることさ。
習慣を変えたい時、ポジティヴな状態に持っていくことが大事だ。ゴールは気分を良くしてくれるもの、悪くするものはダメだ。
我がGet Storied社では、これをフィールグッドの原理と呼んでいる。製品や団体やメッセージに対する世間のイメージを変えたい時、その人たちの気分を良くさせるんだ。最初にネガティブな気持ちにさせるのはダメだ!
マーケティングを学んだ人なら一度は耳にしたことがあるだろう。
病気を発明しろ。そして治療薬を配れ。
これを聞いて具合が悪くなるのは僕だけ?
君がこれを仕事で使っていたとしても、君は悪くない。僕らはただこの魔法の方程式が効果的だと教わり、使ってきたというだけだ。
マーケティング部門で働く人、変革推進者、それにリーダーにとっては盲点だろう。特にプレゼンテーションを作成していたり、製品を売ったり、変化をリードする人にとっては。
僕らは意図的にも無意識的にもストーリーをパターン化し、再構成することで人々にネガティヴを植え付けるような行動を取ってしまう傾向がある — 僕らはその行動に気づいていない。そして立ち止まってふと思うんだ — 何故この人は僕の言うことにイエスと言ってくれないんだろう、株を買ってくれないだろう、商品を買ってくれないんだろう、と。
僕らのストーリーテリングのほとんどは聞き手をポジティヴにさせることについてフォーカスしきれていない。
「欠点マーケティング」から抜け出そう
実際に第二次世界大戦や大量消費主義が始まった時代から使われている消費者向け広告/マーケティングの作戦ノートというものがある。そのノートによると、大事なことは消費者自身に「自分には何かが足りない/どこか欠けている/欠陥品なんだ」と思わせること、そしてその後に治療薬をあげてその原因を取り除くこと、らしい。
やった!君の商品はヒーローだ。
このアプローチは「欠点マーケティング (Inadequacy Marketing)」という名前で知られている。人の弱みと、内在する現代生活への不満に付け込んで物を売るという仕組みだ。僕の周りでは小売セラピーって呼んでいる人もいる — とにかく何か高い商品を買うんだ、そうすればストレスや悩みはあっという間になくなるよ — 勿論、このアプローチはまずうまくいかない。
欠点マーケティングはJonah Sachsが2012年に書いた「Winning The Story Wars」の中でうまく説明されている。
「聞き手に危険が迫っていると伝えるんだ、必要なものが欠けていると伝えるんだ、そこはお前の場所ではないと伝えるんだ。そして魔法の薬 — 君の製品を差し出すんだ。」
- Jonah Sachs, Wired, 2013.
非常に長い間、「ネガティヴを植え付けるマーケティング」は商品を売るために、とあるストーリーテリングの戦術にずっと頼っている — 聞き手不安にさせて、プレッシャーをかけて、その商品が必要と信じ込ませて売るんだ。
君は不思議に思うんじゃないだろうか — でも自分が商品を売り込んでいる時はそんなのじゃないぞ、聞き手は冷たいし、僕の言っていることが耳に入っていない — 何故だ?


