Mediumは「ブログ」の未来なのか?
Google検索にかわるレコメンドエンジンとしてのMedium
Mediumはブログの未来形でしょうか?
Lifehacking.jpのこの記事に、長文の論考をわりと肯定的に書いたのですが、まだまだ取りこぼしている要素があります。
それが、一抹の不安とともに次にやってくる状況について予告をします。Mediumだけが未来だというのではなく、それを含むより大きな変化がやってきている、その波の一つなのだと。
Medium がブログの未来だというよりも、もっと正確に表現するならMedium はブログがなり得た「もう一つの姿」を含む形で進化しつつあるといった方がいいかもしれません。うむ、わかりづらい。
それを説明するにはブログをブログたらしめていた要素について考えて見る必要があります。それは大きく分けて3つあり:
- RSS
- トラックバック
- パーマリンク
でした。
RSS があるおかげで、ブログの内容はブログ自体を離れて拡散することができましたし、またRSSを購読することで情報ネットワークを構築できるというメリットもありました。
トラックバックはブログとブログを結びつけ、ウェブをカンバセーション = 会話的なものに変えました。これはいまでは、SNSや、はてブコメントに代替されている部分ですね。
最後にパーマリンクは、Googleがそれをインデックスすることでより多くの情報にアクセスすることを私たちに可能にしました。「ホームページ」を作っていた時代に比べて、いかにウェブのコンテンツが新聞サイトやウェブメディアに至るまで、すべてが「ブログ的」になっていることはこの副産物でもあります。
Medium にはこの3つがすでに存在します。そういう意味で Medium はブログ的ではあるのです。Medium をブログ的に使うことはできるでしょう。
でも、見た目やリンクやRSSの存在がブログっぽいからといって同じではありません。記事が流通する背景はまったく違うからです。普通に著者自身が SNS で拡散する、publication の RSS を購読している人が定期的に読むという通常の読まれ方以外にもう一つの流入経路があるからです。
それが Medium のレコメンドエンジンです。
Googleにかわる「話題」のレコメンドエンジンとしてのMedium
たとえば、いまアメリカで注目されている “Alt-Right” という新しいキーワードがあります。これまで注目されていなかったネット上の保守的な政治の声のなかでも最右翼の人々のことを指す用語です。
Alt-Right は最近ヒラリーの演説のなかで名前がでてきたために脚光を浴びて、これについての話題が数多くアップされました。
すると Medium 上では、上部のタブの部分に “Alt-Right” という項目が表示され、現在それについて議論している最も注目すべき記事をみることができるようになります。
このタブ部分はランダムに表示されているのではなく、私たちが「こうした話題に興味がある」と登録したものからの距離感で演算されているようです。私は20種類くらいのタグに登録していますが、そうすると自分の興味の中心と、興味の外側の境界線と、ちょうどいいあんばいで記事がおすすめされてきます。
重要なのは、私はこれらの記事をひとつも検索していないのに、すでに目にしているという点です。Google検索は、まずキーワードありきです。Medium のレコメンドエンジンは、キーワードに気づく前から書いて読んでいるものをベースにプッシュされてくるのです。
読者からみると、Medium で記事を書かないまでも登録しておいて興味のあるタグと著者をフォローしておけば、興味深い話題がスマートフォンの通知画面にシェアされてきます。
しかもそれが的確とくれば、これは話題を探すうえではGoogleよりも有効と言わざるをえません。
この動きは、Medium を含む、より大きな変化の一部
現在のところ、まだMediumのレコメンドエンジンはGoogleほどうまくいっているようには思えません。すばやく多くの記事をスキャンする方法は弱いですし、ナビゲーションももうすこし洗練されてもよいはずです。
しかし、人工知能によって「話題」が検索可能になる世界はすぐそこまで来ていますし、それは中長期的に Google 検索の地位が(このままだと)弱まってゆくことでもあります。
Mediumは「ブログの未来」そのものではなくて、私たちはどのように話題を発見し消費するかという機械学習エンジンの未来が表出したサービスであり、そのための器といってもいいのです。ブログ的なものはその器の一部分というわけです。
私たちの興味は、活動は、簡単なキュレーションサイトでまとめきれるほど単純ではなくなっていますし、なにより、一記事175円で作成されるゴミ記事が私たちの可処分時間を殺していきます。
わたしたちはシグナルを探しています。なにを読むべきなのか?どの流れに乗るべきなのか?寄り添うべき樹が倒れてしまったので、雨宿り先を探しているのです。
Mediumは書き手のプラットホームであると同時にGoogle的であり続けることができるでしょうか? また、次の10年にむけてサービスを維持できるでしょうか? いまはそれが一番の課題になっています。
Mediumはブログの未来か? もちろんそうでしょう。しかしそれはMediumが、Mediumを越えるよりおおきなウェブのせかいで起こっている新しい贈与の風の流れを今の所つかんでいるからです。
次はどこへ?
さて、この Publication では、さまざまに散らばっている執筆活動をまとめるのと、エッセイ的な「語る」記事をアウトプットしてゆく場として使いたいと思います。
上で書いたとおり、Medium は記事を書かなくても、登録して 1. 何人かの執筆者をフォローし、2. 興味あるタグを登録しておくだけで、さまざまな話題を届けてくれます(いまは主に英語系ですが)。
よろしければ、この publication、あるいは私もその輪に加えておいてください。