MOLD、分散型ゲームプラットフォーム構築に向けての指針

概要

  • 分散型プラットフォームMOLDでは、直近のリサーチを踏まえて、Tendermintをコンセンサスアルゴリズムをベースにした独自ブロックチェーンの構築を目指す。
  • α版として、Ethereum上でデジタルアセットの交換プロトコルを実装しSDKとして公開する
  • MOLDの新ロードマップの公開

この記事では、Tendermint上での開発を決めた背景と、今後のMOLDの独自チェーンの構想、及び、今後の展望についてを簡単に紹介したい。

Tendermint上での開発を決めた背景

MOLDが目指す世界観

  • 非中央集権的な仕組みにおけるユーザー個人のデジタル資産の管理
  • P2Pでのデジタル資産の自由で迅速な取引
  • ゲームディベロッパーがより多くの利益を享受しやすい環境

既存のゲーム業界のあり方とは対極にあるこのような世界観を掲げるMOLDでは、blockchainを利用した新しい分散システムを構築することで、従来型の中央集権的なゲーム産業のあり方が抱える課題ーゲーム空間内のユーザーの経済的行動の制限ーを解決しようとしている。

一言にブロックチェーンと言っても、それぞれの目的が違えば、用法も異なる(参考)。MOLDでは、前提として非中央集権的なゲームプラットフォームを目指しているため、プライベートチェーン、あるいはコンソーシアムチェーンでは、MOLDが目指す世界観は実現できない。一方で、ゲーム内では即時決済が求められるため、Bitcoinに代表されるPoWプロトコルのようなファイナリティを犠牲にして、分散性を得るような仕組みを導入することはできず、新しい方法を模索する必要があった。さらに、MOLDプラットフォームを使用するユーザーが増加するにつれて、大量のトランザクションを捌き切れるだけのスケーラブルなブロックチェーンを構築する必要がある。

まとめると、MOLDの独自チェーンを構築するにあたり、以下のような特徴が必要であることがわかる。

  1. 非中央集権的である
  2. 迅速なファイナリティを得ることができる
  3. 即時決済を可能にする高いスループットを実現できる
  4. スケーラブルである

去年の12月ごろ、Ethereumではスケーラビリティの課題が明白化した。もちろん、Ethereum Reseachなどでは、PlasmaやSharding, CasperをはじめとしたEthereum上でのスケーリングを可能にするソリューションについても盛んに議論されているが、すぐに実装される段階ではないのが現状である。

また、Ethereumでは、開発者やマイナーなど様々なステイクホルダーを抱えているため、それぞれの意向にそぐわないときにはハードフォークする可能性もある。万が一、コミュニティ内で意見が割れてハードフォークすることになった場合(Ethereum Classicが誕生したときみたいに)、Ethereum上のプロジェクトは、重大な意思決定を迫られることになる。

MOLDの独自チェーン構想

MOLDにおいて求められるブロックチェーンの特徴のうち、すべてを同時に追求するのは、非常に難易度が高い。したがって、開発初期の現段階においては、2, 3の高いTPSとファイナリティを実現し得るブロックチェーンの構築を目指す。

TendermitはブロックチェーンにおけるコンセンサスアルゴリズムとP2Pネットワークをパケージングしたソフトウェアで、PoSのコンセンサスを基盤としているため、トランザクションの処理が速い上に、ブロック生成後すぐにファイナリティを得られる。

Tendermint及び、Hyperledger fabricのTPSに関する議論についてはこちらを参照されたい。

Hyperledger FabricとMOLDが目指す世界観の違いについて

TendermintとMOLDの目指す世界観について

また、Tendermintには、1/3までのバリデーションノードが停止またはビザンチンな振る舞いをしても問題ない、ビザンチンフォールトトレラント性をもつ分散システムの一面もある。

