ブロックチェーンゲーム市場レポート:NFT取引(2019年3月)
2017年11月にCryptoKittiesがリリースして以降、EtheremonやAxie Infinity、MLBといったゲームを始めとし、NFTを扱うアプリケーションがリリースされてきました。
そして2018年6月、NFTのマーケットプレイスとしてOpenSeaがリリースしたことで、これまでゲーム内でのみ行われていたユーザー間のNFT取引が、ゲーム外でも行うことができるようになり、取引高・ユーザー数は大きく増加しました。
今後も国内外から多数の注目のゲームタイトルがリリースを控え、ユーザー間でNFTを売買するセカンダリーマーケットの盛り上がりが予想されます。
本シリーズでは、今後も盛り上がりが予想されるNFTのセカンダリーマーケットの市場規模などについて、ブロックチェーンのトランザクションデータをもとに算出し、考察を交えて定期レポートとして公開していきたいと思います。
なお、本レポートでは、下記抽出対象に基づくブロックチェーンのトランザクションデータを参照しております。(参照データ:Etherscan、BigQuery)
*抽出条件*
- NFTのユーザー間取引により発生(OpenSea、RareBitsなどのマーケットプレイス及びCryptoKittiesなどのゲーム内マーケットのトランザクションを対象とする)
- Ethereum上で発生
- 2018年6月1日〜2019年3月31日に発生
目次
- セカンダリーマーケットの取引高推移
- タイトル別比較
- セカンダリーマーケットにおける購入ユーザー数
- セカンダリーマーケットにおける平均取引額
- 各種ランキング
- 総括
セカンダリーマーケットの取引高推移
【セカンダリーマーケット全体の取引高推移】
2018年9月に最高取引高(月次)を記録して以降、しばらく減少傾向でしたが、2019年3月に2018年9月に次ぐ取引高を記録しました。
それでは、実際にどのような取引が影響して上記のような現象が起きたのか、取引高をタイトル別に見ていきたいと思います。
【 タイトル別の取引高推移】
タイトル別の取引高推移を見ると、2018年9月から2019年2月まで減少傾向にあった大きな要因として、Decentaladの取引高の減少が挙げられます。Decentralandの取引では、2018年9月から12月までの期間で、大口取引が取引高のボリュームを底上げしていました。大口取引が2018年9月をピークとして、減少していったことが、取引高の現象の原因と考えられます。
なお、上記のグラフでは、OpenSeaやRare Bits、Auctionityなど、ゲーム等のタイトル単位ではなく、マーケットプレイスの取引高が盛り込まれています。マーケットプレイスの場合、タイトル毎の集計が困難であったため、複数タイトルを集約したカタチでの算出になっております。なお、OpenSeaでは60タイトルが取引されていますが、現状その大半をMy Crypto Heroesが占めております。
【タイトル別の取引高割合】
また、円グラフを見るとDecentralandが全取引の大半を占めているのがわかります。
これは、Decentralandの扱うNFTがバーチャル空間上の土地となり、他のNFTと比べて取引高が高額となっていることが要因と考えられます。
Decentralandのシェアが大きく、他のNFTの取引高推移が見えづらいため、Decentralandを除いた場合の取引高推移も見ていきたいと思います。
セカンダリーマーケットの取引高推移(Decentraland除外)
【セカンダリーマーケット全体の取引高推移(Decentraland除外)】
先ほどと比べると、一定の水準で取引高が推移され、2019年3月に大きな伸びを見せているのがわかります。
この要因について、後述のタイトル別比較の項目で見ていきたいと思います。
【タイトル別の取引高推移(Decentraland除外)】
急激な伸びを見せた2019年3月のタイトルを見ると、大きな割合を占めているのがOpenSea、Auctionity、Axie Infinityとなっています。
まずOpenSeaから見ていくと、2018年12月から増加傾向となっていることがわかります。
これは取引の大半を占めているMy Crypto Heroesのリリース時期と重なっており、My Crypto HeroesがOpenSeaの取引増加の要因と考えられます。
事実、2018年12月以降のOpenSea上の取引を見てみると、取引額上位5つの内3つがMy Crypto Heroesの取引となっていることがわかります。
