ミレニアルズが起こす大企業での挑戦-One JAPAN交流会レポート(後編)

Kishu Irie
MILLENNIALSTIMES
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9 min readSep 29, 2017

2017/9/10(日)、『One Japan』の1周年記念イベントが開催。秋葉原に約800名の参加者が集まりました。

『One Japan』とは大企業の若手有志団体をあつめたプラットフォーム。厳しい社内規則や上下関係など数々のしがらみにより、なかなかイノベーションを起こせずにいる大企業の若手社員は少なくありませんが、その若手社員たちが挑戦できる土壌をつくることを目的に『One Japan』は活動を行っています。

『One Japan』一周年イベントに約800名が集結

当日イベントに参加したのは、名だたる企業の若手有志団体たち。イベント前半では様々な企業・団体のパネルディスカッション、後半では各社の有志団体の展示ブースが設けられ、各企業のノウハウとアイディアが組み合わされた数々のイノベーションが紹介されました。

今回はイベント後半の内容を一部ご紹介します。なお前半の様子は同じくイベント参加したMcCANN MILLENNIALS 阪口のイベント前半レポートをご覧ください!

流通は進化する!ドローンが山河を越えて郵便物や荷物を配達(日本郵便株式会社)

完全自律・高速飛行のドローン『PF1-Delivery』

これまで車やバイクなどで行われていた配達。道がなく山河を越えられない場合は、迂回して目的地へ向かうしかありませんでした。もっと早く、もっと安全に郵便物や荷物を届けたい。そんな思いから日本郵便株式会社が実証実験に取り組んでいる、完全自律・高速飛行のドローン『PF1-Delivery』。最大3kgの重さを時速50km/hの速さで、しかも人が操作することなく運搬可能とのこと。また、運搬する物の重量や天候によりますが、片道12kmの距離の運搬に成功しているそう。高圧電線付近の飛行など、実用化に向けいくつかの課題はあるようですが、ドローンによる配達が一般的になる未来もそう遠くは無さそうです。

既に何度も実証が行われ、機体の性能は着実に向上しているとのこと

集中力を測れるメガネで、働き方改革!(旭硝子株式会社、株式会社シーイーシー、株式会社ジンズ)

『JINS MEME』を実際に装着している旭硝子株式会社高橋さん

旭硝子株式会社、株式会社シーイーシーが共同開発するスマートウォッチ、スマホ、ビーコンを活用した業務分析ツール『Smart Logger』と株式会社ジンズの集中力が計測できるメガネ『JINS MEME』がコラボレーション。写真のメガネが『JINS MEME』。メガネの鼻あての部分と、耳かけ部分にセンサーを搭載し、メガネをかけるだけで、その時その時の集中力を計測できます。『Smart Logger』で業務分析をしながら『JINS MEME』をかければ、どの業務中にどれくらい集中しているのかがわかるとのこと。製造現場、オフィスワーク、勉強、スポーツシーン等幅広く生かせそうな技術ですね。

Smart Logger :http://vrr.cec-ltd.co.jp/product/smartlogger/
JINS MEME:https://jins-meme.com/ja/

アプリと連携させることで、作業ごとにかかった時間や各作業の集中度を計測できる

タマネギなのに、りんごみたいな甘さ!新価値たまねぎ『スマイルボール』(ハウス食品株式会社)

辛み成分を抑えることで たまねぎ本来の甘みが感じられる『スマイルボール』 当日試食も行われた

カレーでお馴染みハウス食品株式会社では、さらに美味しいカレーを探求する中で、カレーの美味しさを引き出すコツの1つであるタマネギの研究を重ね、偶然にも「涙が出る成分≒辛味の成分」を発見。「この成分を取り除くことで、今までに無い美味しさのタマネギが出来るのでは?」と考えた同社は、種苗メーカーと共同で品種改良を続け、ついに生食でも辛みがほとんど無いタマネギ『スマイルボール』を誕生させました。実際に生で食べてみましたが、特有の刺激やにおいが口や鼻に残らず、タマネギ本来のリンゴのような甘さが感じられます。これなら今までタマネギが苦手だったお子さまでも美味しく食べられそうですね。まさに、美味しいカレーへの追求心により実現したイノベーションです。

詳細リンク:https://housefoods-group.com/activity/smileball/index.html

女性の間で人気が高まる「塗り絵」とガラスびんがコラボレーション!(東洋ガラス株式会社)

