Bitcoin のユースケース

最近、しばしば聞かれることにBitcoinにユースケースはあるの?ということがあります。聞いてこられる方は、こんなにボラティリティの高いものは支払いには使えないという前提があるようです。基礎技術ではなくてアプリケーションに関することは、”正しい”ことがあるわけではないのであまりオフィシャルには発信しないようにしているのですが、今回は少しだけ自分が思っていることを書いてみようと思います(ここに書いていることが当たるかどうかは誰にも分かりません。詳細な調査に基づいている訳ではありませんのでなんとなく普段思っていることを書いていると思っていただければ)。

Store of Value 資産

Bitcoinには既にプロダクトマーケットフィット(PMF)している部分があると自分は思っています。ロシア・ウクライナ戦争でBitcoinをハードウェアウォレットに入れて国外脱出した人がいたように非常時に持ち運ぶことができる資産としてある程度の信用を得ていると思います。こちらはロシアから資産を逃がすことにも使われたようなので止めるべきだという主張の方もいますが、そのリスクは否定しませんが現時点では使われていると言って良いと個人的に思っています。

持ち運び可能な金のようなイメージですのでデジタル・ゴールドと呼ぶ人もいます。

インフレヘッジ資産

かつて大きな期待がかかった時期のあった、インフレヘッジ資産としてのBitcoinは、未だそこまで成熟していないと思っています。現状、世界的なインフレですが、BitcoinのFiat建て価格はインフレと相反する動きにはなっていません。NASDAQ等の株価との相関が高めになっています。(ここ数ヶ月で相関が外れてきているという話はあります)。元々は発行数量が限定されていることと特定権威に支配されないpeople’s moneyという目的からインフレヘッジ資産としての期待が高まりました。現状はヘッジファンド等がポートフォリオに加えていることからNASDAQ等に連動しがちになっています。ある意味ヘッジファンドのポートフォリオ資産と言えるのかもしれませんが、多くの人が目指している最終ゴールとは違うため、それは挙げていません。特に世界中で法定通貨の発行量が話題になっている状態なので、Bitcoin保持者がじわじわと変わっていった場合、このような性質を帯びてくる可能性はあると思います。

途上国での通貨・地域コミュニティの通貨

エルサルバドルでBitcoinが法定通貨になってから注目されています。San SalvadorのMacやスタバでも普通に使用できるようになっていますが、あまり使っている人はいません。
一方で、Bitcoin Beachと呼ばれるEl Zonteという場所はBitcoinerが訪問することも多くホテルやレストランでBitcoinを使う旅行者も結構いるようです。

エルサルバドルの場合はBitcoinが法定通貨になる前はUSドルが標準の通貨でした。ドル化している国には一つの選択肢になるとは思います。

Bitcoin Beachに触発されたフィリピンのボラカイ島にも行ってきましたが、LN決済ができるレストラン等が小さい島の中に250店舗もあり、世界中から多数の旅行者が集まる場所なのでそれなりに使用される可能性があります。(こちらでは店舗で支払われたBitcoinは瞬時にペソに変換されて店舗のオーナーはペソで受け取っています)

国際送金における中間マネー

最近、Taro等で業界で非常に注目されているのはこちらの用途です。現在Strike社がLNをペイメントレールに使用した個人間国際送金サービスを様々な国の間で使えるようにリリースして話題になっています。例えば米国からナイジェリアへの送金の場合、米国側に金融機関か交換所、ナイジェリア側にも金融機関が存在していて間をLNでつないでいます。こちらはStrike社のサービスですが、Taroではこの仕組をプロトコル化しようとしています。

例えば10ドルを米国からナイジェリアに送金しようとした時、ユーザの10ドルが同じ価値を持つLN上のBitcoinにとあるノードでswapされ、ナイジェリア側でも10ドル相当のLN上のBitcoinが同じ価値を持つナイラにノードでswapされて着金します。国ごとに様々な法律があるので交換所が入る可能性も当然ありますが、プロトコル化することで片側の変換部分に自由に参加できる形になる可能性があります。まだどのような形になるか不透明な部分はありますが、カウンターパーティリスクが無く、どちらかの国の金融機関が全体を支配しない国際送金として、ニュートラルなマネーであるBitcoinが生きています。

各国中央銀行が保持するリザーブとしてのBitcoin

ここは自分は専門知識があまり無いので断定的なことは何も言えないのですが、最近はドル基軸通貨の仕組みを刷新するようなニュースが増えています。BRICSやASEANで独自通貨を作る動きや、原油の決済をドル以外で行うニュースが流れています。基本一つの国の通貨が基軸になるというのは他国から見るとよろしくない面があるので基軸通貨というものがない仕組みに移行するのは自然なように個人的に感じます。(ロシアが他国にあずけていたフィアットを差し押さえしたことがこの動きに繋がったという人もいます)

CBDCのニュースも溢れていますが、各国の通貨が対等に高速に移動できるようになった時、国家に依存しないアセットで高速に移動が可能で、かつ簡単に差し押さえることができない現物を保持することができるBitcoinは保持する資産に入っていく可能性が出てきているのではないかと個人的には感じます。

Internet NativeなマネーとしてのBitcoin

Nostrというtwitterを分散化したようなサービスにおいて、”いいね”のように気軽に少額(1sat=1円以下でもOKです)LN送金するZapという機能があります。Zap体験が楽しくて皆送り合っているというような感じです。少額を送りあっていますのでボラティリティとか気にしている人はいないと思います。個人的に感じることですが、例えば多数の人からZapされている投稿は信頼度が高いというような計算をして投稿をフィルタリングしたりするとフェイクニュース等の問題が軽減されるかもしれません。

まだはっきりした形は見えませんが、Internet Applicationの裏側で動く価値としてのBitcoinに自分は魅力を感じています。

エネルギー会社のマイニングとの組み合わせ

テキサスとかで盛んですが、天然ガス生成・輸送においてどうしても使い切れないガスが生まれるそうです。電力グリッドにも繋がっていないので発電して売電することもできない。現状は燃やして放出している部分を発電しBitcoinをマイニングするということが行われているそうです。

その他にもエネルギー会社とマイニングの組み合わせは様々なチャレンジが行われている模様です。

SmartContractのユースケース

現在、開発が進んでいるRGBプロトコルではSmartContractが使えます。個人的にはまだまだ利用が進むには時間がかかると思っていますが、 人によってはここが最大のユースケースだと考えている人もいます。

Proof of existence

BitcoinにはTaprootという機能があり、色々なデータをまとめてHashをとりBitcoin Blockchainに埋め込むことができます。上記で上げているTaroプロトコルもアセットの帳簿を一つのHashにまとめ上げて埋め込む形で提案されています。

Bitcoinは全てのブロックチェーンの中で分散度が高くセキュリティが高いため、他のブロックチェーンのデータや、何らかの存在証明が必要なデータを書き込むというニーズがあるかもしれません。

以上、ざっと思いつくところを上げてみました。まだまだ他にも可能性はあると思いますが、日に日にBitcoinの重要性は上がってきていると感じています。 アセットとしてのBitcoinの重要性が上がった時に支払いに使われない理由は特にないですし(上記全てのユースケースにおいてBitcoinの送付=支払いが必要になりますよね)、Internet Nativeなマネーとしての支払いにはもっとも適したアセットではないかと思っています。

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