聞き手をポジティヴにするストーリーテリングの科学
ここで良いニュースを一つ — 最新の神経科学の研究が、どのようにストーリーテリングがゲームを好転させるかについて明らかにしたんだ。
その研究によると、実際のところ「ネガティヴを植え付けるマーケティング」は聞き手へのアプローチの中でもかなりお粗末なやり方である — 聞き手の「戦うか、逃げるか」本能が異常に働き出すからだ。リラックスや安全を感じる時と比べて、恐怖を感じているとき人間は周囲の意見を受け付けなくなり、そして感情的になるんだ。
感情の裏側に潜む科学 — ホルモン
聞き手を前にプレゼンテーションをする際の冒頭や締め切り間近でプレッシャーを感じている時、または大きな爆発音を聞いた場面を想像してみてほしい。君の体の中では — アドレナリンが放出され背中を汗が流れ落ちる。これらは全てコルチゾールというストレスホルモンによって起こる現象だ。小さなコルチゾール(小さなストレス)は集中力、注意力、決断力に良い効果をもたらすなど、人間にとって良い時もある。
でもコルチゾールが多すぎると、「戦うか、逃げるか」本能のトリガーが引かれてしまう。
このような極限状態 — ライオンに遭遇した時など — のストレス下では僕らは戦うか、逃げるか、もしくは死んだふりをするか、即座に決断を下さなければならない。そして今の世の中、みんなが朝から晩までコルチゾール漬けの生活を送っている。目覚まし時計のアラームを止めて、スマートフォンに届くメールを取り憑かれたようにチェックして、朝の通勤ラッシュと格闘して — まだ朝の9時にもなっていないのにコルチゾールが君の体を何度も駆け巡っている。
対照的にオキシトシンは人間をポジティヴにしてくれる、いわばフィールグッドホルモンだ。
最高に美味しい料理を食べたり、セックスや、大きな喜びを経験した時を想像してほしい。そういう幸せな瞬間にある化学物質が血流に放たれるんだ — それがオキシトシン — それが放出されると僕らは気分は良くなり、リラックスする。オキシトシンは結合ホルモンとも呼ばれている — 君が自分の居場所を見つけた時、子供の頃母親と一緒にいた時、好きな人や仲間と一緒にいるとき — オキシトシンが君の身体中の静脈を駆け回っているんだ。
ストーリーテリングはホルモンに直接作用する:
去年ニューヨークで開かれたストーリーテリングのカンファレンスでは、Zak博士がある研究結果を共有してくれた — ある特定のストーリーを聞いた場合にコルチゾールやオキシトシンがどのように反応するのか、についての研究だ。
その中で彼はどのようにドラマチックなストーリー展開が脳内で特定の神経化学反応(とりわけコルチゾールとオキシトシン)を誘発するかについて説明した。
興亡についてのクラシックなストーリーは聞き手に苦痛の感情や感情移入を呼び起こすこともわかった。
具体的には、主人公が窮地に立たされてしまったときに聞き手は緊張と苦痛を感じ、彼らの体内からコルチゾールが放出される。その後ストーリーが平和な終局へ向かいだすと、今度はオキシトシンが放出される — ポジティヴにしてくれるホルモンだ。
全体としてストーリーが良いと、聞いた僕らはポジティヴになるんだ。(ブレア・ウィッチ・プロジェクトは例外だけどね。。)
周りの人に影響を与える方法:
もし君のゴールが聞き手に新しいインスピレーションを与えることだったり、アイデアを理解してもらうことだったり、新しい行動を起こさせることだったら — 聞き手の「戦うか、逃げるか」本能を刺激することって理にかなっているのかな?
ストレスと緊張を与えるよりも、「戦うか、逃げるか」本能を刺激するよりも — 聞き手の考えを変えさせるためにはもっと別のアプローチが必要なんじゃないだろうか。
「ネガティヴを植え付ける」アプローチは上手くいかない。
前述のホルモンや習慣に関する研究結果がそれを示しているし、僕ら自身も毎年新年の抱負を投げ出すという経験をしている。だから僕らは知っている — 人を不快にさせることは人間の変化を促すベストな方法じゃない。
忘れないでほしいのは、人が論理的に物事を考えた時、その答えは何もないところからパッと出てくるわけではない — 感情に左右される — ということだ。
「Feel Goodサンドウィッチ」を試そう
ストーリーを準備しているときは、まず相手をポジティヴにするフレームワーク作りから始めよう。相手に何か行動を起こさせるためのストーリーテリングでは、感情や認識には何も悪影響がないことを約束するんだ。
その環境作りが終わった後は — 聞き手は君の話を聞く姿勢をとっているはずだ — そこで君のストーリーに不快に思うことや緊張する要素を含めてみよう。聞き手の体内に適度なコルチゾールが放出され、感情や好奇心が刺激され、知覚が研ぎ澄まされるだろう。
これが「Feel Goodサンドウィッチ」だ。
聞き手の立場に合わせて、聞き手が必要とするにポジティヴな要素を与えてあげる、そうすることでオキシトシンというポジティヴにしてくれるホルモンが放出されるんだ。
これができたら、次は衝突や困難な状況を演出して、少量のコルチゾールを放出させてあげよう。君のストーリーに出てくるキャラクターが超えなければならない障害を作り出すんだ。
