『アナログな君こそ、SXSWに行け。』Part 1

Shuhei Yasunaga
MILLENNIALSTIMES
Published in
9 min readMay 23, 2017

こんにちは。McCANN MILLENNIALS プランニングの安永です。コピーライター半澤と共に3/10~3/19にテキサス州オースティンで開催されたSXSW2017に視察に行ってきました。熱気の渦に巻き込まれながら我々が感じたことを“リアル”にレポートしたいと思います。

こっそり聞きたい。そもそもSXSWて何?

SXSWを簡単に言い表すのは非常に困難なのですが「テクノロジーとトレンドで未来を占う祭典」という表現が言い得て妙かと思います。

SXSWは1987年に音楽祭としてスタートし、現在ではインタラクティブ部門・フィルム部門が設けられており、テクノロジーからコンテンツまで、ありとあらゆる最先端をフルで体験できる祭典となっています。本年度、そんなテッキーな占いの館に足を踏み入れたのが、プランニングの安永とコピーライターの半澤でした。そこまでテクノロジーバリバリというわけではない二人でしたが、実際に行ってみて、これだけは断言できると思います。

「アナログな君こそ、SXSWに行け。」

どういうことなのか、今年のSXSWでMILLENNIALS的にホットであると感じたことを紹介しながら解説していきたいと思います。

メインの会場であるコンベンションセンターにて

MILLENNIALS的に感じたホットなトレンド!

目次

[1] AIの今、未来。

[2] VRはストーリーテリングの時代へ

[3]デザイナーベイビーを産みますか?

[4]これからの女を生きる

[5]火星行こうぜ!

トレードショーは未来の見本市

[1]AIの今、未来

ここ数年話題の絶えない人工知能(Artificial Intelligence) ですが、今年も相変わらず多くのAIに関するトークセッション・展示が会場を賑わせておりました。

AIは怒涛の勢いで人類に迫る!

そのうちの一つとして、Googleで人工知能の総指揮を執るRay Kurzweil(レイ・カーツワイル氏)がKeynote(SXSWの目玉である基調講演)に登壇しました。カーツワイル氏曰く「2029年にシンギュラリティが来る!」とのこと。

シンギュラリティ(技術的特異点)とは「機械が人間の知能を超える点」のことで、SFでよく描かれるAIが人間を凌駕してしまう時代がもうすぐそこまで来ているということです!これまで、シンギュラリティは2045年に到来すると予想されていたため、今回さらに早まり、これからもさらに近づいてくるかもしれませんね。しかし、カーツワイル氏は、シンギュラリティに対してそこまで恐れる必要はなく、2030年代には大脳真皮質と人工知能がコネクトし、人間のと機械のハイブリッド超人が生まれることを予言しており、AIが人間を更にブーストしてくれる未来が期待されます。まさにSF!

目玉Keynoteはこれだけ巨大な部屋で行われても、人があふれてしまうほどです

AIの創造性は、もうここまで来ている!

Can A Film Made By a Machine Move you?(機械に作られた映像で人を感動させられるか?)というセッションでは、映像のコンセプト設計、俳優の選定、撮影、編集をAIがすべて一貫して手掛けたというMusic Video 「eclipse」が紹介されていました。これはIBMの人工知能WATSON・マイクロソフトのりんなが協力して歌詞を解釈し、さらに歌っている歌手の感情を脳波センサーでキャプチャーし、演出に反映しているというもの。

また、別のセッションでは、AIを題材としたサスペンス映画「MORGAN」のトレイラー動画をWATSONが編集した!ということが取り上げられていました。こちらは映画を観た人が恐怖を感じたシーンを脳波からデータとして集め、WATSONにインプットしているとのこと。AIが感情を自主的に判断しているわけではありませんが、なかなか怖く仕上がっています。

実際に視聴した感想として、出来栄えにムラはあるものの、AIが苦手とされていたクリエイティブの領域にも、AIは既に足を踏み入れていると言えるでしょう。

我々McCANN MILLENNIALSでも実際にクリエイティブディレクターとして、CMの演出をディレクションをする人工知能『AI-CDβ』を発表しており、ますますクリエイターとしてAIの活躍が期待されます。ひえ~!

未来のスマートホーム

そんなAIの成長と並行して議論の的になっていたのが、AIと人間の付き合い方という点です。

AI’s Final Frontier: Your Living Room(AIの最終領域:あなたのリビングルーム)と銘打ったセッションでは、Google Homeなどの家庭用人工知能デバイスとの新たな室内環境を提案していました。実際に音声認識AIのAxelaを搭載した「Amazon Echo」は海外で1,000万台以上の売り上げを誇っています。

まさにIROM MANのTony Starkの部屋が実現しているのです!これらのAIは人間の生活にぐっと寄ったパートナーとして、新たなライフスタイルの発展が期待されます。

AIは人間のパートナー?サポートツール?

この“人間のパートナー”という観点については多くの議論が交わされており、SXSW2017でもGiving A Face to AI(AIに顔を与える)やI Speak Robot(ロボットとの対話)といった、AIをどのような存在にすべきかというセッションが散見されました。Pepper君のように顔があったほうがいいのか、ディスプレイがあったほうがいいのか、はたまたアラジンの魔法の絨毯のようにモノとして振舞う方がいいのかという議論が白熱していました。

このトークセッションでは、Pepperをはじめとしたロボットの開発者たちによって熱い議論が繰り広げられた

人間くさいアナログな想像力がAIを進化させる!

今回SXSWを通して、「AIはもうこんなことまでできる!人間を凌駕する領域に来ている!」という話が盛り上がるほど、その上で「AIと人間がどう付き合っていくべきか!」という議論も盛んになってきている印象でした。また、AIの進化に関しては、テクノロジー的な側面に注目が集まりがちですが、結局それを進化させているのは、「あんなこといいな、できたらいいな」的な人間の欲求、そうアナログな部分なんだと強く感じました。アナログな想像力をワクワク働かせることが、AIの次の可能性を膨らませて、新しい社会への価値貢献につながるのだと思います!

AIは敵ではなく、我々を高めてくれる存在!

AIがどんどん進化していく上で、アナログな発想が重要であると述べました。私の個人的な考えになりますが、これは視点を変えれば、AIの発展が、人間の表現力や、倫理観、他人への慮り、などを見直すきっかけになるということではないでしょうか。

AIのクリエイティビティのスキルは、今後膨大な事例をインプットして「なにが優れたクリエイティブか」を判断できるようになれば、間違いなく人間をも凌駕する領域に達し得るでしょう。しかし、それを人間がただ指を咥えて見ているとは思えません。少なくとも私は、エモーショナルな経験が反映された人間のアウトプットが、データで処理されたクリエイティブより情緒的ではない、なんてことは認めたくありません。そんな反骨精神が、人間のクリエイティブレベルをグッと上げてくれるのではないかと思います。

またAIに感情を持たせ、人間のパートナーとしての発展を考える過程でも「こんなことしたらなんて思うかな?喜ぶかな?傷つくかな?」という具合に、我々も改めて人の気持ちを考えるきっかけになるのではないかと考えます。そうすれば、お互いの感情をおもんぱかれる温かな社会にさらに近づいていくのではないかと期待しています。

よってAIは、技術的に人間の利便性を向上してくれるだけでなく、上記のように人間の内面にあるアナログ的な部分もより豊かにしてくれる”未来からの使者”なのではないかと考えます。

そう思うと、なんだかこれからが明るく思えてきますね!

安永

Part2に続きます

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Shuhei Yasunaga
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90年生まれ 80年代ポップカルチャーをこよなく愛す広告プランナー