『アナログな君こそ、SXSWに行け。』Part 2

半澤未奈子 Minako Hanzawa
MILLENNIALSTIMES
Published in
8 min readJun 21, 2017

こんにちは。コピーライターの半澤 未奈子です。Part 1に引き続き、アナログな視点から見たSXSWレポート第2弾をお届けします!

私も今回、初めてSXSWに足を踏み入れ、そのあふれんばかりのコンテンツ量、カオスっぷりにびっくりしたわけですが、意外にも行く前に感じていた「The テッキーな祭典」というイメージは覆りました。もちろん数多くの最新テクノロジーが紹介されているのですが、それと同じくらいのボリュームで、社会問題や政治、個人の生き方や思想などなど、一見するとテクノロジーと関係ないようなことでも、ざっくり我々の未来に関することならなんでも話されているんですね。

それはやっぱり、テクノロジーは人間の生活や文化の中で役立ってこそ意味があるということ、アナログな側面と切り離せない存在であることの証なのかなと。

そんなわけで、アナログな顔もふくめたSXSWの魅力をお届けしたい、という希望をこめてこんなタイトルにしています。

前置き長くなりましたが!

4回にわけて配信予定の本レポート目次はこちら↓

Part 1の安永の記事もぜひご覧ください!)

[1]AIの今、未来。

[2]VRはより幅広いストーリーテリングの時代へ

[3]これからの女を生きる

[4]火星行こうぜ!

今回は[2]のVRについてお話したいと思います。

アナログといいつつ、テーマとしてはテッキーですね。

VRはより幅広いストーリーテリングの時代へ

じつをいうと、SXSWといえばVR!というのが行く前の私の印象でした。昨年のレポートでHMDを着けてVR体験している写真をよく見かけたからですかね。実際「VR元年」でググると2016年と出て来るので相当盛り上がったことが想像できます。

で、今年はといいますと、VRの存在自体はかなり当たり前になっていて、何を見せるの伝えるの?というメッセージやストーリーの部分が重視されているように感じます。

また、去年とは違う景色として、HMDを装着せずに楽しむスタイルのものが目立っていて、新鮮に映りました。まずは後者の「新スタイル」の方からご紹介。

1. 今年はメガネいらずのVRが充実!

HMDを着けない、すなわちメガネいらずのVRで目を引いていたのは、我らが日本からの出展。1つめは、SONYのThe WOW FACTORY内で展示されていた“Music Visualizer & Cyber Gym”。サイバージム、という名の通り、設置されているのはエアロバイクとドーム型のスクリーン。バイクにセンサーがついていて、エクササイズしながら、スクリーン上のゲームが楽しめる仕組みになっています。

工場まるごと改造して建て込んだSONYのThe WOW FACTORY
ゲームに熱中しながらエクササイズができる “Music Visualizer & Cyber Gym”

もう1つは、こちらもたくさんの人がシェアしていたので、目にした方も多いはず。NHKエンタープライズ、NHKメディアテクノロジー、レコチョク・ラボ、WONDER VISION TECHNO LABORATORYの4社が共同出展した”8K:VR Ride featuring “Tokyo Victory”。実際、トレードショーの中でもかなり目立っていて、毎日行列だった人気コンテンツです。こちらも設置されているのは、大きなベンチとドーム型スクリーン。サザンオールスターズの楽曲「東京VICTORY」をBGMに、東京の過去から現在、2020年へと時空移動する様子を体感できます。

東京を時空移動する8KVR作品 ”8K:VR Ride featuring “Tokyo Victory”

何も着けないからこそ現実の延長になりうる、という視点。

何も着けずに自然に楽しめるからこそ、現実の延長線上としてその世界に入り込める。そのメリットは確かにあるなと感じました。と言いつつ、HMDで現実世界をシャットダウンするからこその没入感も健在です!

