“Switch the ignition on!” — SENSORS IGNITION 2017 REPORT
こんにちは。McCANN MILLENNIALSの中沢渉です。
3月23日に虎ノ門ヒルズで開催された「SENSORS IGNITION 2017」
「SENSORS IGNITION」とは、テクノロジー × エンターテインメント × ビジネスをテーマに、新たなイノベーションを起こす「発火装置 = IGNITION」になることを目指した今年で3年目となるイベントです。
イベントでは、業界を代表するイノベーターやクリエーターによるトークセッションが行われました。
セッションを通して、”広告業界のミレアルズ”として感じた事を、一部ここに書き留めさせていただきます。
— 『グローバルに通用するクリエイティブとは?』
MIKIKO(演出振付家) / 真鍋大度(メディアアーティスト)
モデレーター:原浩生(日本テレビ SENSORS プロデューサー)
レポート記事はこちら
MIKIKO・真鍋大度が語る『国境を超えるクリエイティブの秘訣』
ここで面白かったのは真鍋さんの、”新たなクリエイティブ”を生むための”Research”への徹底です。
— 「ブレストとかするのあんまり意味が無いと思ってる」
と大胆な真鍋さんの発言。
— これは極端な言い方かもしれませんが、「とりあえずブレストしよう!」と集まるのであれば、その時間を調べる時間にあてた方が良いとの事。
— 調べた結果、”こういう事やるのであれば既にこういう事がやられているので、その先に行く事をやらないと、”と提案しディスカッションするべきであると。
— ですが、言語的なモノやキャッチコピー(例えば、今回の話で言うと”東京は水の都”など)を決めていくには、どうしても調べては出てこないモノなのでディスカッションして決めていく。
普段の企画でも、この様な事例を調べる作業は重要視されますが、改めて”リサーチが生み出す真のクリエイティブ”を目の当たりにしました。
広告代理店の仕事でも、世の中に似通ったモノが多数ある中で、ブレストする際に既に見た事ある様なアイデアが頻繁に出てきたりしますが、そういった場面も本来これを見習って変えていくべきだなぁと感じました。
— 『VRクリエイティブ最前線』
齋藤精一(Creative Director / Technical Director : Rhizomatiks)/ 秋山賢成(ソニー・インタラクティブエンタテインメント・ジャパン・アジア
ソフトウェアビジネス部 次長 兼 制作技術責任者)/ 土屋敏男(日本テレビ 日テレラボ シニアクリエイター)
モデレーター:加藤友規(日本テレビ 日テレラボ 主任)
レポート記事はこちら
“没入感から実在感へ” VRドラマ制作秘話 — ライゾマ齋藤精一×ソニーPS VR秋山賢成×日テレラボ土屋敏男
最近では、VRを使った体験イベントなども多く目にしますが、とりあえずVR!では振り向いてくれなくなりましたよね。
没入感 を超える 実在感。
— あらゆるVRコンテンツが溢れた今、「自覚することなくその世界の中に自分が居る感覚をいかに出すかが非常に重要だと思っています。」と語るのは秋山さん。
僕たちの仕事の場合、例えばブランド体験としてVRコンテンツを用いた時、そこにおける ”ブランドの実在感” とは何なのか。奥が深そうです。
— 『AI×映像認識の最前線』
米田大介(NEC 放送・メディア事業部 新事業推進部長)/ 花ヶ崎伸祐(NECソリューションイノベータ イノベーション戦略本部 戦略グループ 主任)
モデレーター:齋藤精一(Creative Director / Technical Director : Rhizomatiks)
レポート記事はこちら
今知っておくべき、日本が世界に誇るAI x 最新認識技術の最前線
衝撃だったのは、”お笑いライブの観客を映像認識・AI分析し、笑福度診断で笑いを数値で見える化する”といった取り組み。これぞ芸人殺しでしょうね・・・
僕たちの仕事で言えば、例えば店頭プロモーションなどでしょうか。
店頭で人がどんなリアクションをしたか、それが購入に繋がったか否か。
それが数値化されたら、凄く効率的かもしれないがこっちとしてはとても怖い様な話ですね(笑)と言うか日本ではプライバシーの問題にもなりそうです。。。
— 『近未来社会予測 ~AI、ロボット~』
神山健治(アニメーション映画監督)/ 落合陽一(メディアアーティスト,筑波大学助教デジタルネイチャー研究室主宰,VRC理事)
モデレーター:西村真里子(SENSORS.jp 編集長)
「映画もインタラクティブ性を持ち始めている」
と語るのは映画『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』の監督神谷さん
