RMTがゲームに与える影響

なぜDiablo3はリアルマネートレード機能を廃止したか

Yugo Tokuchi
Metaps Blockchain JP
9 min readNov 13, 2019

--

先日、「ブロックチェーンゲームはソシャゲ以上に爆発的な成長をするか?」という記事を公開したところ、極度信玄(してます)さんがされたリツイートの中でDiablo3に関する言及がありました。コメントありがとうございます。

これは、2012年に発売されたDiablo3という洋ゲーにおいて、リアルマネートレード(以下RMT)機能を実装した結果、ゲーム内エコシステムが崩壊し、途中で廃止した事を指しています。

Diablo3は販売数が数千万本という超大型タイトルであり、マス向けのビデオゲーム にRMTを実装するとどうなるか?という社会実験の結果としては非常に貴重です。

ブロックチェーンゲームという新しいRMTの潮流がきている今、改めてブリザード社が何故Diablo3からRMTを廃止したのか、まとめてみたいと思います。

君はディアブロを知っているか?

皆さんDiabloをご存知ですよね、、、

絶対に知らない人はいないと思うのですが、念のため、どんなゲームか書きますが、知っている人は飛ばしてください、本当に念のためですよ。

Diabloとは1997年に登場したMORPGで、ハック&スラッシュという、ひたすら敵を切り刻み、手に入れたアイテムを装備してまた敵を切り刻むというゲームです。

書き出してみると何が面白いのか自分でもだいぶ謎ですが、かなり中毒性が高いゲームで、僕も一時期気が狂ったかの様にプレイしていました。

Diablo2のタイトル画面 クッソ懐かしぃ

個人的に最も思い入れが深いのはディアブロ2で、

高1の夏休みに一日20時間遊び続けた結果、お兄ちゃんの部屋からカチカチ音がして勉強に集中できないと妹から苦情がきたくらいでした。

当時は「受験と俺のバーバリアンとどっちが大事なんだ?」とマジで思ってましたし、それくらい中毒性の高いゲームです。

最新作はDiablo3ですが、僕は手を出したら人間終わると思いインストールしてません。

しかし、今でもプレイ動画を見ると、禁断症状というか、フラッシュバックというか、、、 敵を倒してレアアイテムドロップした時の快感が脳内でワーーっと再生されて、めちゃくちゃプレイしたくなりますwww

ディアブロ3とRMT

この最新作であるDiablo3は大きな特色としてオークションハウスが実装され、そこでドルとペッグされたゲーム内通貨を使い自分が入手したアイテムの売買が可能でした。

アイテムのドロップ率が低くオークションハウスでアイテムを買わざるを得ない仕様のため、ユーザーレビューは惨憺たるもので、

開発元のブリザード社はDiablo3の拡張パックを販売するタイミングでオークションハウスを廃止し、ゲーム内のエコシステムに大幅な変更を加えました。

とはいえ、ビジネスとしては大成功で、2012年のローンチ後24時間以内に350万本販売し、同年末には1200万本を達成していましたwww

アイテムドロップ仕様と開発チームの誤算

文頭で記載した通り、ディアブロは敵をなぎ倒してアイテムをゲットしてもっと強くなり、最強の装備を集めるゲームです。

この循環を図解すると以下の通りです。

この流れが異様に気持ちよくスムーズなため、ディアブロには麻薬的な中毒性があります。

ディアブロ3を開発するにあたり、開発チームはユーザーがプレイを継続する理由として、以下の点を意識し、そこにトレードを組み込んだエコシステムとしました。

  1. アイテムが手に入りづらい。
  2. 難しいければ難しいほどよい
  3. ランダム性が高い方がよい
  4. 獲得アイテムは多い方がよい

そのため、Diablo3では、ユーザーがプレイ中に得られるアイテムの量を多く設定し、一方で自分が装備できるアイテムが入手できる確率を低くしました。

つまり、プレイ中は特に必要ないアイテムが大量ドロップするけど、それは他の人にとって大事なアイテムだから、トレードして欲しいアイテムと交換してね、という仕様です。

運営が想定していた循環は以下の通りです。

開発メンバーが想定していた、ディアブロ3プレイモデル

ところが、実際のユーザーの行動は開発チームの予想をはるかに超えて合理的でした。

ゲーム販売後二日目には、全アイテムの入手難易度と特性がウェブサイトにまとめられ、ユーザーは軽くググルだけで、自分が必要なアイテムをネットで探す事ができる様になりました。

