死に続けるブログと「どこに書けばいいのか問題」

個人でコンテンツを作っている人にとっての未来はどちらにあるのだろう

人手と予算のあるウェブメディアではなく、1人でコンテンツを生み出している個人について、最近よく考えることがあります。それは「なにを」「どこに」書くべきなのだろうかという問題です。

好きなものを好きな場所に書けばいいと言われてしまうとそこで話は終わってしまいますが、限られた時間と集中力で個人がブログなどを運営する際にリーチを最大化するためにとるべき方法が自明ではない状況がここ数年続いているわけです。少なくとも、「好きなことをたくさん書けばいい」というブログブームの頃の戦略が通用してはいないのです。

ちょうど私が考えていたようなことについて補助線となる記事を、かつてはFriendFeedなどで活躍し、現在はGoogleに在籍しているLouis Gray氏が投稿していました。

この論考はとても面白いのでぜひ全部を読んでいただきたいのですが、骨子をまとめると、個人がブログを書くときのコンテンツの一生を 1. Creation「コンテンツの作成」、2. Distribution「配信」、3. Discovery「読者による発見」、4. Consumption「消費」という具合に分類した場合に:

  1. 昔はブログに書いたらあとはRSSが読者のもとに届けてくれ、多くの人はPCで記事を読んでいた。Creation、Distribution、Discoveryの分離が明確だった。
  2. 今は Creation と Distribution と Discovery が融合してしまって読者が分散しているので「どこに書くのか」という問題がついて回る。Mediumを選ぶことは、noteを選ばない、あるいはツイッターFacebookでまだやり残したことがあるという意味でもあるため。

という内容になっています。この「Creation と Distribution と Discovery の融合」というのは、FacebookならばFacebookは自分のサイトで体験が完結するように開発をおこなうし、ツイッターはツイッター内にユーザーがとどまるようにあらゆる施策をおこなうために、ネット全体のユーザーのアテンションも、発見も、すべてが分散化してしまっていることを指します。

昔ならば、はてなブックマークに今日のすべての話題があったかもしれませんが、いまははてブ、ツイッターのモーメント、Facebookの勧めるニュース、ニュースアプリがそれぞれ別の宇宙のようにふるまっていますし、かつ一箇所あたりに集まるアテンションも低下しています。

Louisも、読者のもとに記事を届けるためにブログで記事を書いてから同じものをMediumにクロスポストするか、あるいはツイッター、Facebook、LinkedInといった場所に再度投稿する煩雑さについて嘆きつつ、結果としてコンテンツの体験も拡散も不均一なものにしてしまっていることを現代の一つの挑戦として挙げています。

どこに何を書くの問題

ここ最近はてなブログで投稿を始める人が多くなっていたり、noteで活動を開始している人を見かけるのにも、この問題は絡んでいます。

Medium/はてなブログ/noteといったプラットフォームはすでに多くのユーザーが集まっています。そこに記事を書くことはとりもなおさず一定のコミュニティを想定してそこに向けて書くことでもあります。

書かれた記事はスマートフォンの新着通知を通してフォロワーに自動的に拡散しますので、これらのプラットフォームでは「Creation / Distribution / Discovery / Consumption」がすべて一体の体験として融合しているのです。note やMediumの場合はそこから直接マネタイズに向けた導線もあるので、特に一部では好まれます。

当然ながら円の大きさと重なりは模式的なもの

問題は分散化で、それはたとえばツイッターのフォロワーのすべてがnoteを見てくれるわけではない、はてなブログの読者が必ずしもツイッターをフォローしてくれるわけでもないといった形で現れます。

想定読者のアテンションが存在する「島」になっている場所に行かない限り、一つの記事がもっているリーチの力は必ず制限をうけます。

しかし万能の場所もありません。RSSを発行しておけばいい、ツイッターに投げておけばいいといった解はありませんし、文字がいい、動画がいいといった答えもありません。

ここに消費のレイヤーを持ち込んで、スマートフォンで1秒で認識し、5分で消費できるかといった課題をもちこむと、さらに状況は立体的になっていきます。

これはウェブメディアにもある問題ですが、個人の場合は予算と人員ではなく、時間と集中力をどこに投資すればいいのかという問題としての「どこに何を書けばいいんだ」問題になるわけです。

