マッチングサービスから探る、ミレニアルズとこれからの恋愛

Kishu Irie
MILLENNIALSTIMES
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9 min readApr 28, 2017

合コンに代わり、マッチングサービスが“出会いの王道”となる日も近いかもしれない。

今年に入り、株式会社エウレカの『 Pairs 』が会員数500万人を突破。それに続き、株式会社マッチングエージェントの『 タップル誕生 』も会員200万人を突破するなど、確実に需要の広がりを見せるマッチングサービス。その火付け役となった『 Tinder 』はローンチから5年が経った今も、ミレニアル世代から支持を受けそのユーザー数を増やしている。

その一方で、「交際相手がいない」というミレニアル世代※1は男性で約60%、女性で約50%と2015年時点で過去最多を記録した。※2

果たしてマッチングサービスは日本の非リア・ミレニアルズを救う希望の光となりえるのか?「マッチングサービスを使っています」と公言する2人のミレニアルズにインタビューし、“出会いの未来”を探っていく。

目的で分化するマッチングサービス、ユーザーの“モラル”も異なる

今回、インタビューに協力してくれたのは広告代理店勤務のOさん(29歳、男性)と、Nさん(23歳、男性)だ。どちらも正真正銘の独身である。

左からNさん(23歳、男性)、Oさん(29歳、男性)

―― 利用したことのあるアプリは?

Oさん「Tinder、マッチラウンジ、ゼクシイ恋結びなどですね」

Nさん「僕はTinderだけです」

―― Oさんは複数アプリの利用経験があるけど、NさんはTinderしか利用したことがないのですか。

Nさん「Tinderは操作が簡単なんです。会員女性の写真が次々でてくるので、気に入ったら右、そうでなければ左にスワイプするだけ。お互いに相手を気に入ったら、マッチングしてメッセージのやり取りが出来る。他のサービスはプロフィールを記入したりと複雑だし、お金もかかるから使っていません」

Oさん「Tinderは写真の第一印象で気に入ったかどうか判断するから、ビジュアルが重要になってくる。日本人ではライトユースな人が多いと思う。僕が使っている『ゼクシイ恋結び』や、使ったことは無いけど人気の『Pairs』は、プロフィールを充実させて自分をアピールすることが出来るから、相手を選ぶときのビジュアルの比重は軽くなると思う」

―― なるほど、例えばプロフィールにはどのような内容を記入するのですか。

Oさん「僕は年収、仕事の種類、特技のイタリア語が話せることを書いているかな。写真では他の人と戦えない!と自分で思ったから、プロフィールで強みをアピールできるサービスを選んでる。」

――プロフィールに年収や仕事を書く欄があるということは、将来を見据えて相手探しをする女性が多いのでは?

Oさん「『Pairs』や『ゼクシイ恋結び』は、結婚を見据えたお付き合いができるよう、サービス自体が設計されていると思う。ユーザーも内面重視で相手を選んでるんじゃないかなあ。僕の場合は、特に目的があってマッチングサービスを利用している訳ではないけど、仕事柄勉強のために使っている面もあるし、その中で女性とデートができるきっかけになったらラッキーって感じかな。」

――Tinderを利用しているNさんは、どのような目的でマッチングサービスを使っているんですか?

Nさん「暇つぶしに近いです。電車で移動する間に少し見て、デートの約束が出来たらラッキー!だな、儲けもんだなという感覚。Tinderではあまりプロフィールを詳しく書いている人はいないので、逆にプロフィール欄が充実しすぎている人がいると、引いてしまう。メッセージのやり取りで文章が長い人や、詳しく自分のことを尋ねてくる人もコワイ。」

NさんのTinder プロフィール画面。ボカシいれてあります。

「出会いたいからプロフィールを充実させる」というOさんと、「プロフィールが詳細な人には引いてしまう」というNさん。ターゲットユーザーが異なることで、各サービスはそれぞれ別の“社会”となり、サービス内での振る舞い方、つまりモラルも異なるよう。

単純に「出会えれば何でもOK」というものではなく、ユーザーがそれぞれの出会いの目的を持ちってサービスを選定し利用している結果と言えそうだ。

ミレニアルズがマッチングサービスに感じる“価値”とは

――マッチングサービスというと、“出会い系サイト”を連想する人もいるかと思います。“出会い系サイト”とは性格の違うものだとは思いますが、マッチングサービスの使用にあたって、抵抗感などはありませんでしたか?

