「コモンズとしての日本近代文学」アーカイブについて

Dominick Chen
Modern Japanese Literature as a Commons
14 min readAug 15, 2021

ここでは、21編のパブリックドメインの日本近代文学作品を青空文庫より選び、著者がそれぞれに応答して文章を書き下ろした、ドミニク・チェン「コモンズとしての日本近代文学」(イースト・プレス、2021年8月20日刊行)に収められた21編の書き下ろし文のみを集め、オープンソースの思想に基づいて、クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスで公開しているアーカイブです。CCライセンスの条件を守れば、ここで公開している文章はすべて自由に、事前の許諾を要さず、引用、印刷、複製、翻訳、上演や楽曲化、映像化といった多様な二次利用に使えます。詳しくはCCライセンスの条件をご覧ください:https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja

以下に紹介する書籍では、これら著者による書き下ろし文に加え、それぞれが言及する原作の初版本の本文写真原作の抜粋(作品によっては全文掲載)があわせて読めます。グラフィックデザイナー羽良多平吉による、各原作毎で異なる書体を用いたエディトリアルデザインと共に、完全な読書体験を味わうにはぜひ書籍を書店やECサイトでお求めください。

各章の構成(※印刷製本版)

1著者によるテキスト
著者による作品の解説、解題、批評。現代の視点から原著が持っていたさまざまな可能性を論じます。

2初版本の本文写真( 2頁分を見開きで構成 )
初版本の本文写真を掲載することでオリジナルの物としての本が、いったいどのような消息をもって読者に伝わっていたのかを示します。

3原著の抜粋( 作品によっては全文掲載 )
著者が解説した原著の該当部分を青空文庫から抜粋。QRコードから青空文庫の該当頁へ飛びます。そこで原著を最初から読むことができます。
本文中で言及された作品のうち、タイトルの脇に†マークのあるものは青空文庫で読むことができます。

日本近代文学は、いまや誰でも今ここでアクセスできる我々の共有財産(コモンズ)である。そこにはまだまだ底知れぬ宝が隠されている。日英仏の文化とITに精通する著者が、独自に編んだ一人文学全集から、今の時代に必要な「未来を作る言葉」を探し出し、読書することの本質をあらためて問う。もう重たい文学全集はいらない。

