連載 《 ワカモノたちのダイアローグ》 第1回

MONJOE(DATS/yahyel) 音楽をつくることは、世界とつながること。

Fumiyu Ko
MILLENNIALSTIMES
Published in
17 min readJan 11, 2018

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突然ですが、連載シリーズはじめます。ワカモノたちのモノづくりにフォーカスした連載ものです。どうして今更ワカモノなのか。それは、MILLENNIALSTIMESがミレニアルズという世代にフォーカスしたメディアな事はもちろんですが、わたし自身が「ワカモノ」という存在に違和感しかないから、です。ワカモノってひとくくりにしたとしても、そのワカモノっていったい誰のことだろう。世代のこと?年齢層で区切っただけ?言葉を選ばずに言うならば、上の年齢層の人々が自分の価値観を正当化するための免罪符としてワカモノ、という言葉を使っている気がする時もあります。

「若いっていいね!」…本当に?

若者、わかもの、ワカモノ。それは時に社会と自分との間にひとつ線を引くための名称であり、また社会から線を引かれてることも意味する名称のように感じています。「ワカモノだから…」そんな枕詞がいろんな文脈に隠れていることがある。だからこそ、わたしは自分のことをワカモノと称したい。そういった、わたしに線を引きカテゴライズしてくる社会を手玉にとってやる、とこっそり思うのです。そんな気持ちをこめてこの連載シリーズをはじめます。

ちなみに私、ライター顧は社会人2年目(24)。「若いっていいね。」っていろんな人から言われるけれど、私個人はまったくそんなことは思えず(若いって分が悪いな…)と思って日々すごしています。時に社会に怒り、そして時に社会とともに笑う、そんな会社員生活。今回は同じ会社の同期の脇田という、パッと見は「パスタが主食!」のように見えるが、本当のところはパスタよりも串カツが好き、そんな女子とともにインタビューしてきました。お相手は今、ミュージックシーンを沸かせているバンド DATS、yahyelのメンバーであるMONJOE/杉本亘。

ミュージックシーンを沸かせる存在 DATS /yahyel その2つのサウンドの中核こそがMONJOE

音楽フリークなら知っている、そうでない人もこれから要チェック!なのがこのDATSであり、yahyel。そしてその2つのバンドのサウンドの中核を担うのがMONJOE、杉本亘。

2017年のレーベル移籍後、限定シングル『Mobile』を機に今までのギターサウンドからエレクトロミュージックへと大きく方向転換。まさに新生DATS!その勢いはとどまることを知らない。

DATSではボーカル、フロントマンとしてまさにバンドの顔をつとめるMONJOE。 彼らはオーディション企画から“SUMMER SONIC”のステージに立ち、そのまま大手レーベルと契約。デビュー直後からSUMMER SONICに2年連続で出演という快進撃をみせる。2017年はレーベル移籍という大きな転換期を迎え、さらなる加速度でDATSは進化する。3月に公開された新曲『Mobile』でみせたエレクトリックなサウンドはミュージックシーンを沸かせ、勢いはそのままアルバム『Application』をリリース。同年は初のFUJI ROCK FESTIVALへも出演。

一方でyahyelではコンポーザー、シンセサイザーとして活躍。 2016年頃から徐々にミュージックシーンをざわつかせMETAFIVEのオープニングアクトや2016年、2017年と連続でFUJI ROCK FESTIVALへも出演。また最近ではWIRED Audi INNOVATION AWARD 2017を受賞と、まさに「目覚ましい活躍」とはこのことか...といった活躍ぶり。

映像と音楽が一体となったyahyelパフォ―マンスは圧巻そのもの。本当に見てほしい。

まさに今、最も注目すべきアーティストであるDATS/yahyelに所属し、両者のサウンドの中核を担うMONJOEにお話をきいてきました。彼との対話は、今自分がナニモノなのか悩んでいる、すべての人に読んでほしい。そんな特別だけど、特別じゃない、ある1人の〈ワカモノ〉の等身大の姿がここにあります。

顧 : 以前、弊社マッキャンのプランニングスクール※に一瞬通ったことがあるとお聞きしました。その時はまだ会社員になることも考えていたんですか?

※マッキャンのプランニングスクールが毎年夏に開催されている。

MONJOE : 「はい。自分が慶應っていう大学に通っていたこともあって、周りが普通にサラリーマンとして人生のコマを進めることに疑問を持てない人が周りにいて。自分もそういったマインドを捨てきれないっていう状態にあったことは確かですね。」

顧 : 今はどうですか?