Oさん「友人に聞くと、まだまだ抵抗感はあるけど、薄まりつつあると思う。オンラインの出会いへの抵抗感は、出会い系サイトがはびこった時代の名残だと思うから、少しずつ無くなっていくと思う。」

Nさん「僕は少し抵抗があります。使っていることを積極的には言わないし、マッチングサービスで出会った女性も、これまでどのくらいの男性と知り合ってきたのか分からないし。合コンなどリアルの出会いを求めつつも、その補助的なツールとして使っています。」

――まだ少し抵抗感がある、ということですが、利用のメリットは何でしょうか。

Oさん「現代人にとって一番効率化された、最適な方法がオンラインの出会いだと思う。合コンって大変じゃないですか、2時間は拘束されるし、どんな相手が来るのか分からない上に、男性側は料金も多めに出してあげないといけない。しかも初めて会った人同士で仲良くするためにどこかしら違和感がでてくるし、参加者の人間関係を考える社会性も求められる。マッチングサービスは1対1だから楽だし、事前にやりとりした上で会うから、効率がいい。」

Nさん「料金面からみても、時間面からみても、忙しい現代人には合っていると思います。Oさんが言うのはもっともで、男性は合コンに行くとなるとお金はかかるし、協調性が必要。かわいい子がいたら、先輩に譲るとか。」

2人が同様に口にした“効率”というワードは、まさにミレニアル世代の価値観を表している。消費よりも貯蓄を美徳とすると言われるミレニアルズ。目的が“出会い”であるなら、時間的にも経済的にもコストがかからないマッチングサービスの方がコスパが高いということだろう。

マッチングサービス体験談

――少し話はそれますが、マッチングサービスの体験談を教えてもらえませんか。

Nさん「 初めてサービスを利用して女性と会ったとき、どんな人が来るのだろうかと身構えていたら、写真以上に綺麗な方で驚きました。性格もすごくしっかりした方で、こういう人も利用しているんだとマッチングサービスの印象が変わりました。来週もメッセージが続いている人とデートの約束をしています」

Oさん「僕の後輩の女の子で、会うたびに『彼氏がいない、彼氏がいない』と言っている子がいて、あまりに彼氏が出来ないから、去年のクリスマスに半ば強引にマッチングサービスに登録させて60人に一気に“イイね“させたことがある。そしたらなんと、今年の2月に”イイね“した60人の1人と付き合うことに。僕がキューピッドだから、牛丼をおごってくれるらしいです(笑)」

これまでの出会いと、これからの出会い

――最後に、これから合コンに代わって、マッチングサービスが“出会いの王道”となる可能性はあると思いますか?

Oさん「合コンが無くなることは無いと思うけど、出会いはどんどん効率化していくと思う。1対1でお見合いするのは時間もかかるし大変だから、もっとカジュアルにして3対3で効率化したのが合コン。さらに時間内で出会える人間の数を増やしたのが街コン。マッチングアプリは現時点で最も効率化された方法だけど、普及するのはこれからって感じるかな。」

Nさん「僕はマッチングサービスをゲーム感覚で楽しんでいると言いましたが、合コンだって、出会い目的ではない場合がありますよね。友人とその知人でワイワイ楽しく飲む、というのが目的の合コンもある。マッチングアプリがこれからより普及したときに、逆に合コンは楽しむためのもの、真剣な出会いはマッチングサービスで、ということも起こり得るかもしれないですね。」

各主要マッチングサービスにおいてユーザー数が右肩上がりに伸長を続けているところを見ると、Nさんの想像する未来もそう遠くはないかもしれない。

ちなみに今年初め、『Tinder』は公式ブログで以下の動画を公開している。

https://youtu.be/6HXK90s2mlU

サービスにVRを取り入れようとしたが『Tinder』は現実世界で人と人のつながりをつくるサービスだ、ということからVRの「V」(バーチャル)を取った※3とのこと。(つまり2人には互いの目が見えている。)

これは展示会向けの、ユーモアをふくんだPR企画だが、もしかすると今後、マッチングの後に“会って話す”ことすらもオンラインで完結できる世界がやってくるかもしれない。

<注釈>

※1 本調査では18~34歳の男女を対照

※2 国立社会保障・人口問題研究所 「2015年社会保障・人口問題基本調査 第15回出征動向基本調査結果概要」より
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/NFS15_gaiyou.pdf
(2017年3月27日現在)

※3 「Tinder blog」よりhttp://blog.gotinder.com/tinder-vr-lol/
(2017年3月27日現在)

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Kishu Irie
MILLENNIALSTIMES

1992年生まれ。営業でもあり、ライターでもあり、広報担当でもあり、色々やります。女子大在学中には126回の合コンを経験。祖父の介護をきっかけにジェロントロジー(加齢学)を学び「高齢社会エキスパート」の認定取得。