Miletosってどんな会社?歴史は?インターン生が社長に質問してみた

Rintaro Yamane
Miletos inc.
Published in
13 min readFeb 17, 2020

はじめまして、Miletos株式会社(ミレトス株式会社)でインターン生として活動しています、山根です。

テキサス大学でジャーナリズムを1年間学んで、昨年帰ってきました。朝賀代表とは大学のOB会で知り合い、以来縁あってこの会社で働いています。

早速ですが、この会社について名前くらいは知っているけど、事業内容や歴史はあまり知らないというそこのあなた!

分かります。私もその一人でした。

そこで今回「他に同じことを感じている人もいるのでは… 」と思い立ったので、Miletosが今までどのような歴史を辿って来たのか、朝賀代表に直接話を伺ってきました。

そもそもMiletosって?

設立当初は全く別の事業をやっていた?

全く売れなかった第二の事業

切れた糸

運命の出会い

山根:朝賀さん、本日はよろしくお願いします!

朝賀代表(以下朝賀):よろしくですー。今日はなにを話せばいいですかね?

山根:現在インターンとして働かせていただいていますが、正直Miletosが今まで何をしてきたのか、あまり把握できていなくて。今までの歴史について色々聞きたいです!

朝賀:いいですよー。では現事業のおさらいからお話ししますね。

そもそもMiletosって?

Miletos株式会社(ミレトス株式会社)は、経費業務DXプラットフォームの“SAPPHIRE”を展開するスタートアップ企業です。SAPPHIREは、企業内の様々なデータをもとにAIやアルゴリズムを駆使してリスクの高い経費申請を特定。それにより①経費チェック工数の効率化、②分析の高度化・統制の強化、③コンプライアンス順守による企業の健全化を実現します。現在MiletosはSAPPHIREをメイン事業に据えており、多くの大企業と契約の締結をしてます。

山根:なるほど、Miletosが現在、メインで運営しているのがSAPPHIREという事ですね。という事は過去に別の事業をされていたのですか?

朝賀:そうなんです。ただ、ここまでたどり着くまで過去何度もピポットやトラベリングを繰り返し、役員の辞任、資金繰りでの問題、会社存続そのものが危ぶまれた時期も何度もありましたね。今設立して4年弱くらいかな?実は結構波乱万丈だったりします。

山根:そうだったのですね。(早速知らない情報…)では、Miletosは当初どのような目的で設立されたのでしょう?

設立当初は全く別の事業をやっていた?

朝賀:Miletosは2016年6月に設立されたんですけど、発足当初はVRにおける触覚再現技術の事業を目的に立ち上がりました。代表も別の方で、設立当初彼は大学院生でしたね。

山根:え、朝賀さんが最初から代表ではなかったのですか?

朝賀:出資者として後ろから応援する人でした。たしかCVO(Chief Visionary Officer)っていう今考えると全くよくわからないタイトルついてましたね(笑)。

山根:てっきり最初から代表だと思っていました… 前代表とは、どこで出会われたのですか?

朝賀:もともと彼とは、とある企業の新規事業立ち上げに携わっていた時に出会いました。でね、こいつがすごく頭のいいやつで。ちゃんと考えを持ってるし、圧倒されるような壮大な夢を語るわけですよ。そこでこいつは面白い!って思って、「お金出すから、やりたいことできるかどうか検証してみなよ!」ということでお金を出してあげ、結果会社を設立しました。

設立後は、過去一緒に仕事をしたことがある「いつか絶対にもう一度仕事する人リスト」の中から事業発進となるメンバーを集め、触覚再現VR事業 “Hapticos”(ハプティコス)をプロダクトの軸と据えてスタートを切ります。

山根:かなりニーズはありそうだし、わくわくしますね。

朝賀:そうなんですが、技術面でのハードルを乗り越えることができず、事業を半年で閉じることになります。また、事業の不振から、前代表も会社を去ることとなりました。

山根:そんなことが。

とは言っても、せっかく優秀なメンバーの揃った会社じゃないですか。本当に会社を潰すのはもったいないなーと。そう思って、僕が後任となって社長を拝命しました。

山根:この時期に代表になられたのですね。

朝賀:「このメンバーだったら何か面白いことができる」と、根拠のない自信があったんですよね。

山根:ちなみに、VR事業の失敗は何が原因だったのでしょう?

