生きるとは繋がること

よろこぶや カンナ
yorokobuya
Published in
4 min readMar 25, 2019

阪神・淡路大震災18年、孤独死 1000人超す

こんなニュースを目にした。

「男性は餓死に近い。枕元に酒パックと履歴書。冷蔵庫は自治会が配ったリンゴだけだった」

これは仮設住宅に住んでいた男性のことである。

「死後2週間の男性は風呂上がりの裸のままうつ伏せになって、うじがわいていた」

こんな書き込みもあった。

震災にあって、仮設住宅に移る。震災だけでも大きな危機に遭遇しているのに、コミュニケーションがなくなり人との繋がりが切れたことが、追い討ちをかけるように命の危機に直面させる。

仮設住宅から更なる引っ越しが余儀なく強要される。復興住宅への引っ越しだ。
仮説住宅は、プレハブ住宅なので、寒くて、劣悪な環境だ。それに比べて復興住宅は、コンクリート造りの強固な建物ですきま風はなくなる。

しかし、大きなことを見落としている。
やっと育んできた仮説住宅の風通しのよいアルミ扉のコミュニケーションが、鉄扉の復興住宅に引っ越して、まったく失われてしまう。
人と人の繋がりが、またしても断ち切られたのだ。

そのため、復興住宅では、高齢化、病気、貧困が孤独死増に拍車をかけていく。

将来に希望がもてれば、一人でも孤独ではない。将来に絶望しか見えない時、二人でも孤独なのだ。
遮断された空間からは、希望は見いだせない。
繋がりのない空間からは、絶望が顔を出す。

単調な生活だから孤独なのではない。
生活の見通しが断ち切られ、生きる希望を失う。これが孤独死へとつながっていく。

■繋がりが断たれると寿命が短くなる

イギリスのマーモット教授が日本人の移民に注目して、その寿命を調査した。

日本に住んでいる人=A
日本からハワイに移住した人=B
日本からハワイ、さらにハワイからアメリカ本土に移住した人=C

マーモット教授は、ABCそれぞれの寿命を調査した結果、A>B>C であった。

移住を繰り返すと寿命が短くなるのだ。

生まれた土地から、震災で仮説住宅に引っ越し、その後また復興住宅に引っ越すと、孤独死が増加するというのも理解できる。

さて、20世紀に人類の寿命は30年延びたといわれる。内訳は、薬学の進歩が5年間、予防医学や公衆衛生の発達が25年間だ。

つまり、環境の作用がとても大きなファクターとなっている。

■予防医学とはなにか?

予防医学とは「病気になりにくい心身を作る。病気を予防し健康を維持する」という考え方に基づいている医学である。

その予防医学研究者である石川善樹氏が言う。

1.「つながり」が少ないと死亡率が2倍になる。
2.孤独は喫煙より身体に悪い。
3.お見舞いに来てくれる人の数で余命が変わる。
4.男性は息子の嫁に介護されると長生きし、女性は旦那に介護されると長生きする。

■ところで、介護と聞くと、認知症など脳のことが気にかかる。

怪我をして手足を切ったり、骨折した時は、治療をすれば元通りに治る。
これは、損傷した部分の組織が再生するからだ。
しかし、脳の神経細胞はそんな具合にはいかない。
部分的に再生する場所はあるが、大部分の神経細胞は損傷を受けると再生されない。

でも、周りりの神経細胞がつながって、強化してくれる。

脳卒中や脳外傷で発生した手足の麻痺などの症状を、リハビリテーションで回復することがあるが、まさに周りの神経細胞ネットワークが繋がって働いてくれるからだ。

■孤独にしても、寿命にしても、さらには、脳神経細胞にしてもしかり、生きるとは繋がることだ。

--

--