・編著者:ドミニク・チェン
・編集:穂原俊二・岩根彰子
・書容設計:羽良多平吉
・320ページ / ISBN:4781619983 / 2021年8月20日刊行

目次

寺田 寅彦『どんぐり』
・ドミニク・チェン:「織り込まれる時間」
・『どんぐり』初版本
・『どんぐり』青空文庫より
使用書体 はんなり明朝

夏目 漱石『夢十夜』
・ドミニク・チェン:「無意識を滋養する術」
・『夢十夜』初版本
・『夢十夜』抜粋 青空文庫より
使用書体 しっぽり明朝

柳田 國男『遠野物語』
・ドミニク・チェン:「死者たちと共に生きる」
・『遠野物語』初版本
・『遠野物語』抜粋 青空文庫より
使用書体 幻ノにじみ明朝

石川 啄木『一握の砂』
・ドミニク・チェン:「喜びの香り」
・『一握の砂』初版本
・『一握の砂』抜粋 青空文庫より
使用書体 しっぽり明朝

南方 熊楠『神社合祀に関する意見』
・ドミニク・チェン:「神々と生命のエコロジー」

・『神社合祀に関する意見』初版本
・『神社合祀に関する意見』抜粋 青空文庫より
使用書体 いろは角クラシック Light

泉 鏡花 『海神別荘』
・ドミニク・チェン:「異界の論理」

・『海神別荘』初版本
・『海神別荘』抜粋 青空文庫より
使用書体 A P-OTFきざはし金陵 StdN M

和辻 哲郎『古寺巡礼』
・ドミニク・チェン:「結晶する風土」

・『古寺巡礼』初版本
・『古寺巡礼』抜粋 青空文庫より
使用書体 源暎こぶり明朝 v6 Regular

小川未明『赤い蝋燭と人魚』
・ドミニク・チェン:「死者と生きる童話」

・『赤い蝋燭と人魚』初版本
・『赤い蝋燭と人魚』青空文庫より
使用書体 A-OTF 明石 Std L

宮沢 賢治『インドラの網』
・ドミニク・チェン:「縁起を生きるための文学」

・「インドラの網』初版本
・『インドラの網』青空文庫より
使用書体 幻ノにじみ明朝

内藤 湖南『大阪の町人学者富永仲基』
・ドミニク・チェン:「アップデートされる宗教」

・『大阪の町人学者富永仲基』初版本
・『大阪の町人学者富永仲基』抜粋 青空文庫より
使用書体 小塚明朝

三遊亭 円朝『落語の濫觴』
・ドミニク・チェン:「落語の未来」

・『落語の濫觴』初版本
・『落語の濫觴』青空文庫より
使用書体 游教科書体 Medium

梶井基次郎『桜の樹の下には』
・ドミニク・チェン:「ポスト・ヒューマンの死生観」

・『桜の樹の下には』初版本
・『桜の樹の下には』青空文庫より
使用書体 TB明朝

岡倉 天心『茶の本』
・ドミニク・チェン:「東西翻訳奇譚」

・『茶の本』初版本
・『茶の本』抜粋 青空文庫より
使用書体 I-OTF 明朝オールド Pro R

九鬼 周造『「いき」の構造』
・ドミニク・チェン:「永遠と無限の閾」

・『「いき」の構造』初版本
・『「いき」の構造』抜粋 青空文庫より
使用書体 クレー

林 芙美子『清貧の書』
・ドミニク・チェン:「世界への信頼を回復する」

・『清貧の書』初版本
・『清貧の書』抜粋 青空文庫より
使用書体 RF 本明朝 — MT新こがな

谷崎潤一郎『陰鬱礼賛』
・ドミニク・チェン:「陰影という名の自由」

・『陰影礼賛』初版本
・『陰影礼賛』抜粋 青空文庫より
使用書体 ZENオールド明朝

岡本 かの子『家霊』
・ドミニク・チェン:「呼応しあう「いのち」」

・『家霊』初版本
・『家霊』抜粋 青空文庫より
使用書体 筑紫明朝 Pro5 — RB

折口 信夫『死者の書』
・ドミニク・チェン:「死が媒介する生」

・『死者の書』初版本
・『死者の書』抜粋 青空文庫より
使用書体 XANO明朝

中谷 宇吉郎『『西遊記』の夢』
・ドミニク・チェン:「本当に驚くような心」

・『『西遊記』の夢』初版本
・『『西遊記』の夢』抜粋 青空文庫より
使用書体 F 篠 — M

柳 宗悦『雑器の美』
・ドミニク・チェン:「アノニマス・デザインを愛でる」

・『雑器の美』初版本
・『雑器の美』抜粋 青空文庫より
使用書体 A-OTF A1 明朝

山本周五郎『季節のない街』
・ドミニク・チェン:「全ての文学」

・『季節のない街』初版本
・『季節のない街』抜粋 青空文庫より
使用書体 平成明朝体 W3

青空文庫

本書に掲載された各作品のテキストは、青空文庫作成ファイルから引用しています。

これらのファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

寺田寅彦『どんぐり』

底本:「寺田寅彦随筆集 第一巻」小宮豊隆編、岩波文庫、岩波書店
1947(昭和22)年2月5日第1刷発行
1963(昭和38)年10月16日第28刷改版発行
1997(平成9)年12月15日第81刷発行
入力:田辺浩昭
校正:田中敬三
1999年11月17日公開
2003年10月22日修正

夏目漱石『夢十夜』

底本:「夏目漱石全集10巻」ちくま文庫、筑摩書房
1988(昭和63)年7月26日第1刷発行
1996(平成8)年7月15日第5刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版夏目漱石全集」筑摩書房
1971(昭和46)年4月1972(昭和47)年1月
入力:野口英司
1997年12月16日公開
2013年7月17日修正

柳田国男『遠野物語』

底本:「遠野物語・山の人生」岩波文庫 岩波書店
1976(昭和51)年4月16日第1刷発行
2007(平成19)年10月4日第47刷改版発行
2010(平成22)年3月5日第50刷発行
入力:Nana ohbe
校正:阿部哲也
2012年12月16日作成

