生きるとは繋がること
阪神・淡路大震災18年、孤独死 1000人超す
こんなニュースを目にした。
「男性は餓死に近い。枕元に酒パックと履歴書。冷蔵庫は自治会が配ったリンゴだけだった」
これは仮設住宅に住んでいた男性のことである。
「死後2週間の男性は風呂上がりの裸のままうつ伏せになって、うじがわいていた」
こんな書き込みもあった。
震災にあって、仮設住宅に移る。震災だけでも大きな危機に遭遇しているのに、コミュニケーションがなくなり人との繋がりが切れたことが、追い討ちをかけるように命の危機に直面させる。
仮設住宅から更なる引っ越しが余儀なく強要される。復興住宅への引っ越しだ。
仮説住宅は、プレハブ住宅なので、寒くて、劣悪な環境だ。それに比べて復興住宅は、コンクリート造りの強固な建物ですきま風はなくなる。
しかし、大きなことを見落としている。
やっと育んできた仮説住宅の風通しのよいアルミ扉のコミュニケーションが、鉄扉の復興住宅に引っ越して、まったく失われてしまう。
人と人の繋がりが、またしても断ち切られたのだ。
そのため、復興住宅では、高齢化、病気、貧困が孤独死増に拍車をかけていく。
将来に希望がもてれば、一人でも孤独ではない。将来に絶望しか見えない時、二人でも孤独なのだ。
遮断された空間からは、希望は見いだせない。
繋がりのない空間からは、絶望が顔を出す。
単調な生活だから孤独なのではない。
生活の見通しが断ち切られ、生きる希望を失う。これが孤独死へとつながっていく。
■繋がりが断たれると寿命が短くなる
イギリスのマーモット教授が日本人の移民に注目して、その寿命を調査した。
日本に住んでいる人=A
日本からハワイに移住した人=B
日本からハワイ、さらにハワイからアメリカ本土に移住した人=C
マーモット教授は、ABCそれぞれの寿命を調査した結果、A>B>C であった。
移住を繰り返すと寿命が短くなるのだ。
生まれた土地から、震災で仮説住宅に引っ越し、その後また復興住宅に引っ越すと、孤独死が増加するというのも理解できる。
さて、20世紀に人類の寿命は30年延びたといわれる。内訳は、薬学の進歩が5年間、予防医学や公衆衛生の発達が25年間だ。
つまり、環境の作用がとても大きなファクターとなっている。
■予防医学とはなにか?
予防医学とは「病気になりにくい心身を作る。病気を予防し健康を維持する」という考え方に基づいている医学である。
その予防医学研究者である石川善樹氏が言う。
1.「つながり」が少ないと死亡率が2倍になる。
2.孤独は喫煙より身体に悪い。
3.お見舞いに来てくれる人の数で余命が変わる。
4.男性は息子の嫁に介護されると長生きし、女性は旦那に介護されると長生きする。
■ところで、介護と聞くと、認知症など脳のことが気にかかる。
怪我をして手足を切ったり、骨折した時は、治療をすれば元通りに治る。
これは、損傷した部分の組織が再生するからだ。
しかし、脳の神経細胞はそんな具合にはいかない。
部分的に再生する場所はあるが、大部分の神経細胞は損傷を受けると再生されない。
でも、周りりの神経細胞がつながって、強化してくれる。
脳卒中や脳外傷で発生した手足の麻痺などの症状を、リハビリテーションで回復することがあるが、まさに周りの神経細胞ネットワークが繋がって働いてくれるからだ。