AMLと金融包摂とレストラン

Cryptoが外為法に追加される方針だそうです。

詳細がどうなるかは自分には分からないけども、どうしても書いておきたいことがあったので久しぶりに書くことにしました。論理的な話ではないので、今回はほんの少しだけエッセイ風です。

強い中間者無しに送受金できることが最大の特徴の一つである暗号通貨は存在感が大きくなるにつれAMLに関する話題が大きくなっていきました。自分もAMLについて色々調べましたが、やはり実態がまるで分からない、コストとメリットがどうなっているのかまるで分からないという状況です。

自分たちはコミュニティの一員としてビットコインの2nd LayerであるLightning Networkプロトコルそのものの開発に強く関わり、ビジネスとしてそのアプリケーションの開発を行っています。両方ができなければ実際のサービスインできないという考えで取り組んできました(Bitcoin以外のこともかなりやってきてます)。最近のAMLの考え方はプロトコル開発の部分とビジネスの部分への対応をしっかり分けましょううというポリシーが強くなっています。 なので2つのポジションを持つ自分達は何が良いことなのか明確に述べることすら難しいというのが実際のところです(逆に考えると、ビジネスできない部分はオープンソースにしてフリーにするということもできるのですが)。ただ、どうしても書いておきたいことがあるのです。

NayutaはNayuta CoreというノンカストディアルLightning walletをテストリリースしています。ノンカストディアルというのは自分のビットコインは自分で管理するというタイプのwalletです。単なるwalletではなく、他社のアプリと連動できる機能があります。以下のyoutubeではSarutobiというMandelduck製ゲームと連携しています。ノンカストディアルなアプリ開発プラットフォーム的なものと言えば伝わるでしょうか。その他、Lightning Crushというゲームや他社製ウォレットと連携できます。Sarutobiではゲーム中のお猿がコインを取った時に0.数円ぐらいのビットコインをリアルタイムで受け取ることができます。ゲームをすることによって少額のビットコインを稼ぐことをビットコイン業界ではmicro earningと呼んでいます。Lightning Networkは現在手数料が非常に安いためmicro earningが可能になります。

まだオンボードのところがGeek以外には難しい、かつ環境変化が激しいため大々的に宣伝はしておらず、Geekが使っています。テスター向けTelegramグループは日本語グループは170人ぐらいですが、英語グループは274人です。ノンカストディアルですので、Androidが使えるところであれば使うことができます。なので 自分の読めない言語でメッセージが来たりします。

現行のNayuta CoreはLightning Networkの仕様通りに作っているため、最低570satsぐらいがウォレットに残ることになります。570satsと言っても伝わらないかもしれませんが、記事を書いている時点で38円ぐらいです。

自分の読めない言語でとあるメールを受け取りました。DeepL翻訳にかけてみると、450satsが取り出せないのをなんとかしてくれないかというものでした(どうもこの方はゲームで稼いだのではなく、他のwalletから転送したっぽい)。そして、想像できないかもしれないけど、自分の住んでいる場所の生活環境は悪く、450satが朝食と昼食のレストラン代金になるということが書いてありました。レストランの画像や記事が載っている手作り風のWebのリンクもついてます。コーヒーがその場所でいくらとか、その国のFiatとビットコインのレートの図とか、市政府からの委託事業のこととかもメールに書いてありました。

ノンカストディアルなので、本当のところどういう方かは分かりません(実際のメールには住んでいる場所等が分かる情報が載っていました)。ただ570sats(38円)送付すれば、動かせるようになるのでメールのやり取りしています。信用してもらうための情報が色々書かれていて別に疑ってないのですが、正直、日本に住んでいる自分からすれば仮に38円が詐欺であったとしても全然構いません。喜んで払います。多分それでその地域の人が二回食事にありつける。

Nayuta Coreは他社のアプリと連動できるのですが、Nayuta製のアプリとして英語学習アプリを作るという企画があります(企画アイデアレベルの話です)。英語学習すればものすごく小額のお小遣いがもらえるとなれば子供がハマる地域が世界のどこかにあるのではないかという仮説です。あくまでも仮説です。本当の効果は良く分かりません。なぜなら世界中の状況など誰にも把握できないからです。けど把握できない場所の一部にノンカストディアルなら届くものがあります。