コンテンツを生み出す4つの作戦

実際のところ、みなさんどのようにしているのでしょうか?大きく分けて、4つほどの道に分かれているように見えます。

まず、個人ブログで独自ドメインに記事を書いてもリーチが伸びないので、人がいるプラットフォーム、たとえばはてなブログ、note、Mediumなどといった場所に書くということが最近はよく見かけます。これを作戦Aと書いておきましょう。

これは毎日ブログを書くわけではない人がリーチを最大化したいときに妥当な選択で、書きたいと思うくらいに重要な話題があった際に、より多くの人がコンテンツを発見してくれる可能性が高まります。

これに対して毎日コンテンツを書きたい、それによって広告収入を得たいと考えている人は作戦Aと並行して拡散を考えなくてもよいように「Google検索に特化した書き方をする」ということをします。これを作戦Bとしておきましょう。

この作戦は、より面白い記事を書くかではなく、検索順位との戦いがメインになりますので、長い目でみてその人の特色が消えてゆくというデメリットがあります。時折「今月は◯◯万PV、収入◯◯万達成」という記事が登場するのは、極論すればPVと収益という評価軸以外に納得させる材料がない(と本人が思っている)場合の「私をみて」という心の叫びともいえます。

より直接的に「私をみて」という戦略をとる場合もあります。読モライターという言葉もありましたが、属人性の高い必要がなくても、名前で認識してもらえるようにコンテンツをつくることによって、名前でPVを集める場合です。これを作戦Cとしておきましょう。

この作戦は意識的に行う場合もあれば無意識の場合もあります。「サンフランシスコで散財するオジサン」という立ち位置がすでにして極めて高い価値をもっている場合もあれば、あえて炎上っぽく立ち振る舞うことで自分は「◯◯ブロガー」だと振る舞う人もいます。

最後に、現在のびている媒体、たとえばYouTubeやインスタグラムといったものとのミックスを行なう人もいます。これを作戦Dとしておきましょう。

難しいのは、これらの作戦がどれもなかなかスケールしない点です。

リーチの最大化と、届くべき人に届くの最大化

単にPVを最大化したいならば、とるべき戦略はPVの集まる話題を選択して、そこにGoogleに選ばれるコンテンツか、人が注目するコンテンツを落とすことです。作戦BにCを混ぜ込んで、ときには炎上するかしておくと、ちょっとしたものにはなれるでしょう。

もし興味があって書いている話題がマイナー分野の場合には、最初から集められるPVには限度がありますので、届くべき人のところにコンテンツが届くことを目標にしないといけません。この場合は作戦AにDで揺さぶりをかけるといったことがいまも有効です。

有名人になりたいなら、どうしても名前で仕事をしなければいけませんので作戦Cをとりますが、Cの場合には他の人にできない爆発的なコンテンツが必要ですので、よくよく自分の手札をチェックしないといけません。

そうした複雑な考えはすべて捨ててしまい、好き放題にいま面白いものを面白い場所で作ってしまう作戦Dも魅力的です。いまならバーチャルユーチューバーを目指すとよいのでしょうか。

どの道を選ぶにしても、個人である以上は生み出すことができるコンテンツの量には限界があるのと同じように、それを受容してくれる読者・リスナーの側のアテンションも分散化していることも意識せざるを得ません。みんな、ブログばかり読んでいるわけでなければ、YouTubeだけを見ているわけでもないのです。

ツイッターだけを見ているわけでも、Facebookのアルゴリズムによって激しく検閲されているタイムラインに気づいてくれるわけでもありません。noteが良さそうだと思う反面、意外にnoteがコンテンツのDiscoveryでは弱いために結局はフォロワー数のレースになってしまう面があるという構造にも意識的にならざるを得ません。

ここでは文字を中心にしたコンテンツについて書いていましたが、同じことはポッドキャストでも、Pixivの二次創作周辺でも、どんなところでもみえています。

コンテンツの投稿と流通と発見がそれぞれのサービスで融合して境目が見えなくなるほど、皮肉にもみなのアテンションは分散化していきます。

私たちはどこになにを誰に向かって書けばいいのか? どこを探せば素敵なコンテンツとの出会いがあるのか?

かつてのブログがゆるやかに死に続けてゆくなか、ますます解のない面白い世界へと、私たちは進んでいるのです。

フォローを忘れないように

私自身がどの作戦でものを書いているかは自分でもよくわからないのですが、こうした記事をたまに読んでみたいというかたは私のMediumプロフィール M. E. Hori をフォローしていただくとともに、このパブリケーションをフォローしておいてください。

どこのブログであれ、YouTubeであれ、なるべく活動報告はここに流すようにしますので。