運営が設計した通りにプレイすると、自分が装備できるレアアイテムをユーザーが入手できることはほぼありません。

そのため、プレイヤーはゲームをプレイする事なく、最適なアイテムをググって、それをオークションハウスで購入する様になりました。

オークションハウスではMAU100万人を超えるユーザーが日夜売買を行っていたそうです。

また、オークションハウスに出品をする人間の中にはBOTを使い大量のアイテムを手に入れて、出品を続ける業者が沢山出現しました。

その結果、元の想定と異なり、以下の循環でプレイするユーザーが増えてしまいました。

リリース後のDiablo3の実態

オークションハウス廃止と大幅な仕様変更

オークションハウスに関しては、好んで使っているユーザーもいたため、アイテムの流動性を下げる等々、色々な案があったそうです。

しかし、最終的にディレクターのJoshさんが廃止を提案し、すぐにチーム全員の同意が得られたとのこと、彼はその時の様子をこう話しています。

私が、オークションハウス 廃止の提案をすると、すぐにチームメンバーに受け入れられた。

みんなが理解したからだ、ディアブロはトレードゲームではなく、モンスターを倒し、宝物を手に入れるゲームなのだと…

ユーザー視点だと、リアルマネートレードを生かしつつうまくやれるんじゃないかとも思いますが、

大規模な開発チームをまとめあげる上で、自分たちが作っているゲームの面白さの根幹部分をメンバーで共有する事は非常に重要です。

廃止の決断がなされた事で、ディアブロ開発チームは、いかに、敵を倒し、宝箱をゲットしていくかという、ディアブロの原点に回帰し、開発を進めていくこととなりました。

Diabloのあるべき姿

開発チームはドロップするアイテムの総量を減らし。プレイヤーが装備できるアイテムのドロップ率をあげることで、ユーザーが欲しいアイテムをより簡単に入手できる様に調整を行いました。

この調整はかなり大掛かりなもので、見た目は同じゲームですが、このバージョンアップ以降、ユーザーのプレイ感は完全に異なるものとなりました。

敵を倒せば倒すほど、強いアイテムが手に入り、もっと強い敵が倒せる、という、開発チームが考えるDiablo3のあるべき姿に戻ったのです。

現在は累計売り上げ3000万本超え!!

今、軽くググっただけでも、

見た目は一緒なのに、中身が完全に別物になった!
とにかく遊びやすい!!

という様な肯定的レビューに溢れており、運営の想定通りのフィードバックが得られた模様です。(残念ながら、僕は未プレイ。。。)

その後、継続的に販売本数が伸びて2015年時点での累計販売数3000万本に到達し、ビジネスとしても大成功を収めています。

ちなみに、3000万人というと、全世界の人口ランキングで41位で、半端のない人数ですね…

調べてみました、出典wikipedia

ディアブロ3から得られる教訓

GDCの講演で、「リアルマネートレードを再実装する予定があるのか?」という質問に対してJoshさんは以下の様に答えています。

ディアブロにおいてトレード機能は、

ゲームの楽しさをショートカットしてしまう。

この話、ブロックチェーンゲームにおいても非常に重要で、RMTをゲームに実装する場合、どんなプレイヤーの行動がゲームの魅力(中毒性の源泉)となっているかを考え、RMTのトレードにより、その行動が代替されない様にしなければなりません。

仮にPvPを繰り返して技を磨いていく事がユーザーにとっての最大の楽しみのゲームであれば、トレードで強いアイテムを手に入れられる仕様は、ゲーム最大の魅力を損ないます。

余談ですが、当時のオークションハウス事情を調べるとむちゃくちゃ面白いです。アイテムのドロップ率はどう修正されるべきか、みたいな事が日夜フォーラムで熱く議論されてます。(なんか既視感が…マイクリ ?)

このワイヤードさんの記事も当時の雰囲気がわかって興味深いです。

久々にディアブロやりたいなー…

ではでは

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
編集後記

早速ダウンロードしてしまったwww

7年前に買ったゲームが、最新のマシンですぐダウンロードできるのって本当にすごい…

一回購入したゲームは永久に自分のものというのは、ゲーム中毒者にとって非常に危険だし、早くゲームも二次流通でとっとと処分できる世界がきて欲しいと、切に願います。。。

参考資料:
GDCの講演

公式フォーラム
https://us.battle.net/forums/en/d3/topic/9972208129

--

--

Yugo Tokuchi
Metaps Blockchain JP

Working at Metaps Alpha Inc. Owner of “Yugo Sushi” in Mumbai, Bandra.