六本木アートナイトでの再会

CulNarra! Interns
My Night Cruising 2019
7 min readAug 24, 2019

written by カント

久しぶりに友人に会った時には、どう接するのが良いか、少し悩みます。それぞれ違う道に進んだ友人と再会した時、高校時代と同じように接していいものなのか、私は初め少し遠慮していました。六本木アートナイトを回る中でその体験を久しぶりに会った友人とどのように共有していったのか、今回はそんな経験についてお話ししたいと思います。

2019年5月25日、暖かい気候の日に開催された一夜限りのアートの祭典、六本木アートナイト2019に参加しました。私にとっては初めての参加で、一晩の間にどんな体験ができるのかということを楽しみにしていました。

六本木アートナイトと慶應義塾大学アートセンター「都市のカルチュラル・ナラティヴ」プロジェクト共催のワークショップに参加し、その事前活動として5月12日にアーティストの田村友一郎さんとアーキヴィストの久保さんのトークセッションに参加しました。トークセッションでは、田村さんの作品に関することやアート・アーカイヴについてのお話を伺いました。広島現代美術館にある田村さんの作品に関して、久保さんが実際に感じたことについて話してくださって、一つの作品に美術館が完成したときの時代や美術館の内部の様子などから、作品に意味を加えていることを知って、また改めてアートの楽しみ方や考え方を学ぶことができました。また5月15日には六本木アートナイト実行委員会の事務局長の三戸和仁さんのお話を聞く中で、私は六本木アートナイトというイベントだけでなく、六本木という街を楽しみたいと思いました。また、六本木アートナイトが美大出身者の方々の再会の場になっているというお話を聞き、それがきっかけで私も高校時代の友人を誘うことを思いつきました。

高校時代の友人と再会するのは久しぶりでした。『六本木で週末に一晩中行われて、六本木の街のいろんなところに作品が展示されるアートのイベントがあるから、興味があったら一緒に行こう』と説明して、誘ってみたところ、『面白そう』と快諾してくれました。

私たちは六本木駅に夕方集合し、それから行動を始めました。私たちが最初に六本木に到着して感じたのは、週末で、しかも六本木アートナイトが開催されていることによる、人の多さでした。六本木という街は普段から週末は混み合っているイメージがありましたが、それにしても夕方から夜にかけて街は歩きにくいぐらいに混み合っていました。私たちは事前の計画通り、最初に六本木ヒルズ周辺にある作品をみて回りました。六本木ヒルズでは、話題になっていたレッドボール・プロジェクトだけではなく、その周辺の木など、いたるところに作品があって、見つけるのも大変でした。私たちが見た作品の中で、記憶に一番残っているのは「欲望と脅威」という作品でした。ワイヤーを用いて作られた鳥は木と完全に一体化していて、照らされている姿はこの一晩だけの儚さや六本木ヒルズの中という周りの雰囲気も重なって、すごく美しく感じました。

セドリック・ル・ボルニュ「欲望と脅威」
チェ・ジョンファ「ライフ・ライフ」

六本木ヒルズの周辺を散策した後、私たちは軽く夕食を食べつつ、東京ミッドタウン方面に向かいました。だいたい20時ごろでしたが、いまだに六本木の街は人がすごく多かったです。ミッドタウンにはとてもユニークな作品がありました。バルーンアートで使われるような長い風船をたくさんくっつけた「ライフ・ライフ」という作品や、レーザー光線を透明なオブジェクトに当てて幻想的な世界を作り出していた「リップル」という作品など、「これはどういう事を伝えたいのか」などと考えてしまいながらも、何かを感じ取ることができるような作品ばかりでした。また東京ミッドタウンの奥にある芝生では映画の鑑賞会のようなものもやっていて、たくさんの人がリラックスした様子で映画を見ていました。六本木という一つの街の中で、たくさんの人で混み合う大通りと、こうした静かな空気に包まれた空間がミッドタウンを挟んで共存していて、なんだか全く違う街に来てしまったような、そんな雰囲気さえ感じました。

チェ・ジョンファ「フルーツ・ツリー」
tantan「ほつれ。」

その後またもう一人の友人が合流した後、少し歩き疲れてしまったので、予定を少し変更して六本木ヒルズアリーナの方に向かい、ゆっくりと座ってステージ・パフォーマンスを見ました。一つ目は「ほつれ。」というダンスも交えたパフォーマンスでした。一つ一つの動きがまるで感情を表すようになっていて、まるで未来の世界を見ているかのような、しかしながら現代でもあるような不思議な感覚を味わうことができました。もう一つは鈴木ユキオの「堆積 – Accumulations」というチェルノブイリのお話のパフォーマンスで、人間の命について、音と体の動きだけで思いを表現していて、気持ちを動きに乗せて伝えようとする姿に私はとても感動しました。この二つのパフォーマンスは全く違う体験でしたが、両方とも「人間らしさ」というテーマについてすごく考えさせられました。私と友人のうち一人はパフォーマンスに集中していましたが、もう一人は全く理解できなかったらしく、少し疲れた様子でした。ステージとステージの間にナレーションがどのような事を言っていたとか、動きについてどうだったかなど話しているうちに、また次のステージが始まる時間になっていて、そんな風にステージのパフォーマンスに集中していたら、あっという間に時間は過ぎて、日曜日の朝1時になっていました。その頃また別の友人が合流して、それから再びご飯を食べに行って、六本木アートナイトでいった場所やこういう展示があったという話をしながら、楽しく食事をすることができました。

私たちはこのようにして六本木アートナイトの一晩を楽しみました。最初は久しぶりの再会であったので打ち解けられるか不安はありましたが、友人と六本木アートナイトを回り、同じ体験を共有していく中で、そんな不安がなくなるくらい昔のように打ち解けることができました。様々な体験の中で、昔はこんなことがあったとか、誰々はこんなことをしているとか、作品を見て想像しているうちにまた違うことも思い出されてきて、そういったところも六本木アートナイトの素敵なところだと思います。六本木の街で一晩過ごしたのは初めてで、高校時代の友人と楽しい時間を過ごすことができ、とても充実した時間になったと思います。

皆さんもぜひ旧友を誘って、六本木アートナイトに参加してみてはいかがでしょうか?

きっと楽しい体験ができると思います!

カント。青森生まれ。大学進学を機に上京。港区在住・在学で、現在人生で一番通学時間の短い快適な生活を送っている。親しみのある土地は青森と仙台と三田。高校2年の際に実家が弘前に引っ越すも、学校が青森であったこともあり、全く土地勘がない。現在は都市経済学を勉強している中で、街づくりに興味があり、休日は美術館に出かけることが多い。

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「都市のカルチュラル・ナラティヴ」プロジェクト、カルチュラル・コミュニケーター・ワークショップのインターンが、地域の文化について語ります。http://art-c.keio.ac.jp/-/artefact