El Salvador 訪問記(San Salvador編)

前回はEl Zonte (Bitcoin Beach)について書きました。El Zonteにしばらく滞在した後、USに戻る前にSan Salvadorに二泊しました。またEl Zonte滞在中に一度、車でSan Salvadorに日帰りし、国のシステム開発に関わっているAthena訪問とBitcoin meetupへの参加をしています。

まず最初にAthenaの訪問から

https://twitter.com/AthenaBitcoin/status/1507444312069447680

左側にはATHENAのATM、右側には政府が運営するChivo ATMが見えます。El SalvadorがBitcoinを法定通貨にする直前からどのようなことが行われてきたのかを沢山教えてくれました。

Bitcoin meetupは30名ぐらいが集まっていたと思います。ここで会ったエンジニアと数日後San Salvadorでミーティングして様々なことを教えてもらいました。ここのmeetup会場のレストランではBitcoin払いをしました。そこそこのサイズのレストランでOpenNodeもしくはStrikeのPoSが導入されていて、提示されたQRコードに対してNayuta Coreで支払いしています。

San Salvadorに移動した後は、それなりに良いホテルに泊まりました。El SalvadorからUSへの入国にまだCovid-19の証明書が必要でちょっと不安があったので良いホテルに泊まったのですが、コンシェルジェに聞いたら***に歩いていったら受けれますみたいな応対でした(ちょっと残念)。それでも全く状況がわからない国で、ここまで安全だから歩いていけばテスト受けれるという情報が手に入るだけでも気が楽です。

実際 、出発前日午前にその場所まで行ってテスト受けようとしたら、24時間前しかダメですよと言われ(米国はオフィシャルに24時間前じゃなくて1日前ならOKと言っているんだけど。。。)、16時頃再び行ってテストを受けました。1,2時間で結果メールしますと言われましたが、結局メール届かず。出発日にもう一度行って、届いてないからという話をしてなんとか再送信してもらって間に合いました。

実際に出発するまで少し時間に余裕があったので、LN支払いを色々使ってみました。ホテルのそばのスタバ、マクドナルド、小さなパスタ屋、有名なフライドチキンのチェーン店、Bitcoin meetup会場のおしゃれなレストラン等で使いました。San Salvadorではあまり冒険的な行動はする時間的余裕が無かったので、全体として何割の商店がLNを受け入れてくれるかは自分には分かりません。自分が使おうとした場所では5割ぐらい受け入れてくれたのですが、実際はもっと全然低い割合だと聞きました。

San Salvadorに移動した後に最初にSIMカード延長で立ち寄ったショッピングモール。San Salvadorは大きなビルも沢山あり、結構な都会です。El Zonteとは全然雰囲気が違います。

このショッピングモールの廊下にスタンドあってそこでSIMカード延長を頼みました。多分Bitcoinでも払えるとの表示あり。Can I pay by Bitcoin???と訪ねてみると、Chivo walletを出してきてQRコードを表示されました。大きめのレストランではPoS導入されていましたが、こういう場所(個人商店?)では市民に配布されているChivo walletを使っているようです。実際にNayutaCoreを使って支払いしようとしたのですが、なぜかうまくいかず、時間が無かったので結局クレジットカード払いをしました。

他にもスタバで何故か相手に着金せずにカード払いをしたということがあったのですが、15秒ぐらい経ってからNayutaCoreを見ると支払い履歴が出ているというパターンがありました。ここらへんノードのパスが遠いのかもしれず改善しようと思っています。(他の有名ノンカストディアルLNウォレットのCEOがEl SalvadorのLN払いで苦戦している動画も上がってましたのでなにか課題がまだあるのかも。その時はChivoのQRコードがどうこうという話が出ていました。。。)

こちらはEl Salvadorの有名フライドチキンチェーン店。外側カリカリで中がジューシーでめっちゃ美味しい。

ここの支払いでも払ったけど届いてないよって言われる事態が発生しましたが、相手が見せたQRコードが1st layerだったようで1st layerの支払い履歴が自分のNayuta Coreに残っていました。多分、お店で働く人達は1st layer, Lightning Networkと言っても、何のことかさっぱり分からないという状態だと思います。

そもそもビットコインの値段が下がることに驚いて取り扱いを止めた個人商店もあると聞きました。このようにビットコインのアダプションに関してはビットコインというものが何なのかの教育が非常に重要になります。

