Nao Kitazawa
Aug 14, 2017 · 7 min read

Amazon Primeでふとみつけたドキュメンタリー映画「幻の動物王国 悪い奴ほど裏切らない」。なぜレコメンドされたのかと不思議に思い解説文を読んで衝撃が走った。

クーロン黒沢という人物が、本多忠祇という人物とその人のハチャメチャな生活を撮り続けている作品である。

しおさいの里といっても誰も知っている人はいないだろう。本多忠祇という名前も。90年台に捨て犬の救世主としてテレビの寵児となった名前は、いつしか皆んなの記憶から消え去っているはずだ。ただ、もしうっすらと覚えている人の最後の記憶が、「捨て犬を餌にしてお金儲けを企んだ人」ということであれば、本多さんを知っている僕が、ちょっとだけ違うんですとお伝えしたい。

本多さんと彼が運営していた「しおさいの里」は、千葉県に捨て犬を集めた犬の楽園として、当時マスコミがひっきりなしに取り上げていた。
僕は当時高校一年生。軽い気持ちで入ったラグビー部がつらくて音を上げて退部しており(その後サッカー部に入って楽しく過ごすのだが)、ふとニュース番組で本多さんの取り組みを見て、テレビ局にしおさいの里の連絡先を教えてもらい、手伝わせてほしいと本多さんに電話したのだ。

はじめてあった本多さんは、豪放磊落、大言壮語にして気宇壮大。本多忠政を連想する名前さえ本名なのかわからない。まだまだ高校一年生の僕には、本多さんのカリスマと胡散臭さが同居するスケールの大きさに圧倒された覚えがある。
それから毎週末、僕はしおさいの里に足を運び、ボランティアを手伝った。

当時マスコミにも取り上げられ、全国から募金も集まっていたしおさいの里はとても活気がある、さながら「捨て犬のユートピア」だった。
千葉県は八日市場にある本多さんの一軒家には彼と当時の奥さんが住んでいて、近くに自称ボランティア(お金をもらっていたかどうかは定かでない、というかもらっていたはず)も何人か住んでいた。そしてざっと見ても数百匹の捨て犬が、本多さんが私財を投げ打って購入したという広大な運動場に楽しく暮らしていた。

僕の親友はトンビという捨て犬。とても人懐こくて、僕がしおさいの里に行くと、いつも尻尾がとれるんじゃないかというほどに歓待してくれて、僕のそばを離れない、とてもかわいいやつだった。

本多さんは当時犬の世話のほかに、2つの大事な仕事をしていた。一つは各地の保健所に行って、殺処分が決まっている犬をかっさらってくること。保健所ごとに、引取先がいない捨て犬を殺処分する曜日が決まっているらしく、週末行く度に、今週はどこどこの保健所から犬を引き取ってきたよと話してくれた。まさに救世主じゃないか。僕はそう思った。
当時は動物のお医者さんという漫画が流行っていたこともあり、シベリアンハスキーやアラスカンマラミュートが多かった覚えがある。要はチョビの赤ちゃんかわいーと飼い始めたが、思った以上に大きくなったので捨てるのであろう。何が犬は家族と一緒だ。今も昔も勝手な人はいるものだ。

もう一つは募金活動だ。当時はテレビでもお馴染みの捨て犬満載のバスで各地をまわり、募金を募るのである。街頭募金には関連施設や自治体に事前許可や届出がいるようなもんだが、本多さん、そこら辺はあまり気にしないようであった。
僕も、しおさいの里に住む比較的おとなしい犬(もちろんトンビも一緒)とバスで色んな所を訪ねた。バスが着くと人だかりができる。「ワンちゃんかわいー」って人だかりにワシャワシャされる犬たちを見て、ちょっと力強すぎないかな?と心配するのだが、キャストの犬たちは心得たもの。じっと我慢して撫でられるのである。

このバスツアー、面白い話には事欠かない。あるときどうみてもあちらの業界のおじさんが、一番人気のチャウチャウに近づいてきた。「犬は良いよな、裏切らないから」とのことで、3万円を募金箱に入れてくれた。直後に、なんと今まで人を噛んだことなど見たことないチャウチャウが、おじさんの手をがぶりとひと噛みしたのだ。なんという修羅場、と思いきや、「犬にも噛まれちゃったよ」と悲しいセリフを残して去っていった。あのことがトラウマになっていないだろうか?もしかしたらヤクザな世界から足を洗うきっかけとなっていれば幸いである。んなことはないか。

もう一つは大晦日に成田山に行ったこと。高速道路を走っていると、漫画でしか見たことのないヤンキーの大連隊に遭遇した。あまりのインパクトだったので定かな記憶はないが、50–100台はいたと思う。彼らがバスを取り囲んできたのである。これも人生初めての経験で背筋が凍ったのだが、おそらくボスが乗車していると思われる(なぜかと言うと、一番立派な四輪だったから)がバスの横にスーッとつけて、フルスモークの窓を下げると、「いつもテレビ見てみまーす!頑張って下さーい!」と大きい声で声援を送ってくれた。みんな犬大好き。

どんぶり勘定は当たり前。いつか学校を作りたいとか、言うことは本当にスケールが大きい。昔は営業で鳴らしたというが、本当かどうか。素性も底も知れない。でも毎朝誰よりも早く起き、行動力は誰よりもある。そんな本多さんの人柄は誰も興味を持つ。僕は実はそんなに犬好きではない、と言っていたが、果たしてそうであろうか。僕はそうは思わない。

僕のしおさいの里での仕事は掃除と犬の世話。とにかく人に捨てられたことのある犬というのは、一癖も二癖もある。トンビのように人懐っこい犬もいれば、反対に心を閉ざしてしまい、他の犬に攻撃的な犬もいた。
犬は運動場に置いてある廃バスをねぐらにしていた。冬は寒いので、夕方運動場に行って、バスの中に犬を誘導して、石油ストーブをつけるのも僕の仕事だった。もちろん一酸化炭素中毒を割けるために、バスの窓は少し開けておく。

ある日とても悲しい出来ことがあった。

ある喧嘩っ早い犬をバスに入れて、就寝中喧嘩しないように椅子にリーシュをつけ、一晩過ぎた朝運動場に来てみると、その犬が窓から出てしまい、リーシュが首にひっかかって冷たくなっていた。当たり前だが本当にショックで、居ても立ってもいられなくなっていたが、その時本多さんが見せた表情が本当に悲しそうで、もっともっと申し訳なくなった。彼はすべての犬に名前をつけていて(たいがい適当な名前だが)、死んでしまった犬(確かビーグル犬)の名前を呼び、「寒かったろうなー、ごめんなー」と語りかけながらリーシュをほどいた。僕のことを叱責はせず、「外に出たかったんだよ。仕方ないよ」と。「でも次からは(窓の)鍵をかけようか」と。

本多さんにとっては、犬が死ぬことは日常茶飯事だったらしい。病気持ちの犬が捨てられることも多く、獣医でも専門家でもない本多さんが数百匹の犬の面倒を見ているのである。たまに獣医さんが来てくれるが、それでも死んでしまう犬は多い。そんな中で、アクシデントで一匹亡くなっただけであんな表情をするだろうか。単なる金儲けのために犬を飼っている人の表情ではなかった。

そんな本多さんが、犬を餌にした偽善者として全メディアから袋叩きにあう事件が起きた。

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