朝賀:一義的には僕たちが求めていた世界観に人類の基礎技術が追い付いていない、という壁にぶち当たったことです。でもその中で前社長は一人ですごくもがいていた。でも僕たちはそれに気づいてあげることが出来なかった。彼が社長を辞任した時に気づいたんですよ、「あ、実は彼の苦悩をちゃんと理解してあげられてなかったんだな」って。

山根:とてつもなく大きな壁ですね。

朝賀:僕たちの驕りが大きな原因だったのは間違いないのですが、ガッツリ系リモートワークを前提とした、コミュニケーションツールがなかったことも原因の一つかなと。

山根:といいますと?

朝賀:やっぱりSlackだけだとなんかうまく伝わらない、会話の温度感が共有できない、Skypeは音質が悪い、みたいなリモートならではのコミュニケーションの難しさはあったんです。

山根:確かに。自分もリモートで働いてみて、つくづくコミュニケーションは命だと痛感しています。

朝賀:でしょ?そんな経験から、じゃあ僕たちが欲しかったツールを自前で制作しようよ、みたいな流れになって。この第二の事業を “Groovin”と命名し、2年ほど続けました。

全く売れなかった第二の事業

山根:なるほど、自分たちが一度経験している苦労なので、サンプルが少なくとも1つはありますからね。ニーズはありそう!

朝賀:それがそうもいかないんよ。(笑)

山根:あれ、どういうことですか?

朝賀:常時オンラインのビデオチャット環境を提供するサービスで、WebRTC(Web Real-Time Communication) ベースのビデオチャットエンジンも自分たちで開発しました。

WebRTCを使った複数人でのリアルタイムコミュニケーションプロダクトとしては世界最速の接続時間を実現して、技術的には相当イケてるプロダクトは出来たと自負してます。たぶんそのエンジンは未だに世界最速。コンセプトとしては、「フルリモートであってもオフィスで仕事をしているようなコミュニケーション密度が再現できる」というものです。2018年春に、経産省のプログラムに採用されて、“SXSW”(テキサス州で毎年開催される全米最大級のイベント)への出展も果たしたんだよね。

山根:すごい。

朝賀:でも今回は「フルリモートワーカー」という市場そのものが小さすぎるという問題に直面しちゃって。しかも最終的に落ち着いたターゲットは、「フルリモートに移行したいけど、ちょっと今の感じだと難しい、ツールがあれば何とかできるかも」というかなりニッチな層。

山根:リモートを推進している業界全体に刺さるプロダクトではなかった?

朝賀:そもそもリモートでも顔を合わせる「常時接続型」という前提がダメだったのよね。

山根:といいますと?

朝賀:やってみてわかったことが、フルリモートワークで成功している最先端の企業って、ビデオ通話ではなく、Slackなどでの非同期のやり取りが主だったんだよね。

個人の時間を重視し、このような環境で働ける人材しか採用しない。その時に世にあったフルリモート企業は、顔を合わせて信頼感を醸成しなくてもきちんと仕事ができる様に既になってたという現実。でも常時ビデオで繋いでおく環境は、オフィスを主体にしたリモートワーク導入企業には重すぎる…そんな背景もあり、企業の層が非常に薄かった。

山根:うーん難しい。ただそのニッチなマーケットでも極めればいいのでは?

朝賀:実はSXSWでそれなりに良いフィードバックを頂けたんですが、なかなかトラクション・課金には至らなかったんです。

そうした中で、僕たちの資金・気力・体力が底をついてしまい、帰国後少しして体調を崩し完全に活動を停止、秋ごろにサービスを正式に閉じました。

山根:それは残念です。

切れた糸

朝賀:僕と役員の平野は、Groovinの事業と並行して資金を集めるためほぼフルタイムで個人コンサル業を請け負っていた背景もあり、全ての糸がプツンと切れて体調を崩しちゃって。端的に言えば、自分たちの理想を追い求め、現実を見ずに走り続けた結果壊れちゃったんだよね。

山根:そんなことがあったのですね… 立ち直りにはどれくらいかかったのですか?