そのビットコイン教育を市民に対して行う、La Casa del Bitcoinという場所を訪問しました。

ここはPAXFULという業界では有名な企業が運営しています。綺麗な建物で中庭もあり居心地の良い空間です。セミナー室があり、今現在は市民に向けてビットコインというものの理解を深めるためのセミナーを行っているそうです。自分が行ったときも人が集まり始めていて多分60歳台ぐらいのおじさんが車から降りてきて軽く通訳してくれてちょっとだけ話しました。どこから来たの?とか。最後の方は、ハポネって言葉を知っていたのでハポネハポネって言ってましたw。何の言葉知ってると言われて、Grasias, Hola ぐらいしか言えず、やっぱり言葉が分かると楽しいだろうなと思いました。(海外に行くと毎回感じることです)

綺麗な中庭があります。建物の裏にはもっと大きな庭があり、ハンモックやBBQの道具がありました。この前ビットコイン関係者30人ぐらいでBBQしたよ。いつか世界中からビットコイン関係者集めて盛大なBBQしたいんだと言ってました。

中庭にはコーヒーを作る場所があり、Satoshi ブランドのコーヒーがあります。1BTCあげるよwと言いながらカプチーノを奢ってくれました。

ここでも色んな会話をしましたが、やはり、オープンなビットコインの普及を進めて、将来は開発者も教育して、世界とつながって自分たちの国も発展していくんだ!という力強い話を純粋に語ります。それはやはり説得力が非常にある言葉でした。

ここで奢ってもらったのはSatoshi Genesis Blockというコーヒーです。Bitcoin Meetup in San Salvadorでこれを作っている側の人とも色々会話しました。美味しかったので記念に購入。もちろんNayuta Core使ってLN払いしました。

La Casa del Bitcoinでは、自分たちが作っているBitcoinアプリの説明を最初にしたら大歓迎してくれました。Bitcoin発展に貢献している人は世界中の人皆仲間だ!また、いつでも来てくれと言われました。

出発前日に地元でLNプロダクトを開発しているエンジニアと会話して、ATHENAで受けた説明と合わせて国全体のシステムをある程度把握しました。

遊びで行った訳ではないのでw、一応ここに別途書いていた説明を貼っておきます。

政府のシステムと関わっているAthenaに行ったり、地元の開発者とミーティングしたりしてざっくりとインフラ構造を理解した。

Chivo walletは国民だけが持てるwalletでcustodial wallet。 BitcoinとUSDのやり取りができてLightning対応している。携帯SMS番号といくつかのドキュメントを提出してKYCを行う。こちらは利用開始で3000円ぐらいが貰えるようになっていてかなりの割合の人がダウンロードしている。銀行口座を持っている人よりChivo walletをダウンロードした人の方が多い。

面白いのは、BitcoinとUSDをボタンひとつでswapできる。

カストディアルなのでテクノロジー的にはただ単にDBを書き換えているだけで大したことは無いが、金融実務的には政府が最大の Liquidity Providerとなっている。IMFから金融リスク色々言われるとしたらここらへんか。

BitcoinerはBitcoinをHodlしようとする人が多いけど、エルサルバドルではドルに変換しておこうとする人が多数派。民間企業はwalletを作ったとしてもChivoのシステムにAPIは無いので、Liquidity Providerをどうするかという課題に突き当たる。

Custodial walletであってもライセンス無しで展開できるが、銀行へつなごうとするとライセンスが要求される。2Bのアプリケーションを作りたい場合はこちらは結構重要かもしれない。

Chivo ATMはLightningにはまだ対応しておらず、Bitcoin 1st Layerでやりとりを行う。自分はこっちで買ったSIMカードのSMSが分からなかったので一緒に行ったエルサルバドル市民の携帯のSMSで20ドルの引き出しを体験してみた。(少しシーケンスの記憶があいまいになっているけど思い出せる部分を記録しておく)

まず、SMSで認証して$20のBitcoin請求書に対して、Bitcoin Walletから1st layerで$20を払う(SMSと別携帯のwalletでも可能)。

そうすると紙が出てくる。ここで支払ったBitcoinが1confirmation終わるまで待たないといけない。1 confirmation完了したら再びChivo ATMに向かって紙に書いてある番号を入力。そうするとSMSにコードが飛ぶのでそれを見ながらコードの入力。それでやっと$20が引き出せる。

Chivo ATMの方はSMS認証のみがKYCとなっている。

AthenaでChivo ATMではないBitcoin ATMも見せてもらった。 Chivo ATMの方はフィーがゼロで政府が負担している。Chivo brandでないATMは設置にライセンスがいるが、ライセンス取得はそんなに難しくはないだろうとのこと。こちらは5%のフィーを取る形。

こんな感じで全体の仕組みが動いていて、オープンな性質を重要視していて他のウォレットにも繋がることができるようになっている。(That’s Lightning!)