【OpenSea 取引額 TOP5】*2018年12月〜2019年3月
下記は、取引高TOP3のMy Crypto HeroesのNFTです。
1つのキラーコンテンツの誕生がマーケットに与える影響が大きく、まだまだ黎明期の市場であることが伺い知れます。
次にAuctionityについて見ていくと、2019年2月以降の取引高から増加しているのが取引高推移を見るとわかります。
このAuctionityとは、動画配信型のオークションプラットフォームで、CryptoKitties、Etheremon、MLBの3つのNFTが取引されています。
Auctionityの台頭により、これまでOpenSeaの独壇場であったセカンダリーマーケットの事業において、新規参入の余地を示した事例と言えます。
最後にAxie Infinityについて見ていくと、3月は直近数ヶ月と比較して平均取引額が大きく上昇したことが要因としてあげられ、Axie Infinityへの期待が高まっていると考えられます。
【Axie Infinity 平均取引額(取引あたり)】*2019年1月〜2019年3月
【Axie Infinity 取引額 TOP10】*2019年2月・2019年3月
また、2月と3月の取引額TOP10 を比較してみると、3月の上位2件については2月には見られない高額な取引が発生していることがわかります。1位の110ETHは、Axie Infinityにおいて過去最高額の取引であり、Axie InfinityのNFTが100ETHを超える金額で取引されるというポテンシャルが示されたと考えられます。
今後も、Axie Infinityへの期待値が高まることで、NFTの取引金額に変化が生まれる可能性が伺えます。
セカンダリーマーケットにおける購入ユーザー数
【購入ユーザー数の推移】
購入ユーザー数は、OpenSeaがリリースした翌月2018年7月を除くと緩やかな増加傾向にあり、順調にマーケット参加者が拡大していることがわかります。
【ユーザー毎の取引高割合】
円グラフを見ると全取引高における上位10アドレスの占める割合が13%程度に留まっております。これは、一部のユーザーに依存することなく、不特定多数のユーザーでマーケットが成り立っていることがわかります。
セカンダリーマーケットにおける平均取引額
【平均取引額(取引あたり)】
2018年6月時点で0.03ETHであった平均取引高は、緩やかに増加していき2019年3月時点でおよそ3倍の0.1ETHにまで推移しています。
【平均取引額(ユーザーあたり)】
2018年6月時点で0.22ETHであった平均取引高は、2019年2月以降急激な増加があり、2019年3月時点でおよそ7倍となる1.49ETHにまで推移しています。
各種ランキング
【タイトル別の累計取引高ランキング】
タイトル別の累計取引高を見みると、1位:CryptoKitties、2位:OpenSea、3位:MLBとなっています。
なお、OpenSeaに関しては、My Crypto Heroesの取引高が牽引して、上位にランクインしていると考えられます。
【取引額ランキング TOP10】
下記は、最高取引高の600ETHで取引されたCryptoKittiesのNFTです。
現状、取引高上位10位は、CryptoKitties、Axie Infinity、OpenSea、MLBの4つで構成されているのがわかります。
今後、様々なタイトルがリリースされていく中で、ラインナップの変動がどのように行われていくか、引き続き公開予定のレポートにてお伝えしていきたいと思います。
総括
OpenSeaがリリースされた2018年6月以降、取引高・ユーザー数共に順調に推移してるのがデータから伺えます。
その要因として、My Crypto Heroesのような新たなタイトルや、Auctionityのような新たなプラットーフォームの台頭してきたことが挙げられます。
継続的な取引高の拡大と新規ユーザーの参入を促すために、My Crypto Heroesのようなキラーコンテンツの定期的な登場や、Auctionityのような新たなプラットフォームの登場が重要となってきます。
2019年においては、海外ではGods Unchained、日本ではコントラクトサーヴァントやCryptospellsといった既にユーザー人口の多いトレーディングカードゲームのタイトルがリリースを控えており、マーケットとしては更なる盛り上がりが期待できる年と考えられます。
本シリーズでは、ブロックチェーンのトランザクションデータに基づいて、継続的にセカンダリーマーケットの動向を観測し、考察を交えた定期レポートとして公開していきたいと思います。