Bitcoin Conference 2022

Miamiで行われたBitcoin Conference 2022に参加してきました。イベント自体の発表は少ししか聞いていないのですが、人と会って話をしたり、イベントの質の変化を感じたり、自分にとっては、Bitcoinを取り巻く環境が大きく変化しているということを感じる出来事でした。

空港からUberに乗りました。道からして、勝手に想像していたマイアミ!って感じです。

会場は有名なMiami Beachの国際会議場です。会議場近くのホテルは皆すごく高価で、自分はダウンタウンの方に宿泊場所を取りました。ダウンタウンの中ではちょっと高級な場所であるBrickellというところに宿をとりました。実際に宿に行ってみると、ホテルというよりリゾートマンションという感じです。おそらく部屋を購入している人と宿泊者が混在しているのではないかと思います。

頑張って探して、2万円台後半でBrickellにキッチン付きLiving & 1BRの綺麗な宿に泊まったのですが、今にして思うとかなり破格のお得な宿だったのではないかと思います。それぐらいMiamiはお金持ちが集まる場所で物価が高い街になっています。ちなみに今、Austinからワーケーションをしているのですが、Austinのstarbucksの店員さんと少しお喋りして、Austinに来る前Miamiに寄ったんだよって話をすると、「Miamiどうだった?Crazyな街だったでしょ」と言われるぐらいちょっとU.S.の中でも特殊な場所になっているのではないかと思います。

Brickellの海岸から。ここを大型のクルーザーが通ったりしてました。

こちらはDowntown側のショッピングモール横のヨットハーバー。ただ、マイアミの色んなところでクルーザーとか見ていると、これでもそんなに高そうなクルーザーはあまり無いな〜とか思ってしまいます。それぐらいマイアミは普通じゃない。

そのショッピングモールから見た、FTX arena。そういえば今年のスーパーボウルのCMではFTXとcoinbaseのCMが話題でしたね。それぐらい社会的に話題になっているし、Cryptoに対する社会的受容性が分かります。

これがスーパーボウルでのFTXのCM。ここに出てくる延々と見下ろして評論し続ける人にはなりたくないですね〜。

会場の入り口ではMiami Bullがお出迎え。

昨年、入場に何時間もかかったという話を聞いていたのでオープンする直前に会場に行きました。オープン前でも行列ができていましたが、今年は普通に進んでほどなく入場。

こちらが開始前のメイン会場。ちょっと動画では伝わりにくいかもしれませんが、とんでもない広さに椅子が大量に敷き詰められてます。あまりに会場が大きいので中間地点に巨大なスクリーンがあります。真ん中の奥の方にステージが見えますが、その横にあるスクリーンでもかなり巨大なものです。正直自分が見た発表ステージでここまで大きなものは初めてです。とにかくこれを見た瞬間に本当に驚きました。というのもBitcoin絡みのカンファレンスは大体数百人ぐらいのイメージで見たことある人が結構いるという感じでした。数年前のベルリンでのLightning Conferenceに確か400人ぐらい集まって、「えらい人増えたな〜」とか思っていた記憶があります。コロナで海外に出なかった間に何もかも変わり、数万人が集まる大規模イベントに変貌してました。

さてConferenceの印象を先に書いておくと、産業的にはマイニングとLightning paymentのイベントであり、イベント全体として強くマスアダプションをイメージしたものになっていました。これも今までのBitcoin関連のイベントではあり得なかったものです。

メイン会場以外に、マイニングステージ、オープンソースステージ、展示会場、その他色々なスペースがあり、野外には音楽を流すDJがいて、車を改造したハンバーガー屋等が多数並んでいるようなイベントです。

カンファレンス会場外側はこんな感じ。ステージが見えてDJが音を鳴らしていますが、、、実はその奥に大きなスペースがあり、一番奥にもっと大きなステージがあります。最終日は全開放されてフェス状態となりました。

メインステージはCashAppのプレゼンから開始です。会場は至るところにCashAppのロゴがあります。大きな金額を出したスポンサーであることがすぐに分かります。今回のイベントにはBlock(ジャック・ドーシー)の意向が大きく働いていると思われます。またCashAppのプレゼン中に人材募集等の話もありました。今回、メインステージには自分の知らない人達も多数登壇していて、スポンサー枠があることが想像できます。これまでのビットコイン関係イベントとは本当に質が変わっていると感じました。

一方でオープンソースステージでは今までのビットコイン系カンファレンスと同様の議論が行われました。ただし参加者の数はメインステージの数十分の一と言ったところです。それでも今までのビットコインカンファレンスと比較すると結構大人数です。また登壇者達は自分の登壇以外会場にいなかった人が多いのではないかと思います。やはりちょっと変わってしまったな〜というのが正直なところです。

こちらは企業の展示会場。動画では入り口付近の一部しか見えませんが、自分にはマイニング関連の展示が結構多く感じました。

こちらはUpstream DATA社の小型マイニング用のボックス。特殊構造で空冷を行います。写真にあるマイニング装置二台を入れるのがシリーズ最小のものです。蓋を締めるとマイニングマシンの雑音が劇的に減ります。個人でのマイニングは最近少しづつ注目を集めるようになってきています。