Nayuta自体は慈善事業を行う組織ではなく、金融包摂を主目的にしているわけではありません。上記の英語学習アプリは全体のほんの小さな一部に過ぎません(しかもまだ単なるアイデア段階。)。最終的には豊かな国で稼いで(ここが一番大事)、途上国ではゲームやインセンティブ付きの学習アプリを動かし、micro donationを動かして先進国と途上国をつなぎ、自分たちはお金を稼いで会社を発展させ、リスクを取ってくれた投資家に還元することまで含めて目的です(とは言え、環境変化が凄まじいため現在は様々な事をやっています。)。自分個人が50円ぐらいを色んな人に送るという方法もありますが、それでは何も変わらないのです。テクノロジーやビジネスには根本的な構造を変える力があります。

色々とりとめのないことを書いていますが、Cryptoの外為法適用でおそらく今回自分がレストランの朝食と昼食でリアルに感じた、先進国と途上国の間のパスがつながっていくことは数年単位 (もしかしたら10年)で遅れるかもしれないなと感じています(まだ法律の詳細が自分には分からないのでなんとも断言できないのですが)。もしかしたらこれからインターネット上に作り上げられる国境の壁がものすごく高くなって、自分の力では超えられなくなるかもしれません。私がここで言いたいことは、そこを完全に自由にやり取りできるべきであるということではありません(少額は自由にやり取りできる可能性が残って欲しいとは強く思っています)。AMLと金融包摂はコインの裏と表の関係であって、どちらかだけしか話をしないというのは良くないということです(AMLについては、誰が犯罪者を決めるのか、や、個人の財産権やプライバシーとのトレードオフという話もあると思います。こちらの方が本当は重いテーマだと思いますが、今回は触れません)。

AMLがしっかり行われることによって安全な日本社会があるというのも重要な事実です。しかし、「AMLと金融包摂のトレードオフは…」と言うロジカルな議論とは別に、30円ほどのビットコインが本当に大切な人が地球上のどこかで生活していて、つながり、サポートするメールをやり取りする、テクノロジーの力がリアルに遠く離れた知らない人間同士でまさにつながろうとしているところにいる自分にとって表現するのが本当に難しい強い感情があるのです。なので自分の言いたいことは、単純に「Cryptoは犯罪者の道具になるので管理を厳しくします」と言うのではなく「Cryptoには良い点悪い点が両方があり、***のような検討した結果、今回は***という判断で管理を厳しくします」と言って欲しいなということです。

AMLが厳しく入らなければ、今の感じではもう後少しでメールをくれたような立場の人達皆がテクノロジーの力でmicro earningの恩恵を受けて生活が変わるかもしれません。その代わり、日本の安全な生活が損なわれるのかもしれません(ここは自分には本当に分かりません)。法律の内容によっては、自分も含めて日本人は皆、このパスを遮断もしくは狭くすることで安全な生活を得ようという選択をするのだということを知っておいて欲しいなと思います。

米国では激しい議論が国の会議で行われました。CoincenterのPeterは、アフリカの女性運動の寄付受付が政府から止められた後にビットコインに切り替えて集め続けることができた話をしていました。世界のリーダーですし、社会をより良く変えるという強い意思がある国では国外のことも重要視され議論されています。それが自国の経済発展につながるという共通認識があるのだと思います。(米国はAMLを厳しくするという選択をしていってます)

Nayutaを設立した時は金融包摂を目的の中に入れていた訳ではありません。テクノロジーの力が世界をほんの少しフラットにするという確信と、日本の技術者が世界を変えるという目的で設立しました。実際に技術で海外でもそこそこ名前が知られるようになってみると、ビットコインの世界に与えるインパクトは凄まじく、技術とは異なる本当に難しい問題だらけですし、日本発とかどうでも良いと感じました。また自分は途上国に旅行したこともないですし、途上国支援を正しく語れるような人間でもありません。そこに大きなエネルギーを使ってきた訳でもありません。それでも遠く離れた国の知らない人とのちょっとしたコミュニケーションがあり、今回強い感情を抱いているのでこの文章を書きました。

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