朝賀:「あ、メールが返せない、PCが開けない」ってなって、これはマズい!とコンサル案件を完全にクローズした後、3か月間くらいずっと動けませんでした。本っ当に冗談抜きで。最初の1か月は眠り姫のごとく1日22時間くらい寝てたかな。

山根:まじか…

朝賀:寝ないで働きまくってたんでその反動かな。

ただ、3カ月後くらいから「自分たちも、会社も、このままではいけないよな」と、平野ととことん話し合って。一度自分たちがどのような企業で、どんな世界を作りたいのか、目標はどこか、どのような人に集まってもらいたいかなど、Miletosの根幹の部分を徹底的に話し込み、見直したの。

山根:かなり話し込まれてそうなイメージです…

朝賀:多分この話込みに1000時間くらいかけたと思う。毎日朝起きたらすぐにコールつないで一日中話すのを、2カ月くらい毎日やりました。妻が平野とは一日中話してるのに私と話す時間は一日15分だってすごく文句言ってましたね。(苦笑)

山根:(わーお…)

朝賀:運転資金の調達方法も役員が別々で請け負った仕事で集めたお金をバンバンMiletosに投入するやり方から、Miletosとしてワンチームでコンサルティングを請け負う方法に変更したわけ。

山根:一蓮托生で案件を取っていこうと舵を切ったのですね。

朝賀:そう。本当にありがたいことに多方面からお声がけをいただき、ひとまず資金繰りでの危機を脱することができました。

山根:ではここからしばらくは企業コンサルをされていた?

朝賀:お陰様でコンサル事業はどんどん伸びたんだけど、でも今度は、自分たちのやりたいことができないくらいコンサルが忙しくなるんですよ。難しいよね。(笑)

山根:それはありがたいけど…

運命の出会い

朝賀:やっぱりね、最終的には自分たちで事業をして、世界にインパクトを与えたいわけですよ。で、そんな葛藤の中出会ったのが、後の役員となる髙橋。最初スポットでコンサル案件を手伝って頂いていたんですが、実は、ある日彼の発した一言がSAPPHIREの開発に繋がっちゃう。

山根:SAPPHIREはもともと朝賀さんのアイデアではない?

朝賀:始まりは、髙橋がクライアントとの会話の中で、経費チェックの効率化を図れると提案した時かな。

紙と原本を使った経理チェックでなく、データとしてAIで処理すれば、経理のタスクを減らすことができますよねと。それがMiletos内で「面白そう!」という話になるんですよ。

実は、当時平野が隙間時間を利用してエッジコンピューティングの領域で全然別のプロダクトをチコチコと開発してて、「また世界最速が出来た!」と言ってたタイミングなんだけど、会社として両建てで取り組んでみるかと、並行して事業の立ち上げをしてみることになったんですよね。

山根:そんな発言からここまで勢いづいた事業だったのか。

朝賀:ここからは爆速だったなー。本当に売れるのか、ニーズがあるのかを、短期間で見極めて大きなリスクになるのを抑えたい想いが強かったので、知り合いの社長に手あたり次第声をかけてPoCをやらせてもらって。2019年の3月にぼやぼやと出てきた案が、結果も出したので同年の5月末のEXPOでSAPPHIREとして正式にリリースしちゃった

そこからまだまだ困難はあるものの、クライアントのニーズは確実につかみながらようやく事業が軌道に乗りつつある感じかなぁ。なので、今年が本当に勝負時なんですよね。毎月見える景色が変わる。毎月思ってもみないステージに立てる。去年のSAPPHIREリリース以来、成長の階段を上っているって言うか、ヘリに括られた紐でバタバタバターって釣りあげられるみたい。ここからどこまで事業とチームを伸ばせるか。来年の今頃には、多少なり息継ぎ出来てるのかなぁ。出来てないだろうなぁ(笑)

やっと辿りついたチャンス。その裏には、数々の失敗を乗り越えた朝賀代表と、役員の方々の執念を感じます。その中でもすごいのは、失敗一つ一つを反面教師としてしっかりMiletosの理念として落とし込んでいること。後編では、今までの失敗がどのように「今」に生きているかを語ってもらいました。

【後編】Miletosの理念って?大事にしている3つのコトを社長に聞いてみた (coming soon!)

朝賀拓視(あさか ひろし)

1979年生まれ。10代からスタートアップに関心を持ち、21歳の時に海外で起業。Thammasat University留学、早稲田大学国際教養学部中退。大学退学後にアクセンチュアに入社。2015年アクセンチュア在籍中にL.A. Glocal Travellers LLC.設立。アクセンチュア退職後、個人で上場企業の新規事業コンサルをこなしつつ2016年6月にMiletos(株)創業、現在代表取締役社長。

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