— SNSの発展により、映画を観た人による反応がきっかけで社会現象になる事もあれば、解釈によってストーリーそのものを完成させてしまう。
— 敢えて作品を完パケでない状態で世に出すことが重要だったりする。作る側はそれも混みで考えていかない時代。それってワクワクするよね。
これも正に、広告の仕事にも言える事なのかなと思います。どの様に感じてもらい、一緒に作り上げていくか。PR発想的な話ですね。
「何者かになるべき欲求や圧力」っていうのが、却って「何者にもなれない世界」を作り出している
— 日本人っていうのは、1600年以降、近代ありきの人間性を本当に振りかざしがちです。我々の社会にここ150年でインストールされた近代のパラダイムです。
— 「あなたらしく生きなさい」とか、「オリジナリティ」を探す、憧れるみたいなものを捨てて、出来ることからやろうとしないとダメだと思うんです。
と語ったのは、同じミレニアル世代でもある落合さん。
— (神谷)今の若い人たちにとっては、もう問題が大きすぎるので今から全容を把握してからスタートするのでは間に合わない。であれば、目の前に起きた問題それだけにアプローチしていけば良い。
『ひるね姫』の主人公のココネもその様に描いたそうです。
— (落合)スティーブ・ジョブズは自分が「何者か」であるというのを信じ続けた結果、「何者か」で在った人なんですけれど、ココネちゃんはそうではなく、手につく範囲にあるものを若さと根性でががっとやっていったら、いつの間にかにあらゆるピースがハマっていって、なんか母の後を継げる人間になっていたみたいな感じです。
— ” そこに有るものからやっていこう”というのを、若者だけではなく、産業レベルでやっていかないといけない。(落合)
日本では『ゆとり世代』と言われるミレニアルズの中には、「あなたらしく生きなさい」とか、「オリジナリティ」を探すとか、そういった「何者かになるべき欲求や圧力」に日々追われている人も少なくないと思います。
理想との違いにもどかしさを感じる前に、そこに有る課題に対して怖がらず、若さを武器にぶつかって行くべきであり、
”一人のカリスマを目指すというよりも、みんなで積み上げていく”姿勢。
そこに、
『ゆとり世代』=【ミレニアルズ】ではなく、
『イノベーションを起こす世代』=【ミレニアルズ】へ日本の若者が変わる鍵があるのかもしれませんね。
— 展示エリアでは
個人的には、「VRでこう!」とか、「IoTのこんなの作っちゃいました!」とかもありますが、例年に比べAIなども活用した、シャアリングエコノミー関連のサービスが目立っている印象を受けました。
【シェアリングエコノミー】
典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。貸し借りが成立するためには信頼関係の担保が必要であるが、そのためにソーシャルメディアの特性である情報交換に基づく緩やかなコミュニティの機能を活用することができる。シェアリング・エコノミーはシリコンバレーを起点にグローバルに成長してきた。引用:http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc242110.html
その他の展示は以下の記事に掲載されています
SENSORS IGNITION 2017 展示エリアレポート〜アカデミック・VR・IoT・クリエイティブ編
SENSORS IGNITION 2017 展示エリアレポート〜パートナー企業&スタートアップ編
SENSORS IGNITIONは、ミーハーな僕にとっては毎年楽しみなイベントの一つです。今年も様々なクノロジー × エンターテインメント × ビジネスの未来に触れることができました。
【広告業界】もそろそろ【コミュニケーション業界】へと
本格的に形を変えるべき今、このイベントの中でも何が味方になり、敵となり、ヒントになるかは分かりません。
ただそれらに触れる場(=発火装置となり得る場)があることに感謝し、僕たちミレニアルズはまだまだそこから学んでいくべきことがたくさんあります。
未だに、360度動画やVRなどでとりあえず「やってみた」的なアイデアを出すシニアも多い世の中ですが・・・
そういったUXの中で、何が心理的トリガーなのか、流行りのメディアアートにおいても、アートそのものと鑑賞者の間にはどのような五感が作用しているのか、ミレニアルズが先導して考えていかなければならないと改めて危機感を感じます。
単なるクリエイティブ表現よりも
体験をデザインする時代。
ストーリーテリングではなく
ストーリーリビングの時代。
次の時代へとスイッチさせるイグニッションキーは、ミレニアルズが持っていると信じたい。