Elpis その2

miyaoka
Miyaoka Notes
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13 min readJan 27, 2016

前回からひと月が経ったのでまとめ。

Absolute Drift

年が変わり開発2ヶ月目。

正月ムードということでSteamを眺めていたらAbsolute Driftというゲームが目を引いた。そうそうこういうシンプルで幾何学的でファインなイメージでやりたいんだよなあと。

Elpis

ああいう感じにできないものかと思い、壁とライティングをいじる。

Elpis

通路を無くし、ドアで直結する。

the_alchomist

Twitchのゲーム開発チャンネルの配信を見ていたら、とてもファインな絵面のゲームを作ってる人が居てやっぱVoxelキャラにしないとダメだよなーと思う。こういうのどのくらいで作れるんだろうかと思ったら、開発歴10年でUnity歴は4年と言っていた。

Elpis

とりあえずMagicaVoxelというソフトでキャラを作ってみる。

Elpis

アニメーションさせるためにBlenderでボーンを設定しようとするが、Blenderのインターフェースが独特で分からなすぎて思いっきり挫折する。本当にこれはもうダメだと思った。つらい。

【12分で】MagicaVoxelモデルをUnityで動かした【できる】 — ニコニコ動画:GINZA

だけどいろいろ検索してみたら、MagicaVoxelからUnityに持っていくまでをバッチリ解説している動画を見つけることが出来た。12月にアップされたばかりという良タイミングで、心の底からありがとうありがとうと言いながら見させてもらう。特にショートカットを多用するBlenderでどのキーを押しているのか表示してくれていたのでBlender分からん勢として大いに助かった。

Elpis

Unityにインポートしてアニメーションつけて…

動いた。ヨカッタネー。

FTL

だけどなんかすっかり気が抜けてしまって、気づけば1週間以上手を付けられずに過ごす。逃避的にまたFTLばかりやってしまう。FTLはほんとすごい。

ビジュアル的なところは落ち着いたのであとはゲームとしてどうしたいか、という状況になって改めて迷いが多くなる。今後作っていく上で、Crossy Roadみたいな無限ステージで単純にスコアを競うだけのほうがよくある感じでシンプルだし分かりやすい。ただそれだと終わるときは必ず死ぬことになって宇宙船脱出というコンセプトに合わないし、無限に長い宇宙船というのもおかしい。

だったらそもそも宇宙設定じゃなくてもいいんじゃないか。現状のルールとインターフェースでお宝を探すダンジョンRPGのほうが面白いんじゃないかとも考え始める。そういう風に考え始めたら途方も無く手がつけられなくなってしまった。

イダテンさんにチャットで話してみたら、宇宙船とエイリアンという部分は動かさないほうがいいと言われる。キャッチーでゲーム内容が分かりやすいテーマってそうそう見つからないからと。確かに今回はまずそこから始めたわけだし、そこがブレちゃダメなんだろう。

以前作っていた組織図のゲームを作りきれなかったのはまず階層のギミックありきで作り始めたわけで、自分的に組織というものについての理解が浅く、核となるテーマが無かったんだろうと今では思う。だから安易にRPGテイストに転がしてみたりとかしちゃうし、行き詰まってしまう。

そんなことを踏まえて以前GDCの講演をDigっていたときにゲームにとってのテーマについても調べていた。そうしたらPlants Vs. Zombiesの開発者がこういうことを言っていた。

  1. テーマは開発者にとって興味のあるものか? 関心のないものは作りづらい。
  2. ゲームメカニクスにマッチしたテーマか?
  3. テーマのゴールとゲームのゴールが合致しているか?
  4. 馴染みやすさと新規性を両立できているか? →ライトセーバーは剣というものでありながら新しさがあるので好例。どちらか100%ではダメ。(ここでCoDとかBFとかのパッケージを合成したGeneric FPSというタイトルを出して会場拍手喝采)
Oregon Trail

過酷な西部開拓をテーマにしたクラシックゲームのOregon Trailは、最近だとゾンビアポカリプス物のOrgan Trailや宇宙設定のOrion Trailといった派生も見られる。どれもテーマとして長い道のりを生き延びて西へ向かい、そしてゴールに辿り着くというもの。

モバイルをターゲットにしたカジュアル系ならエンドレスで行けるところまでというものが多いし、そもそもエンディングなんてあまり無いような感じはする。でも自分がやりたいのはやっぱりゴールがあるものなんだろう。FTLだってゴールとなるボス戦があるからこそ、そのために道中でビルドアップしていくわけだ。