MONJOE: 「完全に捨てましたね」

顧 : そう思うようになったきっかけは?

MONJOE: 「やっぱりそれは自分が就活っていうものに片足突っ込んだのがきっかけでした。まず、純粋に電車に乗って都心の人のいっぱいいるところを歩くことが無理だなと。あと実際にいろんな会社をみて、本当に稀だけど自分たちの好きな仲間たちで、好きなことだけやって、好きなように過ごしている会社ってある。そういうのってすごくいいなって思って。」

「音楽やってるといろんな業種の人たちと関わることが多くて、仕事というより作品づくりを通じて一緒に手を動かしていくうちに友達になっていくというか。この人たちといつまでも一緒にモノづくりができたらいいなと思ったんです。まぁ、でも一番大きいのは、音楽が好きで音楽をやり続けたいって思ったというところですね。」

言葉のかわりとなるのが、音楽だった。

顧:音楽に、それほどまでに惹かれるワケは?

MONJOE: 「日本語を喋るのが、すごくヘタなんですよ。L.A.で生まれて、そのあとは小学校2年生までワシントンにいました。幼少期は日本とアメリカを行ったり来たりしていたこともあって、語学に関しては中途半端。だから、未だに友達にバカにされますよ(笑) 日本語おかしくね?こんな言葉も知らねぇのかよって。だから、みんなの言葉のかわりとなるものが自分のなかで音楽だったのかな?っていうことが自分の中に自己分析としてあります。」

顧: 音楽を始めるきっかけは何だったんですか?

MONJOE: 「親にピアノ習わされてたっていうのはありましたけど、主体的に音楽を始めたのは高校1年生の時。Nirvanaっていうバンドの一番有名な曲、Smells Like Teen SpiritのMVを見て。『なんだこれは!!』って。まずイントロふくめ、音が衝撃でした。これカッケーってなって。自分もやりたいなっていうのが最初。」

この曲以上に胸がザワつくイントロってあるんでしょうか。

顧 : じゃあそこからバンドを組んだり、という?

MONJOE: 「そう、バンドは高校の時にNirvanaのコピーバンドを組んで。その時はまだ自分で作曲はしてなくて、ちょっとギターが弾けるようになった時にやってみようかと。なので最初の作曲は高校生ですね。」

顧 : 最初は、ギターのリフを繋ぎあわせたような曲だったってことでしょうか?

MONJOE: 「そうですね。いまはほとんどパソコンで楽器弾いたり、弾かなかったり。」

ちょっと恥ずかしいくらいが、フロントマンとしてちょうどいい

顧: DATSだとフロントマン、yahyelだとコンポーザーだったりシンセだったりと、立ち位置が違うじゃないですか。そこが違うとやっぱり気持ち的にも変わってきますか?

MONJOE: 「全然違います。フロントマンの出来で、バンドの印象が変わってくるんですよ。だから、責任っていうと変ですけど、『自分が引っぱっているんだ』っていう自覚をもってやらないとパフォーマンスが良いものにならないですね。」

顧: それは、なかなかしんどそうってだな、と感じてしまいました、一瞬。

MONJOE: 「結構人見知りなので、自分を完全にさらけ出すのが苦手な方で。だから最初は辛かったですけど、最近はさらけ出していくことに面白みを感じていますね。」

顧: そうなれたのは、ただの杉本亘のときの自分と、アーティストとしての自分の間を自由に行き来できるようになったっていうことでしょうか…?

MONJOE: 「なんか開き直ったっていうか。 《 恥ずかしいところくらいみせてもいいじゃん 》って。ちょっと恥ずかしいくらいが、フロントマンとしてちょうどいいじゃんって思えるようになったことが大きいですね。」

「そう思えるきっかけは、やっぱり大きいステージに立つようになったことですね。yahyelは去年も出たんですけど、DATSとしては今年初めてFUJI ROCK に出て。それ以外にも今年の夏フェスシーズンに沢山のフェスに出たんですけど。自分がどう振る舞うかで反応が全然違う。特にフェスなんて盛り上がりに来ている人たちが来ているから、余計そこらへんが分かりやすくて。面白いのと同時に自分を見つめ直すいいきっかけになりましたね。」

音楽であれ、仕事であれ、子孫繁栄であれ新しく何かをつくりたいっていうのはすべてにあてはまる欲求

顧: 自分が曲をつくる源だなって感じていることってあります?

