当たるヘリオス、当たらないヘリオス。

フルサイズEOSのミラーとhelios44–2の話しです。

ある日、お客さまからこんな問い合わせが来ました。
「EOS6DMark2を買おうと思っています。ヘリオス44を使いたけど、ミラーに当たるか心配です。」

確かに初代6Dはミラーが大きくレンズの後ろがぶつかりやすいと聞いています。
EOS使いの間では、初代5DとMark2、Mark3も当たり加減(ミラーの大きさ)が微妙に違うというのは共通認識です。

フィルムの頃、ヘリオスはそれほど人気もなく、ミラーへ当たる当たらないの話しも聞きませんでした。そのうちAPS-Cサイズのデジタル一眼が普及しだし、ミラーの大きさが小さいAPS-C機では、こんな微妙な問題は皆無でした。但し、他のレンズでは、絞り込みレバーの部分が当たるなどアダプター愛好者にはついて回る問題でした。

その後のミラーレスカメラの出現で、どれだけ出っ張っていようがマウントアダプターの中は空なので、よっぽど特殊なレンズ以外、この様な話題は減りつつありました。

当店にはチェック用に初代5Dがありました。昨年末にAPS-Cの70Dが欲しくなって買い換えてしまったのですが、5Dとヘリオスの相性は良かったはずです。

近年のデジタル一眼は、フルサイズなら視野100%も普通の事となりました。フィルムの頃はフルサイズ(当然)と言いながらも普及機は視野率90%程の機種も多く、その分ミラーも小さくて済んだ事でしょうが、100%の現代のフルサイズ一眼はミラーも大きくて然るべきです。
ミラーが上がった時に、ミラーとミラーボックの当たる部分にはモルト(スポンジのような物)が貼ってあります。それがミラーショックを吸収するのとライブビューでミラーアップした時のファインダーからの光線漏れを防ぐ仕組みとなっています。

ミラーの大きさは、モデル毎に違います。純正レンズにさえ当たらなければ、ミラーの僅かなサイズの違いなどは公式には問題でありません。問題にするのは、マウントアダプターで他のレンズを装着したくなるマニアの話しです。

最近はオールドレンズブームもあり、ヘリオス44は、淡いボケ味やぐるぐるボケがとても楽しいレンズだと認知され、Youtubeなどを見ていると世界的に人気のあるレンズとわかります。初心者のカメラマンの間でもヘリオスは大人気です。


さて、EOS-6Dのミラー当たる、当たらないの話しに戻ります。

お客さまが6DMark2を購入し、mukを訪ねて来ました。
うちにある、3本のHELIOS-44–2をアダプターで装着して試しました。

87年製のキリル文字のヘリオスでミラーにぶつかりました、他の2本は大丈夫です。当たると言っても、無限遠からピントリングの角度で1度か2度ほど戻すとミラーが降りるので、ほんの僅かです。
長年製造されてきたレンズなので、製造ロッドによる部品の違いや、後ろ玉を締め付けるリングの厚みなどのちょっとした差が、当たる、当たらないの明暗を別けるのです。

↑87年製の当たるレンズ。

↑80年製の当たらないレンズ。上と見た目はわかりません。

↑92年製の当たらないレンズ。このレンズは後玉を締め付ける内側のリングの方が高くなっている。


当たるレンズ1本と当たらないレンズ2本をマイクロメーターで計測してみました。

ピントリングを無限遠にセットして、後玉構造部分とマウント面までの距離の差を測りました。

87年製の当たるレンズを基準として、
80年製は -0.25mm程 当たらないレンズです。
92年製は -0.50mm程 当たらないレンズです。

↑87年製

↑80年製

↑92年製

手元にある3本でこれだけ差がありましたが、87年製の当たるレンズも0.25ミリも削ってやれば、当たらなくなるのです。

これぐらいなら、後玉構造の上部に軽くヤスリを当ててやれば解決ですね。
写真は少々乱暴ですが、ちゃんとヨウジョウしてやれば大丈夫です。
少し工作の心得がある方なら出来ると思います。
削ったあとは、黒く塗ってください。
心配な方はmukまでご相談ください。


ついでにヘリオス44-2のプリセット絞りについて、
オールドレンズ初心者の方には少々分かりづらいと思います。

ヘリオスは、絞りリングが2重にあります。
先にあるのが絞り値を合わせるリングです。
手前にあるのが絞り込むリングです。

使い方は、
まず、絞り値をセットします。
手前のリングで、開放にします。
ピントを合わせます。
それから絞り込みます。この時、先にセットした絞り値まで絞り込まれます。

先に絞りの数値をセットすれば、ファインダーを覗いたまま後の操作ができます。

↑絞り値がF5.6に合わせてありますが、絞り込みリングで開放にしています。

↑絞り込んでF5.6でリングが止まりました。

では、なぜこのような仕様なのでしょうか。

ファインダーから目を離して絞り値を決めていては構図が安定しないからです。
当時、一眼レフのメリットは覗いたままの構図で撮影できることでした。緻密な撮影に向いたシステムだったのです。シビアなピント合わせは開放でなければなりません。

その後、絞り込みオートという機能が出来ました。普段ファインダーを覗いている時は、絞りをいくつに合わせても開放で、シャッターを切る時、切れる瞬間に、カメラが自動的に絞り込んでくれます。これは現代の一眼レフにも搭載されており、当たり前なので取り立てて名前も上がりません。

プリセット絞りは、一眼レフ過渡期に生まれた機能です。
それが、マウントアダプターでボディとレンズの連動が出来ない場合、また生きてきた機能なのです。

↑F16にセットしておけば、絞り込みリングはフリーに動かせる。

しかしながら、AEが効く現代ですので、絞り込みが数値で必要でなく、ファインダーで見た目で合わせるならば、先の絞り値をセットするリングを最小絞りのF16にセットしておけば、手前の絞り込みリングをフリーに動かし撮影する事も出来ます。

ご自分の撮影スタイルでチャレンジしてください。