The Oregon Trail IIの動画で、 Donner-Reed Partyという設定でプレイしているものを見た。知らなかったので調べてみると、ドナー隊と呼ばれる史実の開拓民のこと。

開拓者がカリフォルニアに至るためには直前にあるシエラネバダ山脈がラスボス的に立ちはだかっており、冬が来る前にそこを越えることが肝要らしい。だけどもドナー隊は道中の行程でいろいろ遅れて山越えの途中で冬を迎えることになり、やむなくキャンプして救助を待つものの元から食糧も乏しくて結局飢えと寒さで100人弱のメンバーの半数が死んでしまったという。

雪山の事件ということで八甲田山を髣髴とさせるが、ドナー隊の場合はサバイバル生活が長期に渡ったことでカニバリズムが行われたという点が宗教的なこともあってセンセーショナル。そのへんがアメリカ人にとっては興味深いテーマでOregon Trailなどが作られた背景の一端なのかなと思う。

Tharsis

その頃リリースされたばかりのTharsisというゲームの配信をTwitchで見る。FTL meets cannibalismなどと表現されるようにトラブルに陥った宇宙船と船員たちをダメージコントロールしながら火星到達まで生き延びるというもので、FTL的にも自分のゲーム的にもテーマとして通じると感じた。(まあ宇宙物はだいたいサバイバルになるわけだけど)

調べてみると、小説の白鯨のモデルになったエセックス号の遭難事件というのがあり、そこでのカニバリズムまで行われる極限状況を元にしてTharsisを作ったそうだ。ちょうど先ほどのドナー隊の話や、さらには同じくエセックス号の事件を元にしたIn the Heart of the Seaという映画も公開されたばかりだしいろいろと不思議な繋がりを感じた。

ついでに言えば、寒いところが大好きなめぐみさん擁するイダテンさん一家が年末にシエラネバダ山脈のタホ湖に行っていて、あのドナー隊が遭難した場所の近くだなと思ったりもした。

めぐみさんはアラスカに住みたいとか世界一寒い村オイミャコンってロマンチック!と力説していて動画まで見せてくれたけど、ぼくは流刑地みたいだなと思った。

Space Food Truck

宇宙船モノでSpace Food Truckというゲームを見て、Tharsisと同様に各船員の職種技能があるというのは、定番だけど戦略性やビルド要素があっていいなと感じる。

Elpis

そうしたことを踏まえて、全体で単一のヘルスではなく、それぞれ技能と体力を持ったパーティーをOregon Trailのように全滅させないように進めていくという方向性で考えることにした。

Elpis

出口を個別のノードではなく、設定座標以上のエリアとする。

Elpis

敵キャラを作る。

Elpis

敵数値分だけスポーンさせて飛びかかるようにする。こちらは人型では無いのでボーンを設定せず、単に座標移動でアニメーションさせるだけ。できれば口がバクっとなると良さそうだけど、やる余裕も無いしまあ表示も短いからとりあえずはいいかなと。

なんか思った以上にゲジゲジなキャラになってしまった。プレイヤーキャラと解像感が合うようにもっとシンプルにしたい。

Elpis

ヘルスが尽きたらラグドールで転がるようにする。無常感のある死に様だ。

Elpis

床タイルとインテリアを常時表示するようにして宇宙船っぽさを出す。

タイマーについては漠然と区画閉鎖までのカウントダウンとか考えてたけど、イダテンさんから酸素を補給しつつ進むミスタードリラーの話が出たので、エクステンド方式にしてみる。探索要素が大きいので、初期値を多めにして開拓する余裕を与え、道中で少しずつ酸素を補給していくというプレイ感にしていく。

Elpis

マップ表示時は室内オブジェクトを非表示にしてパズルの邪魔にならないようにする。

コア部分がだいぶまとまってきたのでそろそろ誰かに見せてフィードバックを得たほうがいいだろうと考える。個人開発でDownwellをリリースしたもっぴんさんが参加してるTokyo Indiesという集まりがあることを知り、そこでプレゼンできるというので参加してみることにする。

