初めてインターネットに接続する人たちを、健全なウェブにつなげるために

この記事は米国 Mozilla Foundation の Medium 投稿 How Do We Connect First-Time Internet Users to a Healthy Web? の抄訳です。


Mozilla による最新の調査(Bill & Melinda Gates Foundation が支援)では、初めてスマートフォンを持つケニアの低所得層ユーザーのインターネット体験についてレポートしています。また本調査では、どのようなデジタルスキルが重要になってくるかについても明らかにしています。

By Mark Surman, Executive Director, Mozilla

世界のインターネットユーザーは30億人に上るとされますが、その使い勝手は国や地域、性別、そして取得に大きく左右されているようです。

サンフランシスコ市内のソフトウェアエンジニアにとっては、インターネットはオープンで安全なものでしょう。しかし、ナイロビ在住の低所得層の人が初めてスマートフォンを手にしたとき、その人にとってのインターネットは、慣れない外国語で表示された少数のアプリのコレクションでしかなく、さらには高額な通信料によって使用がかなり制限されてしまうようです。

インターネットは地球上の誰もが使える、生活や社会の水準を高める、オープンな公共資源であるべきです。しかし、こうしたケニアでの現状からは、インターネットの可能性をまだまだ活かせていないことが伺えます。

このデジタルデバイドを調査するために、 12ヶ月前、 Mozilla は調査に乗り出しました。ケニアの低所得層の人が初めてスマートフォンを手にするとき、どのような弊害が生活にインターネットを取り入れることを阻害しているのか。そして、その弊害を乗り越えるためには、どのようなスキルやその教育手段が必要なのか。これらのことを明らかにするのが調査の目的でした。

Mozilla の Digital Skills Observatory 調査隊員による写真

調査のために Mozilla 内で Digital Skills Observatory が設立されました。これは、持っているデバイスやデジタルスキル、人間関係、そして収入や経済状況と、デジタルライフとの複雑な関係性について研究する参加型のプロジェクトです。Bill & Melinda Gates 財団より資金供給を受けた本プロジェクトは Mozilla の先導のもと、Digital Divide Data、そして A Bit of Data Inc. の協力を得て行われました。

プロジェクトの調査結果を本日公開します。

この一年間、 Mozilla の調査隊員と地域在住の Mozilla コミュニティメンバーは、7つの地域にまたがって約200人のケニアからの参加者と協働しました。彼らは全員、本プロジェクトの調査対象でもある、スマートフォンによって初めてインターネットに接続するケニアの低所得層の人たちです。より洗練された調査結果を得るために、今回はデジタル金融サービス (Digital Financial Services, DFS) 活用におけるデジタルスキルの影響について注目しました。デジタル金融サービスについて理解を得ることは、彼らをより本格的な経済圏とつなぐことになり、多くの可能性を切り拓くことになると考えたからです。

調査では、参加者を二つのグループに分け、一方のグループには継続的なインタビューを受けてもらうともに、スマートフォンによるサイト閲覧とアプリ利用にかんするデータを提供してもらいました。もう一方のグループにも同様に協力してもらいまいしたが、こちらのグループには同時にアプリストアの利用方法やサイバーセキュリティなどのトピックにかんするデジタルスキル講座を受けてもらいました。

調査によって明らかになったことは、どれも興味深い内容でした。以下では、その一部を紹介します。

デジタルスキルに関する正しいトレーニングを受けなければ、スマートフォンの利用は、既存の社会的・経済的困難を改善するどころか、より深刻化してしまう。

  • メディアリテラシーやオンライン詐欺にかんする正しい知識がないと、悪意のあるアプリや偽のニュースに騙されやすい。これは、経済状況が不安定なユーザーにとっては致命的な被害を及ぼしかねない。
  • 高額なデータ使用量を避けるために、安全でないスマートフォンの使用をしてしまう(Bluetooth でアプリを共有するなど)。結果、脆弱性をはらむ古いバージョンのアプリが蔓延してしまう。

53 のスキルについて学ぶことによって、こうした危険性を回避し、ユーザーの可能性を拡大することができる

  • 参加者と調査隊員のそれぞれによって明らかにされたこれらスキルには、たとえばデータ使用量を管理することや、詐欺情報の特定、パスワードの再設定、ブラウザの設定変更、アプリストアのビジネスモデルにかんする理解などが含まれます。
  • これらのスキルについて教育を施したグループの人たちは調査後の測定においてより自律性とオンラインでの可能性についての理解の向上を示した。
  • これらスキルなしでは、ユーザーのコンテンツ発見やデジタルデバイスの生活への取り入れは限られてしまう。

インターネット利用は、性別による差が大きい

  • しばしば、男性の言動が女性のスマートフォン使用に影響を与える。アプリやサービスの使用を禁じたり、コントロールしたりなど。
  • スマートフォン購入の際、女性の方が男性の3倍、パートナーの影響を受けやすい。購入の際の経済的支援による場合が多い。

インターネット利用への言語の壁が高い

  • スワヒリ語やシェン(スワヒリ語に英語などが混ざった地域訛り)をメインに話すユーザーにとって、英語のコンテンツが多いウェブは使いにくい。
  • シェンのような口語体言語を使用することは、テクノロジーに対する安心感を増し、学習の手助けになる。

インターネットは、初心者にとっても中央集権性を感じさせるものだった。

  • 参加者は、特定少数によって支配されたインターネットを感じていた。Google、 Facebook、 Safaricom のような特定企業がアプリやコミュニケーションチャンネルへのアクセスをコントロールしているため、ウェブの本当の可能性についての理解や、自律的なウェブの利用を阻んでしまう。

デジタルスキルの伝授は、小グループによるワークショップを通して直接教えるか、ソーシャルメディアを通して教えるのが最も効果的。

  • コミュニティーベースの学習が最も効果的だった。特にワークショップはオンラインでの可能性について知り、自信感を構築する良いきっかけとなった。
  • デジタルスキルについて教育するモバイルアプリの効果は小さかった。対応していない機種が多く、情報の定着率も低い。
  • デジタルスキルを教えるのにソーシャルメディアが効果的であった。 WhatsApp 上で行ったチャットボットを使用した実験は良い結果を示した。

デジタルスキルの伝授には地元の人たちの協力が重要。

  • 地元の先生や専門家のコミュニティがないと、デジタルスキルを教えるハードルは一気に上る。
  • デジタルスキルに関する研究・教育の能力は地元コミュニティ内で育成可能。

デジタルスキルは必要不可欠だが、万能薬にはならない。

  • ウェブリテラシーは、より大きな目標の一部でもあります。ウェブの力を最大限に活かし、良きデジタル社会の市民になるためには、リテラシーに加え、(ハードウェアや手の届くデータ料金プラン)へのアクセス、そしてニーズ(テクノロジーの価値と使いみちの理解)も必要。

Mozilla のデジタルリテラシーに関する取り組みは決してこれで終わりではありません。今後もケニアにとどまらず、様々な地域で、 NGO や技術者たちに私たちの調査結果の内容をシェアできるような意見交換会やイベントを開催し続ける予定です。この活動には、こうした多くの方の貢献が必要不可欠です。

ここでの学びや発見は、 Mozilla のより大きな取り組みであるインターネット・ヘルスに関する活動の糧にもします。ただインターネットへのアクセスがあれば良いわけではなく、人びとの社会的・経済的状況を汲み取ったソリューションが必要だという信念のもと、今後も活動を継続していきます。

レポート全文はこちらより閲覧可能です。