こちらは本格的な産業向けマイニングコンテナの展示。中にマイニング装置は入れてませんがラックがあります。コンテナまるごと展示はここ以外にも見かけました。この一つ一つに数百万の最新マイニングマシンが設置されると考えると非常に大きな額が動く装置産業であることが分かります。

マイニングはテキサス州を中心に、発展しています。特に自然ガスの採掘において無駄になっていたガスを使って発電してマイニングすることによりビジネス効率を上げることに使われているようです(ここらへん詳細はあまり分かっていません)。またテキサス州は電力グリッドの金融パートが全米のグリットから独立しており、経済原理が働き、ビジネス的に良いものが即採用される状況になっているそうです。どこに置いても正しい競争がなされる環境こそがイノベーションの母であるというのは同じです。

とあるWeb記事によると、2021年度でマイニングの35%以上がUSに移動したとなっていました。10分のマイニング報酬6.25BTCで、仮に1BTC=500万と想定すると、USシェアが40%まで伸びていれば一年間に得られる報酬は、500万円 x 6.25 x 6 x 24 x 365 x 0.4 = 6600億円となります。通常のマイニングビジネスであれば、電気代と設備費に大きな費用がかかり残った部分が利益だと予想されます。毎年6600億円の売上があがる産業が立ち上がっている(SDGs的なリスクはまだ残ると思いますが)と言えると思います。設備費と言っている部分には様々なものがありますが代表的なものはマイニング用の半導体ではないでしょうか。仮にマイニング用の半導体も米国製になればそれなりの大きさの産業になります。この規模をどれぐらいの大きさと見なすかは人によるかもしれませんが、後ほど述べるLNペイメント産業と組み合わせると、コロナによって痛んだ米国経済を考えればちゃんとした精査無しに止めろとはならないのではないかと想像しました。

SDGs的な話はマイニングステージでも色々行われていたようです。その中でもAdam Backからのアナウンスは目を引きました。

BlockstreamとBlockとTeslaが協力してゼロ・エミッション目指した太陽光マイニングを行うというものです。Teslaは社名は出ずに装置の協力という名目です。株主配慮かもしれません。いずれにしろマイニングのSDGs的な対応は様々なチャレンジが続いています。

ここからはもう一つのテーマであるLightning Paymentについてのお話です。今回のイベントでLightning paymentに関してもっとも注目されたのはStrikeのJack Mallersの発表です。

Shopifyと提携してecommersでLN支払いを受け取れるようにする。PoSの大企業と提携して店舗のLN受け取りを米国の至るところでできるようにする。そんな感じの発表です。特に、自分のノードからTor越しに支払いも可能だと強調していました。

こう書くと何か思い出すものがありますね。前回記事 El Salvador訪問記(San Salvador編) で紹介した以下のようなEl SalvadorのLNシステムと非常に似ている相似形の構造が米国の至るところに現れると自分は感じました。

これはEl SalvadorのLNシステムです。

既に大勢のユーザ数を持つCashAppのLN支払い対応と合わせると非常に大きな可能性を感じます。実際に米国内でBitcoin払いが使用されるのかは、El SalvadorのようにGDPに影響するような額の国際送金みたいな明確なものは自分には思いつかないので、はっきりとは分かりません。しかし、パイロットマーケットが登場したことで米国内向けのLApps開発競争も始まる素地ができました。何かキラーLAppsが出れば一気に使用される可能性も十分にあると思います。

いずれにしろ個人、会社間で相互運用性を持って参入できるオープンな支払いネットワークの開始のアナウンスが行われました(規制局がどのような反応なのかは自分には分かりません)。マイニングに続いてLApps開発にも投資が入る素地ができたのでは無いでしょうか?自由に参入できて相互運用性があれば大きなイノベーションのゆりかごになるでしょう。

さて最終日。自分がもっとも驚きだったのはこの日です。最初にチラリと書きましたが普通に大型フェスになってました。野外と屋内ズラリとラインナップが並んで多数の人が盛り上がってました。自分はスティーブ・アオキのステージを見に行きました。

もう本当に普通のフェスです。途中でスティーブ・アオキが

“ I Feel Crypto Energy! “ “CryptoCurrency is Future!!!”

とか言ってました。これはビットコイン系のカンファレンスに出たことがある人には相当な驚きなのではないでしょうか。大体Bitcoinerは陰キャだというイメージです。Bitcoinerのパーティでの位置づけは以下の漫画のようなものでした。

それが完全に陽キャのイメージです。そもそもMiami Beach自体が、例えばレストランで店員さんが皆を盛り上げたり完全なお祭りイメージのリゾート地ですし、最終日だけのチケットも販売されていましたのでこの日だけ来た人も結構多かったのかもしれません。ただ一つ言えることは、明らかにマスアダプションの意思を持って最終日にフェスが組み込まれているということです(これもジャック・ドーシーの意向なのか???)。

元々USではZ世代にビットコインはカッコいいものと捉えられているという話を聞いたことはありました。いずれにしろ、マイニング、LNペイメント、オープンソース、マスアダプションイメージづくりと全部のストーリーが一つになって大きな波が近づいているという感覚を強く持ったイベントでした。

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