連載 《 ワカモノたちのダイアローグ》 第3回

HIGH(er) magazine haru.「クリエイションの出発点は自分のためのエンパワーメント」

Fumiyu Ko
MILLENNIALSTIMES
Published in
8 min readJan 9, 2019

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ワカモノたちのものづくりにフューチャーしたシリーズ、第3回はインディペンデントマガジン、HIGH(er) magazine の編集長をつとめる若手クリエイター haru.さんインタビューしました。

▼HIGH(er) magazineとは

現役、東京藝術大学の学生である編集長haru.を中心にした、学生やクリエイターによるインディペンデントマガジン。ファッションやカルチャーを彼ら独自の視点で発信し続けている。2016年に第1号を創刊、2019年春に第5号発売予定。HIGH(er) magazineの詳細はこちら

紙に残す価値のあるものをつくろう、という自分へのプレッシャー

顧:HIGH(er) magazineの特徴として‟紙媒体”である、ということがあると思います。インターネットがこれだけ盛んな時代に、あえて紙媒体として雑誌をつくる理由を教えてください。

haru.「紙媒体が、自分の身近にあったものだったということが実は大きな理由です。ティーンの6年間をドイツで過ごしたんですが、その時に言葉の壁をかなり感じたんです。それをどうやって乗り越えようかと思った時にZINE(*1)を作ることを選びました。その時に紙って気持ちを伝えやすいなって思ったんです。紙だったらすぐに書きこめたり、その人自身のものとしてすぐに馴染む感じがしますよね。なんだかんだ、みんなにとって親しみがあるものだし。」

(*1) ZINE:小数部で発行する自主制作の出版物のこと。テーマや体裁の自由度が特徴。

「今の時代、雑誌が売れないと言われているけれど、それはメディアの努力や工夫が足りてないんじゃないか、って正直思っています。コンテンツが面白くて光れるものであれば読まれるし、売れる。だから、紙に残す価値のある、自分が自信をもって‟面白い!”と思えるものを作ろうといつも思っています。紙ならWi-Fiも要らないしね。」

顧:”いま自分が発信しようとしていることが、紙に残す価値のあるものなのか”という自問自答がいいプレッシャーとなって良質な企画に落ちていくんですね。

自分たちに嘘をついたコンテンツは作らない

haru.「今って、これまでの常識が通じなくなって来ていますよね。いくら上の人が‟これがいいんだ!”といっても、インターネットで好きな情報を好きなように集められてしまう。だからこそ、自分たちの感覚に正直でいないといけないと思っています。それはHIGH(er) magazineを作る上でも気をつけていることですね。自分たちに嘘をついているコンテンツってすぐに読者にばれてしまう。何よりも、‟すべてのクリエイションは 自分たちのエンパワーメント”という気持ちでいるので、まずは作ったものが自分たちのためにならなきゃ意味がないと思ってます。」

「HIGH(er) magazineでは『裏方の人を前に出すこと』を最初からテーマにしています。普通の雑誌ではモデルさんが映っている写真だけが載っているけれど、その写真が載るまでの経緯や、どういう思いでそれを作っているか、というプロセスものせたら面白んじゃないかなと思って。HIGH(er) magazineは自分たちが本当に体験したことをだけ語るようにしているメディアなのでその点ではネットでは得られない情報を発信していると思っています。」

顧:You Tuberって今や最強のコンテンツの1つにカウントされますが、その理由はドキュメンタリー性にあるんじゃないかと思っています。綺麗に編集され過ぎない、生々しい感覚や説得力をもつ時代に私たちは生きている。その意味で言うと、あえて裏方をみせていくというのも同じことで、‟本当であること/本物の情報であること”をどう伝えていくかがこれからのメディアの挑戦のような気がしています。

みんなから好かれるものはむしろ嘘っぽい

顧:広告に関しては、どんな印象を持っていますか?率直な意見を聞かせてください。

haru.「正直、広告にあまり期待はしていないですね。割とつくられた理想を掲げているものが多いと感じていて、あまりリアルクローズではないよな、と。結構炎上騒動も起こりますけど、企業もそんなに消費者を恐れなくていいんじゃないかと思っています。皆から好かれるものなんてないし、優秀な人があつまって大企業って成り立ってるものだから、もっといいもの作ろうよって素直に思います。」

顧:そのコメントは、普段広告にかかわるものとしては耳が痛いですね…笑 特に日本では、国民性の現身なのか、企業として何を表明するかといった部分は非常に不得意なのかな、という気がします。スタンドアウトするような意見を述べることに対して非常に憶病というか。もちろんその意見はその企業がいってしかるべき内容でないと消費者もついてこないけれど、なにかいっているようでなにも言わないステートメントでは生き残れる時代ではないんですよね。

自分にとっても周りにとっても、もっと生きやすい世界にするためにモノづくりをする。

顧:haru.さんにとってこれがないと『生きられない!』というものを教えてください。

haru.「作ることや発信することはやめられないんだろうなと、思っています。作ることがないと息ができない、という感じ。変な話ですが、『どこにいても完全には馴染めない』という感覚が自分の中にあります。馴染んだふりはできても、ちょっと寂しさを感じる。それはどんな国であっても、言葉が自由に通じる通じる日本でもあってもそうなんです。その寂しさが完全に忘れられるのが作っている瞬間。自分とこの世界がきちんと通じることが『作ること』なんです。」

「 どうしたら自分の、周りの人もこの世界に住みやすくなるかをいつも考えていて、そのために『作って』います。どこかでそれを自分の使命のように感じているので、作ることをやめさせされたら生きる意味が分からなくなってしまうと思います。」

編集後記~ライター顧の思うこと~

昨今、情報があふれる社会では体験がより重要になってきている、ということが様々な場所で語られています。その本質は、「その情報はあなたが本当に心から良いと思っていることなのか?」という情報の深さの重要性なのだと思います。

まさにHIGH(er) magazineでharu.さんがやろうとしていることは、本音で語り合うこと。それは半分閉鎖的な空間である、インディペンデントマガジンだから可能なことなのかもしれません。そして、そういった本音での語りあい、が今の時代だから必要なのだと思います。さらなるHIGH(er) magazine、そしてharu.さんの活躍を楽しみに思う顧なのでした。

Writer:Fumiyu Ko/Editor:Emiko Sawaguchi/ Photographer:Nahoko Wakida

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Fumiyu Ko
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顧 文瑜 1993年生まれ/迷える子羊/チャイニーズな両親のもと、日本ですくすく育つ/アートが好きで、ものづくりが好き/最近は一周回って手芸とビーズがアツい