参考記事:ブロックチェーンを形作る分散システムにおけるフォールトトレラント性

Tendermintを活用したプロジェクトの一つであるEthermintでは、コンセンサスをTendermintに任せてアプリケーション層にEVMを実装し、 web3や、solidityなどと言ったEthereumの周辺要素との互換性を持たせている。この発想に着目して、MOLDでも、ブロックチェーンの基盤となるコンセンサスレイヤーに関しては、Tendermintを採用し、ゲームのプラットフォームになるアプリケーションレイヤーの基盤に、EVMを導入することでスマートコントラクトの使用を実現する。また、EVMを使うことで、Ethereumのweb3インターフェースと互換性を持たせることができ、RPCのエンドポイントを変更するだけで、例えば、Ethereum上でのDappsゲームを開発した人が容易にMOLD上での開発に移行することが可能になる。

その後、現在Ethereumを中心に盛んに議論されているスケーラビリティに対するソリューションの導入と実質的なMOLDネットワークの維持を担うValidatorの分散化を図る仕組みを構築していく。

MOLDのレイヤー構造について
MOLDにおけるレイヤー構造を考えると、下図のような構造をとる。

MOLD-Layer-Structure

Layer 1、すなわち、コンセンサス層では、先ほど述べたTendermintを利用して現在のEthereumで実現している処理速度(~12.5TPS)より、圧倒的に速い処理を可能にする。また、EVM(Ethereum Virtual Machine)をアプリケーションレイヤーに実装することで、既存のスマートコントラクトの使用を可能にするとともに、今後のPlasma/RaidenのようなLayer2でのスケーリングソリューションを活用できる体制も整えておく。

アプリケーションレイヤーとコンセンサスレイヤーをつなぐABCIの実装では、Virtualなゲーム空間の創出を可能にするように、Validatorに対するインセンティブ設計やGas Priceの設定を独自に行う。

Layer 3では、Whitepaperで言及しているようなMOLDEX、ゲーム内アイテムのトークン化、およびトレード、アカウントとwalletの統一といったMOLDゲームプラットフォームを構築するにあたる基礎的な機能を追加し、Layer 4においては実際にユーザーがプレイする次世代型ゲームを容易に作ることができるSDKを準備する。

今後の展望

MOLDの実装フェーズは、Tendermintを利用した独自チェーンの構築コントラクトによるデジタルアセットの交換プロトコルの実装の2段階に分かれている。これまでの研究を進めていく過程で、Ethereumが抱える問題点やそれを解決するスケーリングソリューションなどが明確化した。ブロックチェーン業界において、Layer 1/Layer 2において確立したプロトコルが定まっていないことに加え、Tendermint自体がまだ開発中であるということも踏まえ、まずは、Ethereum上でコントラクトによるデジタルアセットの交換プロトコルを実装して、それをメインネットにて公開、そのあとに、独自チェーンを構築し、コントラクトを移行するという指針を立てた。

したがって、現時点でのMOLDの新しいロードマップは次のようになる。

2019年 第一四半期

  • minimum-mold-sdk : MOLDの基本機能をAPIで提供する
  • wallet
  • DEX
  • インセンティブ設計されたDEX

2019年 第二四半期

  • minimum-mold-sdk sample app : all on-chain でgameを作る + item のswapを可能に
  • item は ERC1155
  • コントラクトペーパー α公開
  • Layer 2におけるアイテム交換のプロトコルをコントラクトペーパーとして公開

2019年 ~第四四半期

  • 独自ブロックチェーン関連の研究開発
  • Tendermintを使ったMOLD上でのValidator設計
  • Gas Priceの設計
  • mold-sdkの開発実装
  • コントラクトペーパー β公開
  • インセンティブ設計やトークン設計の仕組みをコントラクトペーパーとして公開

2020年 ~第二四半期

  • mold-sdk : mold sdk 完全版
  • minimum の機能
  • itemize : off-chainのゲームにおけるitemを mold protocol で扱うことのできるトークンに変換する
  • game-protocol : game内でのインセンティブ設計、データ取得プラットフォーム

2020年 第二四半期以降

  • チェーンペーパーの公開
  • EVMをTendermintのアプリケーション層に搭載
  • original chain : 上記 protocolをoriginal public chainへ移行

まとめ

MOLDが目指す世界観を実現するにあたり、Tendermintベースでの独自チェーンの開発かつEthereum上でのα版の実装を進めていくことが現在取りうる選択肢の中で最良であるという確信のもと、目まぐるしく変化するブロックチェーンをめぐる動向にも目を向けつつ、上記の構想及び展望にしたがって開発を続けていきたい。