暗号通貨市場のHerfindahl-Hirschman指数(Dec/17/2017版)

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minecc, the cryptomarkets
5 min readDec 17, 2017

最近異様なまでに資金が暗号通貨市場に流入してきていますね。どこにこんな資産が隠れていたんでしょう。いずれ大きな調整が入ると思いますが、この勢いではどんな下げになるのか想像つきません。よく訓練された界隈の民ならその波もまた一興と楽しめるでしょう。

近々起きるCME先物前にHerfindahl-Hirschman指数(HHI)を振り返ってみます。Goldman Sachsは一部顧客にBTC先物の精算業務に対して預託金100%を求めているそうなので、この状態ではまだ実際に手を出す投資家は少なく、CBOE並に大したインパクトはないものと私は予想しています。さて、12/5付け前回記事でも説明しましたが、HHIは市場における「寡占度」を測る指数です。「各企業の市場占有率の2乗を加算して算出する(by野村證券)」ものです。今回のデータセットは本日12/17時点の物です。

図1:2017年以降の暗号通貨市場全体の時価総額(上段)とHHI(下段)

図1に2017以降の暗号通貨市場時価総額とHHIを示しています。今回のHHIはパーセンテージを採用しているため、前回記事とは異なり10000倍されています。12/5の時点ではHHIが4000を抜けてBTCの寡占状態に戻るかと思われましたが、案外4000台前半の壁が固く、今は3200あたりに落ち着いています。BTCへの回帰を見せつつ、アルトコインにも資金がしっかりと流れている状態。市場のポートフォリオ的にはHHI=3200が一つの壁、あるいは安定点なのでしょう。

ここで前回示さなかった傾向について一つ言及します。上段の時価総額は縦軸を対数で示しており、ここで直線的に見える動きは時価総額の「指数関数的増加」を現しています。最近の資金の入り方は5月のアルトバブルの再来だ!と思った貴方。それは正しいです。赤線で示した5月初旬の上がり方と11月下旬からの上がり方はほぼ同じです。このプロットで記した指数関数曲線の傾きの差は僅か0.3%。そう、資金の入ってくる勢いが正に5月のそれとそっくりなのです。

みんな金もってんなぁ…

こんなにどの通貨も高騰している状況で、長期ホルダー(特にBTC)は未だに保有し続けているのでしょうか?私の知る唯一の指標はcoin days destroyedなので、信頼出来そうなfork.lolのデータを見てみましょう。

図2:1ヶ月間のBTCとBCHのcoindays destroyed(引用元:fork.lol)

Coindays destroyed(CDD)は当該通貨のtx量に、そのtx分の保管期間(number of days it has been since those coins were last spent)を掛けた値です。例えば100BTCのtxが発生したとして、100日間spentされていなければCDDは10000となります。単位はBTC・daysですね。

11/19あたりから大規模な資金流入が始まった割にCDDは大きく増えていません(対数軸注意)。その後も12/6までは平常通りの変動を示しています。さて、12/6にBCHで、12/7にはBTCでCDDの急増が認められます。

図3:11中旬以降のBTCUSDと出来高 at Bitfinex

代表としてBitfinexを参考にしますが、出来高はこの頃桁で変わるほどには動いていません。従って、CDDが12/7に大きく増えたのは保管期間が長かった通貨が大量に動いた事が主因でしょう。その後、CDDは13日と17日に大きな動きを見せています。市場の出来高は増えていないので、ここでも長期ホルダーが何らかの理由で資金を動かしたのでしょう。個人的には、税金の事も考えなければならない年末なので、キリの良いところでウォレットから動かして売ったのかなと思っています。他のデータも絡めないと正確なところは分からないですけどね。

結言

HHIは3200–4500をレンジとして一層のBTC寡占化を避けており、市場の時価総額は5月初頭のアルトバブルさながらの増え方を示しています。もうこの界隈どうなるのかさっぱり予想がつきません。市場時価総額は1–4月のトレンドをこれまで一度も割っていませんし、5月のアルトバブルの調整も大したものではありませんでした。いずれこの「バブル」は弾けると方々で声高に叫ばれていますが、この勢いだと案外弾けても大した事にはならないかもしれませんね。

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