MONJOE: 「やっぱり自分と社会とのコミュニケーションを取れるのが音楽っていう手法。それが自分にとってしっくりくるっていうのが、曲をつくりたいって思う根幹なんだと思います。あと、これ聞いた話なんですけど新しく何かをつくりたいっていう欲求って、脳の機能の中に備わっているらしくて。」

顧: へぇ、モノづくり脳ですね。

MONJOE: 「そう、その機能は脳の言語機能のメカニズムと共通しているらしくて。要は、言葉みたいに世の中とコミュニケーションをとりたいって思うのと同じように、音楽をつくったり、モノをつくったりして、社会とつながりたいって感じているんだって。そう思ったら、音楽で表現することって大げさに聞こえるけど、結構自然な営みの1つなんだなってその時に思いました。」

「だから自分が音楽をやっているからどう、とか、やっていないからどう、とか関係ないなって思うんですよね。表現して社会とつながりたいって思うのは似ていること。表現するって言っちゃうと仰々しいんですけど、結構自然な、誰もが持っている機能なんだなって思っています。とりわけ僕は言語機能が、著しく低いので、その代りとなるものが音楽だったという(笑)」

顧: しっくりきたんでしょうね。音楽が。

MONJOE :「聞いた話ですけどね。新しいモノをつくりたいっていう欲求があるのは何でだろうなって考えたときに…..… なんでだと思います(笑)?」

顧:え~!…でも、私の場合は仕事が上手くいかなくてイライラしてたりすると自分の中の泉が枯れているような感じになるんですよ。そうなると別の方向にいく。絵を描き始めたり、工房に行きだしたりとか。それってなんだろな~って考えたときに、少しでも人類に生きた証を残したいんですよ。おおげさですけど(笑)

MONJOE: 「ああ、それはあるよね。」

顧: 人類史上でみたら、一秒にも満たないけど、誰かの中に残ってほしいなって思う。それは世の中に認められることの1つのあり方だと思うんですよね。肯定してほしいっていう。

MONJOE: 「確かに。モノがあった方がわかりやすいもんね。」

顧:脇田さん、どう思う?ヤバい無茶ぶりしてるけど(笑)

脇田:わたしは認められたい、っていうほどの欲求はないんですけど、何かはつくりたくて。日々仕事をしていると、これ自分がいなくても成り立つなってことがたくさんあるんですよ。自分がいなくても社会が回るなって思うことが沢山あって。でも自分が何かをつくったとしたら、それは自分がいないと成り立たない社会じゃないですか。「自分にしかできなかったなこれ」っていうのをつくりたいなっていう気持ちですね。でも実際につくれない人っていると思うんですよ。

MONJOE: 「でもどんな形でもつくろうとするじゃないですか。根本的に言うと子供をつくるのもそうだし。」

「たとえば自分が何もない地球に、自由にしてくださいって野放しにされたら、めちゃくちゃ辛いなって思う。俺、暇も孤独もキライだし。自分がそう思ってるってことは人間みんなそうなんじゃないかな?壮大な暇つぶしを繰り返して今があるのかな、って考えたときに、音楽であれ、仕事であれ、子孫繁栄であれ新しく何かをつくりたいっていうのはすべてに当てはまる欲求なんじゃないかなって思うんですよ。たまたま俺の場合は音楽だったっていう。」

好きな子を振り向かせるのと、作品づくりは一緒。

顧: でもやっぱり世に放ったときに受け入れられたっていうことは大きいと思いますよ。曲づくりでいうと「こういう曲ウケるな」っていうのはつくるときに考えているの?

MONJOE: 「意識している時もあるし、してない時もあるし。ウケだけを考えるとつらいから、2つバンドやってるって感じかな。」

顧: DATSとyahyel、結構違うもんね。

MONJOE: 「そう。ざっくりとしたスタンスでいうと《ポピュラリティーを獲得したい》っていうのがDATS。《芸術表現を芸術表現として受け入れられたい》っていうのがyahyel ですね。」

顧: yahyelには日本のミュージックシーンに一矢報いるというか、ボーダーレスに自分たちの音楽を聞いてほしいっていうのがコアにあるじゃないですか。ただ、そうなると全てのスーパークリエイターたちがライバルになってくる。それって正直厳しいんじゃないかって思ったんですよね。比較対象が増えてしまうというか。