石川啄木『一握の砂』

底本:「日本文学全集12 国木田独歩 石川啄木集」集英社
1967(昭和42)年9月7日初版発行
1972(昭和47)年9月10日9版発行
底本の親本:「一握の砂」東雲堂書店
1910(明治43)年12月1日刊行
入力:j.utiyama
校正:浜野智
1998年8月11日公開
2017年10月30日修正

南方熊楠『神社合祀に関する意見』

底本:「南方熊楠コレクション第五巻 森の思想」河出文庫、河出書房新社
1992(平成4)年3月10日初版発行
1992(平成4)年5月15日再版発行
底本の親本:「南方熊楠全集 第七巻」平凡社
1971(昭和46)年8月9日
入力:r.sawai
校正:鈴木伸吾
1999年8月18日公開
2012年5月18日修正

泉鏡花『海神別荘』

底本:「泉鏡花集成7」ちくま文庫、筑摩書房
1995(平成7)年12月4日第1刷発行
底本の親本:「鏡花全集 第二十六卷」岩波書店
1942(昭和17)年10月15日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5–86)を、大振りにつくっています。
入力:門田裕志
校正:染川隆俊
2006年9月21日作成

和辻哲郎『古寺巡礼』

底本:「古寺巡礼」岩波文庫、岩波書店
1979(昭和54)年3月16日第1刷発行
2006(平成18)年10月5日第52刷発行
底本の親本:「和辻哲郎全集 第二巻」岩波書店
1961(昭和36)年12月発行
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2010年12月4日作成

小川未明『赤い蝋燭と人魚』

底本:「文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船」ちくま文庫、筑摩書房
2008(平成20)年8月10日第1刷発行
2010(平成22)年5月25日第2刷発行
底本の親本:「日本児童文学体系5」ほるぷ出版
1977(昭和52)年11月
初出:「東京朝日新聞」
1921(大正10)年2月16日20日
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2011年12月31日作成

宮沢賢治『インドラの網』

底本:「インドラの網」角川文庫、角川書店
1996(平成8)年4月25日初版発行
1996(平成8)年6月20日再版発行
底本の親本:「【新】校本宮澤賢治全集 第九巻 童話I」筑摩書房
1995(平成7)年6月発行
入力:浜野智
校正:浜野智
1999年1月31日公開
2011年2月15日修正

内藤湖南『大阪の町人学者富永仲基』

底本:「内藤湖南全集 第九卷」筑摩書房
1969(昭和44)年4月10日初版第1刷発行
1976(昭和51)年10月10日初版第3刷発行
底本の親本:「先哲の學問」弘文堂
1946(昭和21)年5月
初出:大阪毎日新聞社主催講演会講演
1925(大正14)年4月5日
「大阪文化史」
1925(大正14)年8月発行
入力:はまなかひとし
校正:菅野朋子
2001年1月10日公開
2016年4月20日修正

三遊亭圓朝『落語の濫觴』

底本:「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」筑摩書房
2001(平成13)年8月25日初版第1刷発行
底本の親本:「定本 円朝全集 巻の13」世界文庫
1964(昭和39)年6月発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年6月19日作成

梶井基次郎『櫻の樹の下には』

底本:「現代日本文學大系 63 梶井基次郎・外村繁・中島敦集」筑摩書房
1970(昭和45)年7月15日初版第1刷発行
1987(昭和62)年9月15日初版第14刷発行
初出:「詩と詩論 第二冊」
1928(昭和3)年12月
入力:hoge
校正:小林繁雄
2008年1月28日作成
2011年5月22日修正

岡倉天心『茶の本』

底本:「茶の本」岩波文庫、岩波書店
1929(昭和4)年3月10日第1刷発行
1961(昭和36)年6月5日第38刷改版発行
2005(平成17)年11月5日第103刷発行
入力:kompass
校正:鈴木厚司
2008年6月6日作成
2014年4月23日修正

九鬼周造『「いき」の構造』

底本:『「いき」の構造』岩波文庫、岩波書店
1979(昭和54)年9月17日第1刷発行
1998(平成10)年12月4日第37刷発行
底本の親本:『「いき」の構造』岩波書店
1930(昭和5)年11月20日第1刷発行
入力:鈴木厚司
校正:鈴木厚司、かとうかおり
2000年5月29日公開
2001年6月27日アクセント分解対応版公開
2003年8月31日修正