色を塗った『Coloriage Bottle』は光に当たるとまるでステンドグラスのよう

この可愛らしい『Coloriage Bottle』は、書籍『大人の塗り絵』と、東洋ガラスのコラボ製品。20~40代の女性を中心に「無心になりリラックスできる」「アート作品を作っているようで楽しい」など、マインドフルネス的な趣味のひとつとして人気が高まっている塗り絵。繊細で美しい模様が印刷されたガラスびんに、自分好みのペンで色づけすれば、世界にひとつのオリジナルボトルが完成します。この繊細な印刷は技術的にも難しいらしいのですが、『Coloriage Bottle』を販売しているのは文房具屋でも雑貨屋でもなく本屋!ということで、そこにもイノベーションを感じますね。花を挿したり、写真を入れたりすれば、結婚式や誕生日のプレゼントにもぴったりです。

繊細な模様をプリントには高い技術が必要だそう。レースの表面をなぞるような手触りも心地いい

再生医療と創薬で医療の未来に光を!新しい医療への挑戦(武田薬品工業株式会社)

武田薬品工業株式会社 湘南研究所 参照:https://www.takeda.co.jp/t-cira/

武田薬品工業株式会社では、ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授が所長を務めるiPS細胞に特化した世界的研究機構『京都大学iPS細胞研究所(CiRA)』とタッグを組み、武田薬品湘南研究所において、大規模かつ革新的な共同研究であるT-CiRAを設立しており、その研究を発表していました。iPS細胞技術を応用して、ALSや筋ジストロフィーなどの難病とされる病気の治療方法等を研究しているとのこと。通常新薬が世に出るためには15年~20年の歳月と多額な費用がかかる(グローバルでの研究開発では2,000億もの費用がかかることも)とのことですが、iPS細胞の技術を活用した再生医療により、少しでも早く病気に苦しむ方々を救えればという思いで日々研究に取り組まれているそうです。

当日配布されたパンフレットには、武田薬品工業のCEOとCiRA所長の山中教授の写真が並んだ

詳細リンク:https://www.takeda.co.jp/t-cira/

車椅子やハイヒールでも安心!次世代の点字ブロックでユニバーサルな街を目指す(NEC 日本電気株式会社)

小さな突起の振動によって足の裏へ注意などの情報を知らせてくれる

歩道や公共施設内に設置されている黄色い点字ブロック。視覚に障がいのある方にとって、方向や注意を伝える重要なものですが、車椅子の方や高齢者の方にとって、あるいはハイヒールを履いていたりキャリーバックを引いているときなどは、でこぼこに引っかかり歩きづらいこともしばしば。そんな不便さを解消し、障がいのある方だけでなく全ての人にとって快適に過ごせる“ユニバーサルデザイン”な街を目指すのがNEC(日本電気株式会社)。凹凸を無くす代わりに、振動や光などによって進行/停止や向いている方向を知らせてくれるシステムを研究開発中。このシステムが普及すれば、ベビーカーの方や車椅子の方にはもちろん、キャリーバッグを引く旅行者の方など、全ての人にとって歩きやすい街になりそうですね。特許出願登録済とのことで、近い未来、街で目にすることができるかもしれません。

左の機械は振動で注意喚起を、右の機械は横揺れ振動によって方向を知らせる

詳細リンク:http://jpn.nec.com/design/movie/showcase.html

他にも沢山のブースが出ていましたが、今回はその中のごく一部をお届けしました。

少子高齢社会やそれに伴う医療費の増加など、日本が抱える課題は様々。大企業に勤めるミレニアルズが勇気を持ってイノベーションを起こせば、経済的にも社会的にも未来の日本にメリットをもたらせるはず。さらに『One Japan』で各企業が出会い、コラボレーションすることで今まで無かったイノベーションが起こるかもしれませんね。

企業のノウハウを吸収し専門性を磨きながら、問題意識をもって社会貢献に意志を燃やすミレニアルズに、頼もしさを感じたイベントでした。

当日参加した McCANN MILLENNIALSメンバーと筆者(左下)

One JAPAN とは

大企業の若手有志団体のプラットフォームとして、2016年9月に発足。
企業を横断した新規事業やプロジェクトの企画・実行、新たな働き方に関する提言など、幅広い活動を行っている。

http://onejapan.jp/

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Kishu Irie
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1992年生まれ。営業でもあり、ライターでもあり、広報担当でもあり、色々やります。女子大在学中には126回の合コンを経験。祖父の介護をきっかけにジェロントロジー(加齢学)を学び「高齢社会エキスパート」の認定取得。