私の好きな曲です。静的に始まったかと思うと、とたんに感情が爆発するような曲調がたまらないです。

MONJOE: 「ホント、そう。ホント、厳しい…。日本だとある程度 《海外みたい》、とか 《気持ちいい》 《オシャレ》 《Chill》みたいな感じで受け入れられるけど、海外だとそういう音は沢山あって。本当に厳しいですね。1枚目を出した時にすごくそういう焦りを感じて。それがかえってyahyelとしての記号を深く考えるきっかけになったというか。俺らにしか出せない音、そういうのをより打ち出していかないといけない、ってすごく感じたんですね。今、2枚目のアルバムの準備をしているんですけど、『これがyahyelの音なんだ』っていうものはつくれた。ただ、一枚目が好きでいてくれた人は離れてしまうかもしれない。」

「でも、作品を出すことは本当にコミュニケーションだから、何をフィードバックとして、次の作品として発信していくかっていうこと。 『あの人と付き合いたいけど、どうしたらいいか、今回のデートはイマイチだったけど…次こそは!』っていう。そういうことですね。」

不特定多数の〈いいね〉じゃなくて、あなたからの〈いいね〉が欲しい。

MONJOE: 「今はもうインスタとかYouTubeとかでクリエイターのポートフォリオを見れちゃうし、サクッと情報が集められる。いろんなことに手を伸ばせるけど。ただ、インスタとか、ツイッターの〈いいね〉数、フォロワー数で自分が拡大されて感じられてしまうのも事実だと思うんですよ。」

顧: その〈いいね〉至上主義に関してはどう思います?

MONJOE: 「それはまずいなって思って、マス。だって結局それは、いいね戦争だし、フォロワー戦争だし、もう消耗戦じゃないですか。もうほんと、それは軍国主義みたい。」

顧: それは私も思います。いろんなメトリクスがあっていいのに、マイスタンダードをそれぞれ持っていていいはずなのに、なんでひとつの尺度で判断しなくちゃいけないんだって。腹立たしいですもん。

MONJOE: 「1種類しかないせいで、あいつは自分より1万人フォロワーが多いから悔しいとか、すげえとかになってきてしまっていて、それは本当にしょうもないじゃないですか。そこに対する疑問はすごくありますね。」

「DATSの前作のアルバム『Application』は、SNS世代のリアルな日常っていうのをテーマにしてて。その時は 不特定多数の〈いいね〉に関して描写していたんだけど、フェスで全国のいろんなところを回っているうちにお客さんが楽しそうにしていることって本当にかけがえのないことだなって感じて、もっとミクロなコミュニケーションを大切にしたいなって気持ちになりましたね。結局は不特定多数の〈いいね〉じゃなくて、そうじゃなくて、あなたからの〈いいね〉が欲しいだけだったっていう。そういうことを伝えたいのがまさに今つくっているアルバムですね。」

アルバムApplicationから。

顧: じゃあMONJOEさんが一番〈いいね〉が欲しいひとって?

MONJOE: 「え、だれだろう、……….…….(長考)…..……柴咲コウかな?」

顧: それ、そのまま書きますよ(笑)

※書きました。

最後に。

顧: これで最後の質問です。ありがちですけど、音楽がなかったら何をしていたと思いますか?

MONJOE:「いやー想像できないですねー…。

うん………………..いや……….、ほんと、NO MUSIC NO LIFE 。

たぶん、そう書いてもらっていいと思います。」

編集後記~ライター顧の思うところ。~

『不特定多数の〈いいね〉が時代の尺度になっているけれど、結局たった1人認めたら、自分はそれで満足である。』

それは、本当に真理ですよね。でもその人に認められた後はそれこそ「自分は何をしたいのか」、というまさに人生の命題と真っ向勝負するフェーズが待ち受けているようにも思います。わたしは「その闘いに勝ちたいな、勝つために今、何ができるかな。」そんな哲学問答を繰り返しながらMONJOEさんとのインタビューを反芻していました。

人生との闘いは、まだ始まったばかりだ。

MONJOEさんとのお話していると自分も何かできるかも?という気になってきます。人にパワーを与えることができる、それがMONJOEという人物である。

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▼DATS

▼yahyel

▼MONJOE

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Fumiyu Ko
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顧 文瑜 1993年生まれ/迷える子羊/チャイニーズな両親のもと、日本ですくすく育つ/アートが好きで、ものづくりが好き/最近は一周回って手芸とビーズがアツい