USで出稼ぎしている人の収入がGDPのそれなりの割合をしめており、この送金フィーが安くなるだけでも国にとって非常に大きいとのこと。

Bitcoin Paymentについては実際のところ Bitcoin Beach (El Zonte)であってもノーと言われるところはそこそこある。サンサルバドルに行くと受け取ってくれるところの方が少数派なんじゃないかと想像(サンプルが少なすぎて断言できない)。しかしスターバックスやマクドナルドでは普通に受け付けているし、地場の小さなレストランやSIMカード延長権利を買いに行ったスタンドではPoSは導入していないが、Chivo walletを出してきてinvoiceを見せてこれに払ってと言われた。大きめのレストラン等では OpenNode等のかっちりしたPOSシステムでBitcoin払い受付だった。

法定通貨としての完全なアダプション(誰もが当たり前に受け取る)にはまだ時間かかるかもしれないが、おそらく世界で圧倒的に早くビットコインがアダプションしていると思われる。

それ以上にビットコインを法定通貨にすることで大きな注目を浴びており、有名IT企業や有名開発者がエルサルバドルを訪問しており、国の経済発展に対する宣伝という意味では既に成功していると思える。

10日間だけなので、まだまだ上辺だけの把握だとは思うけど、以上が自分がエルサルバドルで見聞きしたBitcoinエコシステムの状況です。

El Salvador全体のシステムのポイントとしては政府がChivo walletにインセンティブを付けて60%ぐらいの市民に配っていることと、Chivo walletにUSDとのスワップボタンを付けてLiquidity Providerになっていることがあります。それ以上に重要なのは、Lightning Networkのオープン性を非常に大事にしており、誰でもLN protocolに則っていれば自由にネットワークに参加できるpaymentシステムが実際に稼働しているというところにあります。

現在、中央銀行が様々なFiatベースのpayment企業が相互運用性を持つような基盤について検討していると思いますが、permissionlessな形でもっと複雑な構造の分散マネーBitcoinで既に稼働が始まっています。Fiatベースではpermissionlessはダメ、AMLできてないとダメ、privacyを守りながらtraceできるようにと様々な高い要求があるとは思いますが、実際に個人、企業システム間において相互運用性があるpaymentシステムが稼働しているということは一つのイノベーションです。

さらにシステムの話とは別になりますが、Bitcoinというassetとしての性質は国によっては非常に意味のあるものとなります。El SalvadorではBitcoinが法定通貨になる前は、USDが唯一の法定通貨でした。しかし当たり前ですが、USDの発行ルールは米国の事情に則って決まっていきます。大量のUSDを刷って米国市民に補助金を出す、米国の経済状況に合わせたタイミングで利上げが行われる、というのはドル化している国から見れば大きなリスクの一つです。元々ドル化している国というのは様々な大きな経済リスクを持っており、Bitcoinを法定通貨にすることによって緩和されるリスクと追加されるリスクを考えたときに実はメリットの方が大きいかもと想像します(ここは正確な評価はできません)。

それ以上に、今回のEl Salvador訪問では、多くのBitcoin業界に関わっている人達が目を輝かせて国の発展した未来を語るという事を見ました。また、世界中の有名開発者や有名スタートアップがEl Salvadorを訪問し注目しています。このような状態を作り出すだけでも非常に難しいものであり、Bitcoinのパイロットマーケットを作り出したという事実とPRだけでも既に成功しているのではないかというのが自分の感じたことです。

既にEl Salvadorを離れて一ヶ月ぐらい経ちますが、早くEl Zonteにもう一度行きたいと思っている自分がいます。以上で自分のEl Salvador訪問の話は終わりです。Bitcoin発展に貢献している方は一度訪ねてみることをおすすめします(治安には十分気を遣ってください)。

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