2. 誰かの気持ちになれるツールとしてのVR。

ゲーム要素や美しい映像など、エンターテインメント性の強いコンテンツが人気を集める一方で、先にふれた、VRならではのメッセージ性を意識した展示も印象に残りました。仮想現実に入り込む体験は、誰かの立場になって考える体験にもなり得る。そんな側面を生かした試みをいくつかご紹介します。こちらはがっつり、HMD没入型です。

まるで自分が当事者みたい。ソーシャルグッドにこそVRが生きる。

こちらはFilm部門。非営利組織と映像制作会社がコラボした“VR FOR GOOD”というプロジェクトから、SXSWが選出した8作品がラインナップ。それぞれの作品の中で差別や偏見、環境問題など、テーマとなる社会問題が描かれており、360° VRならではの臨場感でオーディエンスに訴えかけます。

その中の1つ、”Amor de Abuela(祖母の愛)”はグアテマラの電気供給不足と、それによる健康や教育への影響を取り上げたもの。電気のない環境で暮らす貧しい家庭を舞台に、祖母の手に入れた太陽光ランプで快適な暮らしを得た孫と、灯りがないままのクラスメイトの生活が対照的に描かれています。これは電気の普及のために活動するGlobal Bright Lightという団体の施策ですが、同様にさまざまな社会問題に挑むNPOの作品が名を連ねていました。その他の作品はこちら

グアテマラの電気供給の問題を取り上げたVR作品 ”Amor de Abuela(祖母の愛)”

Film Award VR部門でも同様に、社会へ強いメッセージを投げかける作品が見られました。受賞作の”After Solitary”は刑務所の独房処罰の見直しを訴える作品。実際に服役していた元囚人が、独房処罰を通して精神を病み、社会復帰がより困難になった経験をモノローグで語ります。

務所の独房処罰の見直しを訴えるVR作品 “After Solitary”

もう1つの受賞作である“Behind the Fence”は、迫害を受けるミャンマーのイスラム系難民「ロヒンギャ」の窮状をドキュメンタリーで伝える作品。

ミャンマーのイスラム系難民の苦難を描くドキュメンタリーVR作品“Behind the Fence”

いずれの作品も、10分ほどの短い時間で観る者を引き込み、気持ちの変化や行動を促すパワーを感じます。行ったこともない国の出来事や問題を自分ごと化させるのに、この没入感はとても有効。それを証明するような作品群でした。

VRがファッションの価値を拡張する。PARCOの新しい試み。

また、ソーシャルグッドとは違うアプローチではありますが、追体験という意味で興味深いと思ったのがPARCOの展示。1着の洋服の物語、制作過程から新品の状態、着古された状態までを時系列で見ることができるというもの。味が出るまで大切に着込む、という洋服の楽しみ方をテクノロジーを通してメッセージするような企画でした。コンセプトにある「”今”を表現することしか叶わなかったファッションが、VRによってその価値を拡張させられる」という言葉が印象的でした。

未来の東京をイメージした空間で1着のトレンチコートの過去・現在・未来が見えるVR施策。(PARCO展示のリリース資料)

VRなだけで面白いわけじゃない。コンテンツも進化しなくては(自戒)。

究極的には、「VRじゃなきゃ面白くない」コンテンツに結局価値はなく、いいクリエイティブはメディアを問わず通用するものでなくては!という思いもあります。でも、素晴らしいメッセージが最適な手法に出会ったとき、それはそれは大きなパワーを持つのだなということを再認識したのでした。まさにアナログとテクノロジーの融合ですね。コンテンツをつくる我々も、テクノロジー負けしないよう進化を続けなくては、とふんどしを締め直した次第です。

次回は「これからの女性の生き方」について。

2017年も後半ですが、SXSWのレポートはまだ続きます(お付き合いください)。Part 3のテーマは”Women”。トランプ政権の影響もあり、女性をエンパワーするメッセージをあちこちで見かけました。日本人の視点も交えてお伝えできればと思います!

女性の起業家を応援するセッション”Empowering a Billion Women by 2020”より

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半澤未奈子 Minako Hanzawa
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コピーライター。ごくたまにスケーター。美容と韓国とグッドミュージックが好き。ぎりぎりミレニアル世代! Copywriter, sometime skater,barely millennial. Loves cosmetics, Korea, good music.