林芙美子『清貧の書』

底本:「ちくま日本文学全集 林芙美子」筑摩書房
1992(平成4)年12月18日第1刷発行
底本の親本:「現代日本文学大系69」筑摩書房
1969(昭和44)年
初出:「改造」
1931(昭和6)年11月
入力:土屋隆
校正:林幸雄
2006年9月21日作成

谷崎潤一郎『陰翳礼讃』

底本:「陰翳礼讃 改版」中公文庫、中央公論新社
1975(昭和50)年10月10日初版発行
1995(平成7)年9月18日改版発行
2013(平成25)年1月10日改版24刷発行
底本の親本:「谷崎潤一郎全集 第二十巻」中央公論社
1982(昭和57)年12月25日
初出:「経済往来」
1933(昭和8)年12月号、1934(昭和9)年1月号
※底本は新字新仮名づかいです。なお旧字の混在は、底本通りです。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2016年6月10日作成
2019年2月24日修正

岡本かの子『家霊』

底本:「岡本かの子全集5」ちくま文庫、筑摩書房
1993(平成5)年8月24日第1刷発行
初出:「新潮」
1939(昭和14)年1月号
入力:鈴木厚司
校正:渥美浩子
1999年12月26日公開
2005年9月27日修正

折口信夫『死者の書』

底本:「死者の書」中公文庫、中央公論社
1974(昭和49)年5月10日初版
1989(平成元)年8月5日21版
底本の親本:「折口信夫全集 第廿四巻」中央公論社
1955(昭和30)年6月刊
初出:「日本評論 第十四巻第一号三号」
1939(昭和14)年1月3月
入力:菅野朋子
校正:成宮佐知子
2012年7月17日作成
2016年7月1日修正

中谷宇吉郎『西遊記の夢』

底本:「中谷宇吉郎随筆集」岩波文庫、岩波書店
1988(昭和63)年9月16日第1刷発行
2011(平成23)年1月6日第26刷発行
底本の親本:「樹氷の世界」甲鳥書林
1943(昭和18)年
初出:「文藝春秋」
1943(昭和18)年1月1日
※表題は底本では、「『西遊記(ルビ・さいゆうき)』の夢」となっています。
入力:門田裕志
校正:川山隆
2013年1月4日作成

柳 宗悦『雑器の美』

底本:「日本の名随筆 別巻71 食器」作品社
1997(平成9)年1月25日第1刷発行
底本の親本:「民藝四十年」宝文館
1958(昭和33)年7月発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2011年11月28日作成

山本周五郎『季節のない街』

底本:「山本周五郎全集第十四巻 青べか物語・季節のない街」新潮社
1981(昭和56)年11月25日発行
初出:「朝日新聞 夕刊」
1962(昭和37)年4月1日10月1日
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:富田晶子
2018年9月28日作成

◎使用画像クレジット

南方熊楠顕彰館(田辺市)所蔵
p.75 南方マンダラ(土宜法龍宛封書より)

国立国会図書館所蔵
p.21–23 「寺田寅彦随筆集」 第1巻 (岩波書店)1947年2月5日発行
p.73、76–77 「南方熊楠全集」 第8巻(乾元社)1951年7月発行
p.224–225 林芙美子「清貧の書」(改造社)1933年5月19日発行
p.307–309 柳宗悦「民藝四十年」(宝文館)1958年7月発行

日本近代文学館所蔵
p.87 泉鏡花「粧蝶集」(春陽堂)1917年8月6日発行
p.105–107 和辻哲郎「古寺巡礼」(岩波書店)1919年5月23日発行
p.167「圓朝全集」13巻(春陽堂)1928年1月1日発行

国立国会図書館ウェブサイトより転載
p.88–89 泉鏡花「粧蝶集」(春陽堂)1917年8月6日発行
p.168–169 「圓朝全集」13巻(春陽堂)1928年1月1日発行
p.203、208–209 九鬼周造「「いき」の構造」(岩波書店)1930年11月20日発行
p.275–277 折口信夫「死者の書」(青磁社)1943年9月発行
p.291–293 中谷宇一朗「樹氷の世界」(甲鳥書林)1943年9月20日発行

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Dominick Chen
Modern Japanese Literature as a Commons

Researcher. Ph.d. (Information Studies). Profile photo by Rakutaro Ogiwara.