コントロールできる程度のコルチゾールは、集中力や感受性に良い影響を与える。争いやクリエイティブな緊張を含むストーリーは僕らの注意を引きつける。
最後に、君のストーリーを2つ目のオキシトシンでサンドウィッチしよう。幸せの感情を呼び戻すんだ。だからってハッピーエンドにする必要はない。ストーリー自体は — 聞き手へのこれからの旅への招待状のような — シンプルなものにしたほうがいい。そうすればこのストーリーを話し終わった後も君を気にかけ、一緒に旅をしてくれるだろう。HBRが説明するように、僕らの脳は良いストーリーテリングが大好きだ。
簡単に言うと、聞き手に行動を起こさせるためには次のパターンに沿って話をすればいい — 聞き手が共感できる背景を採用し、聞き手を肯定し、適度な緊張を導入、再びオキシトシンを服用させる。そして一緒に何ができるかを考えさせるように空気を作り出す。
感情移入してしまうようなストーリーを作ろう。
今日のマーケティングでは新規開拓と、共感を呼ぶようなストーリーで消費者をポジティヴにすることが必要不可欠だ。ストレスフルな僕らの生活に何かを付け加えるよりも、僕らをポジティヴにしてくれるストーリーを聞く方がよほど効果的だ。
これこそがイノベーター、起業家、そしてマーケットの専門家が思うような結果を出せずに終わってしまう理由の一つなんじゃないだろうか — ストーリーが欠けているんだ。
もちろん彼らが失敗する理由は他にもいっぱいあるし、僕は別に恐怖をなくすために話しているわけじゃない。でももし君が聞き手に大きな変化を起こさせるようなストーリーテリングをしたいのであれば、人間の習慣や行動パターンについての深い洞察が必要となることは間違いないだろう。
どんなストーリーなら上手くいく?どんなストーリーなら共感してもらえる?そのアプローチは知らないうちに話し手と聞き手の関係を壊していないか?
僕らのGet Storied社では数十年もいろんな問題に取り組んでいて、その中にいくつか核となる問題が存在する — 何故多くのアイデアは途中で消えて、少ししか残らないんだ?大規模は行動の変化を起こすにはどうすれば良い?僕たちには目指すべき未来があるとして、でも僕らのストーリーはその未来に導いてくれているだろうか?
僕らの習慣であるストーリーテリングに変化が必要だとしたら?
ストーリーは沢山の価値を積んだ荷物のようなものだ。つまりストーリーとは受け手が考えさせられ、感情を揺さぶられるメッセージだ。
世界がもっとシンプルならストーリーはもっと簡単に伝わるはずだ。シャーマンや長老や司祭はもっと簡単に世界の構造をコミュニティーに説明できるはずだ。
重要なことは、僕らは知らないうちに聞き手にネガティヴを植え付けてしまっているということだ。
数年間僕はこの問題と格闘して、どうにかこの暗号を解読しようと、どうにか他人に説明できるようになろうと頑張ってきた。そして、今この記事を読んでいる人にこのようなかたちでストーリーテリングの新しいアプローチについて共有できることがとても嬉しい。
まだ始まったばかりだ。次は君の番だ。
欠点マーケティングについてどう感じましたか?従来のストーリーテリングのようなアプローチはどのような時に価値が発揮されて、どのような効果が期待できるのでしょうか?大規模な行動変革活動に興味がありますか?興味がある人は僕たちに教えて下さい。
Michael Margolis is the CEO of Get Storied, and the founder of StoryU, the world’s largest school for business storytelling. He also teaches leaders at corporations like Bloomberg, SAP, and Greenpeace. As @getstoried, Michael is one of Twitter’s leading voices on #storytelling. He is left-handed, color-blind and eats more chocolate than the average human. Want to learn how to story your future? Sign-up for his popular free 10-day course, The Red Pill of Storytelling.
More recent articles:
- You Are A Storyteller, And You Have A Story Worth Telling.
- Transformation Requires A Witness
- How I Wrote A Book In 90 Days.
What’s your story? Join the conversation by commenting, sharing, and following @getstoried’s future posts.