Septentrion

プレゼンに向けてコンセプトを整理するため、動機となったセプテントリオンを見直してみる。いやー、すごい。すごいね。ドラマ。特にキャプリスという主人公が病身である義理の妹を重荷に思っていて、最後の極限状況に至ることで常日頃足枷であると自覚していた妹のほうが絶望を吐き出して、かえってそれでお互いに乗り越えるというカタルシス。それが一時間プレイしてきたことへのフィードバックとして与えられる。

ICOやThe Last of Usでは特徴的な手をつなぐフィーチャーがあるけれど、セプテントリオンも手を取ることが生きることであり、取らなければ無情に死んでいく。そうしたゲーム要素がエンディングの演出にも利用されているわけだ。

REDEEMER

冒頭でシンプルなビジュアルにしたいと言ったけど、一方ではこういうディティールのあるRedeemerのようなビジュアルだったらまたプレイ感も全然違っていいだろうなとまた迷ってしまう。(どのみちこんなビジュアルは作れそうにないが…)

だけどもセプテントリオンのドラマにぐっとくるのは、顔までは描かれないディティールの低さ、あの解像度、抽象性が大事なんだと思っている。きっと今どきだったら人気のある絵師が凝ったアニメ絵ビジュアルを描いて、演技のうまい声優が声を当てるだろう。それもいいけど、でもそれじゃあのドラマはどうしようもなく再現できないんだと痛感する。

映画がカラーの時代になってから、たしか溝口健二監督が、白黒のほうが演技がよく見えると言っていたように思う。きっと演技以外の余計な情報量が増えてしまうということだろう。トーキー映画が主流になった時代にチャップリンがサイレントで街の灯を作ったというのもドラマの純粋さを高めている。

Elpis

実装しておくべきところを詰めていく。ダメージや時間回復をポップアップして分かるように表示。タイマーの要素が重要になったので画面上部に持って行き、あまり重要でないアラート演出は下に配置する。

Elpis

時間が切れたら即死にしていたが、10秒毎に全体ダメージを受けるようにしてその間に回復すればOKというようにする。将棋で持ち時間を使いきっても秒読みで凌ぐことができるという感じに近いもの。タイムアップ自体で死んでしまうのでは納得感が薄いが、タイムオーバーしたペナルティとして体力が削られていくようにすれば最終的には体力が尽きて全滅するというところに一本化できるので良い。ボンバーマンがタイムアップで即死ではなく強敵が出てくるというのが当時としては独特だったことを思い出す。

設定としてはFTLのように酸欠ダメージとして考えていたが、今後火災を入れるために酸素が無いと設定として困るなあと思っていたらイダテンさんから生命維持装置でいいんじゃないと言われる。酸素が無くなるわけじゃなくて体温が急速に低下するとか有害な光線が降り注ぐとかたぶんそういうことでいけるんだろう。

ただ、各船員のスーツの酸素残量と考えていたが、これがフロア自体の酸素とすればFTLのように酸素切れになることで火災を消すというテクニックもあるなあと思ったので酸素に戻してもいいかもしれない。でもそうすると道中で補給していくという行動とマッチしないか。

そんなわけで今回はTokyo Indiesでの発表まで持って行ったというところまで。

タイトルはこの機会にElpisという名称にする。エイリアンシリーズの映画のタイトルがプロメテウスだったのでその繋がりで。プロメテウスの弟エピメテウスに嫁いだのがパンドラであり、パンドラの箱に残ったのがElpis(希望)なので。災厄がぶちまけられたような船内を進む生存者たちという設定には合うかなと。中二っぽくてちょっと気恥ずかしいけど、FTLとかTharsisみたいな一単語でユニーク性の高いモノがいいよなあと。

プレゼンでは音が出せなくてテンパってしまって全然反応を見る余裕が無かったのが残念だったけど、外国人が多いこともあってかクルーが死んでいくと声も上がって良かった感じはする。仲間が死んでいく中で生き残ったBrianガンバレーみたいな。

その後何人か話してみて、マルチプレイヤー要素とか通り抜ける快感とか全然自分が考えてなかった角度からの意見が聞けたのでやっぱり見せてみるもんだなと感じた。あと外国人の方にOregon Trailは小学生のときにやったヨと言われてそうなんだと思ったりも(自分は未プレイ)。

リリースいつですかと聞かれて、正直自分でも分からないけど、スクラッチから先月、今月とやってきたペースなら超頑張れば来月で行けるんじゃないかなと思ったりもするけど、そんな見積もりはたぶん甘いよなあと…。

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